夢を見るんなんて久しぶりだ。
そういう感覚が小さな頃から夢を見ることが少なかったが、学校に来てなんて初めてだ。
楽しそうに笑っている夫婦がいる。
風景はこの絃神島のビルのどこかだ、綺麗な夜景と共に金髪美女と銀に近い髪の毛をし瞳が赤く染まった男が立っている。
何かを話し、金髪の女の人が泣きながら驚いたように口を押える。
男の方は照れ臭そうに頭を掻き、頬を赤くしている。
そして、二人の距離が徐々に近づいていきやがて口と口が触れる。
この雰囲気からして何か良いことがあったのだろう。
男が女を抱きかかえ高いビルから飛び下りる。
何でこんな夢を見たのかは分からないが、何故かすごくいい気分になった。
何か知らない大切なことを知れた気がして目を覚まそうと思うくらいになる。
だが、それを思った頃にはもう既に遅かった。
強烈な一撃が頭部を直撃していたからだ
「おい、暁。何寝腐っている…」
目覚めた先には慎重は完全に幼女なのだが威圧と威厳が兼ね揃う発言が飛んでくる。
黒いゴスロリのようなフリフリのドレスを着飾り、漆黒の扇子を片手にかなりの上から目線だ。
これがただの子どもだったらまた寝直そうとしてたかもしれないが、何となく逆らったら危ないような気がしたので渋々と起き上がる。
「す、すみません」
「よし、自己紹介を始めよう。私の名前は南宮那月だ、お前ら教育することになった」
随分とあっさりした自己紹介を済ませた那月ちゃんは教卓の壇に上がり、今日一日の大体の流れを分かりやすく説明してくれる。
勉強時も分かりやすく、まるでかなりベテランで歳の食った教師みたいだ。
そしてこの教師は攻魔官だ。
この絃神島という場所には魔族特区という地域が存在する。
名の通り、魔族が平然と街の中を徘徊できる魔族だけの場所だ。
で、攻魔官というのは魔族が何らかの不安や反逆行為、事件を引き起こた時に魔族に対抗出来るように作られた存在。いわば、警察みたいなものだ。
そんな人なら、朝に会った謎の少女Aと自分の親父 暁古城が死んだ真相を知っているかもしれないと思い、学校終了後の放課後に話を聞こうと思った。
そして、何を聞こうか迷って、悩んでいたらすぐに時は経った。
「那月ちゃん――――」
「ちゃん付けで呼ぶな」
バシッといい音が鳴り、頭に激痛が走る。
「な、那月先生。」
「心配するな、お前の知りたいことは全部分かっている。だが、教えるつもりはないから安心しろ」
唐突に話を切られてしまった。
何を知って何を知らないのかは分からないが、本当に大体知っているのだろう。
表情が、俺を見る瞳がすごく可愛い孫を見るような瞳だったからだ。
確かに、この”暁”という苗字は何処にでもいるもんじゃない。
これは第四真祖 暁古城と同じ苗字なのだから…
「…分かった、那月ちゃんが言うなら安心するけど。一つ問題があって…」
「言ってみろ」
「那月ちゃんは俺の”親父”と何かしらの関係なんですよね?」
「あぁ、忘れもしない。あのバカはこの世界を救ってくれた吸血鬼の王だからな」
「…ありがとう」
なんか嬉しくなってしまう。
自分のことじゃないが、自分のことのように嬉しくなってしまう。
すると、自然と頬が緩み微笑んでしまう。
なんせこの世に数人といない、自分の父を知っている人なのだから…
「ではな、暁。気を付けて帰るんだぞ」
「うっす」
那月が教室を出ると、一人ぼっちになってしまう。
乾いた空気、人の気配もない寂しい教室。なはずなのに、何故か月光は嬉しそうに微笑んでいた。
「よし、家に帰るか。確か今日は凪沙ちゃんが来る日だったし」
そんなことを思いながら、気分が高揚してくる。
この気分は二度と忘れることはないだろう、人間にはこういう気持ちが大切だ。
そう、俺には人間と最強の吸血鬼の血が流れている。
だからこそ、この気持ちは忘れられない。
学校から帰宅途中。
夕焼けすらも、少しだけ肌に刺激が感じる。
だからこそ路地裏を通り、日陰を歩いていく。
路地を抜け道路に出て住宅街の方へ歩いていくとそこには大きくも小さくもない公園が存在する。
そこには小さな子供が楽しそうに毎回遊んでいる風景があるはずなのに今日はない。
だが、そんな些細な疑問は解いている暇はない。
だから何にも考えずに通り過ぎようとすると、公園から人の気配がする。
そして血の香りがする。
だがするのは人間だけではなかった。獣臭い奴と同じ人種…つまり、吸血鬼の匂いがする。
「止めてくださいませんか?貴方達のような下衆がこの世に蔓延るから世の中が腐っていくんです。」
「んだと、てめぇ!!」
喧嘩のようだ。
でも、俺には関係ない。
なんせ今朝の女だからな、あの殺意と殺すための技術がある肉体と頭脳では獣人と吸血鬼では勝てないだろう。
だから、ただ素通りする。
でも、
「てめぇ!!ぶっ殺すっ!!!」
「貴方もここで切り刻みます。」
公園内で大乱闘を始めようとしていた。
この公園を壊された時のデメリットが瞬時に頭を過る上に、吸血鬼の方は眷獣と呼ばれる永遠の命を手にした者が完璧に操ることの出来る強大な魔力の塊を解き放っている。
でも、それは俺がさせない。
自分の口の中を噛み切り、血を流す。
すると殺人衝動や吸血衝動に駆られてしまうが仕方ない。
ホストマンみたいな服装の男が麒麟みたいな淡い青い色の化け物を呼び出す。
だが、それをだしたところで何にも意味がない。
出した瞬間にぶん殴るからだ。
そしてこの公園を壊されて困るののが俺だった別に壊されてもいいが、困るのが俺じゃないなら問題だ。
だって公園を壊されて困るのは本来いつも遊んでいる子供たちだから…
地面を強く踏み込み、道路が抉れる。
そして、
「おい、そこら辺にしとけよ?吸血鬼」
「は?」
黒いスーツに身を包み、ホストマンみたいな服装をしたやつに一撃だけ拳を押し込むように放つ。
すると、相手は地面に叩き付けられ、バウンドしながら公園の遊具にぶち当たる。
獣人はスピードを生かしどこかに消える。
遊具にめり込んだ吸血鬼の男は白目を向き気絶している。
「貴方は…」
「よう、今朝ぶりだな」
ここから真祖の覚醒が始まるのを誰も知らない…