虚・女神転生   作:春猫

5 / 44
ぼけっとして前書き部分に本文書いて投稿しようとしてました(;・∀・)


Ex-convict

「ありがとうございました~」

 コンビニの接客ユニットを通しての客への応対を終え、猛は並列して起動している仮想スクリーンのネット掲示板を読む。

 猛が入っているのはコンビニの深夜のシフトのバイト。

 本業の倉庫作業とは別に、『女神転生Ruina』のスタート前の軍資金稼ぎで行っていたバイトだが、店長に泣きつかれて週二回深夜シフトだけを続けている。

 倉庫作業で複数ユニットを動かすことに慣れている猛は接客ユニット、商品補充ユニット、監視モニターなどを一人で動かしているため、抜けられると店としては大打撃なのだ。

 

 朝一や昼飯時の繁忙時間帯でそれをしたら地獄を見るが、深夜帯ならなんとかなる。

 VRとワークシェアで以前以上に人々の生活時間帯は多様化したが、それでも昼間に比べると深夜は来客が少ない。

 様々なネット宅配サービスが発達したことや、VROFFICE、VRSCHOOLで外に出る必然性が減ったこともある。

 

 VR制御している時も、空の時も接客ユニットの外見は変わらないということもあり、店舗に客が居ない時はこうして掲示板やらのネット巡回をしたり、VRでないゲームをしたりしても問題は無い。

 

 ちなみにこのコンビニの接客ユニットは女性型ヒューマノイドタイプであり、声優の音声を用いているため、中の人が男の猛でも客から見れば女の子っぽくなっている。

 コンビニのイベントやキャンペーン時などには本部から書き換えデータが送信され、女優や歌手、デフォルトとはまた別の声優などの声に変わったりもする。

 

 外見としては運用コストやメンテなどの関係から表情の無い仮面状の顔をしているが、日本人にとってはアニメや特撮などで見慣れた造形だ。

 ネット上などでは「●●の接客ユニットが可愛い」「いや、◆◆のユニットに○○タンの声こそ至高」などと盛り上がっている。

 

 ともあれ、猛はそうしたユニットを使ってコンビニバイトの合間に掲示板を覗いているのだが、当然、見ているのは『女神転生Ruina』関連だ。

 

「へえ、中野の場合、ブロードウェイがたまり場的存在になってるのか……一極集中で他の場所には居ないって訳ね。アキラ誘って行ってみるか? えっ!? 父島スタートのヤツも居るのかよ! うわっ、ひでえな、それ……」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

【居るのか?】お前らのスタート地点を語れ! その4【ご当地悪魔】

1:鶯谷のバスター

 ここは『女神転生Ruina』のプレイスタート地点を晒すスレです。

 スクショは歓迎ですが、リンク先へのアクセスは自己責任で!

 煽り、荒らしは華麗にスルーしましょう。

 

 過去スレ:お前らのスタート地点を語れ! その1~3

 

 

______(中略)__________

 

 

628:池袋のサマナー

 まさか、離島部があるとはwwwwww

 

629:町田の異能者

 町田でした、町田って東京だったんだ……

 

630:巣鴨のペルソナ使い

 巣鴨でもラッキーな部類だったんだなぁ……線香臭いけど

 

631:代官山のサマナー

 >>629

 町田馬鹿にすんな! 東京県民言うなし!

 

632:大手町のバスター

 大手町でした。皇居見てきた~

 つ【スクショ】【スクショ】

 警官多過ぎ、なのに落ちて来たおいらスルーwwwww

 

633:錦糸町の異能者

 >>632

 そこは首塚に行くトコだろJK

 アホなことやって将門公怒らせるなよ?

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「『中野でした。ミカミのコロッケうめえ~!』っと」

 書き込み、別のスレッドに。

 同時にモニターで店内と時刻を確認。

 商品補充の配送ユニットの到着まで一時間以上ある。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

【うちの子が】お前らの初仲魔を紹介すれ! その23【一番可愛い!】

1:吉祥寺のサマナー

 ここは『女神転生Ruina』プレイでの初仲魔をサマナーが晒すスレです。

 スクショは歓迎ですが、リンク先へのアクセスは自己責任で!

 煽り、荒らしは華麗にスルーしましょう

 愛情の無いコメント、貶しはNG

 和気藹々、マターリ進行でいきましょう

 

 過去スレ:お前らの初仲魔を紹介すれ! その1~22

 

______(中略)__________

 

15:恵比寿のサマナー

 >>1

 スレ縦乙! 吉祥寺のサマナーとか主人公かよ!

 

16:御茶ノ水のサマナー

 ノッカーでした

 

17:本郷のサマナー

 ノッカーでした

 

18:四谷のサマナー

 コダマでした

 

19:信濃町のサマナー

 ウォッチャーでした

 

20:青山のサマナー

 ホーリーゴーストでした

 

21:高円寺のサマナー

 なんだなんだ、みんな愛が足りないぞ!

 ウチの子見て萌えろ~!

 初仲魔:未熟なカーシー

 つ【スクショ】【スクショ】【スクショ】

 

22:市ケ谷のサマナー

 ケモナー降臨と聞いて

 

23:新橋のサマナー

 モフモフで、ちんまいっすなぁ……

 ウチの子はノッカーだけどつぶらな瞳では負けてないっすよ!

 

24:田端のサマナー

 称号付きが初かよ、運極?

 

25:高円寺のサマナー

 運と魅力~!

 他力本願の極みwww

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「へえ、やっぱピクシー居ないなぁ…、地霊系多い、あと天使? ロウ系評判悪いからフレンドリー化して取り込みか? 場所で出現悪魔の偏りとかもありそう。遠征もやっぱ必要か……」

 来店者があったので、そこでメインを接客ユニットに切り替える猛。

 レジ前に接近すると自動的に切り替わるが、その辺りは働く者としての意識である。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 割と決まった時間に来る、いつもの客だ。

 食べ物と飲み物、たまに雑誌や雑貨。

 電子カードでの支払いなのでお釣りなどの心配も要らない。

 

 電子化、VR化が進んだこの時代でも紙の出版物、パッケージソフトは生き残っている。

 ただ、嗜好品的な意味合いも強くなっているので、小規模な町の本屋などは更に減少している。

 シャッターとコンビニとチェーン薬局とチェーン外食だけが並ぶ商店街などいうのも珍しくなくなっているし、中古やリースの作業、接客ユニットを使ってお年寄りが続けている個人商店もある。

 

 時代の変化とはいえ、「VRの中の方が人が居る」と猛が思ってしまうのも無理はない。

 フィーネの居るあの世界に「帰りたく」なってしまう猛。

 

 レジに客が近寄ってきたのを見て、意識を仕事に向ける。

 バイト終了まで後三時間、それから軽く寝て速攻でログインしようと「ありがとうございました」と客を送り出しつつ決意する猛であった。

 

 

 

 

 先ほど猛が接客した相手、コンビニの常連、坂巻哲司も『女神転生Ruina』のプレイヤーである。

 在宅勤務の配送業務(車輌ユニットと搬送ユニットを遠隔操作)を終え、コンビニで食事を買い、食後にシャワーを浴びてからメガテンにログイン、プレイ後軽く眠って、起床後に近くの牛丼屋かカレーショップで朝食を済ませ、自宅に戻ってVRテレイグジスタンスで担当車輌にアクセスし仕事をする、というのが彼の一日だ。

 

 βプレイヤーである彼はβプレイ時にはサマナーであったが、本プレイの現在はペルソナ使いをやっている。

 β時代、中で仲魔育てに突っ走った挙句に本プレイへ仲魔が持ち越せなかった(一体だけならβ特典で継承出来たが、その一体を選べなかった)ため、ペットロス症候群に近い精神状態になってしまい、サマナーをする気が起きなかったためだ(それでもプレイをしない、という選択をしないあたりが……救いようが無い)。

 

 βプレイヤー特典(「仲魔一体継承」「初期ステータスボーナス」「スキルポイントボーナス」「武器アイテムボーナス」「防具アイテムボーナス」「獲得済みのスキルの中から一つを初期枠とは別に授与」「乗り物とそのスキル」から選択。アイテム系はランダムで当たり外れアリ)としてバイクとそのスキルを獲得した彼は、首都高でターボばあさんなどとチェイスをしている。

 

 ちなみにアルカナは『戦車』、バイク乗りとしてはコレか『運命の輪』のどちらか以外しっくり来ないだろう。

 β時代につるんでいた連中も居たが、現在はソロで、バイクで適当に気が向くまま移動し、目に付いた異界などで経験値稼ぎをしているため、プレイ時間にしてはあまりレベルは上がっていない。

 

 現実では二輪には縁の無い哲司だが、VRレースゲーム、VRFPSなどでVR内ではそこそこ経験を積んでいる。

 別にスーパーカブでも良かったのだが、彼が入手したのはover1000ccのビッグバイク。ホームスペースである小川町のマンションは地下駐車場付き(βプレイヤーのホームスペースは他のプレイヤーより1~2クラス上のものとなっているため、都内一戸建てのオーナーなんてのも結構居る)だからいいものの、アパート住まいだと大変なところだったろう。

 

 ログインをした彼は珍しくバイクに乗らず、徒歩で神保町へ向かう。

 地下鉄の入り口側の路地『技の1号』『力の2号』と二軒並んだ兄弟店の食事を取れる2号の方に入る。

 実際の神保町にある名前以外はそのままの店舗と同じ味のナポリタンが食べたくなったのだ。

 

 ナポリタンとアイスミルクを頼む。

 ここのアイスミルクはちょっとだけイチゴかメロンの風味がついていて、その微妙にチープな感じが哲司は気に入っている。

 

 店内には編集者と漫画家や、ノートパソコンを開いているライターっぽい男、近くの大学の学生らしい若者などが居る。

 アイコン表示は特に無い。

 プレイヤーやイベントNPCは居ないようだ。

 

 食事を終えた哲司はその足で本屋に向かう。

『マニアのグランデ、オタクのブックマート』と言われるマニア向けの方だ。もちろん、名前は変えられているが、建物、客層、書架に並ぶ書籍傾向はそのものだ。天文学の本の隣にUFOの本が並び、歴史書と並んで超古代文明の本が置かれ、格闘技系の書籍が嫌に充実しているところまで忠実だ。

 

 特に買いたい本がある訳ではなく、この店の空気が好きなのだ、哲司は。現実ではわざわざ足を運ぶことは滅多に無いが、比較的気軽に来れるこのVRMMO内では時々訪れる場所だ。

 

 一通り中を徘徊して満足した彼は、マンションの部屋に戻ることなく直接駐車場へ向かい、バイクにまたがると靖国通りを車の流れのままに走らせるのであった。

 

 

 




会話主体から打って変わって掲示板と説明的文章でした(;´∀`)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。