真剣で私に恋しなさいSS(ダブルエス)   作:雷の人

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第五話:箱根決戦大和VSクリス~前編~

:箱根湯本:朝

 

「げほっごほっ」

 

決戦の朝、大和は見事に風邪をひいていた。

 

「どーすんだよ、今日クリスと勝負だろ」

「熱出てたら無理だよ、やめた方が良いよ」

 

問いかける翔一と心配そうにするモロ。

 

「やめた方が良いっていうかバレたら勝負してもらえないだろう、体調管理も勝負のうち、不戦敗になる」

「だな、風邪でリタイアでも負けだ」

「それはイヤだ、勝負を挑んだ以上必ず勝つ」

 

大和の前に放り出される小さな紙袋、開いて中身を見れば風邪薬や解熱剤などが入っている、放り投げたのは忠勝だ。

 

「さっき宿の人からもらってきた、それ飲め、少しはマシだろ」

「ゲンさんは止めないんだ」

「どうせテメェの事だ、止めてもやるんだろ」

「まぁね」

「なら俺様たちは見守るだけだ」

「もぅ・・・無理そうだったら止めるからね?」

「まぁ大和なら大丈夫さ」

「だな・・・・・・さて、と」

 

悠が、口元に指を一本立てて、足音どころか衣擦れの音一つたてずに入口へと寄る。

 

「くせものぉ!!!!」

「ひぇっ!?」

 

扉の外にはまゆっち。

 

「今の話ぁ聞いていたか」

「は、はい・・・皆さん中々いらっしゃらないので呼びに来て・・・・・」

「成程、悪いが頼みがある」

「タノ=ミ?(1398~1433)・・・・・・ああ、頼みですね!はい何でしょう」

「大和が熱出してる事ぁ女子連中にゃ黙っててほしい」

「で、ででででも、そんな状態で勝負なんて・・・・・・」

「アイツがそれを望んでいる、何より俺らはその意志を尊重したい、頼む」

「でも・・・・・・」

「おいおい無理はよくねぇよ、体大事にしないで知能派名乗れるかっちゅー話しだぜ?」

 

ここ最近出番の無かったマスコット松風が口を出してきた。

 

「黛、頼む」

 

まゆっちの肩を掴んで眼を見つめていう悠。

 

「あぅあぅ・・・・・・わ、分かりました」

「説得してきたぞ」

「なんか今の大和っぽい説得だったね」

「説得というかゴリ押しじゃねぇか」

「まぁ結果オーライっつーことで」

 

:箱根山中河原:午前九時

 

「じゃあこれよりクリス対大和のタイマンを行うぜ」

「ジャッジ兼司会進行は私とキャップ、悠で行う、夜露死苦」

「三人体勢で公平なジャッジを行うぜ」

 

「やや風邪気味とのことだが大丈夫か?大和」

「なぁに、問題ないさ・・・さぁやろうぜ」

 

「私とキャップ、悠は三分ほど考えた・・・公平な決闘法を」

「んで結局のところ川神戦役の縮小版をやろうかと」

「まぁ聞いた限りじゃかなり公平だったんで俺も認可した」

 

川神戦役とは、本来川神学園で行われるクラス単位での決闘方法である。

決められた勝負数に対し、本来はクラスごとに代表を選出して行う競技ではあるのだが、今回はタイマンということで、種目はクジで、五本先取ということでルールが決まった。

なかに入っている勝負は知力、体力、運、総合力、技術など様々なものが要求される勝負を、悠、百代、翔一の三人が考えて入れてある。

 

先ずはクジの順番を決めるじゃんけん、大和の言葉に引っかかったクリスが、見事に負ける。

 

「さ、最初のクジを引け大和」

 

ガサゴソガサゴソ

 

「あんっ!そ、そこは・・・」

「今日の運気を試してみるか・・・」

「中をかきまわすなんてぇ・・・」

「おい、誰か京のイマジネーションプレイを止めろ」

「椎名、いい加減にしやがれ」

「チッ」

「おいおい、こいつ舌打ちしやがったぞ・・・」

 

「俺は・・・・・これを選ぶ!」

 

コントをしているうちに大和が最初のクジを選んだ。

 

「どれどれ・・・・・・・大和、お前岳人の芸人体質うつったか?」

「へ?」

「chain death matchだ。」

「ははははは!!!!!殺せよ」

 

大和が壊れた、分からないでも無いが。

 

「よりによって肉弾系引いてどうするのさ」

「不運極まれり、だな」

「ここまでくれば不運を通り過ぎて無運では?」

 

憐れむ視線を送るモロと忠勝、紫。

 

「ふふふ、コレは面白いなぁ大和?ははははは」

 

高笑いするクリス。

 

「ギブアップかライン外に出るかで負けな」

 

と、ルール説明しながら百代がラインを地面に描いている。

 

「特殊ルールとか無い普通のチェインデスマッチ?」

「円から出たり危ないことさえしなけりゃなんでも有りだ」

 

翔一により、腕を鎖でつながれる大和とクリス。

 

「じゃ、第一試合、いざ尋常に・・・・・・勝負、始め!!」

「ふ、クリス」

「何だ?」

 

唐突に大和が語り始めた。

 

「俺は例え試合でも女の子に手をあげるような真似は出来ない」

「それは自分を戦士と見ていない、愚弄だぞ大和」

 

少しばかり、ムスッとした表情になるクリス。

 

「これは誇りをかけた勝負、遠慮は無用だ、来い」

「勝手な自己満足は覚悟の上だが、もう一度言おう、俺は女の子をぶん殴るなんて出来ない・・・・・だから、ギブアップ」

「第一試合勝者!クリス―――ッ!!!」

 

翔一による勝利宣言がされるが、クリスは納得いかない様子。

 

「大和らしいっちゃらしいか」

 

どうあっても勝目は無い、無駄なダメージを受ける前にギブアップが最良、だがただ負けるのは本位では無いしクリスも納得しない、ならばこじつけでも理由をつけてギブアップしよう、ということなのだろう。

 

「自分が引いたのはこれだ」

 

クリスが引いたのは絵画勝負、内容はまゆっちをモデルに絵を書く、モデル選別理由は両者にとって付き合いが同じぐらいの人物、という理由からだ。

 

:一時間後

 

大和とクリスと(何故か)翔一がそれぞれ書き上げた絵を持ってきた。

 

先ずはクリスの絵、風を受けながら川辺に立つ姿が綺麗に描かれていた。

 

次の大和は、ファミリーの皆に囲まれて、幸せそうに笑っている絵だ。

 

まゆっちは、自分を綺麗に描いてくれたクリスに詫びながらも、大和の絵を選んだ。

 

「ちなみに俺の絵はこんな感じだぞ」

 

そういって、翔一が自らの書いた絵を見せる。

 

「え!?写真?違う、普通に油絵だ」

「相変わらずありえない上手さです」

 

続いて大和が第三戦のクジを引く。

 

「大和お前大丈夫か?今日のお前芸人体質になってるぞ」

「そういうのは岳人の役目だ・・・・・・これだ」

「・・・・・・」

「なんで無言なんだよ」

「肝試しゲーム」

「私の希望で入れた勝負だな」

 

悪い予感しかしない。

 

「さて、競技の説明をする、騒いだら骨外す」

 

なんという脅し文句。

 

「取り出したるは細長いチョコの菓子ポッケー、この端を自分でくわえて向こう側の端を異性に咥えてもらう、そして異性が端の方からだんだん菓子を食べてくるので・・・顔が接近してくるのに何秒耐えられるかを競うチキンレースなのだ、口を離したらゲームオーバー」

 

本気でロクでもないゲームだった。

 

「ふっ、じゃあ俺からいくぜ!」

 

どこか自信満々な大和。

 

「来い!ワン子!」

 

成程、と思ったが。

 

「悪いが大和、一子とやっても無効試合だ」

「え?」

「お前の相手は・・・・・」

「まさかアイツでは」

「そういう相手とやってこそ肝試し!京!出番だぞ!!」

「・・・・・・(もじもじ)」

 

顔を赤らめながら、大和に歩み寄る京。

 

「ゲームとはいえもし、唇が合っちゃえば・・・・・既成事実だね、責任とって結婚だよ(ポッ)」

 

ぐらり、と体が揺れる大和、一歩間違えば即結婚を迫られる状況、分からないでも無い。

 

「どうした弟ぉ、これもギブアップか?」

「いや、流石に二度も逃げられん」

 

覚悟を決めた大和。

 

「じゃあ先ず大和が咥えて」

 

ぽっけーを咥える大和。

 

「ふふふ・・・・ちょっとだけ待っててね、心の準備があるから」

 

一分ほどが経過すると、京がOKサインを出す。

 

「んじゃあはじめるぜ」

「じゃあ行くよ、はむ」

 

翔一の合図で、京がポッケーの端を咥える。

 

READY

 

「始めるぜ!」

 

START

 

「ふっ!!」

 

気合一閃、ポッケーをまったく噛まないで大和の唇狙って一直線に飲み込む京。

 

「!?」

 

それを見事な反射で回避する大和。

 

「あっぶね・・・・つーか食う速度はえーんだよ!!!」

「・・・・・・惜しい」

「京さん、矢張り掛け声無しで無拍子を狙うべきだったのではないでしょうか?」

「うん、そうだったかも・・・」

 

なんか怖い相談をしている、が。

 

「つーわけで大和、一秒ジャストな」

「回避しないとキスされて既成事実扱いだった、これは公平じゃない」

「安心しろ大和、クリスの相手は~~~だ」

 

大和に耳打ちする悠。

 

「まぁそれなら納得かな」

 

そんな話が展開されているとは露知らずなクリス。

 

「では自分の番だな、一秒だろう?ふ・・・軽い軽い」

「ではクリスの相手は・・・・・・」

 

わざとらしくタメを作る百代、そして。

 

「カムヒア!!自称ナイスガイ!岳人!」

「はぁあああい!!!ご指名はいりましたぁあああ!!!」

 

気合十分、何故か上半身裸でスタンバっている岳人。

 

「何故脱ぐ!?」

 

最もすぎる疑問だ。

 

「男の、本気ということだ、それを感じてくれ・・・・・・俺様も緊張で乳首のあたりがジンジンするぜ」

「むむむ・・・」

「このゲームの存在知ってたけど、やるのは初めてだぜ」

「まぁ自分もだが・・・・・・」

「相手がクリスで良かったぜ・・・・・さぁ、咥えて!!」

 

欲望丸出しなバカ面でポッケー片手にクリスに詰め寄る岳人。

 

「うっ・・・・・」

 

傍から見ててもあれは耐え難い、多分・・・・

 

「さぁほら、はぁ・・・・はぁ・・・・」

 

めっちゃくちゃ息が荒い。

 

「無理だぁああっ!!!気持ち悪すぎる!!!」

「おぐふっ!?」

 

いい角度でクリスのアッパーがガクトの顎に叩きつけられる。

 

「はいクリスは記録ゼロ秒、勝者大和ー」

 

友人が殴り飛ばされてもドライに審判をこなす悠。

 

続く勝負は二択でチンチロリンか百人一首。

 

「博打だと大和が何をするか分からん、百人一首で頼む」

 

互に札を記憶する時間、だが、大和の体が僅かに揺らいでいる。

 

「おい兄貴、直江の奴・・・・」

「ああ、そろそろ薬、切れてきたか・・・」

 

ほかには聞こえないぐらいの声量で、忠勝と会話をする、大和がかなりキツそうだ。

 

そしてこの勝負、なんとクリスが勝利する。

 

最初の一文字で反応しようとした大和に対して、子音で既に取る準備まで済ませていたクリス、そうなれば単純に手の早いクリスの方が取る、というわけで。

 

「というか大和、熱上がってきてない?」

「どれ、額かしてみろ」

 

京と百代が大和の体調に感づく。

 

「いやいや、心配ご無用・・・ゲホッ」

 

咳き込む、本格的に薬の効果が切れたんだろう。

 

「・・・・・!もうダメです、松風、私は行きます!」

「行けまゆっち!まゆっちならできる!」

 

意を決した表情になるまゆっち。

 

「そ、その大和さんの熱が上がってきたのでは無く、元からもう・・・・かなり高熱だったんです!」

「おい、まゆっち!」

 

焦って止めようとする大和。

 

「熱を薬で抑えて戦ってたんです!」

「まゆっち黙って・・・・・!」

 

これでは勝負が止められ、不戦敗になってしまう・・・そう、大和は思ったのだろう、だが・・・

 

「だって・・・・・・だってもう見てられません!」

 

眼に涙を浮かべるまゆっちの剣幕に、大和が怯む。

 

「熱が出ているのに無理してまで戦うのが友達なんですか!?ち、違うと思います!!!友達っていうのは・・・その、よく分からないですけどこうじゃなくて、その・・・・・」

 

言葉に詰まり言い淀む、しかし。

 

「大和さんとクリスさんには仲良くして欲しいのに・・・・・う、うぅ・・・・・」

「お、おぉ・・・・・」

「まゆっち・・・・・」

「す、すいません・・・・・・私みたいな新参が・・・・・でも、どうしても言いたくて・・・・・」

 

その背中を、ポンと叩いたのは悠と翔一だ。

 

「よく言った黛」

「ああ、思った事をズバッと言ってもらわないと」

「え・・・・・・」

 

驚きの表情を浮かべるまゆっち、それを横目にニヤリと笑う百代。

 

「弟ぉ、薬で誤魔化していたのか」

「ったくさぁ、どーでも良い時はすーぐギャーギャーいうくせにこんな時だけ黙っちゃってさ」

「だって言ったら確実に不戦敗だったろ?やだね」

 

大和が、今度はまゆっちへと視線を向ける。

 

「まゆっちは仲良くして欲しいと言ったけど・・・・これはそのために必要な戦いなんだぜ、クリスに、俺を認めさせるために・・・・だから引き下がれない、男の、意地があるんだ」

「へっ、良い事いうじゃねぇか」

「ガキンチョだなぁ・・・・」

「まぁそれを容認した俺らもガキンチョか・・・・・」

 

フッ、と忠勝が笑みを浮かべる。

 

「とにかく、このままじゃ引き下がれないんだ・・・・でもまゆっちに心配かけた事は反省する、確かに見てて気分はよく無いよな」

 

今度は、クリスの方へと向き直って。

 

「クリス、提案なんだが」

「聞こう」

 

クリスもまゆっちに心配かけさせた事に罪悪感を感じたのか、大和の言葉を素直に聞く。

 

「今丁度2対2だから、次で決着にしないか?」

「五本制を三本制か、構わない」

「って事だまゆっち、頼む・・・・・最後の一勝負だけやらせてくれ」

「・・・・・・分かりました、そこまで言われるなら」

「ありがとう!」

 

すると今度は一子と百代がまゆっちへと歩み寄る。

 

「やるじゃないまゆっち!」

「これからも言いたいことがあったらガンガン言え」

 

今度は翔一、京、紫が来る。

 

「一年だからってかしこまる必要はないんだぜ」

「そうそう、おどおどしてると気を遣うから・・・・今ぐらいが丁度いいかもね」

「そうそう、私なんてこれだけ自由にしてるのに誰も何も言われないのですから」

「は、はいぃ・・・・・」

 

「もしかして、私・・・・認めて貰えたんでしょうか?」

「そうだ」

「悠さん」

「その調子で頑張れ」

「は、はい!」

 

そうこうしているうちにくじ箱に手を入れる大和、一体、どんな種目を引くのだろうか・・・・・・




忠勝&紫の出番少なめですねー、まぁプロローグ終われば嫌でも出番増やします!(ドヤッ)
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