Fate/heaven judge   作:楠木 蓮華

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人神が神を裁くということ

日本という国は、キリスト教などの他国の代表的な物が伝わってくるまでは、神道、仏教などがほとんどだった。またその神道や仏教も……昔、他国から伝わった物を日本人が独自にアレンジした物だったりする。

 

また、日本の神話の神ではなく、それ以外で神になったりするのも、日本ではよくあることだった。また、長い間大事に使い続けた物も付喪神になるというそんなとんでもな設定もあったりするのだが、それはまた別の機会に語ることになると思う。

 

話を戻すが、そういう存在のことを人神といい、天満大自在天神……生前は菅原道真と呼ばれる者や、豊国大明神……生前は豊臣秀吉と呼ばれる者、東照大権現……生前は徳川家康と呼ばれる者が代表例として挙げられる。

 

そんな感じに……日本では、人からの沢山の信仰によって、神に祀り上げられた人が沢山いるのだ。神様として見られるのならばいいのではないか、と思う者もいるかもしれないが、決していいことばかりではない。なぜなら、その者は自分の意志とは関係なく、生きている人によって自分の存在を弄ばれているのと変わらないからだ。

 

死んだ後も、生きる人によって弄ばれた人は何を思うのだろう。何を感じるのだろう。人として生を全うし、死に……その後は跡継ぐ者によって自分の存在を道具のように扱われることに……。

 

そして、ここにも一人……一時期の事件を鎮めるための犠牲となり、神へと祀り上げられ……ボロボロの小さな祠に一人祀られた少年がいた。

 

**

 

 

あぁ……憂鬱だ。人にとっての一日は神様になった僕にとってはあっという間だけれど、やっぱり誰も来ないこの祠に一人ぼっちでいると、つまらないし気が滅入る。太陽が昇って沈む……そんな、代わり映えのしない毎日、誰もお参りに来ないこの小さな祠。本当に憂鬱だ……。

 

神様になったとはいえ、そんな物はなってみたら大したことではなかった。もうなんで神様になってしまったのかの理由も忘れてしまったけれど、生前と違うことと言えば、寿命がなくなったこと……大きくならなくなったことくらい……たったそれくらいだった。転べば怪我はするし、枝や葉っぱのせいで切り傷ができたりすることも、普通にあったのだ。父上や母上に聞いていたようなすごい力を手に入れられたわけではなかったし、なにか悟りが開けるわけでもなかった。

 

今はただ、僕が人であった頃の御爺上のように、ただ座り……ぼぉ〜っと外の風景を眺めていることをしているだけだった。こういってしまっては失礼だけれど、なんと刺激のない生活……なんとつまらない人生……いや、神様だから神生かもしれないけれど、神様になった時から特に変わっていない僕にとっては、ただただ暇だった。

 

そんな事を続けていくうちに、ふと疑問に思うことが出てきた。ずっと世界を眺めていたからこそ気づけたことだったが、世界が少しずつ、少しずつ壊れていくような、そんな感覚に陥ることが多くなってきていた。詳しくはわからないし、なにがどうしてということをわかっているわけではないけれど、やはり……世界が崩れていくような、そんな感覚に苛まれるのだ。

 

それと同じ頃くらいだろうか……泣き声が聞こえてくるのだ。赤ん坊のように大声で泣くのではなく……寂しく、押し殺すような泣き声……。嗚咽を漏らすとでもいうのか……そんな感じの、悲しみに満ち溢れた泣き声。

 

でも、祠の周りにそんな風に泣いている人はいなかった。祠の周りは今まで通りがらんとしているのに、なぜかどこからともなく聞こえてくる。

 

僕はそんな風に泣いている人に少し興味を持った。どうして泣いているのか、なにが悲しくてそんなふうに押し殺すようにして泣くのか。それが神様になって初めての興味だった。

 

あぁ……名も姿もわからぬ人よ……君はどうしてそんな風に泣くの……? なにが悲しくて泣いているの……? 知りたいよ……会いたいよ……叶うのならば、君の泣き声以外の声も聞いてみたい。

 

神様になってから、僕の初めてのわがままであり、願いだった。

 

でも……叶わないことを僕は知っていた。僕は神様になった頃からずっと……この祠に閉じ込められていたから。この祠から、僕は離れることが出来ない。これは一種の呪いだ……この祠は僕を閉じ込めておくための場所なのだ。

 

あぁ……だから憂鬱だ。今も変わらず君の泣き声が聞こえてくるのに、君を探しに行くことも出来ない。君の悲しそうな泣き声に、僕は歯を食いしばりながら拳を握りしめることしかできない。

 

弱い僕を許して欲しい。神様なのに、人を探しに行くことすらできない……僕に出来ることは、ただただ、君の泣き声がいつか笑い声に変わってくれることを、祈ることだけしか出来ない。

 

だから今日も、僕は月が昇っている夜空に向かって手を合わせ、ただただ祈るんだ。

 

「名も姿もわからぬ君が……いつか幸せになりますように」……と。

 

「さてと……やるべきことはやったし、僕はそろそろ寝るとしようか」

 

寝ると言っても、人間のように睡眠をとるわけではない。神で言うところの寝るとは、すなわち祠の中に入ることを指す。祠に入れば、外からは何も聞こえてこない。神にとっての祠とは人間にとっての、家のようなもので、のんびりしたりなど、ボロボロであっても不自由はない。

 

いつもなら……これで一日が終わる、はずだった。

 

「ん……?」

 

どこからか、ひゅ〜という音が聞こえてくる。聞いたこともない音に周りを見回してみるも特に変わったものはなかった。

 

「気のせいだったのかなぁ……」

 

まだ音が聞こえてきているものの、よくわからないものには触れないことにした。君子危うきに近寄らず、とも言うし……気にしないことが一番だ。

 

「それじゃあ……おやすみなさ」

 

就寝の言葉を口にしようとしていたところで、ぐしゃ……という音と共にとんでもないことが起こった。

 

「……祠が潰れたんですけど……」

 

僕の祠になにかが落ちてきて、祠がいとも簡単に潰れてしまった。あれ……? 祠ってたしか特別な力て守られてるとかなんとかって父上が言ってなかったっけ? こんなにあっさりと、紙くずを踏みつぶすかの如く簡単に潰れるものなの? それとも僕が神様としてしょぼすぎて祠の加護? なにそれ? おいしいの? みたいな感じなの?

 

「僕が祠から離れられないとか言ってたのはいったんなんだったんだろう……」

 

僕はそのまま四つん這いになるようにして地面に手をついた。そんな時……僕の元祠があったあたりから声が聞こえてきた。

 

「お主か? 人神になった最年少の男というのは」

 

「へ……?」

 

顔を上げるとそこには、僕と同じくらいの見た目で、和服を着た黒髪の女の子がいた……僕の祠だったところに。

 

とにかく。いろいろ言いたいことはあるけれど……

 

「そこ……退いてくれませんかね?」

 

「ん〜……? おぉ、すまんのぉ……気づかなかったのじゃ」

 

少しも悪びれる様子もなく、僕の祠の破片を踏みながら降りてくる人? あぁ……それにしても僕の祠が跡形も無く木っ端微塵になってしまった。これからどうしよう……

 

「ふむ……お主はどうしてそんなに落ち込んでおるのじゃ?」

 

「それは落ち込みますよ! 僕の祠が木っ端微塵になっちゃったんですよ!?」

 

「は〜……そんなことで落ち込んでおったのか、器の大きさが知れてしまうぞ?」

 

「いきなり住む家を壊されたら落ち込みますよね!?」

 

僕は間違ったことは言ってない筈だ。少なくとも、神様にとって祠は家みたいなものだし、それをいきなり壊されたのだから、怒るまではなくとも落ち込むくらいは許されてもいいはずだろう。

 

「お主はワシがどうしてこんなことをしたのかわかっておらんのか?」

 

「一つもわかりませんが!」

 

「まったく……ではワシが特別にどうしてこんな事をしたのか、話してやるとしよう。有り難く思うのじゃぞ?」

 

「どうして上から目線なのかは置いておきます……」

 

僕がそういうと、目の前にいる女の子はこほんと間を置いた後、僕の目を見ながら言った。

 

「お主、この祠から解放されたいと思っておったじゃろ?」

 

「え……」

 

その瞬間、僕の心臓は跳ね上がった。あまりに簡単に、僕の願いを見抜かれてしまったから、会ってからまだ数十秒しか経っていない名前もわからない人に。

 

「僕って……そんなに単純なんだろうか」

 

「ほれほれ、そんなに落ち込むでない。 目が死んでおるぞ、目が」

 

「誰のせいだと思っているんですか?」

 

「知らんの」

 

「貴女ですよ貴女っ!」

 

「なぬっ!?」

 

「なんですかその驚きっ!」

 

本気で驚いているかのような仕草をする女の子。あまりに新鮮な驚き方に本気でわかっていないのかと思ったが、よく見ると口元がニヤけていた。……うん、絶対にわかってて驚いてるフリしてるよね、あれ。

 

「まぁ、それは置いておくとしようではないか」

 

「まだ話は終わってないんですけど!?」

 

「飽きたのじゃ」

 

「飽きた!? 僕との会話ただの暇つぶしですか!?」

 

「失礼じゃのぅ、ワシがそんなことを考えているわけなかろう?」

 

「そ、そうですよね……よかったです」

 

「うむ、六割くらいしか考えておらんよ」

 

「過半数! 過半数考えてますよっ!」

 

「おぉ、これまたびっくり」

 

どう考えてもわざととしか思えないような表情と声音でいう女の子。完全に遊ばれているみたいだった。いや、みたい……ではなく、実際遊ばれているのだろうけれど、このなんとも言えない気持ちはどこにぶつければいいのだろうか。

 

「まぁ……楽しい楽しい雑談はここまでにしようではないか」

 

「楽しんでいたのはほとんど貴女だけのような気もしますけど……それともツッコミ待ちですか?」

 

「ツッコミ? なんのことやらわからぬのぉ……ひゅ〜ひゅ〜」

 

「口笛吹けてませんから、音出てませんから」

 

この人のわざとらしい態度……すっごく面倒臭いけれど、別に嫌ではなかった。腹立たしいけれど……嫌いではなかった。だからなのかもしれない……久々に誰かと話したというのに、こんなにも自然に話せているのは。

 

「さてと……では、そろそろ本題に入るとしようかの」

 

「ほ、本題……ですか?」

 

「うむ……なぜワシがここに来たのか、その理由じゃよ」

 

「そういえば空から落ちてきた時、何か言ってましたよね? 人神になった最年少の男って……」

 

「その通りじゃ、お主はこの世のすべての世界線のなかで一番幼くして人神となったのじゃよ」

 

「こ、この世のすべての世界線……よくわからないのですが……」

 

「まぁ……ぶっちゃけてしまえばそれはさして気にすることではない。 お主に興味があったのは事実じゃが、お主にちと頼みたいことがあってのぉ」

 

「頼みたいこと、ですか?」

 

聞き返すと、女の子はその場に座り……何故かいきなり頭を下げた。

 

「え……ちょっ、いきなりどうしたんですか!?」

 

「お主には……救ってもらいたいのじゃ」

 

「す、救う……?」

 

そう問いかけると、女の子はゆっくりと顔を上げて真剣な表情で口を開いた。

 

「その通りじゃ……お主にはこれから、悪行を働く神を……殺してもらいたい」

 

この女の子の言葉が、のちの僕が体験することになる神生の大きな転機になろうとは、この頃の僕は知るよしもなかった。

 

この後に待ち受ける出会いと試練が……両手を広げて待ち受けていることを、僕は……いや、この世の誰もが知らなかったのだ。




一話を書いてみて思った感想は……fateに神様とか出してよかったんだろうか……ということがかなり不安でした。
でも私の知っているfateのキャラクターで神様みたいなのいましたし、人神なのでセーフ人神なのでセーフっ!

と自分に言い聞かせていました。

あと皆さん、ヒロインとか必要ですかね?
今の流れですとお察しかもしれませんが、一人ヒロインになりそうですが、ヒロインなんぞいらん、という人もいるかも……

そういうことはひとまずこれから考えるとして……一番に伝えたいことは……皆さん、ショタ主人公ですよ、エターナルショタですよ

私は別に好きじゃないですけど、ショタ好きには堪らないですよね?

喜べショタコンども

あ、ごめんなさい。つい出来心だったんです。本当はそんなこと思ってないです。だから怒らないでください。

こほん……ともかく、fateの最新作、更新は不定期ですが、ゆったりと書き進めていきたいと思います、よろしくお願いします。
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