ロクでなし神様達と異世界浪漫譚(旧題:とある神々の眷属) 作:バキュラø
それではどうぞ
過去を見た。
『必ず、迎えに来るからここでいい子に待っていてね、アイズ』
『大丈夫さ、アイズは俺たちの娘なんだぜ。少しぐらいの遠征なら待っていられるさ』
『今から行くのは、あの黒龍討伐なんですよ?あなたはほんとにわかってるのっ!』
『俺だけじゃなく、
『もう、あなたはいつもそう楽観的なんだから‼‼ごめんなさいね、リヴェリア。同じ派閥でもないのに、アイズのことを任せてしまって』
『なに、お前たちのところほどではないにしろ、ロキファミリアだってそれなりの規模のファミリアだ。子供一人ぐらい、どうということはないよ』
『おかあさん…おとうさん、頑張って……ね』
『おーアイズ‼おとうさん、すぐ帰ってくるね』
『おひげ…………いたい……』
『アハハハハハ』
『なんだと‼それは一体どういう事だ‼‼』
『ですから、黒龍討伐に向かった、ゼウス、ヘラの両ファミリアが……全滅したと』
『アリアは?アルバートは?奴らはどうなったんだ‼‼‼‼』
『分かりませんッ。命からがら地上まで戻ってこられた数人が、黒龍に強襲され散り散りに逃げて来たとだけ伝えて倒れたそうで、治癒系を得意とするファミリアに運び込まれてるみたいです。
『リヴェリア…さん?』
『あ、アイズ………』
『おかあさんたちが……どうかしたの?』
『…ちょっと、遠征先でトラブルがあったみたいなんだが、大丈夫。彼らなら必ず帰ってくるさ……』
『うん……』
それから、一年、待ち続けた。
『リヴェリア………戦い方を教えて…』
『アイズ…』
『迎えに来てくれないなら………私が、私から……迎えに行く‼‼』
笑わなくなった。
泣かなくなった。
『聞いたかよ?ロキのとこの、【剣姫】の話』
『あぁ。冒険者になって一年でレベル2、しかも、史上最年少の八歳でやってのけちまったらしいぜ』
『
泣かないと決めていた。そうしなければ、弱くなってしまう。もう、一歩も進めなくなってしまうかもしれないんじゃないかって、怖かった。
ティオナ達が来てからは、笑うようにはなり、丸くなったとは言われてたけど、迷宮には毎日のように潜った。
迷宮探索がいくら辛かったとしても、体が傷ついても、泣かなかった。潜り続けた。
ただひたすら、強くなることだけを追い求めて。
それなのに…
なんで………
いやだ…いやだ、いやだ!………死にたくない、まだ死ねない‼‼‼
私はもっと強くなって、迎えに行かなくちゃいけないのに………おかあさんを、おとうさんを……
私はただ二人に会いたいだけなのに。一緒にいたかっただけなのに……
「おかあ…さん……おとう…さん……」
たす…けて…………
『
その時、足に酸を浴び、動けなかった身体がふわりと浮いたような……………そんな気がした。
「大丈夫かい、
アイズは、遅ればせながら自分が抱えられ、顔を覗き込まれていることに気が付いた。
「…子ども扱い……しないで…」
その言葉と態度にムッとしてアイズはつい、言い返してしまう。なんとなく、自分の決めた覚悟のようなものが、あっさりと台無しにされたような感覚だった。
なにか、…………嫌だった。
自分の弱さを、彼の瞳を透して見せられているような気がして。
「別にそんなつもりじゃなかったんだけど……それだけ元気があるなら、大丈夫かな。それよりも足をどうにかしないとね」
そんな態度にも、彼は柳に風とばかりに流し、酸を被り爛れているアイズの足に手をかざした。
「え?」
『…………
「足が………」
アイズは不思議そうに自らの足に触れて感触を確かめる。なんだか、痛みや疲労さえも、まるで夢だったかのように、アイズには感じられた。
「これで治ったと思うけど、どうする?まだあの恐竜モドキ……向かってくるみたいだけど」
彼が、指し示す方向では、彼に蹴り飛ばされたカドモスが、もう一度襲い掛かろうと準備を始めているところだった。
「私にやらせて」
そう言い、苦戦していたのがまるで嘘のように魔石に剣を一突きにし、カドモスを消し飛ばした。足が、いや、体からあらゆる痛みや疲れが向けているようにアイズには感じられていた。
むしろ、
「素晴らしい太刀筋。やりますね、お嬢さん?」
彼は肩を竦めるようにしながら、アイズに賞賛の言葉を贈る。
「むぅ……」
だが、その一言でアイズはまた、不機嫌になっていた。
そんなやり取りをしているうちに、不思議とアイズは、抱いたはずの不安を感じなくなっていた。
疲弊、油断、不安要素があればあるほど、深層に近づけば近づくほど、ダンジョンは、冒険者に見境なく、容赦なく、ためらいなく、計ったように牙を剥く。
ある時は、強化種と呼ばれるモンスター、またある時は、通常ありえないほどのスピードと量でモンスターが産み落とされる
まるで、弱った獲物を奈落へと引きずり込む流砂のごとく。
今回は、新種に加えて、カドモスの突然発生だったのだが………
「「「「「アイズッ(さん)‼‼‼‼‼」」」」」
「テメェ、一体何モンだ‼‼」
皆がアイズに駆け寄る中、ベートはカギ爪のような武器を男に向ける。カドモスは倒しづらく面倒だというだけで、アイズ達、第一級冒険者達にしてみれば、余程のことがない限り負けない相手ではあるものの、巨体を持つカドモスを蹴り飛ばすという離れ業を、突然現れたものが行えば、警戒するのも当然のことではあった。あったのだが…
「自分とは、何者であるのか…ですか。随分、哲学的な質問をするんですね。えーと……ワンちゃん?」
その一言で、殆どの者が張り詰めた空気を弛緩させた。
「誰が、ワンちゃんだ‼オレは
ガルルルルッと今にも吠え掛かりそうなほどの剣幕で、ベートは現れた男に食って掛かる。その怒りの中に
「待つんだベート。済まない、うちの団員が失礼した。少し疲弊して神経質になっていたものでね」
「いやこちらこそ、済まない。割って入ったようなものだったからね。警戒されても仕方がない。それに、どこからどう見ても不審者だしね」
彼は紺色の外套を羽織った自らの身体を見ながらそう言った。
「しかし、キミのおかげで誰も失わずに済んだ。ファミリアの団長として、礼を言わせてもらいたい。本当に感謝している」
「まあ、気にするほどのことではないさ」
「良ければ、所属と名前を教えてくれるかな。できるなら顔も見せてほしいね」
「名前は、風間蓮だ。まあ、所属は知らない方が、お互いの為……だとッ…思うけどね…………」
風間は少し言いにくそうに、そう告げた。
「それは…僕たちと、ロキファミリアと敵対するという事なのかい?」
その言葉にロキファミリアの面々は、瞬時に空気を張り詰めた。
しかも、歪みから現れ、ピンチのアイズを抱きかかえ、カドモスを蹴り飛ばし、そこから離脱する。そんな、未知の魔法と体術の力量を持つ相手と一戦交えるのは疲弊しきり、けが人も抱えた今の彼らには、厳しいものがあった。
唯一、アイズが止めに入ろうとするが、両者の緊張は高まっていくばかりだった。
風間は、おもむろに手を首元へ持っていき、外套に手を掛ける。
その行動に、ロキファミリアの面々もそれぞれの武器を握る手に力を込めていく。
そして…
「って…やってられるかぁァァァァァァァァァァァァァァァァ‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
風間と名乗った男は纏っていたコートを叩き付けた。
「「「「「はぁ!?」」」」」
ロキファミリアの心が、さっきまでとは別の意味で一つになった瞬間だった。
うう、ダンジョンから出られない。どうしてこうなったw