虚・女神転生   作:春猫

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思い立ってペーパードライバー教習受けてました
ウン十年ぶりに車も買う予定です


2日前

 最初の内は怖がっていたキャロもすっかり地震に慣れてしまった。

 ……つまりはそれくらいの頻度でVR内の東京では地震が発生している。

 自室に居る時はほぼつけっ放しになっているテレビでもテロップは流れるが、緊急速報の警告音は流れなくなっている。

 

 ムルルは「ノッカーだった時だったら何か分かったかもしれないのにね」と残念そうだが、手持ち仲魔にノッカーが居るサマナーが相当数居るにもかかわらず、そうした情報が掲示板や中で噂になっていないことから「たとえノッカーのままであったとしてもそれで事態が変わったということはないんじゃないかな」とタケルは思っている。

 

 フィーネは敵意と闘争心の向けどころが見当たらず、地震の度に揺れる電球のヒモでボクシングをしたり、タケルの頭にポカポカと八つ当たりをしたりしている……あと、お菓子の消費が増えた。

 

 タケルも中や外で色々と情報を集めてはいるものの、メシアとガイアが活発になっていることと、一部の異界でこれまで見たことのない悪魔が出現するようになっていること以外、大した情報は仕入れられていない。

 

 タケルだけでなくプレイヤー、そして仲魔たち全体に、どことなく閉塞感と自粛ムードが形成されている。

 慣れない場所で唐突に状況が変化するのを避けたいという気持ちが高まっているのだ。

 

「まあ、それほど長い期間待たされることはないだろ?」

 タケルのこの予想は、ほぼプレイヤー全員に共通するものである。

 

 楽しむためのゲームなのだ、これは。

 今のまま、長い時間が経過すればプレイ自体から離れてしまう者も出かねない。

 

 つい最近もFFTベースの新作VRMMOがリリースされたばかりなのだ。

 FFではなくFFTという当たりに製作陣のこだわりが感じられる作品で、タケルもちょっと興味を引かれている。

 

 まあ、フィーネたち仲魔の存在もあることから、サービスが終了しない限りプレイを続けるつもりだし、終了する場合でもオフラインプレイなどでなんとか仲魔は失わない様にしたいと思っている。

 すぐに買うつもりは無いが、現状必要としていないサーバーのカタログをたまに見たりしているのはそういう理由だ。

 自宅回り、最悪でも自室の環境をオフラインで構築出来ればと思っている。

 

 アキラから連絡が入り、エリリにも連絡済みということで、いつものメンバーでの経験値稼ぎに出かけようとフィーネたちに声をかけるタケルであった。

 

 

 

 

「ふぅ~」耳の中に入っている防水のBTイヤフォンを外しながら、タンクベッド型最高級VRマシンから身を起こす老人。

 バスローブを羽織り、シャワールームで体を流すとあらかじめ用意してあった室内着に着替える。

 室内着とは言っても庶民のジャージやスウェットなどとは程遠い、そのままでもある程度の格式のレストランやホテルに出入り出来るくらいの代物。室内履きのスリッパも革製である。

 

 一枚板の天板の重厚なデスクに向かい、その机と十分に釣り合う椅子に腰かけ音声で複数のパソコンを起動する。

 メール、メッセージをソートしつつ、スケジューラーをチェック。

 第一線は退いたとは言え、楽隠居には程遠い過密スケジュール。

 

「なるべく外には出たくないんだがなぁ…」と引きこもりの様な独り言を言うが、70歳近くになって週に1度は国内の長距離移動、年に数回は海外への出張、懇親会やセミナー、パーティーなどへの参加も数回に1回は断ることも代役も無理という、彼の状況を考えれば極めて妥当というか、当然のセリフだ。

 

 この後もリモート会議で最低でも2時間は拘束されるのが確定している。

 ため息をつきたくもなろう。

 

「なんでみんな俺に役職押し付けて来るかな、やりたがってる奴だっているんだから、そいつらにやらせりゃいいじゃん」

 普段のビジネスモードとはかなり違う乱暴な言葉遣い。

 実年齢からするとかなり若い口調だが、彼の今もっとも時間を割いている「趣味」に引きずられているとも言える。

 仕事の場でも油断したり、疲れて居たりするとポロっとこちらの口調が出てしまい、周囲の人間に目を白黒させたり、幻聴かと耳の穴ほじったりさせている。

 

「タケルを俺の秘書にヘッドハンティング出来ねーかなぁ、そうすりゃ色々とやり易くなるんだけどなぁ。エリリちゃんも事情ありそうだけど、卒業後在宅ワークメインでウチに就職とか? そんぐらいの力はまだあるんだけどなぁ……ひと様の人生だからなぁ」

 某金融系グループトップで、あちこちに顧問や相談役として名を連ねるこの老人こそ、タケルの最初のフレンドであり、相棒枠とも言えるアキラであった。

 

 金とコネにあかせてβからプレイする気満々で、スケジュール調整などもして準備万端であったのだが、海外発の金融危機の影響を受けたグループのトラブル処理に追われ、本リリース後の開始となってしまったのだ。

 災い転じてでは無いが、気楽に組めるタケルなどとも出会えて、かなり満足している状況ではあるが、イベント間近な予感がヒシヒシとする現在、リアル都合に振り回されるのは最小限にしたい。

 

「せっかく、会長職引退しても、わんこそば状態で役職押し付けてくるからなぁ……主治医に頼んでドクターストップの診断書書いてもらうか?」

 ボヤキが止まらない。

 モニター上の時刻を確認。

 会議まで10分を切ったのを確かめると会議用のソフトを立ち上げ、『龍が◯く』の組事務所背景にしたい誘惑を押しのけて無難な海外リゾート背景をセットする。

 

「アキラのアバで会議参加したら、あいつらどんな顔するかな?」

 呟きつつもモニターでカメラに写る自分の姿を確認し、軽く身なりを整える明楽であった。

 

 

 

 

 本来、プレイヤーキャラの外見は設定したものからさほど変化しないハズなのだが、久々にタケルたちが出会ったアンデはかなり原作戦闘モード寄りの外見になっていた。

 通りすがりのNPCがビクつくほどである。

 

「お久しぶりです。ホントなら少しお話とかして息抜きしたいトコなんですけど、この後も都庁で警戒巡回兼経験値稼ぎ兼連携訓練でして……」

「お、おぅ……メシアンは大変そうだなぁ」

「どうも上にはなんか大天使か聖四文字から指示出てるっぽいんですけどね、実働部隊は蚊帳の外ですね」

「その点ガイアはまだ緩いっぽいわね、マロロもクーちゃん抱えて昼寝してたし……」

「いや自衛隊はピリピリしてんぞ? 何故か、宮内庁や神社本庁の人間も出入りしてるっぽいし…」

「お茶の水にテンプルナイト溢れてるってホント? ニコライ堂周りに大勢居たって、神保町のランチョンで優雅に午後ビール楽しみに行ったウシロがビビってたってサダロさんが言ってたよ?」

「首塚周辺、工事規制の名目で立ち入り禁止って掲示板にあったな」

「この間、大江戸線が停まったのって、地震関係じゃなく悪魔関連みたいですよ? それ以降、メシアの新人は地下鉄駅にチーム単位で貼りつきです」

 情報交換を済ませアンデと別れると、タケルたちは新宿御苑へと向かう。

 新宿と言う場所はリスキーだが、地元にしても新宿からさほど離れておらず、ビル内や繁華街よりはマシであろうとの判断だ。

 

「入場料取られるんだよな」

「今回のイベント次第だけど、異界レベルが順当なら年間パスポート買った方がいいかもな?」

「異界の位置によっては新宿からより代々木や千駄ヶ谷からの方が近くない?」

「まあ中野からならJRも地下鉄も使えるから」

 時代劇などでお馴染みの内藤新宿という呼び名、その内藤町にあるのが新宿御苑ということで、駅周辺や都庁周辺よりもこの辺りが本来の新宿である。

 

 航空写真で見ると新宿、渋谷は緑が多い。

 千代田区の皇居から赤坂離宮、新宿御苑、明治神宮、代々木公園と緑地がかなりの塊で連なっている。

 新宿の緑の大部分はこの新宿御苑であるが、他の海外の都市と比較すると東京は実は緑地が多いのだ。

 日本全体も飛行機から見ると圧倒的に山林の方が多い国土であるのは、タケルたちの暮らすこの時代でも変わらない。

 奈良や和歌山などの畿内でも、県の面積の大部分が手付かずである。

 

 ともあれ、タケルたちがやって来た新宿御苑、庭園と温室が見事な公園だが、その庭園と温室の一部が異界と化している。

 レベル帯は都庁低層以上都庁中層以下とメシアとガイアに追い出された形のニュートラル陣に取っては格好のスポットとなっているのだが、日本円に苦労している廃人組にとっては入場料がネックとなっている。

 塵も積もれば……ハンバーガーやおにぎりなら一食分に相当するのだ。

 

「これなら年間パスポート買った方が得じゃね?」

「イベントの影響が出るか出ないか、魔震レベルだとここも影響出るかもだし」

「学生は半額なんだよねぇ……へへ」

「中学生以下は無料とは言ってもプレイヤーで無料で入れるのってタロウくらいだろ?」

 入場料を払い中に入る。

 家族連れなど軽装で近隣住民っぽい人が多い。

 

「えっとここが玉藻池、九尾出ないよね?」

「母と子の森ってほのぼの系なのに鬼子母神のせいで不穏」

「旧温室の遺構とか、絶対、夜には異界化するな」

「旧門衛所とかも雰囲気あるな、明るい昼だから怖くないけど、暗くなってきたら近寄りたくない」

「言ってる先から出たぞ、ここ境界線分かり辛い、さすが新宿!」

「初見悪魔、マカラカーンいくね!」

「ふっふっふ属性なんて無視無視! いっくよーメギド!」

「アナライズ、氷結耐性、炎熱弱点、ムルル頼む」

「えええ、殴り甲斐ありそうなのにぃ!」

 他の異界と違って、異界とそれ以外の境界線がはっきりせず、唐突に悪魔との戦闘に入ることが多いのは新宿と言う土地の特性なのだろうか?

 

「外出るまでは気が抜けそうもねえな」

「レベルがある意味適切だから、耐性、弱点の判断ミスるとヤバイ」

「素早さとサマナーレベルから言ってタケルはアナライズ最優先ね」

「パパ~、これ落ちてた!」

 マイペースなキャロにほっこりしてしまうタケルである。

 

 大温室の異界で集中して経験値稼ぎをすると、新宿御苑前駅の近くでハンバーグを食べ、帰宅の途につくタケルたちであった。

 

 




という訳で、アキラの中身は社会的地位の高いオッサン(爺さん?)でした
会社重役だの、高級官僚だのの知り合いも居ますが、趣味分野では良く言って皆若い……率直に言うとガキです(オモチャ自慢する子供レベル)……なもんで、アキラもそんな感じですね
セガのHPで入手出来る背景画像(特に『龍が如く』)いいですねぇ、リモート会議相手居ないんで使い様がないですけどww
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