小木曽望乃は勇者である?   作:桃の山

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 最近少し忙しくてあまり書く時間がなく、遅くなってしまいました。
 次からはここまで遅くならないと思います。


御礼の海

 夏休みになった。勇者部一行はバーテックスを倒した褒美として用意された合宿先の海に来ていた。

 足が不自由な東郷には海用の特殊車イスが与えられていた。

 戦いの日々が終わった勇者部は、やはり年頃の女の子。楽しそうに海を満喫していた。

 友奈は東郷の車イスを押しながら浜辺を散歩していた。

 風と樹はカキ氷を食べていて、風の舌が青くなっていた。

 そこに、海に入っていた夏凜と、夏凜に抱き付いたままの望乃がやってくる。

 夏凜が風に水泳勝負を提案し、風もそれに乗る。

 

「夏凜ちゃんそんなのばっか~」

 

「別にいいじゃないの」

 

「ていうか、そんなにしたいんなら望乃とやればいいんじゃないの?」

 

「無理よ。この子基本乗り気にならないし、戦闘以外の勝負は手を抜くんだもの」

 

「だって~、海とかって泳ぐより浮く方が気持ちいんだも~ん」

 

 風と夏凜、望乃に続いて樹も砂浜に出るが、焼けるような熱さに耐えられず、走って海に足をつける。そこに友奈と東郷も来る。

 

「優れた選手は水の中もいけるってことをまたまた見せてあげるわ!」

 

 夏凜が自信満々にそう言った。

 そして風はと言うと、ナンパされないか不安がっていた。夏凜がそれに呆れていると、

 

「スキあり―!」

 

 風が先にスタートして行った。夏凜もそれを追いかけて行った。

 

「二人とも行っちゃったし、私たちも入ろっか~」

 

「そうだね! すいませーん」

 

 友奈が東郷の車イスを押してくれる人を呼んで、四人で海の浅瀬に入って楽しんでいた。

 

「友奈ちゃん、これ押し花に使えるんじゃない?」

 

 東郷が赤い葉を見つけて友奈に渡す。

 

「わー、ありがとう!」

 

 そこでもぐっていた樹が顔を出すと頭の上に、赤い葉が乗っていた。

 

「これも使えそうだね!」

 

 ポカンとしている樹を見てみんなで笑っていた。

 望乃が何かをじっと見ているのに友奈が気付く。

 

「望乃ちゃん、どうしたの?」

 

「こういうところに来たらよくわかるよね~。美森ちゃんのお胸の大きさ~」

 

 それを聞いて友奈と樹も反射的にそっちに目が行く。東郷は恥ずかしがっていた。

 

「友奈ちゃんも意外とあるし~、樹ちゃんは……ないね~」

 

 今度はそう言われた樹が涙目になっていた。

 

「大丈夫、安心して~! 私もないから~!」

 

 どや顔で大きく胸を張る望乃。

 

「何が大丈夫なの?」

 

 東郷が小さな声でツッコミを入れていた。

 

 夏凜と風の勝負も終わり、望乃たち四人も海から上がっていた。

 夏凜と友奈が棒倒しをしていて、予想以上に多く砂を取ったことに夏凜が驚いていた。

 

「友奈ちゃんの棒倒しは、子供たちとの砂遊びで鍛えられてるから」

 

「そういうあんたは、どこでこのスキルを鍛えたの?」

 

『すごい! 高松城』

 

 風と樹は砂で作られた見事な城に驚いていた。

 

「私も手伝ったんだよ~」

 

 その砂の城は東郷と望乃の、万能スキルの二人が作ったものだった。と言っても、望乃は手伝っていただけなので、大半は東郷だった。

 ちなみに棒倒しは夏凜が負けて再戦していた。

 

『カリンさんすごく楽しそう』

 

「そうね。初めて部に来た時が懐かしいくらい」

 

「これも勇者部のみんなのおかげだよ~」

 

 その後に勇者部一行は、定番のスイカ割りをやっていた。割る番は樹である。友奈と東郷に指示されながらスイカに向かって移動していた。

 

「海と言ったらこれやっとかないとねー」

 

「これがうわさに聞くスイカ割り。やってみると何とも単調ね――って樹! そこよ! 振り下ろしなさい!」

 

「ノリノリじゃん」

 

「樹ちゃん、できるだけ粉々にしてね~。落ちたところは私が責任もって食べるから~」

 

「望乃に限っては何の指示よ」

 

 樹が風のマネで大きく振りかぶる。

 

「あはははは! 樹何よその大げさな構えはー!」

 

「いやあんたのマネでしょうが」

 

「え? 私あんなん?」

 

「あんなん」

 

 その結果、樹は見事にスイカを叩き割った。

 

「一発で決めるなんてやるー!」

 

「樹ちゃんかっこいい~」

 

「樹ちゃんは磨けば磨くだけ、立派な大和撫子になれるね。磨かなくっちゃ!」

 

 それに樹は頭をかいて照れていた。

 そんな中、肌を焼いていた夏凜は少し真剣な顔で木刀を見つめていた。

 

「……ねえ望乃。ちょっと勝負しない?」

 

 夏凜が立ち上がりながら、樹が割ったスイカを頬張っていた望乃に突然そんなことを言う。

 

「なんで~?」

 

「こっちに来てから一度もやってなかったでしょ? 久しぶりにやりたいのよ。もしかしたら勝てるかもしれないし」

 

「そういえば夏凜って望乃に勝ったことなかったのよね」

 

「望乃はそれだけ強いのよ。風もこの前見たでしょうが」

 

「まあそうね。いいわ、面白そうだし、やりなさい!」

 

「私まだやるって言ってないんだけどな~。ま、いっか」

 

『いいんだ』

 

 夏凜と望乃が片手に木刀を持って向かい合う。

 少し離れた場所で他の四人が観戦していた。

 

「夏凜ちゃん、手加減しないからね~」

 

「当たり前よ!」

 

「勝負は先に攻撃を当てた方の勝ちね。それじゃあ、始め!」

 

 風の掛け声でスタートする。その瞬間夏凜が望乃に向かって走る。それに対して望乃は動かずに夏凜を待つ。

 望乃の目の前まで来た夏凜は最初の一振りを大きく振り、その後細かく攻撃を入れ続ける。それを望乃は焦り一つ見せずに防いでいく。

 夏凜の連続攻撃は全て防がれ、間合いをあけて攻撃の手を休める。少し間合いを保った後、今度は望乃が仕掛ける。三度攻撃を夏凜に躱されて、夏凜に少し隙ができたところに突きを投入する。しかし夏凜は何とかそれすらも躱し、カウンターで木刀を振りかぶる。

 

「望乃! これで終わりよ!」

 

「うん。終わりだね」

 

 少し微笑みながらそう言った望乃は、夏凜の振り下ろす木刀を回転しながら躱して夏凜のすぐ横まで来る。

 

「なっ!」

 

 そして夏凜の首すじに攻撃を入れようとする。

 それに対応できない夏凜は覚悟を決めて目をつぶるが、衝撃は来ない。目を開けると、望乃の木刀は首すじに当たるギリギリのところで寸止めしていた。そして木刀をゆっくり上に上げていき、夏凜の額になでるようにコツンと当てた。

 

「はい、おしま~い」

 

 夏凜が緊張の糸が切れたのか、へなへなとその場に座り込む。

 

「何よそれ……。ちゃんと、やりなさいよ」

 

「嫌だよ~。大切なお友達に本気で攻撃するなんて~」

 

「でも、一応当てたから望乃の勝ちね!」

 

「わかってるわよ!……勝てたと思ったのに」

 

「望乃ちゃんすごーい!」

 

「本当に望乃はすごいわね……って普段がこれじゃなかったら素直に褒められるのにね」

 

 戦ったせいなのか、望乃は既にお菓子を頬張っていた。

 

 それからも勇者部は遊びつくし、海を満喫した。

 日が落ち始めた頃、そろそろ旅館に戻ろうと後片付けをしていた。そんな中東郷は、夕焼けを眺めていた。そこに樹が軽く肩を叩く。

 

『どうしました?』

 

「ううん。何でも」

 

「ほら、旅館帰るわよ」

 

 そう言いながら風が二人の肩を抱く。

 

「はい、先輩」

 

 そうしてみんなが旅館に向かおうと歩き出す中でただ一人、そこから動かない者がいた。望乃だった。

 

「どうしたのよ?」

 

 そんな望乃に夏凜が話しかける。

 

「今日さ~、みんなと遊べて楽しかったよね~」

 

「まあ、そうね」

 

「だからさ~、もう終わりなんだな~って思っちゃって~」

 

「何言ってんのよ。今日は終わるかもしれないけど、また来ればいいのよ。……もちろんみんなでね」

 

「夏凜……ちゃん」

 

 望乃は今までの夏凜ではありえないような言葉に、少し驚きを見せる。そして望乃は薄く笑った。

 

「そうだね~。また、みんなで来たいね~!」

 

「来たいじゃなくて来るのよ。わかったら行くわよ!」

 

 夏凜が望乃に手を差し伸べる。その奥には他の四人が待っていた。望乃はその二つを見てから、夏凜の手を握った。

 

「うん!」

 

 望乃は心から嬉しそうに笑みを浮かべながらみんなの元に向かった。

 




 海だけで一話使ってしまいました。
 次回は旅館です。

 ちなみに望乃の水着は、白に少し紫色がかかったワンピースタイプの水着です。
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