クリスマスと並び非モテ民の暗黒オーラが立ち上るバレンタインデーであるが、女神転生Ruinaの場合、出現悪魔がバレンタインのコスプレ、限定女体化と変化を見せ、通常のアイテムドロップ比率が向上するだけでなく、チョコレートが入手出来たり、VRだけでなくアプリでも女性タイプの仲魔からチョコレートが貰えるなど現実に比べれば遥かに恵まれた一日が過ごせる様になっている(萌え化してロリっ子外見になったモコイに「ダメダメだね、チミィ」と言われて再起不能レベルのダメージを食らったサマナーも居たようだが……)。
それでも遺伝子レベルで刻み込まれた暗黒オーラは溢れどころを求め、何故かメシア教に矛先を向けて爆発。ちゃっかりと便乗したガイアーズと共に各地のメシア教会で激しい戦いが繰り広げられた。
まあ、動機が動機なんで、メシアンが武闘派を引っ込めて見た目重視のシスターたちを前面に出すとあっけないほど簡単に終息したのだが……。
そうしたイベントのせいだろうか、久々にタケルたちが顔を合わせたアンデはやたらと疲れて見えた。
「ああ、お久しぶりです……」
「オヒサビサ、って疲れてんなぁ、攻略最前線でも回された?」
「一応前線組の一角になんとか食い込んでます。節分もバレンタインも気付いたら終わってましたねぇ……」
「タケル、タケル、アンデの耳凄いよ!」
「アキラが見たら羨ましがるな」
「ちゃんと畳めちゃう残念仕様ですけどね」
季節遅れのハロウィン仮装の様に、アンデの耳はコウモリの羽になっている。
ただし本物のコウモリの羽と同じく、畳めるようになっていて普段は趣味の悪いヘッドフォンの様にも見える。
「そう言えばアンデは先祖返りだったっけか……、吸血鬼要素だろ?」
「それもよりにもよって『串刺し公』の分霊要素持ちだったようで……」
「串刺し公ってそりゃまた……」
「しかもガーディアンにマンセマット様の分霊が付きまして……」
「一人ハルマゲドン状態?」
「本来ならヴラド公はメシアンサイドなんですけどねぇ……、その後の伝承やらドラキュラフィクションのせいで、すっかりカオス寄りに……」
ヴラド公は対イスラムの最前線に立ち続けた存在、本来から言えばメシアン寄りの存在である。
マンセマットも悪魔であるとされたり、サタンの雛形と見做されたりする目的のためには手段を選ばない存在だから、串刺し公覚醒のバトル神父のガーディアンとしては適格かもしれない。
「本来ならマッチングしない吸血鬼要素が一周回って元ネタにぴったり来る感じになっちゃったなぁ……」
ロールプレイ極め過ぎである。
「最近、私だけで無く、攻略組全体で前世覚醒イベントが発生してる人が見受けられますね。私、グロ耐性あんまり高く無いんですが、串刺し公の過去っぽいもの見せられましたし……」
「あー、だとすんと、俺のアレもそうなのかな?」
「タケルさんも覚醒イベントが?」
「スサノオの息子のマイナー神だけどね、ただ、現実の方で見たのか、こっちで見たのか覚えてない……」
「ああ、まだ都市伝説レベルなんですが……覚醒後、現実でもこちらのアバターに引きずられる様な変化を見せてる人がいるという噂も……」
「え、あっちで魔法とか使ったり?」
「そこまではいきませんが、毛深くなったり、鱗っぽい角質化したり、食べ物の嗜好が極端に変わったりはしているとか……私も最近、リアルでトマトジュースばかり飲んでます」
「それはなんか違う」とは言えなかったタケルであった。
その後、初台までアキラたちと遠征に行き、経験値を稼いだタケルは、コンビニ→自宅→フィーネたちとのお喋りからのログアウトという定番パターンで過ごした猛は、パソコンに向かいアンデの言っていた様な内容について掲示板の書き込みを漁る。
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【俺もお前も】覚醒者専用雑談喫茶バビラン その6【魔王様!?】
1:沼袋のバスター
ここは『女神転生Ruina』において、覚醒イベント(?)を経験したプレイヤーが集うスレです
「俺だけの妄想じゃなかった!」と安心して、自分の経験や現状を書いたりしつつ、全然関係無いことも雑談したりしましょう
リンク先へのアクセスは自己責任で!
煽り、荒らしは華麗にスルーしましょう
愛情の無いコメント、貶しはNG
新人さんへの詰問的なコメントもNG
和気藹々、マターリ進行でいきましょう
過去スレ:覚醒者専用雑談喫茶バビラン その1~5
______(中略)__________
412:西荻窪のペルソナ使い
仲魔やペルソナやガーディアンに付いてる悪魔とは全然無関係みたいだねー、俺なんか前世ダゴンで大本ネタの方なのかクトゥルーの方なのか分からんし
413:溜池山王のバスター
造魔なのに覚醒しますたwww
ヨシツネだったから英雄進化出来るかと思ったら全く何も無し
何回か変な夢見ただけだねぇ
414:都立大学のサマナー
ロウ・カオス関係無いよねぇ、これ
サンダルフォンの記憶なんか蘇っても根っからの中立の人間には面白くもなんとも無いんですが?
415:下高井戸のバスター
例の神父とかも覚醒済みらしいけどガーディアンと前世属性が真逆だって
416:蒲田のサマナー
いや、どうやりゃ現時点であんな大物天使ガーディアンに出来んだよ
洒落にならんだろ、あれ?
元ネタに似た外見だけでヤバかったのに
417:白金高輪の異能者
で、結局、みんな臨死体験者ってのだけが共通項??
418:赤羽橋のペルソナ使い
>>417 いや、それも未確定
ガセ扱いされてたけど、臨死体験する前にそれっぽい夢(?)を見てた例がチラホラ
確定っぽいのは何段階かあって、パトるとその段階上げが加速するってトコくらい
最終段階まで行った人間は今のトコ出てない模様
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「結局、良く分かってないってことか」
レンジで暖めていた食事を食べながら掲示板をスクロールさせる猛。
自身も経験していることだが、メガテンのイベントっぽい内容ながらイベントっぽく無い点も多々見られ、公式サイドからも一切のコメントがでていないため現状確認と駄弁りがメインとなっている。
「まあ、俺の場合、マイナーだけど変な神様じゃないのが救いだよな」
外見的にヤバいマーラだの、エピソード的にヤバいマンセマットだのに比べれば穏当な前世だ。
本当かどうかは全く分からないが……。
しっかりと掲示板でもネタにされているアンデに苦笑しつつ、食事を取り終えた猛は軽く一眠りしようとベッドに横になった。
都内でも中野近辺だと民家の庭に木が植えられていたりする。
タケルたちの住むマンションの隅にも木が生えていて、樹木に対する知識の無いタケルにはそれが何の木か分からなかったのだが、蕾がほころび花が咲いて梅の木だということが分かった。
鮮やかな色合いの紅梅である。
フィーネたちと見ていると「梅ですか、綺麗ですねぇ」とサダロに声をかけられた。
以前の会話を思い出したフィーネが車に乗せてもらいたがり、ムルルもキャロもそれに便乗、快諾されたため、タケルもいっしょに「車でお散歩」に出かけることになった。
東中野近辺は割と狭い道が多いが、サダロは車のスピードを上げないため危険は感じない。
女性ドライバーの場合、周囲を余り見ないタイプが見受けられるが、サダロの場合は逆に見過ぎるくらいで、時々何かを見つけてはウインカーを点けて停車している。
タケルの仲魔たちは喜んでいるが、ウシロなどが同乗した場合など「のんびり具合にストレスが溜まるだろうなぁ」などとタケルは思っている。
石焼きイモの車の速度とほぼ同等なのだ。
確かに「車でお散歩」だ。
現実では「トロトロしてんな!」とクラクションを鳴らされるだろう。
周囲とペースが異なる人間には暮らしづらいのだ、現実は。
そういう意味ではVRの中の方が人に優しい。
それでも良く考えてみればフィーネの飛行速度よりは速いのだから、車に乗っている時の主観スピードというものは恐ろしいものだ。
時速30キロで遅く感じる。
道が順調なら60キロを越していても怖さを感じない。
時々寄り道や回り道をしながら高円寺まで散歩の足を伸ばし、そこから折り返してマンションの駐車場へ。
車の小ささもあって車庫入れもスムーズだ。
サダロの愛車であるイセッタの場合、左右がギリギリのスペースに車を停めても全く問題無く乗り降り出来るのだが、速度を出した運転こそ苦手なもののサダロの運転自体は決して下手なものではなかった。
「どうもありがとうございました」
「ありがとー!」
「タケル、タケル! 私も自分の車欲しい!」
「パパ、梅さんにお水あげて!」
タケルがサダロに散歩の礼を言うが、それを素直に真似て御礼を言うのはムルルだけ、フィーネは自分の車をねだり、キャロは梅の木への水遣りをねだる。
苦笑するタケルだが、サダロは微笑ましそうにフィーネたちを見てお辞儀をすると部屋と戻っていく。
「今度なんかお礼しないとなぁ」と見送った後、仲魔たちと会話しつつ部屋へ。
部屋に戻ったタケルはフィーネの用件は後回しという名の棚上げをして、キャロ用に買った可愛い如雨露をキャロに手渡す。
園芸店の前を通った時に、これを見つけたキャロのキラキラした目に負けた結果の品だ。
キャロだけに何か、という訳にもいかなかったため、ムルルにはおもちゃ付きラムネを、フィーネには普段買うものよりも高いアイスを買う羽目になった。
タケルは洗車用に買ったホースを担ぎ、冷蔵庫から取り出したカマンベールチーズをフィーネとムルルに渡して「ちょっと水をあげてくるから留守番頼むな」とキャロと外に出る。
キャロの持つ如雨露に水を入れてやってからホースから水を撒いていると、出来た虹にはしゃいだキャロに「もっとやって!」とねだられる。
二人して少なからず水を被ってしまい「大きなタオルも持ってくるんだったな」などと思うタケルであった。
現時点では詳細は言えませんが、この作品の舞台になっている世界は『成功例』です