ロクでなし神様達と異世界浪漫譚(旧題:とある神々の眷属)   作:バキュラø

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次の話と同時更新です。続けて読むのをお勧めします。






ロキファミリア

 

 

 ダンジョン深層、58階層に遠征してきていたロキファミリアは、突如襲われた新種のモンスターに苦戦を強いられていた。

 

 

 

「心苦しいが、これが一番可能性が高いんだ。頼めるかい、アイズ」

 槍を芋虫状のモンスターに向け、牽制をしつつ、フィンはアイズに指示をする。

 いくら勇者(ブレイバー)という二つ名を、名実ともに自らの欲しいままとしているフィン=ディムナ、その人であろうと、いくら未踏破領域目前の58階層とは言え、そこに現れた新種のモンスターを相手に、多くの団員を守りながら戦うというのは、さすがに無理があった。

 

「……分かった」

 アイズは、フィンの言葉に一も二もなく首肯した。

 

「団長‼それじゃアイズさんが…」

 そんな決定に、レフィ―ヤは異を唱える。

 それもそうだろう。いきなり襲われたとはいえ、オラリオトップクラスの自負がある、自分達、ロキファミリアが押されるような相手を一人で、しかも自分が敬愛する人物がするともなれば、彼女でなくても、そう言うかもしれない。

 

「てめェは黙ってろレフィ―ヤッ‼今、この状況に最も合ってるのがアイズなんだ。悔しかったら、ここで引くしかできねェ自分自身を恨みやがれ‼‼」

 そう、レフィ―ヤにきつい言葉をぶつけるが、血が流れ出るほど握りしめた拳を見れば、ベート自身が何よりも悔しさを押し殺していることがわかるだろう。

 

「癪だけど、ベートの言う通りよ。レフィ―ヤ、今は下がって立て直すのが先決ね」

 ティオネにまでそう言われてしまい、レフィ―ヤも悔しそうな顔をしながら、アイズの方を見つめる。

 

「大丈夫…だよ」

 アイズはそんな視線に気づき、そう声をかけ、剣を抜き、モンスターへと向かっていった。

 

「今だ‼‼怪我した団員を連れ、皆下がれ‼リヴェリア、あとどれぐらいで魔法を撃てる?」

 その言葉に、ティオネ達はアイズの戦闘を見つつも、他の団員を、57階層へ向かって後退をさせる。

 

「後は、詠唱するだけだ。唱え終わったら、アイズを含め、モンスター達の前を開けてくれ」

 そう言い、リヴェリアは歌うように詠唱を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『間もなく、焔は放たれる。』

 

 

『忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。』

 

 

『至れ、紅蓮の炎、無慈悲な猛火。汝は業火の化身なり。』

 

 

『ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣――我が名はアールヴ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイズが一人で押さえ続けるという、焦りを生む状況にもかかわらず、魔法を失敗(ファンブル)せず、その超長文詠唱を高速で詠唱し続ける姿はまさに、九魔姫(ナイン・ヘル)と呼ばれるにふさわしいものだった。

 

 

 

「アイズ、下がれ‼‼」

 その言葉に反応し、アイズは飛び上がるようにして、芋虫状のモンスターを蹴り上げ、ファミリアの方へ走り込む。

 

『レア・ラーヴァテイン‼‼‼』

 リヴェリアの手元から炎が放たれ、モンスター達を業火の渦に巻き込んでいく。

 火が収まるころには、焼け焦げた炭と一部の魔石がそこに残るのみだった。

 

「うひゃー。いつみてもリヴェリアの魔法はすごいなー」

 ティオナは、その光景にのんきな感想を漏らしていた。愛用の武器であるウルガを酸で溶かされたということはあっても、生来の気質からそこまで気にするような感覚は持ち合わせていなかった。武器なのだから消耗品であり、よくあることといえばそれまでなのである。

 ――――――それがアダマンタイトを馬鹿のように使った職人泣かせの品だったとしても――――――まあ、彼女にしてみれば、よくあることなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな声を筆頭に団員の中からも安堵の声が聞かれ始めた。

 そんな時だった。

「それじゃあ、みんな。またいつ襲われるかもわからない。早く上の階層へ………………」

 

「どうしたんですか団長?」

 急に言葉を切ったフィンを不審に思い、ティオネは声を彼にかけた。

 

「何か………来る…」

 そんな問いに答えるかのようにアイズは視線を59階層への入口に向け、そう言った。

 

「ンだと⁉」

 

「うそ…でしょ………」

 そこから現れたのは、やっと全滅させたかに思えていた、芋虫型モンスターの大群であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一度…………私が行く…」

 アイズは再び剣を抜き、もう一度向かおうとする。

 

「今度こそ俺らも行くぞ、フィン。アイズ一人にばっかやらせらんねェ」

 

「私たちも…」

 

「いや、きみたちはケガ人を下げるんだ‼‼ガレス、みんなの指揮を頼む。アイズと共に僕が出る。半数はリヴェリア達の魔法でいけそうかい?」

 そんなアイズの姿にベート達も続こうとするが、案の定フィンに止められてしまう。

 

「「…ああ」」

 リヴェリアとガレスは、フィンの問いに短く返事をかえした。

 

「でもよ…」

 

「ありがとう。だがわかってくれ、今は数が足りない。あれに対応しきれる少数精鋭でスピードが肝になる。これがベストだ」

 

「フン…分かったよ。ぜってー死ぬんじゃねーぞ‼‼‼」

 ベートは最後の部分だけは顔を背けるようにして叫ぶように言い放った。

 

「そうだね…」「うん」

 そんなベートに苦笑しつつ、二人は、各々の武器を握り、駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「アイズ、後ろだ‼」

 

「これで…最後.……‼」

 少しふらつくようにして切ったアイズは、ちょうど芋虫型のモンスターの魔石を刺し貫いていたが、同時に酸を足に喰らってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうじゃない‼‼止まるなアイズ。カドモスだ‼‼‼」

 アイズは視線の先の壁から飛び出した恐竜のようなモンスターが、すでに自分に肉薄しているのに遅ればせながら気づいた。芋虫型のモンスターの体躯によってブラインドされていたために、アイズは直前までその接近に気付くことが出来なかったのだ。

 

 アイズには自分に向かってきているカドモスの歯も、ファミリア(家族たち)の声も、とてもゆっくりに感じられていた。

 

 

 

 

 

「おかあ…さんッ……おとう…さんッ……」

 

 

 

 

 

 明確な死の気配だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)画竜点睛(フランバージュショット)‼‼‼‼‼』

 

 

 

 その時、よく通る声と共に、足に酸を浴び、動けなかった身体がふわりと浮いたような……………そんな気がした。

 

 

 

 

 

 




読んでくれて、ありがとうございます。
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