斜陽のResistance   作:藤原守理

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本編の合間の一息にどうぞ。
合わせて2006年冬アニメ「よみがえる空 -RESCUE WINGS-」を観てください。良作アニメで泣けます。


番外編~航空救難団~

 皆さん。「航空救難団」はご存知でしょうか。

 

 

 

 「航空救難団」とは、航空自衛隊・航空総隊に隷属する組織で空からヘリコプター等を使っての救助、捜索救難(航空救難)の中核を担う。航空救難団では日本全国に10個救難隊・4個空輸ヘリコプター隊・1個整備群・救難教育隊が置かれており、日々の厳しい訓練に加え万が一の災害・遭難事故に備えて24時間365日、警戒(アラート)待機してます。

 使用機体は主に中型のUH-60Jや大型のCH-47Jといった回転翼機(ヘリコプター)とU-125A救難捜索機という固定翼(ジェット)機です。

 

 彼ら救難隊は4年前の東日本大震災や皆さんの記憶にも新しい2015年9月に発生した鬼怒川氾濫で活躍。消防ヘリでは救助できない状況の中、水没したビルや小学校、病院などに取り残された多くの人々を救出しました。東日本大震災では万を超える被災者の方々の命を救っています。

 

 

 地上や山岳地帯で災害または遭難事故が発生した際、救難員(パラメディック)と航空機操縦士(パイロット)はそれぞれの機体に乗り込み現場に向けて迅速に飛び立つ。

 要救助者の命が助かるのは時間との勝負で、救難に一刻を争います。まず、U-125Aが速さを活かしていち早く現場空域に到着、要救助者の捜索を行う。要救助者を発見した場合、U-125AはUH-60Jに要救助者の位置情報を連絡し、後方もしくは捜索中のUH-60Jはそこへ急行。到着後、着陸してかワイヤーを使った懸垂下降(ラペリング)で要救助者を素早く機内へ収容、救出します。

 

 

 救難員(パラメディック)にはいくつもの試練を乗り越えた精鋭だけしかなれない。その訓練は過酷かつ厳しさを極め、潜水、パラシュート降下、ラペリング降下、山岳救助などを習得する。 最終訓練では、実際に冬の雪山に登山し遭難者(約60kgの人形)を極限状態にまで磨り減った体力と追い詰められた精神のみでヘリコプターで救助する総合訓練を実施する。

 毎年選抜試験に合格した50名程度のうち訓練過程で脱落して最終的には5名前後しか救難員になれないほど厳しい。

 救難員の最終目標は、有事の際には直接戦闘を行いながら救難・看護も行う戦闘救難(コンバットレスキュー)だ。ほぼ全ての隊員は陸上自衛隊のレンジャーに匹敵するサバイバル技術を有している(実際、救難員の多くはレンジャー資格を取得するための訓練も受けるが、優秀な成績でレンジャー資格を取得している)。

 

 

 故に自衛官の中でも第一空挺団と同じく化け物扱いされると同時に尊敬の眼差しで見られる(by広報官)。

 

 

 

 まさに「救難最後の砦」。

 救難隊のモットーは「That others may live(他の人を生かすためになさん・かけがえのない命を救うため・他を生かすために生きる)」。皆、一人でも多くの命を救いたいという信念を抱く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2030年、空自救難隊は中華連邦による日本侵攻によって少なくない損害を受けた。救難ヘリの被撃墜や救難員の戦死。救いたくても救えないもどかしい苛立ちが隊を暗く覆い被さっていた。

 

 

 日本政府による降伏宣言後は日本義勇空軍航空救難団として連邦との戦いに参戦。インドネシア基地、小笠原諸島父島の洋上空港と新たに兄島に建設中の仮の航空基地(現在、ヘリコプターのみの離発着が可能)に配備されて再びの救難捜索任務に就いている…。

 

 

 

 

 

 

 

 

-小笠原諸島父島洋上空港-

 

 

 

「待機中の全隊員へ。ブリーフィング開始、オペレーション集合」

 

 

 待機ルームや格納庫内に散っていた救難隊隊員は一斉にオペレーションルームに集合し、5分もかからず全員次々とパイプ椅子に着席した。プロジェクターの映像を映すため部屋の照明は落とされる。

 

 

 

 

 

「全員席についた?これよりブリーフィングを開始します。説明は私、二等空佐の久佐木が担当します。本日0947時に太平洋上北緯27、東経137の地域で帰投中のF15MJが消息を絶ちました。スクリーンに注目」

 

 

 そう言って久佐木(くさき)神奈(かんな)二等空佐がスクリーンに映し出された地図の赤いピンの地点をポインターで示した。次に1枚の画像が映し出される。

 

 

「これは墜落した機の僚機からの当時の現場海域の画像です。だいぶ画像は乱れているが現在は天候は晴れて波もお穏やか。ですが気象隊からの報告だと南西より熱帯低気圧が接近して天候が乱れるまで時間の猶予はなくなっています」

 

 

 画像とともに気象図が映し出され南西の方角に雲の様子が見受けられ隊員たちの表情は曇り息を呑む。

 

 

「不明パイロットの名は橋爪(はしづめ)貴一(きいち)二等空尉。第403飛行隊所属。小笠原に帰投中に機体が何らかのトラブルで墜落した模様」

 

「橋爪が!?」

 

 

 パイロット名に反応した1名の隊員が思わず立ち上がった。

 

 

「どうしました?」

 

「失礼しました!」

 

「君はたしか」

 

 

 久佐木の問いに隊員は敬礼をして、

 

 

「本日付けでインドネシア救難隊より小笠原救難隊に転属になりました、二等空尉、本条(ほんじょう)大志(たいし)です。橋爪二尉とは同期でした」

 

 

 本条二尉はハキハキとした声で自己紹介をした。

 

 

「本条二尉ね。とりあえず座って」

 

 

 手をあしらうように久佐木は促すと本条は大人しくなって元の席に座った。ブリーフィングは再開される。

 

 

「気象がこの先乱れることは確実で一刻の猶予がない。よって、隊員たちには冷静さは勿論(もちろん)培ったスキルで素早く橋爪二尉の救助が求められる」

 

 

 そこで一息つき、

 

 

 

「本条二尉。君にはUHで機長を、としたいところだが君はまだここに来た直後だ。よって本任務では69号機の副機長として任せたい。メンバーは追って説明します」

 

 

 本条二尉はやや不満げながらも立ち上がり、

 

「了解しました。責任もって橋爪二尉の救助にあたります」

 

「頼みました。U-125には榎本(えのもと)三佐、いつものメンバーで頼みます」

 

「了解しました」

 

「各員、橋爪二尉救出に向けて、任務開始」

 

「了解!」

 

 

 ここでブリーフィングが終了。一斉に各員与えられた部署で救出任務に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、基地の応接室に橋爪貴一二尉の妻と子供が呼び出されていた。そこへ女性隊員が入室してきた。

 

 

「夫は……?橋爪は無事なんですか?」

 

 

 不安げな顔で女性隊員の顔を覗き込む妻。5才の男の子は状況が判らずキョトンとしていた。女性隊員の顔は妻を不安がらせないように無表情を保っているがどうしても顔が無念そうに歪んでいた。

 

 

「…捜索は続いています。しかし、覚悟はしていてください」

 

「…………………」

 

「ねぇ、ママー。パパどうしちゃったのー?」

 

 

 

 強く両手を握り締めて黙り込む橋爪二尉の妻。彼女の小さな身体と心は夫ともう二度と会えない恐怖と絶望に押しつぶされそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本条二尉はパイロット装備を着込んで久佐木二佐に連れられて格納庫に入庫した。

 

 

「紹介する。クルーのメンバーだ」

 

 

 ダークブルーの洋上迷彩をしたUH-60Jを前に一緒に任務にあたる救難員が並んでいた。

 

 

「はじめまして、本条二尉。二曹、倉木(くらき)です」

 

「僕は三曹の萩原(はぎはら)です」

 

「私は衛生員の同じく二曹、我那覇(がなは)です。よろしくです」

 

「私はフライトエンジニア。曹長の若宮(わかみや)です」

 

 

 そして、久佐木は左端の同じパイロットスーツを着た男の前に立ち、

 

「そして彼が機長の前園(まえぞの)一尉だ」

 

「一尉の前園です。本条二尉、これからよろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

 

 全員と握手し、軽くお互いを知るための交流を終えるとすぐさまそれぞれが離陸準備に取り掛かる。並列のコクピットには右に機長の前園、左に副長の本条が座った。

 

 

「現場海域に向けて要請に応じた韓国海軍フリゲート1隻が救助に向かっており…」

 

 

 本部では橋爪二尉の無事を祈って他の軍への救助協力要請を出していた。

 

 

 

 

「…エリボスフォンスイッチON。マストロック高所外OFF。ファイアーガート、ポシュツッド、エンジン」

 

「スタート」

 

「ローター」

 

「エンゲージ」

 

 

 エンジンスタートと同時にUH-60Jの双発ジェットエンジンが唸り機上についた三枚の巨大なローターが回り始めた。周囲の芝生はローターからの強風で横薙ぎにされている。離陸準備は整った。誘導員の指示に従ってUH-60Jと僚機のU-125Aはそれぞれ離陸位置に移動。

 U-125Aは3000mもの滑走路を滑走、空へと飛び立ち離陸に成功した。遅れて本条たちのU-60Jも垂直離陸し、橋爪二尉が救助を待つ海域へ飛行していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディアナ06よりアポロ69」

 

「こちらアポロ69」

 

「そちらから11時方向。そこが墜落現場地点より南に1kmで尾翼らしき物体を発見。位置は赤マーカーで示してあります。至急現場に向かってください」

 

「アポロ69、了解(ラジャー)」

 

 

 現場海域は周りに何もない大海原で目印になるものはなく、パイロットはGPSと乗員からの報告、自らの目を頼りに捜索を進めていく。

 

 

「前園一尉、尾翼を確認しました。周りにそれ以外の浮遊物は認められず」

 

 

 萩原三曹の声が虚しく届く。橋爪一尉の姿は見当たらない。もしかしてといった最悪の想像が隊員の間に伝染する。

 

 

 

 

 

「諦めるな。絶対に見つけるんだ。助けられるのは俺たちだけしかいないんだ」

 

 

 本条の力強い声に希望を絶やさないようにする乗員たち。しかし、捜索開始から3時間も経ち南西からの雨雲が見えるようになっていた。

 

 

 

 波も荒れはじめこのまま見つからずに終わるかと思われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 がその時、

 

 

 

 

 

「前園一尉!何か見えました、11時の方向!」

 

 

 乗員全員その方角を向く。

 

 

「見えました!救命胴衣!要救助者です!」

 

「生きてる!生きてるぞ!生きてるよ…」

 

「生きてる!橋爪…」

 

 

 機体は要救助者の上空に空中停止(ホバリング)し、倉木二曹がワイヤーを腰に装着しヘリから海に飛び込んだ。海を泳ぎ橋爪のもとにたどり着く。

 

 

 

「橋爪二尉!橋爪二尉大丈夫ですか!?」

 

「…あ…あぁ……大丈夫だ…」

 

「要救助者とコンタクト。意識あり!これより収容を開始する」

 

 

 倉木二曹は無線で報告を入れた。

 

 

「了解!」

 

 

 コクピットに座る本条は同期の無事に涙を流していた。涙を拭きスイッチ操作をすると、ワイヤーが巻き戻され橋爪二尉と倉木二曹は一気にヘリに引き上げられる。橋爪二尉は遭難の恐怖から解放されたことで安堵した表情になっていた。

 

 

 

 

「く、倉木二曹…だったか?」

 

「はい?」

 

「帰ったら一杯やろう」

 

「…はい!小笠原に帰ったら俺が奢ります!思いっきり呑みましょう!」

 

 

 倉木二曹の笑顔とその一言に微笑んだ橋爪二尉だった。

 

 

 

 橋爪二尉を収容したUH-60Jと僚機U-125Aは小笠原へと帰っていく。場所は変わっても救難隊の仕事は変わらない。「人助け」だ。

 

 

 

 

 

 

 

 橋爪二尉の妻のいる応接室の電話が鳴り女性隊員が対応した。

 

「えぇはい。…そうですか。…ご苦労様です」

 

 

 受話器を置くと女性隊員は妻と子供のそばに近寄り微笑むと、

 

 

「ご主人はご無事です!たった今救出され帰投中とのことです!」

 

 

 

 それ聞いた妻は夫の無事に嬉し涙を流した。

 

 

 

 

 

 明日の笑顔を見るために今日も彼らは任務を遂行、無事に成功したのだった。

 

 

 




航空自衛隊について-航空自衛隊ホームページhttp://www.mod.go.jp/asdf/about/organization/kuujitowa/
救難員-wiki
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%91%E9%9B%A3%E5%93%A1
救難のプロを目指す航空自衛隊の隊員たち 過酷な訓練に苦戦-YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=k0PBtn0wj3M
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