斜陽のResistance   作:藤原守理

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東アジアから(筆者にとって)懐かしのヨーロッパにフォーカスします。


第4話「帰ってきた彼(ER IST WIEDER DA)」

-2031年5月20日-

-ドイツ連邦共和国ベルリン市ミッテ区-

 

 

 

 東アジア全体で東南アジア連合・オーストラリア・日本抵抗軍の連合国軍と中華連邦軍が交戦する中、欧州ドイツでは1つの波乱が起きようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Heilllllllll Deutschland(ドイツ万歳)!Heilllllllll Deutschland(ドイツ万歳)!」

「Heilllllllllll(万歳)!Heilllllllll(万歳)!」

 

 

 連邦国会議事堂前の共和国広場に集う多くの群衆。その数は数万十万にも登るのであろうか。

 近隣の道路には歩道から溢れる集まった人々と数多のドイツ国旗で占拠され自動車の通行が出来なくなっている。

 なぜ、こんなにも人々が集い熱狂の歓声を上げているのだろうか。

 

 それは皆、演台に立つ1人の男の口が開くのを待っているからである。

 

 青に黒みがかかったスーツ姿のこの男は長い金髪を後ろで束ねたとても若くハンサムな顔をしている。目は鋭く男の深青(みお)色の瞳から放つ視線で人々は魔法がかかったかのように魅了される。

 

 

 

 やがて沈黙し始める群衆。

 男は沈黙する群衆を見渡し重い口を開いた。

 

 

 

「ドイツの民族同胞諸君!

 この記念すべき日を迎えて愛しきこのドイチュラントの神はさぞ祝福していることだろう。5月20日の本日、新しい政権が樹立された。私と、ドイツ国民の誇りを持った尊き同胞がこの政権に参加している。今や復活戦の信号弾が炸裂したと私は思う。我々の勝利は我々だけのものではない。諸君ら聡明なドイツ国民の政治的判断で手に入れたのだ!

 我々は決して虚言を弄したり、誤魔化したりはしない!従って私は、いかなる時も我が国民に対して、妥協したり口先だけの甘言を呈したりすることを拒否するものである。

 私は、我が民族の復活がおのずから達成されるとは諸君らに約束するつもりはない。我々が行動するのである、そう民族自身が手を取り合って行動しなければならないのだ」

 

 

 一区切りに間を置いたとき、民衆は賛同の大歓声を男に贈る。

 

 

 

「そうだ。そうだとも。諸君らと我々、真の国民ドイツ党が勝利を掴むのだ。自由や幸福や生活が突然空から降ってくると思ってはならない。全ては我々自身の意志と行動にかかっているのである。

 EUなどというヨーロッパ結集の夢は幻想だった。コートの上から浸透してくる雨水のような侵略者、移民どもで我々のドイツは穢された。他所からの助けなど当てにならない!我々自身のうちに、ドイツ民族の将来は存するのである!」

 

 

 マイクを通じて広場全体、カメラを通じて全世界へ映像が流れていく。

 

 

 

「我々自身がドイツ民族を、その固有の労働、勤勉、決然さ、不屈さ、頑強さによって繁栄させるのだ。そうして始めて、我々はかの祖先と同じ高みへと再び登りつめることができよう。かつて祖先もドイツを無為に手に入れたのではなく、己の力で築き上げたに違いないのだから」

「ドイツ国民よ、我々に4年の歳月を与えよ。しかるのちに我々を判断せよ!ドイツ国民よ、我々に4年の歳月を与えよ。私は誓おう。この職に就いた時と同じようにこれからも私は進むという事を。私は給与や賃金の為に行動するのではない、ただただ諸君らの為にのみ行動するのだ!」

 

 

 

 男は演台に拳を掲げる。広場は沈黙が支配していた。群衆も習って拳を掲げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「侵略者どもに誅伐を!ドイツは今こそ復活する!」

「Sieggggggg Heilllllllll(ジークハイル・勝利万歳)!」

 

 

 

 その場にいる人々、テレビのモニター越しに観る人々、全てが万歳を唱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の世界各国の新聞に「まるで”あの彼”が帰ってきた」という見出しが軒を連ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、ドイツ連邦共和国首相に就任した男、二ヒテス・フォン・ヒルデブラントはドイツ北部ザクセン州で1992年に生まれた生粋のドイツ人。御年39歳である。

 幼少期は母子家庭の貧しい環境下で育ち、青年期に陸軍へ志願、シリア・アフガンでの戦闘を曹長(ハウプトフェルトヴェベール)として経験した。

 32歳になり軍を除隊後、移民難民出身の異民族に支配されていく祖国を憂いて政界に進出。移民排斥とドイツの経済復活を掲げる「真の国民ドイツ党(WahrerNation Deutsche Partei)」を立ち上げて議会第1党に勢力を広げた。

 そして、今回の選挙と大統領の信任で首相に選ばれる。

 

 

 彼はグローバニズムを否定し時代遅れとされた民族自決主義の復活を狙うナショナリストだ。普通であればこのような人物はナチスを蔑む現代ドイツ国民から排除されたはずである。

 しかし、この男は運を持っていた。移民と難民、グローバリズムで破滅に向かうドイツを憂う声と「彼」と同じ天才的なスピーチ力に美貌を。

 

 

 人々を魅了するその能力と時代の流れによって「彼」は帰ってきた。

 

 

 

 

 翌日彼はまず、EU脱退NATO加盟停止と不法移民の徹底的な排除を行う宣言をした。続いてNATO指揮下の軍を本土軍へ戻すなどの再編と大規模な公共事業発注、失業した若者へは民間企業の就業をちらつかせ軍への雇用を進め失業対策をした。効果はすぐに出て彼の支持率とドイツ国民の熱狂さは鰻登りに上がっていく。

 

 

 

 EU諸国(特に東南欧州諸国)は驚きの眼差しと警戒を露わにしたが、世界の目は東アジアの戦争に向いており「彼」の復活はあまり注目されなかった。

 

 

 

 

 

 このときに抑えておけば良かったものをと後世の人々は語る。

 この遠き欧州の1つの出来事がのちに東アジアにも大きな影響をもたらすとは誰も予想し得なかった。

 




昨年、半年間ドイツ中部の大学に語学留学していましたが、美味しかったです。1Lジョッキに注がれたコク深い味わいのビールと甘酸っぱいザワークラウト、そして朝食によく食べたヴァイスヴルスト。
ミュンヘンオリンピックのプールで地元の子供たちに混ざって飛び込み台からダイブして背中を強打したのが思い出(トラウマ)です。
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