風の騒動が落ち着いた頃、携帯が妙な音を鳴らし、それと同時にもう来ることがないと思っていた樹海に入っていた。
そんな中、友奈は東郷の姿を見つけ、東郷の元に向かう。夏凜はその友奈を追いかけた。
その途中で友奈が見たものは、白くて歯茎のような奇妙な物体の群れだった。
そのよくわからない物体――星屑を倒していた東郷に友奈が近付く。
「東郷さん、何してるの?」
「……壁を壊したのは、私よ」
その言葉に友奈が驚きを見せる。
「友奈ちゃん。私、もうこれ以上、あなたを傷つけさせないから」
東郷が振り向きながらそう言う。
そこに星屑が近付くが、友奈を追いかけてきた夏凜が倒す。そして刀を東郷に突きつけた。
「どういうことよ、東郷! 壁を壊したって、あんた……! 自分が何やってるか、わかってるの?」
「わかってる。わかってるからやらなければならないの!」
東郷がどこかへ移動する。友奈と夏凜もそれを追いかけた。すると壁の外に出てしまった。そして二人は知ってしまった。壁の外の真実を……。
天の神により四国以外が全て滅び、星屑は無数に存在し、戦いは一生終わらないということに……。
そして星屑の攻撃のせいで一旦離脱した二人だったが、そこでも攻撃を受け、落ちていった。
落ちた先で夏凜は気絶していた。友奈も東郷のために勇者に変身しようとするが、心が不安定なために変身できなかった。
友奈と夏凜が落ちていったのを見届けた東郷は、壁の上で辺りを見渡していた。そして神樹の破壊の方法を少し考えていた。
その瞬間、誰かが自分に近付いてきている気配に気付き、ほぼ反射的にそちらに向けて銃を放ってしまう。しかしそれはその誰かに簡単に弾かれてしまった。
それは自分の味方と言った乃木園子と同じ姿をして、乃木園子の勇者服を身に包んだ精霊、小木曽望乃だった。
「やっほ~美森ちゃん。あなたを止めにきたよ~」
「望乃ちゃん……。まさかあなたがくるとは思ってなかった。乃木園子の考えに背くなんて、大赦の意向かしら?」
「残念ながら違うよ~。ここには他の誰でもない、私の意志で来たんだから~」
「……乃木園子が知っていたのだから、望乃ちゃんは壁の外のことは知っているのよね?」
「まあ、そうだね~」
「だったらわかるでしょう? 私たち勇者は道具じゃない! 勇者部のみんなが傷付くくらいなら、私が全てを壊す!」
「うん、それは立派な覚悟だと思うよ。でもそれは、勇者部のみんなも同意したことなの?」
「それは……」
「してないよね? だったら美森ちゃんのしようとしていることは、勇者部のためっていうことにはならないんじゃないかな?」
「でも、もうみんなに傷付いてほしくないから……」
「でも、死んじゃうんだよ。何もかもが終わっちゃうんだよ。勇者は美森ちゃんたちだけじゃないんだよ。美森ちゃんたちが戦う前からも勇者が戦ってた。みんな平和のために戦ってた。中には戦いの中で死んでしまった子もいた。ただの、女の子だったのに。美森ちゃんがやろうとしてることっていうのはね、そういう人たちの頑張りや犠牲を、全部無にしちゃうっていうことなんだよ!」
「だけど! こうする以外に方法がないじゃない!」
「きっと、いつか方法がわかるはずだよ」
「いつかじゃ遅いのよ! それまでみんなが傷付くのを黙って見てるなんて、私にはできない!」
「……そっか。できれば話で止めたかったんだけど、仕方ないかな。力づくで止めさせてもらうよ」
望乃は右手に持っていた槍を回転させながら構える。
「私も、できればあなたとは争いたくなかったけれど、そうも言ってはいられないようね」
東郷も短銃を両手に持って構える。
東郷は望乃と戦うことだけは避けたかった。なぜなら望乃の実力は自分の比ではないからだ。
そんな不安を抱えながらも、望乃と戦う決心をしていた。
「……美森ちゃん、私は勇者部のみんなを、夏凜ちゃんを死なせたくないから、あなたを止める」
「……私は、勇者部のみんなのために全てを終わらせる。そのためにはあなたを倒さなければならない」
「だから、本気でいく!」
東郷と望乃が同時にそう言い、戦いの火蓋は切って落とされた。
一方その頃、風と樹は星屑の大群に囲まれていた。しかしその状況下で戦っていたのは樹一人だった。
いつもは頼りになる風は、樹海に来てからずっと震えながらうずくまっている。そんな風を樹が守るように戦い続けていた。
――どうして? どうして、そこまで……。
風はそんなことを思いながら戦う樹を見ていた。
樹は何度星屑に飛ばされても諦めずに立ち上がって戦っていた。
風はそんな樹を見て、先ほど聞いたオーディション用の音源の声を思い出していた。
『本当は私、お姉ちゃんの隣を歩いていけるようになりたかった』
「……隣どころか、いつの間にか……前に立ってるじゃない」
そう言う風の目から涙が一粒流れ落ちた。
星屑の攻撃により樹が追い込まれるが、それを助けたのは風だった。
「姉として、妹に頼り切ってるわけにはいかないわ!」
樹は復活した風を見て心底嬉しそうにしていた。
「さあ、犬吠埼姉妹の女子力、見せつけてやるわ! 行くわよ、樹!」
風と樹の二人は大勢の星屑を相手に立ち向かった。
場面は再び東郷と望乃。
二人の戦いは東郷の不安に反して互角であった。
望乃が槍の突きで攻撃しようとするが、東郷が短銃でそれを防ぐ。それにより、少し距離を開けた望乃に、東郷が短銃で連射するが、槍で簡単に防がれてしまう。
次に望乃が高く飛んで攻撃を仕掛けようとする。不自由となった空中に再び東郷が連射する。望乃は防ぐことはしなかったが、精霊のガードのせいで攻撃が通ることはなかった。
そして望乃が東郷に向かって槍を投げる。東郷はそれを触手を使って上に飛んでかわし、望乃の後ろに回る。しかし望乃はそれを読んでいたかのように、右手に槍を出して真後ろに槍を振るう。東郷も二つの短銃をクロスにして攻撃を防ぐが、少し飛ばされる。さらに望乃が追い打ちで全力で槍を振るうが、東郷の精霊『青坊主』によって防がれてしまった。
そして望乃が少し間合いを開けて、激しい戦いをする二人に息をする暇が訪れる。
東郷はこの時、望乃のこの戦いにおいての矛盾を感じていた。
東郷は今まで望乃は自分に対して手加減をしているものだと思っていた。なぜなら自分より望乃の方が強いことは明らかだったからだ。自分に新たな精霊が加わったことで少しは力が上がったとは言っても、望乃との間にあった大きな差が埋まるとは到底思えなかったのだ。
しかし、望乃の様子を見る限り、手を抜いているようには見えない。さらに先ほど、望乃の攻撃を精霊が防いだところを見て、その可能性はほぼなくなった。
ではなぜ、自分より強いはずの望乃が自分と互角に戦っているのだろう。
「あ~、やっぱり精霊に防がれちゃったか~」
「そういえば、精霊の攻撃も精霊に防がれるものなの?」
「精霊は人で言うところの本能で勇者を守ってるからね~。誰の攻撃でも関係ないし、流石にそれを止める権利は私にないんだよ~」
「精霊が守ったということは、本気なのよね?」
「そうだね。本当はお友達に本気で攻撃するなんてことはしたくないんだけど、そうも言っていられないからね~。美森ちゃんは強いし、本気を出さずに何も守れなかったら何の意味がないもんね。みんなを守るためだったら、私は何でもするつもりだからさ~。その結果、精霊が勇者に立ち向かうことになってるんだけどね」
もしかしたら、勇者を守るべき存在である精霊が勇者と戦っているからなのかもしれない、と東郷は考えた。
そこで会話は止まり、再び戦いが始まる。
しかし今までと同じような攻防が続いた。
どちらも自らが掲げた覚悟のため、大切な人を守るために戦い続けた。たとえその相手が数日前まで共に笑い合っていた友達だとしても、それぞれの守りたいもののために決して引くわけにはいかなかった。
そんな強い思いを持った二人の戦いは過激さを増していくばかりだった。