嘘だけど。(凍結)   作:雨天 蛍

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生存報告用ゆとり視点物語。
ゆとりちゃんは重要人物ですよー

短めの上パロディありです。


閑話~我が名はゆとりん!~

 親指姫の親戚で人差し指少女のゆとりです。嘘だけど。

 今日、というよりこれからは見渡す限りの耕作地にポツンと立つ家、幽香さんの家に住むことになった。自己紹介はしたので特に話すこともする事もない。

 

「ねえ、貴女何か好きなものはある?」

 

 唐突に幽香さんが話しかけてきた。

 

「お姉ちゃんですね」

 

「刷り込みのせいかしら……この子の世界に姉しかいないわね」

 

 幽香さんは私をどこぞの雛鳥と間違えてるのだろうか。随分失礼だが的を射た考えを漏らす。

 そりゃあそうだ。私はお姉ちゃんのスペアとして生まれたのだから。私の全てはお姉ちゃんの為にあるのだ。

 

「紅茶でも飲む?」

 

「いりません」

 

「クッキーでも食べる?」

 

「お腹はすいてません」

 

「は、花には興味あるかしら?」

 

 徐々に幽香さんの額に青筋が浮かんできた。

 

「そうですね……強いて言えばあそこにある向日葵ですかね」

 

 そう言って私はピンク色の着物を突き破って咲き誇っている人の形をした向日葵を指さした。ここから窓の向こうに小さくだが見えるのだ。

 あれが私の生まれた理由で私が死ぬ可能性のあった場所。

 

「ああ、木五倍子が向日葵になった場所ね」

 

「文字だけ読めば矛盾というか不可解なことが起こってますよね」

 

「あの子にぴったりだわ」

 

 私の分も紅茶を用意して一口含む幽香さん。

 私の中のお姉ちゃんがむくむくと起き上がって来たのでそれに従ってみる。

 

「ところで聞きたいのですが、お姉ちゃんとはどこまでやったんですか?」

 

 ブフォ。と紅茶をぶちまけた。私にもかかったがこの程度の被害は承知でやったのだ。

 

「あ、貴女のお姉ちゃんとは清い関係を築いているわ」

 

「そうですか」

 

「そ、そうよ。ところで、どうして貴女。ゆとりは妖怪なのかしら?」

 

 露骨な話題転換をしてきた。

 

「分かりません」

 

「元は大妖怪というか歴史的妖怪並みの力があったらしいけど、私とゆとりで二分にされたらしいのよね」

 

 私は完全にお姉ちゃんの分体だが、幽香さんはどちらかというと隷属しているような状態なのだ。

 といってもお姉ちゃんに妖怪としての成分は種族と鏡渡りしかないので幽香さんを縛ることは出来ないし、ある程度親近感が湧くくらいしか影響はないらしい。

 全てお姉ちゃんが考えた事だけどね。

 

「そもそも形状記憶の能力のせいでお姉ちゃんは時間で妖力を回復できなかったので要らなかったのだと思います」

 

「魔力は時間以外の方法でも比較的簡単に取り戻せるから私達には渡されなかったという事なのかしらね」

 

「そうだと思います」

 

「ふうん……まあいいわ。なんだか妖力を取り込みたてのせいか疲れやすいのよね。もう寝ましょう」

 

「はい、おやすみなさい」

 

「ん、おやすみ、ゆとり」

 

 

 

 

 

 始めて見た時に、心が惹かれました。それから、その声に、顔に、心に安心と愛おしさを感じました。

 

「お姉ちゃん」

 

 私の無意識の呟きによって目が覚める。どうやら私が生まれた時の頃を夢で思い出していたらしい。

 まだ朝日が昇ったばかりだが、ここで二度寝をするという選択肢を取れば次は昼前に起きるのでやめておくことにした。

 まだ幽香さんが隣で寝ているので起こさないようにベットから降りて外にでる。

 まだ春先だが向日葵を育てるために休耕してむき出しの土になっている地面をあまり踏み固めないように慎重に歩いて向日葵の元に向かう。

 この向日葵は太陽を追わない。だが、私が近寄ったことに気付くとこちらを向く。

 

「お姉ちゃん」

 

 この向日葵も、意志は無くなり肉体の器だけが残ったものだが

 

「大好きです。髪も唇も体も心も全て。肉体が変わろうとも」

 

 別の選択肢を取ったお姉ちゃんが私を殺そうとしても。

 その選択肢を再現するように笑いながら。

 

「…………あいしています」

 

 朝露に向日葵が濡れている。だがそれは別のお姉ちゃんが流した涙のように思えた。

 踵を返して幽香さんの家に戻る。 

 

 私の能力は『選択肢を見る程度の能力』だ。どういう行動を取ればどの結果が出てくるかがある程度は分かる。

 そして、見えるのだ。とってももしもにもしかしての世界が。

 

 私はお姉ちゃんの予備だ。

 生まれた理由も存在する理由も全てお姉ちゃんの為にある。

 そんなお姉ちゃんの願いは私に無邪気に笑って過ごしてもらう事らしい。

 

 

 

 

「おはよーございまーす!」

 

「…………」

 

「朝ですよー!朝食の準備はしておきましたからね!」

 

「え、ええ。着替えてから向かうわ」

 

「まったく、幽香さんはねぼすけですね!」

 

「ねえ、ゆとり」

 

「なんですか?ナンパですか?貴族並みに裕福じゃないと私はなびきませんよ」

 

「自分で生きる気力皆無ね。そうじゃなくて、貴女昨日何か変な物でも食べたかしら?」

 

「幽香さんの紅茶を少々」

 

「あとで屋上に来なさい」

 

 くだらない冗談を交わしながら、私はこれから一緒に生活するお姉ちゃん好みのお姉さんにもう少し親しくなろうと思った。

 全てはお姉ちゃんの望み通りに。

 

 

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