第七話:悠とまゆっち
:5月7日:通学路
何時ものように皆でまとまって歩く風間ファミリー(翔一は爆睡中のため悠の背中に)。
「1年C組、黛由紀江―――」
「は、はい?」
突如、京がそんな事をつぶやきまゆっちが首を傾げながら返事をする。
「前から思ってたけどなんでC組なの?S組に入れるぐらい勉強とかできそうだけど」
「運動神経も良さそうだしな」
と、百代も口を挟むと、んー、と考えるまゆっち。
「S組は辞退しました・・・・競争もいいんですが私は友達が欲しかったので・・・・」
「良い判断したな、まゆっち」
「はい!」
岳人の言葉に元気の良い返事を返すまゆっち。
「で?肝心の友達の方はどうなのかな?」
モロの質問に対するまゆっちの答えは松風が代わりになるリアクションをした。
「ごほっ、んんっ、ごほんっ、ごほっ・・・・・・!」
それで全員が察した、同年代の友人は今のところ紫だけなのだ、と。
「うぅ・・・・・なんか私、刀を所持とか置いといても怖いと思われているみたいで・・・・笑っているつもりなのに顔がひきつるというか・・・・ほら、どうですか?私の顔」
「怖ぇな」
「怖いよ」
「大人しく財布出すレベルだね」
「相手が野郎だったら即ぶん殴るレベルだな」
「お前ら大概言い方酷ぇな」
「あぅう・・・・」
男性陣四人の心無い言葉、忠勝の励ましも時には心に刺さるものなのだ。
「笑おう笑おうとは思っているんですけれど・・・・」
「意識しすぎてるんじゃねぇか?」
「そうだな、もっと自然体で笑ってみればいい」
「そうだね、意識しない感じで」
早速アドバイスしてみる悠、百代、京の三人。
「でもさぁ、意識しないと思う事はつまり意識してるって事で難しいよねー」
松風が反論した。
「なんのために刀使ってるんだ?集中集中」
「それが対人関係となるとどうしても刀を使うような冷静さになれなくて・・・・」
「・・・・重症だな」
「はい、出来れば直したいです・・・・ですから皆さんも私が顔怖かったら教えて下さい・・・・直してみせます!」
気合十分なまゆっち、まぁ時間の問題だろうな、と思っていたのだが・・・・
「その意気だまゆまゆ!」
「うん、頑張れ!」
励ます百代とクリスの言葉。
「ありがとうございます!」
めっちゃ顔が怖かった。
:5月8日:秘密基地
放課後、いつも通りに秘密基地へと揃う仲間たち、話題は松風の事になっていた。
「ねぇ、確認するけどさ、あの馬まゆっちが喋ってるって事なのよね?」
不意に、一子がいう。
「そうだね、あまりにも自然に喋ってるけど」
「あまりの自然さに個体認識しそうだけどな」
「ちょっと話しかけてみようか・・・・ねぇ松風」
果敢にもモロが松風とのコンタクトを試みる。
「あ、松風、呼ばれてますよ」
「おう、なんだいモロボーイ、おらの指名料とか高いぜー銀座レベル?」
「松風は好きな食べ物とかは何?」
むちゃぶりからどこまで答えられるかという発想。
「そりゃオラの好きな食べ物は・・・フグ刺しだよ」
「え!?肉食なの!?しかもやたらグルメだねっ!!」
「松風はあれかな、馬の中じゃ速いし強いの?」
今度は大和がチャレンジしてみる。
「チョー強ぇーよ?まぁ言うたら北陸の黒いユニコーンだし?」
「ふくなぁ松風」
「ふいてなんかねーよ、事実だぜ?舐めてんなよ学生クン・・・・!?死ぬぜ」
やいやいと盛り上がる。
「ホントすげーなぁ、その腹話術」
空間に、亀裂が入る音がした。
「腹話術言っちゃった!」
「誰もが遠慮して言わなかった事をざっくり言いやがった」
「ですから、前にも言ったようにですね、松風には九十九神が・・・・・・」
「真面目な話しさ、ほかに友達欲しいんなら松風が足引っ張ってると思うぜ?俺は面白いからいいけど、普通ひくんじゃね?」
翔一は、普段テキトーな上に大雑把だが時折こうやって核心を突くような事をいうのだ。
「でも、今更私は松風と離れる事なんて出来ません・・・・辛い時、ずっと一緒にいてくれました!松風も認めて欲しいですっ」
そのまゆっちの頭に、ポン、と手を置く悠。
「まぁ今は良いんじゃね?松風含めて認めてくれるダチ探そうや、それでダメな時に考えりゃ良い」
「悠さん・・・・」
まゆっちの好感度、上昇中、ただし悠に自覚無し。
:5月13日:川神学園屋上
実は今朝方、弁当作りをしていたまゆっちに遭遇した悠、料理の話になって、気がつけば昼休みに二人で弁当を食べるという話になっていた、まぁ美味しそうだったし良いか、と軽く考え応諾したのだ。
「んじゃいただきます、と」
「いただきます」
実の話、妙に食事作法に細かい悠、よくそれで翔一などに説教をするのだが、今日に限っては礼儀正しいまゆっちとなのでそんな心配も無く、二人で手を合わせてお弁当を食べ始める。
「ふむ、美味いな・・・・」
「本当ですか?」
「ああ、ソースの加減も良し、時間が経っているにも関わらずベチャベチャになっていない・・・・うん、美味い」
「ありがとうございます」
初めて見たまゆっちの自然な笑みに、思わず見とれる。
「あの・・・・どうかしましたか?」
「ん?ああ・・・・いや、何でもねぇ、ほら食おうぜ」
「はい」
それから、二人で取り止めの無い会話を続けるも、終始内容は頭に入ってこない。
:食堂
「む!?」
大和、岳人、モロ、忠勝、紫の五人で昼を食べていると、不意に紫が声を上げる。
「どうしたゆかりん」
「いえ、何やら妙な胸騒ぎが・・・・具体的には『それどこの恋愛ゲー?』みたいなシチュで義兄さんが相手の女子に対する好感度急上昇中みたいな」
「具体的すぎるよ!?」
「京とゆかりんは恐ろしい探知能力を持つからな、限定的だけど」
「飯ぐらい大人しく食えねぇのか!」
おおよそいつも通りでした。
:夜:島津寮
夕飯も食べ終わり、悠とまゆっちが片付け当番なので、二人で食器類の片付けをしていた。
「まゆっち、今日はありがとうな」
「いえいえ、どういたしまして!」
「明日」
「へ?」
「お礼と言っちゃなんだが明日俺がお前の分も弁当作る」
「え?あ!でも・・・・」
「・・・・お前と食う昼飯が存外楽しくてな、ダメ・・・・か?」
「い、いえ!喜んで」
その様子を見ていた大和と忠勝は。
「ゲンさんどう思う?」
「さぁな、意外とお似合いだと思うけどな」
「あ、ゲンさんもそう思う?」
「ああ、似てるんだよ、あの二人」
「?」
忠勝の言葉に首を傾げる大和。
「昔の兄貴にそっくりだ、内向的、近寄りがたい、口下手・・・・だから兄貴も世話ぁ焼くんじゃねぇか?昔の自分を見ているみたいだから」
「そんなもんかな?」
「そんなもんだ」
取り敢えずは様子を見よう、そう語った二人は、静かに茶を啜るのだ。
少々間が空きましたが悠のまゆっちルート開幕です。
ちなみに原作主人公である大和は「誰とも恋仲になっていない未来」の状態です。
川神スタンプラリーやKOS、そして悠とまゆっちの恋の行方、ゆかりんはどう動くのか。
次回、真剣で私に恋しなさいSS!『人生ってなんだろう』をお送りいたします!!
※嘘予告です。