斜陽のResistance   作:藤原守理

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第8話「荒々しい英雄」

-2030年7月16日-

-福岡県福岡市博多区-

-博多駅[12:20]-

 

 

 

 徐(ソ)は突如振りかざされる鉄パイプを前に対応することなく、鉄の冷たい感触を頬に当たったと思った頃には床に勢いよく叩きつけられた。

 

 

 連れ出された少女は掴まれていた両手が急に自由になって後ろに尻餅をついた。臀部から来る痛みを感じるよりも彼女は目の前の光景に驚いていた。

 

 目の前には気絶した自分を犯そうとした醜い男と鉄パイプを持ったトレンチコート姿の男が立っていた。男は黒髪短髪に細く整った眉毛、精悍な顔立ち独特の雰囲気から20代後半ぐらいに見える。結構…タイプ。

 

 少女は頭を横に振り咄嗟に思考を元に戻す。

 

 そうしていると男がこちらに近寄ってきたため少女は警戒をしたとともに叫ぼうとした。

 

「誰ん…?!」

 

 男は素早く少女の口元を抑えた。

 

「んー?!」

「落ち着け、叫ぶな見つかるぞ」

 

 

 そう言って男は狂気に満ちた嬌声の聞こえる方を指差し自分の置かれた環境を悟った少女は沈黙する。

 

「そうだ…それでいい」

 

 

 少女が静まったのを見て男は手を話す。

 

 

「はぁはぁ…貴方は一体?」

 

「俺は君の敵じゃない。俺は警察官だ」

「え?」

 

 男は警官と名乗った。少女は警官だったことに驚きつつもさっきの興奮を抑えるのに必死で言葉が続かない。

 

「少し強引に口を抑えてすまない。大丈夫か?」

 

 男はあやまり少女を気遣うように膝をついて屈み様子を診る。

 

「いえ…助けていただきありがとうございます」

「そ、そうか」

 

 少女に睨まれて不機嫌を買ったのかと男はやや気まずそうに表情が歪む。少女からするとイケメン顔の年上の男性を前に頬を赤く染めたため直視できないだけだったが。

 

 

「俺は佐川啓治(さかわけいじだ)、よろしく」

「私は橘あきら(たちばなあきら)です。高校生です」

 

 橘と名乗った少女は乱れたブレザーの制服を整えつつ答えた。橘の容姿は黒髪に流れるような長髪でスレンダー、何かスポーツでもしているためか日焼けして健康的な小麦色の肌、佐川から見て橘が高校生であると信ぴょう性が持てた。

 

 

「佐川…啓治さんですね?なんでおまわりさんがここに?みんな捕まったんじゃ…?」

 

 落ち着きを取り戻した橘の言うとおり駅やその周辺に配備されていた警官たちは武装集団と銃撃戦になって死んだか捕まって処刑されたという話が流れていた。

 

「俺はここにいるのは」

 

 

「…おい、さっき変な音しなかったか?」

「あぁ、徐ソいるのかぁ?」

 

 そう言い出した途端、床に倒れている男の仲間が異変に気づいたようだった。男たちが近づいてくる音が聞こえる。

 

「話はあとで!とりあえず…」

「え?ってあれ?」

 

 

 縛られていた両手が自由になって佐川の手元を見るといつの間にかナイフが握られており紐を切ってくれたようだった。

 

「姿勢を低くして、見つからないように逃げよう」

「わ、わかりました」

 

 

 手際の素早い佐川に驚きつつも橘はその後ろを追いその場から離れた。

 

 

 

 

「…おーい。徐(ソ)なに寝て……って大丈夫か?!徐がやられた!」

「は?!おい!女が逃げたぞ。探せ!」

 

 気絶した仲間を発見し兵士たちはそれぞれ銃を持って駅構内を捜索しに通路から別フロアに走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんとか…散ったか」

 

 

 2人は近くの大人2人は入れる大きめのロッカーに潜み、外の様子を見ていた。

 

「佐川さん…これからどうします?」

「ここを脱出する。ちょっと手荒に行くぞ…」

 

 

 ロッカーの目の前では気絶した徐ソの身体を揺するもなかなか起きず苛立つ1人の男が立っていた。

 

(足音の数と見たところこの通路は1人だけか。ならこいつで)

 

「橘さん。落ち着いてね。叫ばないように」

「はい…?」

 

 

 佐川はロッカーからそっと出るとコートの中からあるものを取り出す。

 

 機関けん銃―――正確にはドイツ・H&k社製のMP5と呼ばれる短機関銃サブマシンガンだ。弾をばらまくのが目的だった他の短機関銃とは違い高い命中精度を持つMP5は特殊部隊向けの短機関銃として各国の軍や治安組織がこぞって採用している有名な銃だ。日本警察では基本型のMP5が銃器対策部隊・SAT(特殊強襲部隊)に採用されている。

 佐川が持っているMP5はサプレッサー内蔵の特殊な構造をしている。

 

 

 佐川はストックを肩に付け照準を背を向ける男に定めダブルタップ(トリガーを短い間隔を置いて2回引く)で亜音速の9mm弾を2発放った。2発の銃弾は発射音を出さずにそれぞれ目標の頭部と肩を貫き、目の前の男は力なく床に倒れた。

 

 

「…佐川さん、その銃は一体…?」

「?あぁ、ここに来る前に道で拾ったやつだ」

 

 橘が驚くのとは裏腹に佐川は銃を掲げて見せる。

 

「拾った?」

「そうだ。…おっと」

 

 

 身体を左に向け、向こうのドアから敵の仲間が不用意にでてきたところに銃弾を3発叩き込んだ。もちろん敵は死に血だらけになって壁に寄りかかる。

 

 

「一応こんだけか…」

 

 敵の気配が消えたので佐川は目の前の死体の装備を漁る。

 

「佐川さん、貴方は本当に普通の警察」

「おい、これ持っとけ」

 

 

 橘の言葉を遮って佐川は1丁の拳銃を押し付けた。

 

「私、銃なんて…」

「念のためだ、それに殺らないとヤられるぞ」

 

 

 橘が持つ拳銃―――アメリカ・S&W社製M37というリボルバー式拳銃で5発装弾できる。警察庁では国産のニューナンブM60拳銃の後継として一般の警察官がよく装備している。

 

 

「…そうですね。持っておきます」

「銃は本当にヤバい時に使え。説明はあとだ。さっさと逃げるぞ!」

「え、はい。わかりました…」

 

 

 「警官」だと名乗ったにしては素人である女子高生から見てもわかる銃を使い慣れている手つきの男に内心、違和感を抱きながらもここを脱出するために仕方なく少女は拳銃を手に行動を共にすることにした。

 




どうでもいいことですが、後輩から告白されました。
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