斜陽のResistance   作:藤原守理

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第9話「武人の打開策」

-2030年7月16日-

-福岡県対馬市上対馬町-

-航空自衛隊海栗島分屯基地[11:30]-

 

 

 

「おかしい…さっき話し声が聞こえた気がしたが…」

「このあたりに人影は見当らない」

 

 

 

 牧田と久佐木が草むらに隠れてすぐに3人の男たちが2人のいた場所に駆けてきた。3人とも資料で見たことのある連邦の銃を持ち、黒色の迷彩服だと思っていた服装は近くで見ると肌に張り付くほど身体に密着している、所謂潜水服と呼ばれる姿だ。牧田は目の前の連中が連邦の兵士だと確信する。敵はミサイル着弾のどさくさに紛れて海から上陸してきたらしい。

 

「おい。向こうで武装した日本兵どもが抵抗している。戻ってこい」

 

 3人の後ろから仲間の連邦兵が戻ってくるよう声がかけられるが、中国語が解らない牧田と久佐木にはどのような会話がされているのか聞き取れなかった。

 

 

「ダーシャン、ゴォウ、気のせいだ。戻ろう」

「あぁ、まだ向こうの制圧が終わってないしな」

「賛成だ」

 

 身を潜める2人からすればなんと話しているか解らないが向こうの方の銃撃音の数がけたたましくなっていた。立て続けに馴染みのある発砲音が鳴る。味方が交戦しているみたいだ。3人の連邦兵はそこに向かうようにして去っていった。

 

 

「…なんとか見つからずに済んだね」

 

 敵が遠ざかったので匍匐姿勢から身を起こした久佐木が身についた土や葉を叩いて落とす。

 

 

「どうしようか。攻撃しようにも武器は持ってないし…」

「木の棒振り回して連中に向かってったら蜂の巣になるもんな」

 

 2人は一介の自衛官なので表情には出さないが自分たちの現状を認識して嘆かずにいられなかった。銃はおろか戦闘服・ベスト・ナイフ1本すら身につけていないのである。2人はレーダーサイトに勤務するオペレーターであったため銃を撃つ訓練の機会は少なかった。今の2人はなんちゃって自衛官と呼ばれても言い返せないくらいの心境の悪さになりつつある。主に久佐木だが、

 

 

「ならどうすんのよ!」

 

 思わず久佐木が闇雲に怒り出した。牧田の様子が追い込まれている状況の兵士の様子にしてはやけに落ち着いていたからだ。

 

 

「こんなとこで狂っても意味ないぞ」

 

 取り乱した久佐木を牧田が諫める。

 

「…なら…!」

「…ここをすぐ離れて本島(対馬島)の陸自と合流しよう」

 

 牧田の口から出た提案を聞いて久佐木は表情を変える。

 

「みんなは、みんなはどうするの?!」

「仕方がない。ここで犬死するよりマシだ」

「見捨てて逃げる気?!」

 

 苦い顔をする牧田に対して久佐木が非難の声を挙げる。

 

「牧田…!あんた!仲間を殺す気?卑怯よ!人でなし!」

 

 

 

 突然憤怒する久佐木に拳が振るわれ後ろに倒れる。殴ったのは誰でもない牧田だった。殴られて呆然とする久佐木を前に牧田は口を開く。

 

 

「人でなしだ?俺だって自衛官だ。仲間が殺されて報復したいさ。…だが、現実を見ろ。死んだ仲間は俺たちにすぐにあの世に来て欲しいと思っていると思うか?ここは生き延びて必ず仕返しするべきだろ」

 

 落ち着いた口調で語る牧田だったが力強く握り締められた両拳から自身の無力さ悔しさが溢れ出している。

 

「生き延びるぞ。久佐木。時間が掛かろうとも絶対仲間の無念を晴らす!」

 

 

 腰つく久佐木の肩を掴み瞳を見つめて熱烈と牧田は語りかけた。敵への復讐を誓う牧田からの言葉に久佐木は考えを改めることにする。

 

「ごめんなさい。牧田…あなたの考えに付き添うわ」

 

 久佐木は牧田に協調する姿勢を見せた。

 

「…それと肩……痛いよ…」

 

 

 牧田は思わずハッとして肩から両手を離した。語るのに熱中していたために久佐木の肩を握る両手に力が入っていたようだ。

 

 

「す、すまない」

 

 申し訳なさそうに牧田は謝った。

 

「いいよ。それよりこれからどうする気」

 

 肩をさすりながら久佐木は牧田にこれからの動向を尋ねる。

 

「…1つ、1つ考えがある…」

 

 

 そう言って久佐木寄り添い話し始める牧田であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………」

 

 足元の土を意味もなく蹴る1人の男。喫煙者でもあったその男はポケットに入っている煙草をいつ吸おうかとしきりにさする仕草をする。そんな男はただただ立っていた。

 そこに別の同じ格好をした男が1人歩いてくる。

 

 

「…おい、交代の時間だ」

 

 歩いてきた男が交代を知らせ長方形の小箱を手渡す。

 

「さっき捕虜を全員処刑した。これで一時安泰だ」

 

 この2人の男は中華連邦の兵士だった。2人の軍装からして海軍陸戦隊のものであり、海軍の特殊部隊がこの島の自衛隊基地を制圧したあと、重火器を装備した陸戦隊が上陸して占領、そのうちの2人の兵士は武器が収めてある倉庫の警備を担っていた。

 小箱を受け取った男はそれを開封してみると中には「わかば」と日本語で書かれたタバコが3箱入っている。

 

「なんだこのタバコ?」

「戦利品だ。自衛隊のタバコは日本製なだけあって俺たちのより吸いごたえがあるぞ。でも、市販のより劣るがな」

「そりゃそうだろ……お前だったらどの品種が好みだ?」

「俺は…」

 

 2人の男がタバコの好みについて話し始めた。2人とも敵がいないこと上官がいないことを確認してリラックスして話に没頭した。

 

 しかし、好物の会話にうつつ抜かすそんな2人に、狙いを定めて2本の矢が突き刺さった。

 

 2人はショックのあまり手足が動かせず物陰からでてきた男女にそれぞれ止めを刺されることになった。

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