小木曽望乃は勇者である?   作:桃の山

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今回はいつもより少し長いです。


新勇者部初任務

 今日は日曜日である。

 その日も夏凜は学校へ向かう。なぜなら今日は勇者部の活動日だからである。

 自転車に乗って学校に向かい、部室まで歩く。

 部室の前に着き、扉を開ける。

 

「来てあげたわよ」

 

 しかし部室には誰もいない。時間を確認すると集合の十五分前。自分が来るのが速すぎたのかと思った夏凜は、少ししたら来るだろうと部室内で他のメンバーが来るのを待つことにした。

 ところがそんな夏凜の考えとは裏腹に、十時になっても誰一人として来る気配がない。望乃がよく遅刻をしていたので、全員揃って遅刻かと思い、さらに待ち続ける。

 それから三十分待っても誰一人として来ない。

 これは流石におかしいと思った夏凜は、今日の要約が書かれた紙を確認する。そこには――

 

 10:00・・・・・・現地集合

 

 と書かれていた。自分の間違いに気づいた瞬間、携帯の電話が鳴った。確認すると友奈からだった。どうすればいいか慌ててしまい、誤って電話を切ってしまう。かけ直すかどうかまた迷う夏凜。だがそんな夏凜の表情が曇る。

 

「何をやっているの? 私は……」

 

 自分しかいない、一人だけの空間でボソッと呟く。

 

「そうよ。関係ない。別に部活なんて端から行きたかったわけじゃないし。そうだ。神樹様に選ばれた勇者が何をのんきに浮かれてるのよ。そうよ。こういうことは私がやる事じゃなく、望乃がやる事なのよ。これが役割分担なのよ」

 

 ――私はあんな連中とは違う。真に選ばれた勇者。同じ勇者でも、何もしなくても強かった望乃とも違う。私は強くならないといけないの。

 そう自分を言い聞かせるように思うと、携帯の電話を切って部室を出る。そして夏凜は、いつもの鍛錬場所に向かった。

 その道中、夏凜はここに来る前の望乃の言葉を思い出す。

 

『どんな人たちだろうね~』

 

『何がよ』

 

『勇者の人たち~』

 

『どんな連中でも、たまたま選ばれたに過ぎないのよ』

 

『でもさ~、仲良くなれたらいいよね~』

 

『私には必要ないわ!』

 

『え~。夏凜ちゃん、友達いらないの~?』

 

『友達なんて望乃だけで十分よ』

 

『……私が死んじゃったらどうするの?』

 

『不吉なこと言わないの!』

 

『大丈夫だよ。ちゃんと夏凜ちゃんと友達になってくれるから』

 

 鍛錬の間その言葉が何度も夏凜の頭に流れた。

 

 

 

 

 

 時間は少し戻って現地では。

 

「夏凜ちゃん来ないね~」

 

 集合時間から三十分経ったが、夏凜はまだ来ない。今友奈が電話をかけているところだ。

 

「何で一緒に来なかったんですか?」

 

「私が出た時にはもういなかったみたいだから先に行ってると思ってたの~」

 

 東郷の質問に望乃が答える。

 

「望乃は遅刻したからねー」

 

「私に百メートルを五秒で走る力があったら間に合ったと思うんだけどな~」

 

「いやそれ、人間超えてるから!」

 

 そこに夏凜との電話を終えた友奈が戻ってくる。

 

「夏凜ちゃんに電話したんだけど切れちゃった。それからかけてもつながらないし」

 

「仕方ないわね。これ以上待たせるわけには行かないし、先にやりましょ」

 

 ぞろぞろと中に入っていく。

 

「……夏凜ちゃん。来ればいいけど」

 

 望乃は誰にも聞こえないような声でボソッと呟くと、みんなに続いて中に入った。

 

 初めに一人ずつ軽く自己紹介をしてからおりがみ教室が始まる。

 勇者部は来ていない夏凜を抜いて五人だけなので、一人に何人もの子供に教えることになる。

 

「それでは、簡単なものから折ってみましょう」

 

 樹も不慣れながらも、教えようと頑張っていた。

 

「はーい」

 

 子供たちもそれに答えてくれる。

 ふと、一人だけ大きい子がいたような気がしてそちらに目を向ける。

 

「最初は何を折るの~?」

 

 それは気のせいなどではなかった。その正体は望乃だった。

 

「の、望乃さんが何でここにいるんですか!?」

 

「だって~、私もおりがみ初めてだから、一番教えてくれそうな樹ちゃんに教えてもらおうと思って~」

 

「だったら練習してきてくださいよ!」

 

「私もいろいろあるんだよ~」

 

 今こんなことを言っていても仕方ない、と樹は思い望乃も一緒に教えることにした。

 

「教えるとは言ってもおりがみに折り方も載ってるので、それを見てできそうだったら勝手に折っててください」

 

「だって~、みんな~」

 

「望乃さんに言ってるんです!」

 

 樹はとりあえず望乃はあまり気にしないことにして子供たちに簡単なツルの折り方を教え始める。

 少しすると、

 

「樹ちゃん、できた~」

 

 という望乃の声が聞こえてくる。

 

「ほら~、お花~」

 

 全く別のものを折っていた。それを女の子に欲しがられてプレゼントしていた。

 また少しして、子供たちがツルを完成させ、次に移ろうという時

 

「樹ちゃん。またできた~」

 

 また望乃の声が聞こえてくる。

 

「カブト」

 

 兜だと思った樹は「またそんなもの作ったんですか」と言おうとしたが

 

「ムシ~」

 

「ムシー!?」

 

 予想の斜め上をいっていた。

 

「そんなの、私も折れませんよ!? どうやって折ったんですか?」

 

 欲しがっていた男の子にまたもやプレゼントしていた望乃に聞く樹。望乃は折り紙を取って、樹と子供たちに説明し始める。

 

「えっとね~、最初にここを折って、その次に――」

 

 ――あれ? これってもしかして、立場逆転してる?

 樹がそれに気付いたのはおりがみ教室が終わる直前だった。

 

 自由時間になった。自由時間は子供たちと児童館の遊具で遊んであげたり、話をしたりする時間である。

 主に一緒に話をすることがメインなのが東郷と樹で、遊具で一緒に遊んであげるのが友奈と風。そして、それ以外で走り回ったりなど、暴れたりないような子の相手をするのが夏凜と望乃の予定だったのだが、今日は夏凜が来ていないので望乃一人で相手をしていた。

 

「一人で大丈夫かと思ったけど、問題なかったみたいね」

 

 風が子供たちと楽しそうに走り回ってるのを見て、安堵しながら独り言を呟く。それに気づいて友奈が風の隣に来る。

 

「望乃ちゃん、楽しそうですねー」

 

「そうね。……精神年齢が近いからかしら」

 

「え!?」

 

「だって見てみなさいよ。身長差がなかったら区別が付かないわよ。あれ」

 

「そう、なのかなあ」

 

 そのように二人が和やかに見ていると、突然望乃が腹を抑えて立ち止まった。

 何かあったのかと、友奈と風が急いで望乃の元に向かう。

 

「望乃! どうしたのよ!」

 

「大丈夫? 望乃ちゃん!」

 

「お腹……すいた」

 

 それと同時に望乃の腹が大きな音を立てて鳴る。

 風は心配して損した、と大きく肩を落とした。

 

「じゃあもうそろそろお昼ご飯の時間だから戻りましょうか」

 

「やったあ!」

 

 子供が喜ぶ中、一番嬉しそうにしていたのが望乃だった。それに風は、なんだか大きな子供が増えたみたいね、と思ったのだった。

 

 みんなが待ちに待ったお昼ごはんの時間になった。

 お昼ごはんは支給されたものである。それが何かと言うと、やはりうどんである。丼にうどんを入れてあげる役も勇者部の仕事で二手に分かれて配る。友奈、東郷、望乃チームと犬吠埼姉妹チームに分かれて配り、それが終わると自分たちの分を入れる。

 

「私、超特盛~」

 

「それってどれくらい?」

 

「丼からはみ出るくらい~」

 

「却下」

 

 提案するも、東郷に却下されてしまう。

 結局全員同じ量で入れ、席に座る。

 

「いただきまーす!」

 

 全員で一緒に挨拶をして食べ始める。

 

「おかわり~」

 

「早っ!」

 

 食べ始めて一分程度で望乃が食べ終わり、おかわりに向かう。

 入れ過ぎないように風が付き添う。麺だけ食べておかわりに向かったと思っていた風だったが、望乃から丼を受け取ると本当に食べ切っていて驚いた。

 何度も何度もおかわりをする望乃は途中で止められた。それでも五杯ほどおかわりをしたのだが、まだ全然足りないと持参の菓子パンを食べていた。

 

 お昼ごはんが終わり、いよいよ今日のメインディシュ?である。

 それは『勇者と魔王と人形劇』のことだ。子供を相手にする時は必ずと言っていいほどやるのである。

 今回は望乃が初めてでまだよくわからないということで、客席で盛り上げ役をやることになった。その劇は普段通りアドリブ上等で多少グダグダになっていたが、望乃の絶妙な盛り上げもあり、大成功を収めた。

 こうして、本日の活動も終わりを告げた。

 なぜか一番気に入られていたのは望乃で、別れの時も惜しまれて子供たちに引き止められていた。

 望乃の説得でようやく帰宅に入ることができた勇者部は、五人で一緒に帰り道を歩いていた。

 

「ねぇ、みんな……」

 

 珍しく後ろを歩いていた望乃が声をかける。四人が振り向くと、用件を言った。

 

「これから時間、ある?」

 

 

 

 

 

 

 勇者部の活動に行くのをやめ、ただひたすら鍛錬をする夏凜。

 いつも通り鍛錬が終わると、コンビニの弁当を買って家に帰宅し、ランニングマシンを使って走る。

 ――滞りなし。

 そんなことを思っていると、突然インターホンが鳴る。ランニングマシンを止めるとうるさいくらいに何度もインターホンが押される。

 夏凜は用心も込めて木刀を構えながら扉を開ける。開けた瞬間その木刀は誰かの手によって動かせなくなる。

 

「も~。そんなもの向けたら危ないよ~」

 

 その犯人は望乃だった。望乃の後ろには勇者部の連中も揃っている。後ろの四人は夏凜が木刀を持って出てきたことに驚いている。

 夏凜に文句をいう風。心配したと言う友奈たちに戸惑う夏凜。

 

「んじゃ、上がらせてもらうわよー」

 

「どうぞどうぞ~」

 

 我が家のように振舞う望乃と勝手に上がる風。他の三人もその後に続く。

 

「殺風景な部屋」

 

「どうだっていいでしょ!」

 

 樹と友奈が勝手に物を触る。風の予想通りだったらしく、事前にお菓子や飲み物を買ってきていた。好き勝手する勇者部に

 

「いきなり来て何なのよ!」

 

 と怒る。しかし友奈は笑顔で

 

「ハッピーバースデイ! 夏凜ちゃん!」

 

 と言って机の下に隠していた箱を取り出して開けた。中身はケーキだった。

 

「な、何で? まさか、望乃?」

 

「ううん。違うよ、夏凜ちゃん。私もね、みんなが知らないと思ってたんだけど――」

 

回想

 

『これから時間、ある?』

 

『え?』

 

『今日、夏凜ちゃんの誕生日なの!』

 

『知ってるよ! だから、今からみんなで行くんだ!』

 

回想終わり

 

「――っていうわけ」

 

 知っていた理由は入部届けに書いてあって、それに友奈が気付いたからだった。それなら、歓迎会も込めてやろうということになったらしい。当初の予定では児童館でやる予定だったのだが、夏凜が来なかったのでできなかったとのことである。

 ちなみに、家の場所は望乃が案内したのである。

 すると、夏凜が固まってしまう。風が茶化すと夏凜が小さな声を出す。

 

「……アホ。……バカ。……ボケ。……おたんこなす」

 

「何よそれ!」

 

「誕生会なんてやったことないから何て言ったらいいかわかんないのよ……」

 

 照れる夏凜とその言葉を聞いて四人が望乃に視線を向ける。

 

「大赦ではそういうことはできないんだよ~。だから私も、今日やってあげたかったんだ~」

 

 そして、みんなで微笑んで夏凜の誕生日会を行った。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、しばらくすると夏凜と望乃以外の四人は帰って行った。

 

「あいつら、ごみを大量に増やしてって……」

 

「夏凜ちゃん、手伝うよ~」

 

 二人で大きなごみ袋を運ぶ。

 

「ねえ、夏凜ちゃん」

 

「何よ」

 

「今日、楽しかった?」

 

「まあ、まあね」

 

 望乃がにっこりと微笑む。

 

「そっか。……夏凜ちゃん」

 

「何?」

 

「まだ、友達必要ない? まだ、仲良くしたくない?」

 

「……さあね!」

 

「そっか!」

 

 赤くなって照れる夏凜を見て、望乃は今日一番うれしそうに笑った。

 




やっと、アニメの三話が終わりました。
長いですね。

もう少しサクサクと進めたいなと思います。
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