虚・女神転生   作:春猫

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サブタイトルネタ切れでセフィラー名に(;´Д`)


MALKUT

 

「えっ?」

「これ、事故の元になるんじゃね??」

「東京脱出はならずだね」

 

 現在、マップは東京しかない『女神転生Ruina』、では東京の外はどうなっているのか?

 

 少なくとも景色は見える。

 

 どっかの映画みたいに霧に覆われている訳ではないのだ。

 天気が良ければ富士山や房総半島は見えるし、伊豆諸島や小笠原諸島なら船や飛行機(決まったルートで運航され、道中で船から海に飛び込んだりは見えない壁で出来ない)で行くことが出来る。

 

 では、陸続きの神奈川や千葉や埼玉はどうか?

 

 電車に乗っている場合、下りで外に向かう側に乗っていると境界線で上りに乗っている状態になる。

 

 車ではどうか、というと境界線を超えた時点で周囲の車ごと反対車線へ移動している状態になる。

 

 流れはそのままなので、夜などはどの時点で向きが変わったか分からないほどである。

 

 そうした話は掲示板などでタケルたちも知ってはいたが、せっかくタケルの車があるのだからとタケル、アキラ、エリリの3人で今回ドライブがてらチャレンジしてみたのだ。

 

 

 ちなみに「日付が切り替わる時点で丁度境界線に差し掛かると外に行ける」という都市伝説が既に存在している。

 

 少なくとも都内から見える範囲は、外観のデータは存在しているのだ。

 

「本当は行けるんじゃ?」と思うのも無理は無い。

 

 

「少なくとも乗っている状態じゃ、どの時点で向きが変わったか分からないな」

「前後の車もそのまんま居るからねぇ」

「新幹線に乗るっていう日本円の無駄遣いをした人間も居るらしい。東京出たらあっという間に東京だってさ」

「タケル~、この後、どこに行くの?」

「上野に行こうかって話になってる」

「知ってる知ってる! 動物園があるんだよね、僕、パンダが見たい!」

 

 フィーネはタケルの頭の上、ムルルは助手席にきっちりとシートベルトをして座っている……っていうか固定されてる?

 

 上野は博物館が異界化しているという話だ。

 動物園を見てから博物館の異界で経験値稼ぎというプラン。

 エリリはシェーラをコンプから出しているが、アキラは出たがるオカンをスルーして居る。

 まあ、超小型のピクシーたちや、小型のアガシオンに比べればサイズが大きいこともあって、そうそう気軽に出せないと言えば出せないのだが……。

 

 

 

 

「動物園なんか来るの小学生以来だなぁ……」

「人が多いねぇ、プレイヤーは居ないみたいだけど……」

「タケル~、ソフトクリーム買って!」

「僕も僕も!」

「いや、買ってもいいけど、臭い平気か? 動物園って結構臭うぞ、動物の臭い」

「うん、おいしそうだね!」

「ムルルぇ……」

 久々に悪魔との感性の違いを感じるタケル。

 しかしすぐに「俺も水族館で見たアジの群れが生きが良くておいしそうだって思ったし、まあ、大して変わらないか」と思い直す。

 伊達に「似た者親子」と言われてはいないタケルである。

 

 

 

「おい、プライドどこに行った駄悪魔!」

「うわぁ、むっちゃだらけてる」

「ある意味幸せそうではあるんだが……」

 両隣のライオンとトラと同じ様にだらけきった姿を晒しているのはヌエ。

 ちゃんと「ヌエ」と案内まで付いている。

 間違いなくこっちの言っていることを理解しているだろうに、悠然と欠伸をして後ろ足で頭を掻いている。

 

「ヌエってけっこう強かったよね?」

「普通の人には見えて無いみたいだなぁ」

「上野動物園すげぇ、流石恩賜動物園」

 

 多摩動物公園はどうなんだろうと、ちょっと確認してみたくなったタケル。

 

 ヌエだけでなく、妖獣、魔獣、妖鳥、霊鳥、凶鳥などもしっかりと檻に入って、よく言えば穏やかに、悪く言えばダラダラと暮らしている。

 

 

「異界で出てくると怖かったりするのに……」

「こうして檻に居ると周りの動物と大して変わらないなぁ」

「ペットショップとかでも、もしかして!?」

 檻まで飛んで近付いては威嚇されてタケルの陰に隠れてアカンベーをしているフィーネ。

 まるで小学生だ。

 檻の中の悪魔たちは外に出られないだけでなく、魔法なども使えないようである。

 檻というより檻の形状の結界なのかもしれない。

 

 

「タケル~動かないよ? 死んでるんじゃない?」

「いや、息してるだろ! レッサーならともかく、ジャイアントパンダは動いてる方がレアだから」

「わーい、パンダだ、パンダだ!」

「エリリちゃん、大きくて怖いですぅ!」

 タケルとパンダの近くを行ったり来たりしているフィーネ。

 ムルルは喜んで、シェーラは怖がっている。

 

 コンプの中から絶え間なく話しかけられてアキラは疲れた顔。

 オカンを仲魔にしてからずっと日常でもこの調子らしい。

「早くサマナーのレベル上げて、オカンを合体しないともたない……」

 

 

 それでも戦闘となれば影の薄いウコなんとかさんよりは活躍するため、簡単には手放せないのが辛いところだ。

 

「頼りにはなるんだよ、頼りには……」

「おお、これ童子切安綱の本物だぁ……」

「オニ相手に使わせてもらえないかなぁ?」

「流石に国宝だからなぁ」

「来国光、長船、相州正宗……魔貨全部はたいても買えないよなぁ」

「ていうか、ここ悪魔のレベル高いだろ?」

「奥に行くと危険だと思うよ?」

「不動明王とか毘沙門天とか出たら洒落にならないもんな」

 教科書に乗っている様な国宝や重要文化財が展示されている。

 仏像なども見事なものだが、メガテンの場合、悪魔として登場する者も多い。

 そうした展示物を媒介として、本体が出てきてしまう危険性もあるのだ。

 

 そうでなくても地元の中野より出現する悪魔が強い。

 想定外に強い悪魔にフィーネたちも軽口をたたく余裕が無い。

「これ、経験値稼ぎとか言ってたらパトるだろ?」と奥まで進むことなく、宝玉や傷薬も使いつつ出口に向かう。

 

 

 

「最後の最後でこれか?」

「もう劣化はお腹いっぱい!」

「この劣化の仕方はヤバいだろ?」

 

 まるで外への逃走を遮る様に出口に現れたのはミシャグジさまの劣化分霊、ただし再現率が低く、ぴゅ○太レベルにドットが荒い。

 

 結果……。

 

「どうみてもモザイク処理です、本当にありがとうございました」

「リアル過ぎても嫌だけど、これはこれで卑猥!」

「うねるな、動くな! 猥褻物にしか見えない!」

 

 

「ちっ、耐性は劣化してない! 打撃使えないから俺無力だぞ? くそ、アイテム係やるしかないのか?」

「いっくよ~ジオ!」

「いきまーすぅ、ジオ!」

「斬撃はいけるけど……アギ!」

「ペルソナ! ラクンダ!」

 

 劣化しようが神様は神様。

 補助呪文を使い、アイテムを使っても厳しい戦いだ。

 ましてやダメージ筆頭のタケルの鈍器が使えないのが痛い。

 

「傷薬、そんでもって次のターン、とっておき行くぞ!」

「くそ、見た目ヘボいけど強いじゃねえか!」

「回復はタケルがやってくれるよね、じゃ、ジオンガっ!」

「神経耐性だもんな、とっておきの神経弾使っても意味ねえし、オラっ!」

「とっておきのとっておき! メギドストーン!」

 

 

 

 どうにかこうにか倒し、外に出ると周囲のNPCと自分たちの落差が激しい。

 治しきれない怪我も残り、ヘトヘトの3人とその仲魔たち。

 逃げる様に駐車場のタケルの車へと戻る。

 

「死、死ぬかと思った……」

「あの見かけであの強さは詐欺だ!」

「大赤字だ……強くなってもいくらでも上は居るってことだな」

「タケル~おいしいもの食べに行こう~、もうヘトヘトだよ~!」

「タケル、タケル、ケバブってなーに!?」

「これで運転だとタケルも大変だし、飯食ってから帰らね?」

「そうだねぇ~、今日は自炊どころか帰りにコンビニ寄るのも勘弁って感じ……」

 

 車で少し休憩し、落ち着いたところで食事に。

 スペイン料理の店でラムチョップやトルティージャ、レバーのパテなどを食べる。

 酒が欲しくなるところだが、タケルは運転、エリリは未成年ということで飲めないのが残念だ。

 

「前だったら、このラムチョップとかムルルが骨ごとバリバリ食べてたよなぁ」

「この程度なら食べられるけどね、どっちかって言うと今の場合、僕は割って吸う方がいいかな?」

「タケル~、トルティージャってオムレツだよねぇ?」

「フワフワですぅ おいしいですぅ!」

「ほらほら、口のまわりが……」

「ラムとマトンって何が違うんだ?」

「美味けりゃなんでもいいじゃん」

 

 みんなでお腹いっぱいにおいしいものを食べれば気分も復活。

 車に乗って家路につく。

 疲れと満腹感で運転するタケル以外は早々に夢の中である。

 ムルルはパッと見分かり辛いが、ご丁寧に鼻提灯を出している。

 フィーネはタケルの頭の定位置でうつ伏せ。

 よだれで髪の毛がベタベタにならないか不安になるタケルである。

 

「ま、そんなに急ぐ必要も無いしな」とのんびりとしたペースで車を走らせる。

 

 

 中野に到着。

 寝ぼけ眼のアキラに不安を感じ、アキラにオカンを呼び出させてから降ろす。

「しゃっきりせな!」と背中をオカンに引っ叩かれて目が覚めた様だ。

 

 次いでエリリ。

 タケルのマンションの駐車場で下すと不安なので、アパートの側まで送り届ける。

 大して距離は無いとはいえ、エリリは目をグシグシとして眠そうだし、シェーラはまだ完全に眠っている。

 バックで車を出さなくてはいけないギリギリまで車を入れて、鍵の確認をさせてから降ろす。

 エリリはなんとか意識を戻して手を振っているが、シェーラは寝たままだ。

 

「さーて、到着っと。フィーネ、起きろ~、それともこのまんま、コンプに戻るか?」

「んあ~、着いたの? お風呂入って牛乳飲んで、アイス食べてから寝る~」

「ほら、ムルルも家だぞ?」

「むにゃむにゃ、もう食べられないよ……」

「無茶苦茶、ベタな寝言だな」

「取り敢えず、抱えていってあげてよ~」

「お前も頭から降りる気ないのな……」

 

 部屋に戻ったタケルは、取り敢えずムルルをこたつの側に下ろすとフィーネのお風呂の準備に取り掛かるのであった。

 

 

 

 




流石に祟りませんよね?
「さま」付けてるし?

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