小木曽望乃は勇者である?   作:桃の山

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不穏な予感

 勇者部の合宿から数日後。

 勇者部一行は、風に呼び出されて部室に来ていた。そこには六人分の勇者用のスマートフォンがあった。

 

「バーテックスに生き残りがいて、戦いは延長に突入した。まとめるとそういうこと。だからみんなに、それが帰ってきた」

 

 戦いはまだ終わっていなかった。その事実に部室内は重苦しい空気だった。

 

「ホント、いつもいきなりでごめん」

 

「先輩も今さっき知ったことじゃないですか。仕方ないですよ」

 

「東郷さんの言う通りです、先輩」

 

「ま、そいつを倒せば済む話でしょ。私たちは敵の一斉攻撃だって殲滅したんだから、生き残りの一体や二体、ドンとこいよ」

 

 夏凜がにぼしを片手にそう言う。

 

『勇者部五箇条 なせば大抵なんとかなる!!』

 

 みんながそう言う中、望乃は一言も発さず俯いていた。

 

「ありがとう。みんな」

 

 風が部室から出て窓を開ける。望乃以外の四人もそれに続く。

 

「よーし、バーテックス! いつでも来なさい! 勇者六人が相手だー!」

 

 風が大きな声で叫んだ。望乃はそれを部室内から眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 夕方の浜辺では、戦いが終わった後もほとんど休まずにやってきていた鍛錬をしている夏凜の姿があった。

 その近くには望乃がお菓子を食べながら座って夏凜を眺めていた。

 

「夏凜ちゃん、頑張ってるね~」

 

「当たり前でしょ! バーテックスの生き残りと戦うために腕を磨いておくのよ!」

 

「……夏凜ちゃんらしいね~」

 

「これくらいことは当たり前よ」

 

 そこで夏凜が少し休憩に入る。望乃の隣に置いてあるペッドボトルを手に取って、中に入っている水を口に含みながら、望乃の隣に腰を下ろす。

 

「ねえ、夏凜ちゃん」

 

「何?」

 

「たぶん、今回が最後だよ」

 

「まあそうでしょうね」

 

「だから、ね……みんなで力を合わせて頑張ろうね」

 

「言われなくてもわかってるわよ……」

 

 笑いかける望乃に、その言葉に照れて少し頬を赤くしながら目線を逸らす夏凜だった。

 それからしばらくすると夏凜は鍛錬を再開した。望乃はそのさまを寂しげに眺めていたが、やがて立ち上がって夏凜に歩み寄った。

 近付いてくる望乃に気付いた夏凜は、二本の木刀を振り回していた手を止める。

 

「何か用?」

 

「え~っとね、私も久しぶりに鍛錬しようかなって。もちろん夏凜ちゃんと一緒にね~」

 

 夏凜が驚いた表情を見せる。

 それもそのはず、望乃は大赦にいた頃も、一度も鍛錬に積極的に参加していなかったのである。しかもここに来てからはそんな素振りすら見せていなかったのだ。

 それ故に、今の望乃の言葉は夏凜にとって予想もつかなかったことなのだ。

 どういう理由から望乃がそんなことを言ったのかは定かではなかったが、夏凜から見れば目標としている望乃と鍛錬できるということは願ったり叶ったりで、それを拒む理由などなかった。

 

「そうね、せっかくだから対戦形式でやるわよ」

 

「また勝負~?」

 

「勝負じゃないわよ。実戦形式での鍛錬よ。大赦で何回もやったでしょ」

 

「あ~。あれか~。いいね~。じゃ、やろっか~」

 

 夏凜は自身の木刀を一本、望乃に渡して、二人は向かい合う。

 それから辺りが暗くなるまで二人は数ヶ月ぶりの鍛錬をし続けた。

 

 

 

 

 

 

 結局はバーテックスが現れないことにはどうしようもない、ということで待つことになった。しかしバーテックスは、夏休みが終わって二学期が始まっても現れなかった。

 勇者部の六人は普段通りの生活をしながら、バーテックスが現れるのを待っていた。

 ある日の放課後、勇者部の六人は部室に集まっていた。

 東郷が聞こえなくなった左耳を気にしていると、風の新たな精霊である鎌鼬が目の前に現れる。

 

「ああ、ごめん。そいつ好奇心旺盛で、犬神と違ってあまり言うこと聞かなくてさ」

 

 それから次々と新たな精霊が出てくる。友奈、東郷、風、樹の四人の精霊が一体増えていたのである。

 

「大赦が新たな精霊を使えるよう、端末をアップデートしてくれたのはいいけど、ちょっとした百鬼夜行ね……」

 

 その中で夏凜が呆れていたが、望乃は普段通りお菓子を食べながら五人の様子を見ていた。

 

「全く、あんたら精霊の管理くらい、東郷みたいにちゃんとしなさいよ……」

 

 その瞬間夏凜が叫び声を上げる。夏凜の精霊である義輝がいつもの如く食べられていたのだ。

 しばらくして精霊を全て戻すことができた。

 そんな中で、夏凜はじっと自身の携帯を見ていた。

 ――それにしても私には新たな精霊なしとか……どういうことなのよ。

 

「そういえば望乃ちゃんの精霊は出て来ないね?」

 

「私は制御できるからね~」

 

「そうなんだ!」

 

 そういえば望乃ちゃんの精霊ってどんなのだったっけ、と思った友奈だったが、すぐにわかるか、と自己解決していた。

 制御できると聞いて風が方法を聞いていたが、望乃は言い淀んでいた。

 

『敵…いつくるのかなドキドキ』

 

 樹がそんな言葉を見せる。

 

「そうね。私の勘では来週辺りが危ないわね!」

 

「そうかな~? 私的にはもうそろそろだと思うんだけどな~」

 

「実は敵の襲来は気のせい……だったらいいんだけどね。あの諸葛孔明だって、負け戦はあるのよー。弘法も筆の誤り。神樹様も予知のミスくらい――」

 

 その瞬間に、携帯のアラームが鳴った。もちろんバーッテクス襲来のアラームである。

 

「噂をすればってやつかな?」

 

「風が変なこと言うから。神樹様からの的確なツッコミね、これは」

 

「あんただって勘外してるじゃない! そんなんだから望乃に勝てないのよ!」

 

「望乃は関係ないでしょ」

 

「とりあえず、落ち着こうよ~」

 

 勇者部六人は、バーテックスと戦いに樹海に入った。

 

「敵は一体。あと数分で森を抜けます」

 

「一体だけなら……」

 

「今回の敵で延長戦も終わり。ゲームセットしましょ」

 

「そうね、絶対逃がさないわ!」

 

「行くわよ!」

 

 風の号令で一斉に勇者服に変身する勇者部。変身した後、またみんなで円陣を組んだ。

 

「敵さんをきっちり昇天させてあげましょ。勇者部ファイト―」

 

「おー!」

 

 バーテックスが向かってくるのを待ち構える。

 

「あの変質者ってさ、樹が倒さなかったっけ?」

 

「あれは確か双子座だったから、樹ちゃんが倒したのはあれの片割れだったんじゃないかな~?」

 

「いずれにせよ、やることは同じ! 止めるわよ!」

 

 そう意気込む夏凜。しかし他の四人はこの戦いで満開してしまって障害が増えてしまうことを考えてしまい、一歩踏み出せずにいた。夏凜が呼びかけるが、その理由に気付く。望乃もそのことに気付いていた。

 

「……私が一人で――」

 

 一人で行くと言おうとした望乃の言葉を遮って友奈が大きな声で雄たけびを上げる。

 

「先輩、あの走ってるのを封印すれば、それで生き残りも片付くんですよね?」

 

「う、うん」

 

「だったら早く終わらせて、文化祭の劇の話しましょう」

 

 友奈はそう言いながらバーッテクスに向かって行った。すぐに夏凜と望乃も向かった。

 始めに望乃が槍を投げてバーッテクスの行く先を阻む。そしてそこに友奈と夏凜で攻撃をする。またバーテックスが進もうとするが、風と樹が足を攻撃して止める。最後に東郷が遠くから銃を撃って頭を吹き飛ばす。

 その場にいる望乃以外の四人で封印の儀を始める。その様を望乃は少し離れた場所から見ていた。

 バーテックスから『ミタマ』が出てくる。それは無数の数の『ミタマ』だった。

 

「私がやるわ!」

 

 風がそう言うが、少し考え込んでしまう。

 

「とどめは私に任せてもらうわよ!」

 

「夏凜、やめなさい! 部長命令よ!」

 

「私は助っ人できているのよ。好きにやらせてもらうわ」

 

「いや、私がやるよ」

 

 次に名乗りを上げたのは望乃だった。

 

「私が封印の儀に参加してなかったのは、私が一人でとどめを差すつもりだったからだよ」

 

 しかしその瞬間に友奈が攻撃し、とどめを差してしまった。

 その友奈の元にみんなが集まる。

 

「思ったより全然簡単だったね」

 

「あんた、何で勝手に……っ!」

 

 その時に友奈手についている満開ゲージがたまっていることに気が付いた。

 

「ごめんね。新たな精霊の力を使いたくて、つい先走っちゃった。反省してます」

 

 そんな友奈を心配していたが、体に問題はなかった。そしてバーテックスを倒した勇者部は無事に屋上に戻ってきていた。

 

「ふうー、終わったのね」

 

『お疲れさまです』

 

「いいえ。まだそれを書くのは早いわ、樹。友奈、今日うちに泊まりなさい! そこでみっちりお説教を……あれ? 友奈? 友奈?」

 

「てか、東郷もいないじゃない。東郷?」

 

 二人が呼びかけるが返答はない。

 風、樹、夏凜の三人が心配する中で、望乃はボーッと夕焼けを見ていた。

 

「そんな予感はしてたけど、本当に来ちゃったな~」

 

 そしてぶつぶつと独り言を呟いていた。

 望乃は視線を夏凜たちに変える。

 

「ねえ、夏凜ちゃん。抱きしめていい?」

 

 夏凜に近付きながら聞く。

 

「今はそんな場合じゃ――」

 

 望乃は夏凜の返答も関係なく抱きしめた。いつもの勢いある抱きつきとは違う、優しく包み込むような抱きつきである。

 数秒そうした後自分から離れた。

 

「ちょっと、今はそんな場合じゃないって言ってるでしょ! 友奈と東郷が戻ってきてないのよ!」

 

「大丈夫だよ。二人は違う場所に転送されただけだから」

 

「……望乃。何でそんなことわかるの?」

 

「答えは簡単だよ、風ちゃん。なぜなら私は事前にそのことを聞いてたからだよ。本当は美森ちゃんだけの予定だったんだけどね」

 

「ちょっと、そんなの私は聞いてないわよ!」

 

「当たり前だよ、夏凜ちゃん。だってこのことは、勇者には伝えられてないからね」

 

 

 

 

 

 

 その頃友奈と東郷は、大橋に飛ばされていた。

 

「戻ったけど……」

 

「ここ、屋上じゃないよね? みんなは?」

 

 そこで大橋に来ていることに気付き、携帯で連絡を入れようとするが、電波が入っていないらしく使えない。

 

「ずっと呼んでいたよ~。わっしー、会いたかった~」

 

 すると、どこからか誰かを呼ぶ、聞いたことのある声が聞こえてきた。

 二人がその声がした方へ向かう。向かった先を見て二人は衝撃を受けた。

 

「え……」

 

「どういうこと……?」

 

 二人の視線の先にいたのは、全身に包帯を巻いていて、ベッドに横たわる一人の少女だった。そしてそれは――

 

「何で……望乃ちゃんが?」

 

 勇者部の一員として一緒に過ごしてきた望乃と瓜二つの少女だった。

 




 遂に園子が登場です。

 そして次回はもう分かっている方もいるかもしれませんが、望乃の正体判明です。
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