普段は平気なんですが、たまに咳に襲われます
チンのパンデミアブームでも食らってしまったのかも?
「ジャック・フロスト優遇され過ぎ~! 私たちピクシーの方がずっと可愛いのにー!」
「次は僕もジャックフロストになってみるかな?」
「パパ、あのね、お菓子の長靴が欲しいの!」
クリスマスイベントとして『サンタ・フロストのクリスマス』と銘打ち、サンタ帽を被ったジャックフロストがVR内の街に溢れた。
街のあちこちに隠されたり、出現する悪魔(一部はクリスマス仕様になっていて、女性型悪魔のクリスマス仕様フォトコンなども非公式に行われていたりする)が落としたりするミニ雪だるまを集めると、その個数に応じて景品がゲット出来るというイベントだ。
仲魔の着せ替えデータや、ジョーク色の強いプレイヤー装備、期間限定ガチャ(ジャックフロストに外観を似せた車や雪だるま型の一軒家など超高額景品もある)を回す為のメダルなどプレイヤーの物欲を刺激しまくるイベントである。
ちなみにイベント攻略を有利に進める為の課金アイテムも存在している(期間限定ガチャのメダルも課金で購入出来る)。
タケルが優先的にゲットを目指しているのはピクシー用サンタミニドレス、DX合体超合金フロストロボ、そしてお菓子の詰め合わせの入った長靴と仲魔の要望に全面的に応えたもの。
ポイント的にはさほど高く無いので、それなりにイベントに取り組めば十分入手は可能だろう。
その為に課金で「雪だるまレーダー」のアプリを購入している。
今回のイベントに関しては「標準装備」とまで言われているアプリで、実際これ無しで町中に隠された雪だるまを探すのは、『女神転生Ruina』のマップの広さからして至難の業である。
「私までお世話になってしまって、すみません」
現在、マンション入り口で偶然、顔を合わせたサダロがタケルに同行している。
別に互いに何か約束がある訳でも無いのに振り切って別れるというのも変な話なので、そのまま一緒にイベントを攻略している。
プレイヤーごとに雪だるまの位置が違うなどということは無いので、見つけた場所を教わったり、見つけられる人間に同行すればアプリを購入せずにイベントを進めることも出来る。
その辺り、プレイヤー同士割と気軽にやり取りしていて、しつこく他人に聞いて回ったり、良く知らない相手にくっ付いて回ったりでもしない限りとやかく言われることはないのだが、サダロは恐縮して雪だるまのポイントの度に謝罪しているのだ。
「いいんですよ、イベントなんですから、楽しくやりましょう」
「そうだよー、楽しいのが一番! 私なんか毎日全力で楽しんでるよ!」
「パパ、あっちから悪魔が来たよー!」
「ゾンビ・サンタとか誰得!? トナカイまでゾンビかよ!」
「いきますね、ペルソナ、マハブフです!」
「葬らん、カッキーン! トナカイの角が折れたよ!」
「ウシっ、破魔ってる! でもってこっちに!」
「マハジオ、いっけー!」
「ドロップアイテム雪だるま無し……トナカイの鼻って、ムルル着けてみるか?」
「着ける、着ける~! どう、似合う?」
「可愛いですね、ムルルちゃん」
「えへへへ……(照)」
戦闘では自分の役割をこなしていることもあり、割と積極的に動けているサダロ。タケルの仲魔たちとも馴染んでいる。
表の職業が保母さんという職を選んでるだけあって、子供(っぽいタケルの仲魔)と接するのも楽しんでいるようだ。
その後も着々と中野の町の雪だるまを見つけ、サダロがログアウトする時間になったとのことでマンションまで送り、部屋には戻らずコンビニに。
「あ、こんにちわ。姉がお世話になってます」
「世話というほどの世話はしてないけどな」
ブロードウェイやサンプラザ近辺以外で会うのは珍しいウシロと遭遇。
姉のフォローをするため、同じ中野住まいではあったが、この近くに引っ越してきたのだそうだ。
「にしても、ウチの姉やタケルさんが住んでるあのマンション、本当はあそこに引っ越そうと思ってたんですよ、けど、あそこ初期配置では入居出来るけど転居先には選べないんですよね、実は」
「え、そうなの? 人が全然居なくて駐車場スカスカなんだけど?」
「なんかステータスとかみたいな形で表に出てるんじゃ無いデータが予想以上に多そうですよね、このVR。後追いブースト修正とかもあるんでしょうけど、姉の成長、明らかに俺の時より早いですもん」
「ウチのフィーネとかも他のピクシーより成長早い感じだな」
「聞いてますよ、タケルさんの鈍器。バスター涙目のスキル成長率だとか?」
「あー、うん、なんかね、鈍器に関しては明らかに裏ステータスがある感じで成長してるな、確かに。俺の前に使ってた鈍器、何故か仲魔が装備してるし……」
「え? 仲魔って武器装備出来るんですか? アクセサリとか以外に?」
「しっかり殴ってる、鈍器で。掲示板に書こうかとも思ったけど、他に全くそんな話が無いんで躊躇してる内にすっかり時宜を逸した」
「その内、魔人・鈍器ホーテとかになっちゃったりしてwww」
「ありそうで笑えね~!」
「民○書房的に鈍器鵬弖もあるかもしれない!」
「やめれ~!」
くだらない会話を楽しみ、その場で別れる。
引っ越しまでしてサポートとは、天然の入った姉のフォローも中々大変な様だ。
サポート系の魔法を使うのが得意なウシロの性格は、そんな姉のフォローという日常によって培われたものなのかもしれない。
部屋に戻り、いつもの様にキャロの枝に水をやり、みんなでお菓子を食べてお喋りをしてからログアウト。
掲示板でイベント関連の情報を漁ろうとパソコンを立ち上げる。
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【裏切り者に】スティーブン討伐スレ その5【鉄槌を!】
1:品川の異能者
ここは『女神転生Ruina』のクリスマスイベントにおいて、非リア充要素満載のキャラクターの癖にミニスカサンタ姿の女性に車椅子を押され、自分もサンタコスをしてリア充アピールをしつつ徘徊している裏切り者スティーブンを追い詰め、討伐することを誓った漢が集うスレです。
目撃情報には時間、場所の明記を忘れずに!
リンク先へのアクセスは自己責任で!
煽り、荒らしは華麗にスルーしましょう
愛情の無いコメント、貶しはNG
和気藹々、マターリ進行でいきましょう
過去スレ:スティーブン討伐スレ その1~4
______(中略)__________
833:新井薬師のバスター
また違う女連れてる(# ゚Д゚)
完全に俺ら煽ってるだろ、これ!
834:赤羽のサマナー
リア充死すべし、慈悲は無い!
835:京成高砂の異能者
スティーブンですらクリスマスを満喫してるのにお前らときたら……
836:青砥のサマナー
ピクシーとドリアードと一緒にクリスマスケーキを食べてる俺は勝ち組!
837:お花茶屋のサマナー
どうせ俺の仲魔は全部♂だよ、(#゚Д゚)ゴルァ!!
838:池袋のペルソナ使い
にゃんだらけのクリスマスイベント行ってこい、ネコマタさんと2ショット撮れるぞ!?
839:上野のバスター
で、スティーブンはどこ行ったの?
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「あー、荒れてるなぁ」
現実のクリスマスとVRのクリスマスイベントが脳内で完全に断絶している猛の場合、クリスマスだからと言って現実サイドで何かしたいという欲求が全く無いため、荒れようも無かったのだが、割り切れない者も世の中には多いらしい。
かと思えばクリスマス限定バージョンの悪魔スクショコンプを目指す野郎どものスレなどもあったりして、攻略に関連したスレの方が少ない有様である。
「タケル~、ジャックフロスト追い詰めてこっちへの抜け道問い質さないと!」
「アキバのジャックフロストはサマナーと同行してるだろうから、イベント期間中の遭遇は難しいと思うぞ?」
「私から逃げようなんて百年早いのよ、雪だるまの癖に!」
フィーネはすっかりジャックフロストを敵視している。
アプリでのスマホ内生活に喜んでいたフィーネだが、もっと自由に好き勝手に動いている存在を見て、羨ましさが高じて敵愾心にまでなってしまったようだ。
そこに追い打ちをかける様に、今回のジャックフロストメインと言えるクリスマスイベントである。
スティーブンに煽られている嫉妬仮面予備軍並みにメラメラと炎が燃え盛っているのだ。
「ムキー! タケル、ケーキ買って、ケーキ! こうなったらやけ食いよ!」
「(仕方ないか……)どれがいい?」
「ショートケーキじゃないの、ホールでサンタの人形とかもあるクリスマスのケーキ!」
「(おうふ)現実のケーキ屋並みにえげつない価格……。現実と違って売れ残りがクリスマス後に安売りとかもないしなぁ」
フィーネに言われるまま、クリスマス仕様の特製ケーキを購入する猛。
通常の課金アイテムでの食事の五倍の価格である。
スマホの中で初めて会った時の様に顔中クリームまみれにしてケーキを食べるフィーネに、「ま、いっか」と苦笑して自分の現実での食事に取り掛かる猛であった。