斜陽のResistance   作:藤原守理

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第11話「不敬と死守」

-2031年5月30日-

-中華連邦極東自治区第1極東経済特区-

-中華連邦陸軍第1軍区皇居駐屯地-

 

 

 

 

 時を遡ること1457年(長禄元年)。大名・上杉(うえすぎ)持朝(もちとも)の家臣である太田(おおた)道灌(どうかん)が本格的な城郭を築いた。その名は江戸城。

 戦国時代には関東一円を治める後北条氏の一支城に過ぎず貧相な城だった。その後、豊臣秀吉の小田原征伐で開城し、秀吉の命(めい)で駿府(静岡)より転居した徳川家康の居城となる。

 

 

 徳川家康から始まる徳川将軍家は居城である江戸城を天下を統べた権勢を大いに活用し、全国の大名に江戸城を大改築するよう命ずる(天下普請)。やがて天を突くが如くの立派な天守閣が象徴するように総構周囲約4里(1里が3.924km)日本最大の面積の城郭を拵(こしら)えた。

 

 江戸の大火を経て天守や本丸は焼失したが二の丸に機能を移して江戸城は存続。そして、王政復古の大号令いわゆる明治維新によって明治天皇と皇族が京都御所から江戸城に転居(東京奠都)し、天皇家の宮城(きゅうじょう)となる。

 

 戦前の日本人にとって宮城は”現人神(あらひとがみ)”である天皇家がお暮らしになられる聖なる地として日本の魂の拠り所となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 2030年。

 中華連邦による日本本土侵攻。原潜からの巡航ミサイル攻撃に始まり中華連邦陸軍は4個軍、海軍は2個空母艦隊、空軍は戦爆連合を集中投入、北海道・北陸・山陰・四国・九州の各地に同時侵攻した。

 

 中でも核となったのは中華連邦陸軍第1軍であった。

 知将・王(ワン)大奇(ターチ)将軍率いる第1軍は海軍や現地工作員ゲリラの支援を得て、19式主力戦車を主体に構成した機甲師団とヘリコプター大隊を使い静岡・茨城両方面から上陸した。首都圏への侵入を防ぐ自衛隊の精鋭である中央即応集団(CRF)や第一空挺団、関東唯一の機甲部隊である第1師団第1戦車大隊を正面から撃破蹂躙して初めに東京を占領した部隊である。

 

 最新鋭の兵器(質)とそれを大規模に投入する(数)。圧倒的な「質と数」を前にいくら練度を高めようが徹底的に防衛費を削られた自衛隊の兵器と隊員は歯が立たなかったのだ。

 

 日本政府が降伏声明を出して東京を無血占領した第1軍は各自衛隊駐屯地へ進駐。天皇陛下の幽閉目的で皇居にも進駐した。また、皇居は元来城郭として設計され軍事学の観点からして部隊を置くには良い立地となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、1年後。2031年5月30日の昼。

 

 

 

「さすがにここまで待機だと……暇だなっ!」

 

 

 ここは第1軍区皇居駐屯地本庁舎。元の皇宮警察本部庁舎を接収して駐屯地の司令部庁舎として使用している。その中の一室で3人の男がトランプを使ってゲームをしている。丸テーブルを中心に腰掛ける3人はどこか退屈していた。

 

 

 ゲームの種類は「ババ抜き」だ。どうも1人の遊び好きな男が行きつけのバーの日本人女性から教わったこのゲームを折角だからやってみたいと言い始めてやり始めたらしい。ついでに男たちは自分たちの所持金を賭けてトランプをすることにした。

 

 

 

 ゲームが終盤に差し掛かって細目の男がそう言い、自分の手札を捨て札の中にわざとぶちまける。乾いた音ともにカードが四方八方に散らばった。

 

「おい、ズルはいけねぇだろ」

 

 察したかのように問うのは目の鋭い寡黙そうな男。その男は1枚のカードを指差す。散らかったカードの中に男が見えたくないカードが隠れ見えていた。

 

「ちっ」

 

「よし、賭けは俺の勝ちだ。残り全部もらうぜ」

 

 男たちの中央に積み上げられたコインを発起人の遊び好き男が全てかっさらう。

 

「もってけ、クソ野郎」

 

 ズルが発覚したばかりに負けた岩みたいに大きな身体の男は、面白くねぇと口ずさんで眉間に皺を寄せる。それでもって肩慣らしをした。

 

 遊び男が次の賭けゲームの準備をしようと立ち上がったとき、

 

 

 

 

 

 

「相当暇なようだな。諸君」

 

「誰だ!?」

 

 

 声のする方を凝視する男たち。

 そこにはドアの横にもたれ掛かった1人の老紳士が居た。茶色の布地に黒く線の入ったシルエットのイタリアンスーツ姿。それを身にまとう老紳士は背筋が軸をなし、頭に被った茶色のパナマ帽から覗く表情から穏やかな印象を相手に抱かせながらも瞳孔は獲物を狙うが如く、鋭く先を見据えている。

 

 

「誰だ?貴様?ここは民間人立ち入り禁止だ!クソ老人!」

 

 正体不明の老人に吠える岩男。すると、

 

 

「この顔を見んと判らんのかね?」

 

「なんだと、この……えっ!?」

 

 

 老紳士は頭に被った茶色のパナマ帽を外した。露(あら)わになった顔。右頬に走る一筋の傷跡が人目をい引くが、微笑んだその表情から穏やかな印象を相手に抱かせる。しかし、眼光は獲物を狙うが如く、鋭く先を見据えている。

 その顔を見て男たちは血の気が引く。

 

 

 

 

「し、し、失礼しました!!!お疲れ様です!王(ワン)閣下!」

 

「ん?うむご苦労……」

 

 

 目の前にいるのは第1軍区総司令官の王(ワン)大奇(ターチ)上将(大将)、その人である。

 中華連邦国防大学を卒業後、少尉として入隊した若き頃から勇敢に陣頭指揮をこなし優れた戦略を以て敵を駆逐した名指揮官であるが、歯向かう部下や捕虜を問答無用で粛清したり絶対的暴力(蹂躙)を尊ぶ精神(本人曰く、「芸術だ」)を持つなど怖しい一面も持ち合わせており、部下や同期たちでつけられた別名が「狂犬」。年老いた今もなお闘争心を失っていない。

 そんな第1軍の最高司令官を前にして男たちはビシッと敬礼する。司令官をクソ呼ばわりをした…これは粛清かと頭の中で不安が駆け巡り冷や汗で制服がびしょ濡れになる。

 王(ワン)は3人の恐怖に支配された顔をじっくりと眺める。そこでふと見覚えのある顔があることに気づく。

 

 

「おや?君はたしか…趙(チョウ)浩然(ハオラン)少校(少佐)の…?」

 

 寡黙そうな男がビクッとして答える。

 

 

「はい!兄・趙(チョウ)浩然(ハオラン)の弟、趙(チョウ)浩胤(ハオイン)中尉です!」

 

 彼は中華連邦陸軍第2軍で戦線に出ていた趙(チョウ)浩然(ハオラン)大尉の弟である。なぜ、王(ワン)上将が兄を、と気になった趙(チョウ)中尉。

 

 

「閣下……兄をご存知で…?」

 

「あぁ。君のお兄さんは私と防大(中華連邦軍国防大学の略称)で師弟の契を結んだ優秀な生徒だった。非常に残念だった…」

 

 

 趙の兄、浩然(ハオラン)大尉は長野山中で装甲車部隊を率いて日本義勇軍基地を捜索中、敵部隊の襲撃で部隊は全滅。なお、浩然(ハオラン)を始め、部隊兵士の大半は狙撃によって射殺されていた。

 趙の兄弟はかつて孤児だった。2歳差であった2人の幼かった兄弟は貧しくも2人で支えあって社会を生き抜いてきた。2人とも記憶力が良く勉強が出来たため2人とも給料と衣食住を保障してくれる軍の大学、国防大学へ入校し軍へ将校として入隊した。浩胤(ハオイン)にとって浩然(ハオラン)は兄にして唯一の家族だった。愛しかった兄の死を知って弟は孤独を嘆き悲しんだ。だが、不思議と敵への復讐心は湧かず、どうすればいいのか判らない行き先不明の鬱憤が彼を腐らせつつあった。

 

 

「いえ、兄も閣下にそう思われて無念無きことでしょう」

 

 趙がそう言い終えたところ、王が横のテーブルを握りこぶしで叩き割った。

 

 趙は割れたテーブルを見て驚いてしまう。なにか怒らせたのかと。それは違った。

 

 

「否。まだだ。趙(チョウ)浩然(ハオラン)と大勢の同志たちの無念を果たせていない!未だに抵抗する憎き小日本人(シャオリーベン)どもを殲滅しなければならん。趙(チョウ)中尉!君には兄さんの仇を取らないのかね?」

 

「…いえ、私は…」

 

「私には解(わか)る。君の行き場のないその心を!」

 

「えっ!?」

 

 

 心中を見透かされたのかと驚く趙。微笑むようにして王はまくし立てる。

 

「そうだ。君の中に不可解蠢(うごめ)くものがあることを感じているはずだ」

 

 

 思わず話に釘付けになってしまう趙。

 

「それは、穴だ。孤独という穴だ。私は知っている。君にとって浩然(ハオラン)は唯一の家族だ。君から家族を奪い去った悪鬼を滅ぼしたい。君の穴にはそれを埋めるピースがあるだろう」

 

 

 趙は内から熱くも黒い気持ちが沸き立つのを感じる。この目の前の男、王(ワン)の言葉一つひとつが身に染みて彼の気持ちを沸き立たせてゆく。

 

 

 

 

「『Peace』と『Pieces』。英語では似たような発音のそれぞれ異なる意味を持つ言葉だが、日本語では『ぴーす』と1つで呼ぶ。それぞれの意味は和平(平和)と碎片(欠片)だ。君のその孤独に兄さんを殺した敵の屍を欠片として埋めよう。私が君に力を授けよう」

 

 

 

 

 

 

 

 趙は全身に痺れるものが一挙に流れ精神が一つに統一される……感覚がしたようだ。

 

 

「趙(チョウ)中尉だけじゃない、この場の諸君そして軍全体で小日本人どもの撃滅に精力を注いでくれたまえ!」

 

 王は先ほどと打って変わった激烈な表情と眼差しを趙に向けた。王の感情は悲しみに満ちているようだ。

 

 

「はい。私の兄の仇をこの手で絶対に討ち果たします」

 

 

 王(ワン)からの激励に兄を殺した日本人への復讐心を滾(たぎ)らせる趙(チョウ)中尉。王(ワン)上将の特技の1つに部下の心を掌握(洗脳)する巧みな話術があった。趙の性格と思考はそれから変わったのだった。

 

 

 

「よろしい。そこの君たち2人も趙中尉とともに今後精進してくれ給え」

 

「了解しました!」

 

「うむ。これから私は用事があるからお暇させてもらうよ」

 

 

 王はその場を去った。腹の中で趙中尉の復讐心を利用する算段を企てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな王(ワン)が庁舎を出て向かった先は、皇居の新宮殿。天皇陛下のお住まいだ。

 

 

「お疲れ様です。王(ワン)将軍」

 

 新宮殿の入口には2人の歩哨と1人の燕尾服を着た眼鏡の役人が出迎えた。

 

 

「ご苦労。彼らの様子は?侍従長」

 

 眼鏡の男は侍従長と呼ばれ、普段は宮内庁侍従職の長として皇族の事務の補佐を行っている。

 

 

「至ってお変わりありません。」

 

「結構。これから面会でもしようじゃないか。薄汚い猿のボスと」

 

 王はイタズラ心で鼻の下を延ばし唇の下を右手でなでて、日本人と天皇陛下を侮辱するジェスチャーをした。

 

 

「…下郎が…」

 

「ん?なにか言ったかね?」

 

「…いえ、何でもございません。案内いたします」

 

 

 侍従長は悔しさで歯ぎしりしながらも冷静になって天皇陛下のお待ちになられる正殿・竹の間に案内した。

 

 正殿・竹の間とは。主に、天皇・皇后両陛下が外国の国家元首・外国政府要人と会見し、又は皇居を訪れた日本政府関係者及び民間人を引見する等の儀式並びに行事に使用される部屋であり、本来軍服姿で土足で踏み鳴らして歩く軍人の来るべきところではない。

 

 

 

 

 

 

 

「よくおいでになりました」

 

 

 徳仁(なるひと)陛下が王(ワン)上将に歩み寄って丁寧に歓迎した。

 

 

 2018年に今上天皇・明仁(あきひと)陛下が突発的な心臓発作で崩御なされた。その翌日には年号が平成から変わるとともに皇位継承順位第1位の皇太子徳仁親王が次期天皇にご即位された。2031年現在の日本占領下で天皇家は国内の日本人の独立心の引き金にさせない目的で国内各所で幽閉されている。一部には鳩岡率いる日本政府に不審を抱いた自衛隊勢力と結託しようと画作した皇族が逮捕後強制収容所へ収監されている。徳仁天皇一家はここ、皇居に幽閉されている。

 

 

 本来、天皇陛下に歓迎された要人はここで敬意を示すのだが、狂犬・王(ワン)は違った。

 

 

 

 

 

 

 

 いきなり殴ったのだ。

 

 

 顔を殴られた天皇陛下は後ろに倒れ込んだ。

 

「ギャハハッ!見ものだ」

 

 

 王(ワン)は拳を掲げてクソ日本人の王を殴り倒したと笑って達観していた。

 

 

 

「陛下!」

「貴様!何をするか!」

「野郎!」

 

 

 一部始終を見ていた侍従長を始め全職員は王に殴りかかった。

 

「撃て」

 

 王(ワン)の命令で彼の護衛が9mm拳銃を職員に発砲した。

 

 

「うがぁ!?」

 

 9mm拳銃弾は殴りかかった近くの職員2名を貫いた。胸を撃ち抜かれた職員は血液を噴き出しながら倒れてしばらく痙攣した後、息絶えた。他の職員は即座に取り押さえられた。

 

 

「クソっ!?」

 

「これ以上動くな。また人形(したい)を作りたいか?なぁ侍従長。なぁ日王。ハハハッ!惨めだな!逆らえばまた大事な日本人が死ぬぞ?妙なことはしないことだ」

 

 

「…………………」

「……」

 

 

 王の護衛に銃で脅される職員たち。占領下で自らを守ることすらできなくなった今では天皇陛下を愚弄し殴り倒して宮殿をあとにする王(ワン)を黙って見逃すことしかできない有様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-2031年5月30日-

-北海道夕張市紅葉山-

-新夕張駅[17:15]-

 

 

 

「あんだありゃ!」

「迎撃した?」

 

 

 74式戦車の乗員は今起こった目の前の出来事に目を疑った。

 搭載されているL7・105mmライフル砲の初速は1秒に1,490m。

 

 その速さで飛ぶ砲弾を目の前の化け物はこの数百mの近距離で音速に近いそれを迎撃したのだ。

 

 

 

 普通科隊員の89式小銃やM2機関銃、AH-1Sコブラと74式戦車の銃砲撃。榴弾砲による後方からの支援攻撃。それらの集中された火力を物怖じせず銃弾を躱(かわ)し弾いて塹壕に10km/hでじりじり迫る。

 

 化け物の先鋒集団が前方の塹壕に到達する。

 

 

「ヤバい!?」

「来やがった!?」

 

 塹壕内で応射する隊員だがバルカン砲で次々に挽き肉にされていく。

 

「逃げるな!家族を守るんだ!」

「何としても食い止めろ!」

「火炎放射器持って来い!」

 

 

「来たぜ」

 

 携帯放射器。背中の2つの重いシリンダー。それらシリンダーからパイプでつながれた銃部に可燃性液体と着火用圧搾ガスを吐き出して火炎として放射する凶器。第二次大戦では独ソ戦と太平洋戦線で塹壕にこもる敵に使用された。

 

 これを装備した隊員が颯爽に駆けつけ、引き金を引いた。ガソリンとタールを混合させたゲル状燃料の導火液に着火した火炎を轟々と化け物に浴びせていく。

 

 

 

「燃えろ!化け物!」

 

 火炎放射を浴びて敵の動きが止まった。肉の焦げる何とも言えない臭気が蔓延する。

 

 

「効いたか……って!?」

「ファっ!?」

 

 

 

 今度は着火した粘着性のあるゲル液を纏ったまま化け物が突撃してくる。

 

「来んな!?」

「あちぃ!?」

 

 炎で覆われる前方の第1塹壕。閉鎖的な塹壕内で一気に火が広がると隊員たちは直接焼死するよりも酸素の急激な喪失、窒息で死んでいく。

 

 

 

 

「ありえない……」

 

 前線の地獄絵図に唖然とする74式戦車乗員。

 

 

「おい、ボケっとすんな!さっさと撃てぃ!」

 

「り、了」

 

 

 車長からドヤされた砲手は再度正体不明の化け物目掛けて照準を定める。さっきのはマグレだ、そう思考を切り替え、トリガーにかけた人差し指に力が入る。

 

 

「!?」

「新田車が!」

 

 化け物の一群から光が見えたと思うと一瞬にして新田一曹指揮の74式戦車が砲塔ごと爆散した。

 

 

「奴らランチャーまで装備してやがる…」

 

「今度はこいつだ!これは迎撃されんぞ!」

 

 

 

 

 キャニスター弾。

 対人用の戦車砲弾でいわゆる散弾。対戦車兵器を持って接近してくる歩兵部隊をまとめて撃破するために開発された弾で、この機動戦闘車用に導入されたM1040対人キャニスター弾は対人戦闘で絶大な威力を持つ評価だ。

 

 

「撃っちまえ」

 

 

 そして、赤黄色の砲火とともに轟音を鳴らして対戦車徹甲弾は発射された。音速に近い速度で目標に向けて砲弾は飛ぶ。 

 砲弾は発射されたと同時に細かい丸い粒になって化け物たちに着弾した。

 

 

「やったぞ!」

「効果はあるみたいだ」

 

 

 散弾をモロに浴びた先頭の数体は肉の塊と化して倒れたようだ。74式戦車の活躍をみて普通科隊員は歓声を上げた。

 

 

 

 

 

 

「おい、やったぞ!旧式が!」

 

「おい、旧式言うな」

 

 

 第2塹壕で身を伏していた松原と清元は他の普通科隊員と同じく喜ぶ。

 

「戦車を援護するぞ!迫撃砲用意!」

 

即座に迫撃砲の設置が完了。

 

「準備よぉし!」

「よぉぉぉぉい、てぇ!」

 

 

 後方の81mm迫撃砲 L16複数基から気抜けた発射音と同時に砲弾が発射。ヒュルルと唸って目標座標に砲弾が着弾、化け物たちが爆炎に包まれる。キャニスター弾ほどではないものの敵の外部組織に傷を負わせたようだ。

 

「いいぞ!」

 

『こちらコブラ01。弾切れのため一時撤退する』

 

 

 

 上空援護のコブラ2機は弾薬補給しに後方へと飛び去っていった。師団の隊員たちは生物兵器の登場に驚きながらも十分に対抗できることから冷静さを取り戻しつつあるが、

 

 

「嫌だ…もう嫌だ嫌だ」

「挫(くじ)けんな!ほらっ!」

「こいつシェルショック状態だ。衛生班!」

 

 

 シェルショック。爆音を伴う塹壕に対する砲撃による神経異常で身体の一部または全身の震えが止まらなくなる。第一次大戦の東西塹壕戦で兵士たちに見られた。

 

 

 夕張の長期間もの塹壕戦と止むことのない砲弾の爆風爆音で身体の震えが止まらなくなったり戦意喪失、狂乱状態に陥る心的外傷後ストレス障害(PTSD)の隊員が出始めている。

 

 

「ヤバい!アイツ狂って突撃しやがった!?」

「構うな!ほっとけ!」

 

「って弾倉が!?」

「弾切れだ!おい、清元一士!」

「はい!」

「弾持って来い!松原三曹は清元を援護しろ」

「了解」

 

 

 塹壕内では徐々に弾薬不足が露呈してきたのだ。新夕張での戦闘が始まって1週間以上になったが後方からの物資輸送が爆撃による足止めを食らって届かずに医療物資も不足しつつある。

 

 前線だけじゃなく北海道全域で食糧から燃料、生活物資に至るまで枯渇しつつある。

 市民の中には餓死者も出始めているが、中華連邦側はゲリラ対策に食糧を求めて逃げてきた市民も敵とみなして殺害する声明を出しているため、逃げ場がない。このままでは前線と航空優勢(エアカバー)の維持もままならなく北海道の日本義勇軍と数十万の市民は物資を必要としていた。

 

 2人は紅葉山にある補給処(ほきゅうどころ)へと向かい走っていった。

 




明日、UH-1ヘリコプターに体験搭乗してきます!楽しみです!
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