虚・女神転生   作:春猫

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遅くなりました(;´Д`)


OMEN

 

 メガテン内の初詣、全体イベントの際に「絶対に来なさい!」とアマテラス様直々に言われてしまったタケル(を含むピクシーのサマナーたち)には参拝先の選択の余地は無かった。

「東京のお伊勢さま」こと東京大神宮一択である。

 

 車だと流石に渋滞が……ということで電車での移動となる。

 

 飯田橋へ出てそこから徒歩。

 アキラとエリリも同行し、神様本人が降臨するという普通では体験出来ない初詣に。

 他の神社での初詣は流石に本物降臨のところは少なく、内部と外部の掲示板ではこの騒ぎが拡散され、「それならご利益がありそう」と更なるプレイヤー参拝客が訪れることはほぼ確定である。

 

 タケルやエリリと同じ様にピクシーを連れたサマナーや、縁結びのご利益を期待したプレイヤー、そしてNPCで境内には現時点でも人が溢れている。

 振袖を着たピクシーなども居て、シェーラがエリリにおねだりをしている。

 フィーネはそれよりもどこからか漂ってくるソースの匂いが気になっているようだ。

 今年もフィーネは「色気より食い気」なようだ。

 

 

 無事にお参りも済ませて、せっかくなので靖国神社経由で九段下へ向かい、神保町の交差点を経由して水道橋へというルートを辿ることにする。

 

 靖国神社では「眉毛が凄いよ~!」飛んで近くまで寄ってみたフィーネとシェーラの報告を受けながら大村益次郎像を見上げる。

 近代陸軍の父とも言われているが、日本初のテクノクラートと言った方がいい人物の日本初の西洋彫刻。

 依頼を受けた彫刻家がこの銅像の作成のためにわざわざ海外留学をして技術を学んで作ったという、日本の美術史的にも価値のある銅像だ。

 上野の西郷さんと睨み合っているなどという話もある。

 肖像画に比べると頭がでかくない(肖像画だとまるで漫画キャラの様なデフォルメをされている様に見える)。

 

 靖国神社の敷地は東京大神宮より遥かに広く、外の靖国神社と違って変な人間が周囲に湧くことも無い……悪魔は湧くかもしれないが……。

 

 

 

「おお、武道館だ」

「ライブとかやってるかな?」

「本来なら柔道大会とかそういうのだけどな、この建物」

 

 一般人にすると武道館=コンサートであるが、本来はその名の通り「武道」を行う場所である。

 東京ドームでのコンサートが一般的になる前は外国のアーティストの来日公演で、武道館公演があるか無いかでランクの違いが区別されていた。

 タケルの生きている現在でも、そこまでではないものの一定のステータスのシンボルであり、周辺の建物は変化があるものの武道館自体はそのまま残っている。

 

 九段下へと向かう道の右手に見える建物を見つつのんびりと歩く。

 

 靖国通り沿いをそのまま進むのでは無く、その裏のさくら通りを歩く。

 この通りのお惣菜屋さんでコロッケを買うつもりなのだ。

 

 コロッケだけでなく、元が肉屋だけあってメンチカツなども美味しいし、ハムカツ、マグロのカツなどのカツ類の他にも、春巻やらサラダ類やら煮物に加え、白いご飯も売っているし、組み合わせてお弁当の入れ物に入れたりもしてくれるが、ついつい「あれも食べたい、これも」と胃袋と財布の予定をオーバーした買い物をしてしまうお店でもある。

 

「コロッケとメンチを2個ずつ、それとアジフライ」

「から揚げとメンチとコロッケ」

「コロッケ2つとササミチーズ」

 

 食べながら歩くが昼飯時などを除けば、靖国通りに比べて人通りが少ないため、さほど問題にはならない。

 フィーネの齧るコロッケのパン粉が頭に降りかかってしまっているタケルは、「余所の人に迷惑かけなきゃいっか……」と達観モードである。

 アキラはから揚げを「コンビニのよりうめえな」と喜んで食べている。

 エリリはコロッケをシェーラと半分こ、残りは帰ってからオーブントースターで温めなおし「冷蔵庫に前に作った春雨サラダが残ってるから、後は冷凍しといたご飯をチンすればいいだけ!」と晩御飯にするようだ。

 

 すずらん通りへと向かい餃子を食べたい気持ちを振り切って、岩波ホールの前を横切り神保町の交差点へと向かい白山通りへ。

 信号を渡り、路地へと誘う油や料理の匂いをなんとかスルーして、水道橋へ。

 

 途中、かるた専門店を少し覗いて見る。

 かるたに花札やトランプ、といったオーソドックスなものだけでなく、色々なゲーム(notTVゲーム)が置いてある。

 かなりマイナーなゲームなどもあり、せっかくなのでUNOといったメジャーどころも含めて幾つかカードゲームを買ってみる。

 車でのお出かけや外に出るのも億劫な冬場や雨の日に活躍してくれるだろう。

 歩きながらも待ちきれずにフィーネやムルルは袋から取り出して説明書を見ている。

 アキラも興味深そうに見ているから、遊びに来た時に一緒にプレイすることになるかもしれない。

 

 

 水道橋の駅、周囲の状況にもよるが良く耳を済ませるとコースターなど遊園地の音が聞こえる。

 当然、仲魔たちの目もキラン☆と輝いている訳で、「まだ休みのトコ多いから混んでんだろ?」と言ったくらいで止まる筈が無い。

 

 ここも全体イベントで訪れた場所だが、将門公に斬られるためというヤラレ役で、遊園地自体は稼動していなかったため(照明は点いて施設の電源は入っていたが)遊園地自体は楽しんだことは無かった。

 

 

 

「CAST IN THE NAME OF GOD. YE NOT GUILTY.」

「えーーー、なにーーー!」

 ジェットコースターで観覧車を潜り抜ける瞬間、ネタを呟くがスルーされ、「ショータイムかアクションの方が良かったかなぁ」とタケルが少し落ち込んだりもしたが、たとえ観覧車の名前を覚えていたとしてもネタに反応出来るかは微妙である。

 

「「「「「妖精戦隊ヒーホー5!」」」」」

 

「あー! またジャックフロスト! タケル~、やっつけちゃおう!」

「いや、流石にアトラクションに乱入はヤバいだろ?」

「ここで将門公が乱入して全部ぶった切りとかちょっと期待」

「来ちゃうよ、来ちゃうよ! そういうこと言ってると、このVRの中って閣下が出てこない分、将門公がフリーダムなんだから……」

 ヒーローショーは今はジャックフロストの戦隊物である。

 

 

「仮面ライドウって、中身本物じゃないだろうな」

「無いとは思うけど、あってもおかしくないんだよねぇ、この中じゃ」

「仮面ライドウ・アマゾンとかあったら笑う。上半身裸のパンツ一丁のライドウ!」

 

 公演の予定表を見ながらの会話、ショーで休憩したので再び絶叫マシーン系へ。

「考えてみればVRの中なんだから、もっとトンでもない絶叫マシーンとかも作れちゃうんだよね」

「それを言っちゃ身も蓋も無いけど、スカイツリー並みの高さからフリーフォールとかバンジーも可能だな」

「さっきの水で射つヤツ、的の中に悪魔が紛れてたよね!」

「あー、なんかオバリヨンが吹っ飛んでた気がする」

 

「タケル、タケル、次、あれ、あれ! 私たちの名前が付いてる!」

 

 ピクシーの名前がついたコーヒーカップ、はしゃいで回し過ぎてぐったりしていたフィーネたち。

 おばけ屋敷に入ると一気に雰囲気が変わる。

 

「エリリちゃん、ここ異界化してるよぉ~!」

「うん、分かる、流石におばけ屋敷であれは無いでしょ」

 エリリが指差す先にはモコイの姿が。

 

「ダメダメだね、チミ」

 どことなく見下した感じで話しかけてくる。

 

「なんかムカつく!」

 アキラの感想そのままにバトルに突入。

 同じ様な口調で話しかけてくるモコイたちに更にイらつかされる。

 

 フルボッコにされながらも口元がどこか勝ち誇った表情のまま消えていくモコイ。

 そして戦闘に付き物のドロップアイテムだが……。

 

 

「久々に来たな、こういうの……」

「タケル、どうかな」

「ムルル、そんなもん首に巻くんじゃないの!」

「えー、マフラーみたいでヒーローっぽくない」

 ドロップアイテムでタケルが入手したのは「モコイのふんどし」。

 決して首に巻く様な代物ではない。

 

「あ、なんか強くなってるよ!」

 装備すると物理防御と力が上がり、ムド耐性が付くが、それでも首に巻くのは間違っている。

 ……のだが、すっかりご機嫌のムルルから取り上げることも出来ず、ため息をつくタケルである。

 

「ま、まあ流石に使用済じゃないでしょ……?」

「まあ、似合う似合わないで言えば似合ってる……よな?」

 エリリとアキラのフォローも微妙なところだ。

 

「くまさんだ~!」

「タケル、カステラおいしいよ! アイスといっしょだともっとおいしい!」

「ちょっと食べるの躊躇しちゃう可愛さね」

 アトラクションのハシゴの後、ちょっと小腹が減ったのでクマの形をしたカステラのお店でカステラとサンデーを買う。

「意外といけるな!」とアキラもつまんで食べている。

 タケルはサンデーで口の周りをベタベタにしたキャロをウェットティッシュで綺麗にしてあげている。

 キャロが「パパ~!」と呼びかけているのに全く違和感が無い。

 

 日が傾いて来たところで観覧車に乗って、これでラスト。

 遊園地を出て駅に着く頃には周囲はすっかり暗くなっている。

 

 ぼちぼちと年明け早々のイベントが待っている予感もする。

「明日からまた頑張ろうな!」

「「「うん!」」」

 仲魔たちと遊んで充実したテンションのまま、新年の決意をするタケルであった。

 

 

 




徳萬殿、純喫茶ロザリオ、源興號、とんかつとんちゃん……神保町で好きだったお店も随分と姿を消して……ランチョン、共栄堂、スヰートポーヅ、さぼうる2……残ってるお店は大丈夫でしょうか?
徳萬殿があまりにも唐突でそういう兆候が全く無かっただけに……

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