虚・女神転生   作:春猫

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風邪で死亡してました
仕事にはなんとか行ってましたが、他は一切出来ない状況でした
まだ、肺というか気管支が痛む状況です(;^ω^)


CHOKMAH

 

「タケル~ぅ!!!」

 顔中をクシャクシャにして涙でベショベショの顔で飛び寄ってくるフィーネ、その後ろからは敵の魔法が。

 手を伸ばし庇いたくても動かない体。

 視界が暗く、黒くなり、沈み込んでいく意識。

 

 ◆◆◆◆

 ◆◆◆

 

 

「我ら山の民はタケル様について参ります」

「確かに親父は凄いけど、俺は大したことないぞ?」

「あのお方のことは関係ありませぬ。この山の恵みはあなた様がもたらされたものゆえ……」

「兄さん……」

「お兄ちゃん……」

「……分かった。このイソタケル、そなたらの命預かろう!」

 

 

 ◆◆

 ◆

 

 

 何かから解放された様な脱力と共に白くなる視界。

 明るくなった眼前に移るのは地平の彼方まで続くかの様な花畑。

 再び視界が変わりログイン画面となる。

 

「くそっ、思ってたより『クる』な死に戻り……」

 端末を外し、洗面所で顔を洗う。

 鏡の中の自分は心なしかやつれて見える。

 

 

『女神転生Ruina』で初の死に戻りをした猛。

 初期からアキラとのペアが多かったことと、妙なアイテムという形に結実することが多いが、その半分でも現実に欲しい内部での運、そして仲魔の支援でこれまで死に戻りを経験したことが無かった猛である。

 

 一時的なパーティでもとにかく誰かと組んでの戦闘が多い理由がこの死に戻り対策で、他のプレイヤーと組んでいる場合、戦闘終了まで死亡確定せず、その間に他のプレイヤーや自分の仲魔に反魂香や魔法などを使ってもらうことで戦列復帰することが出来るのだが、一人でプレイしている場合、プレイヤーが死亡した時点で死に戻り確定なのだ。

 

 エリリが学校の友達の地元へ遠征、アキラは前日ボヤキっぱなしだった会社の研修で不在、ブロードウェイでも顔見知りには出会わず、「浅い所を軽く行っとくか」と出かけたサンプラザ、大きなダメージも食らわず順調な経験値稼ぎであったが、出会い頭のムドに沈んだ。

 

 経験値や金やアイテムはいいとして、中でフィーネたちと過ごした時間まで消えてしまったという感覚、そして死に戻り直前のフィーネの顔と無力感。

 初の死に戻りは思っていたより大きなダメージを猛にもたらした。

 

 歯を磨き、気分をリフレッシュして再度ログイン。

 

 いつもと変わりなくタケルを迎えるフィーネたち。

 キャロの枝に水をやり、フィーネたちとお喋りをする。

 

「フィーネ、なんで泣いてるの?」

「タケルの顔を見たらなんかホッとして、なんでだろ?」

「パパも変な顔、どうしたの?」

 

「そういえば、アプリの順番はフィーネの番だったな」と思い出すタケル。

 本来、無かったことになった時間の欠片がそのせいでフィーネの中に残っていたのだろうか?

 飛び乗ったタケルの頭に顔をグシグシとこすりつけているフィーネ。

 時々フィーネのタオルケット替わりになってしまうタケルの髪の毛である。

 

「久々にブロードウェイでも行くか?」

 流石に今日は再度の経験値稼ぎをする気にもなれず、そう口にするタケル。

 

「さんせ~い! クレープ食べて、にゃんだらけ覗いて、ゲーセンに行こう~!」

「僕はおもちゃ屋見てみたい!」

「パパ、リボンかなにか髪飾り買って~!」

 仲魔たちは大歓迎のようだ。

 こっそり財布の中身を確認し、上着を羽織るタケル。

 玄関に先回りしていた仲魔とそのまま外に出る。

 

 現状、『女神転生Ruina』はご当地的なイベントは時々発生するものの、システム自体の変化や大きなイベントは無く、どことなく弛緩した空気が漂っている。

 のんびりと中の空気や時間を楽しんでいるタケルの様なプレイヤーにとっては好ましいものだが、刺激と変化を求める攻略系のプレイヤーにとっては物足りなさを感じさせるものであり、掲示板などでもそうした書き込みが見られる。

 

 現在、一番「歯ごたえ」があるとされている異界は新宿都庁。

 いまだ中層以上にたどり着いた者はおらず、最前線組でも深夜帯だと瞬殺もあると言われている。経験値稼ぎに夢中になり、時間帯の切り替わりを計算し違えて死に戻りする羽目になったプレイヤーも多い。

 そうした場所柄、新宿にはガチ組が集まり、はじき出される様に代々木、中野などに転居するプレイヤーも居る。

 

 新人以外のプレイヤーが中野に増えているのはそうした事情だ。

 結果、ますますブロードウェイは賑わっている。

 

「今日も人が多いね~♪」

「パパ、お友達が居るよ~」

 ダフネイベントは確率はさほど高く無いものの、挑戦者の数が多いことからドリアードを仲魔にしているサマナーは多く、特に中野は地元ということもあって、その率は高い。

 目ざといのか商魂たくましいのか、ブロードウェイ内のアパレルショップではドリアードサイズの服も売っている。

 

「タケル~、僕の持ってるヤツ、こんな高い値段ついてるよ!」

 食玩などのグッズ類を扱っているお店もブロードウェイ内にはある。

 レアなものだとお菓子が大人買い出来るくらいの価格がついているものもあるのだ。

 ムルルが指さしたおもちゃはそれほどの高値では無いものの、おもちゃのついていたお菓子の定価よりは遥かに高い。

 外部の市場原理の模倣か、それとも内部独自の市場原理が働いているのか、少し興味深く、その値札を見るタケルである。

 

「こんにちわ」

 そんなタケルに声をかけてきたのはウシロ。

 珍しく同行者が居るが、そちらもタケルには顔なじみ、というかご近所さんのサダロである。

「こんにちわ、知り合いだったんですか?」

「弟です」

「……姉です」

 別に何かをされた訳でもないのだが、その外見イメージと初対面時のインパクトのせいでサダロを相手にすると内心一歩後ずさってしまうタケルである。

 ウシロは「仕方なく」一緒に居るというのが見え見えだ。

「遊び」の場に肉親を伴うというのは苦痛なものである。

 リアルでの力関係まで察して同情するタケル。

 

 

「それにしても杉山さん、外見そのまんまなんですね?」

「姉ちゃん、リアルネームはご法度!」

「あ、ごめんなさい。その辺、どうも疎くって……」

 顔に疑問符を浮かべるタケルに顔に「ああ!」と口を動かし、前髪をかき上げるサダロ。

 

「ああ、た……会社の! いつもお世話になってます」

 

 現れた顔はタケル、というより猛にとって見慣れた顔。

 仕事で朝夕に顔を合わせるVRオフィスの女性だ。

 つい口に出しかけた苗字を途中で止めて挨拶をする。

 VR内でリアルの知り合いに会うのは、海外旅行先で地元の友人に偶然会うのに近いものがある。

 そのままあっさりと別れるのがなにか悪いことの様な気がするのだ。

 

「じゃ、俺はこれで」とそそくさと立ち去っていくウシロ。

 流石に引き止めるのは気の毒だと素直に見送るタケル。

 

「タケル~、お隣さんだよね、前からの知り合いなの?」

「向こうの方の仕事でね、俺も気付かなかったんだけど、今まで」

「パパ~、喫茶店入ろう!」

「そうだな……よろしかったら喫茶店でも入りませんか?」

「はい、弟にも置き去りにされちゃいましたし……」

 クレープ屋をいつも利用していて余り入ったことが無いが、ブロードウェイ内にも喫茶店はある。

 手近なその内の一店に入る。

 

 

「僕はマロンパフェ!」

「私はプリンパフェ? そんなのあるんだ、じゃ、それ!」

「パパ、ホットケーキ食べていい?」

 いつも通り賑やかな仲魔にちょっとあたふたするタケルだが、サダロが微笑まし気に見ている様子にちょっと安心する。

 

 

 気になっていたサダロの外見。

 フィーネがあっさりと質問をして明らかになったのだが、トラブル対策としてウシロのアドバイスも受けて行っているものなのだそうだ。

 別のVRでしつこく粘着されたりしたこともあり、それも『女神転生Ruina』のプレイを始めるにあたっての躊躇の原因となっていたそうだが、イベント後に出回る様になった「貞○カツラ・レプリカ」をウシロから譲り受ける形でスタート時から現在の外見に。

 

 VR以外のネットなどでも、少し異性と会話などをするとやたらリアルで会いたがる層、特に「それだけ」を目的とする者は「中で楽しく過ごしたい」と考えるタケルの様な者にとっても邪魔だし、鬱陶しい。

 付き纏われる側となれば、もっと迷惑なことだろう。

 

 その効果もあって、ドン引きされることはあってもしつこく言い寄られることも無く、昔の東京巡りを楽しみながらプレイをしているのだという。

 

「時々、自分の今の外見忘れちゃって、キャッキャと燥いじゃって弟から『姉ちゃん、その外見でその行動はNGだよ……』なんて言われることも」

 オフィスでの会話で聞いた弟というのがウシロで、「世の中は広い様で狭いなぁ」と思うタケルである。

 仕事での会話が主だったため、割としっかりとしたイメージがあったサダロだが、こうして話をしていると微妙に天然が入っていて、対人距離感の近さもあることから、いわゆる「勘違いされやすい」タイプなのかもしれない。

 

 中ではペルソナ使いでアルカナは「女教皇」。

「レベルが上がるとその内ハイピクシーなんですよ!」とフィーネに楽しそうに語りかけている。

 あと少しでサラスヴァティに上がりそうとのことで、かなりのハイペースで経験値を稼いでいる。

 ウシロが事前の自分の言葉を有言実行して、同行しての経験値稼ぎに限らず、色々とアドバイスをしているのだそうだ。

 

「サマナーも仲魔がいいなぁって思うんですけど、色々と指示を出してっていうのが私には無理かなぁって、異能者は弟がやってますけど色々と考えたり大変そうだし、バスターはちょっと怖いですし」という消去法でペルソナ使いを選んで、表の職業は保母さんなのだそうだ。

 

「子供が怖がって泣かないかな?」などとちょっと失礼なことを思ってしまうタケルであった。

 

 

 




という訳でタケルはイソタケルの転生体でした
父親はスサノオというビッグネームの割に本人(神)はマイナー
妹二人とセットという割と創作的にはおいしい神様なんですけどね
名前が地味なせいなのか??
木を植えて回っただけだからなのか?

色々役に立つ木を日本にもたらした神様ということで
林業系ではマイナーメジャーかもです
意外と近くの神社に祭られてたりします
何故か横浜ローカルな杉山神社(タケルの苗字の元)とか
九州、紀伊なんかでも神社がありますね

別名イタケルなんで苗字は伊武とかでも良かったかも?
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