木漏れ日が穏やかに草花を照らし、雫を地面に落とす穏やかな朝。森と隣接する草原を20数奇の騎兵が走る。ただただ急ぐ姿は勇ましい。装備も固定ではなくバラバラであり、だが、その鋼を思わせる強い意志が乱雑な傭兵ではなく、立派な誇り高き騎士団であると語っている。
そして彼らは、終に目的の場所へ着いた。そこは村の廃墟であり、すぐ近くに均等に木で作られた十字架が並んでいる。十字架には本来有るべき名は刻まれていなかった。
「これは、いったい・・・」
「あら、貴方がこの国のお偉いさんかしら?」
戦士長であるガゼフは、馬上から一瞥し、その光景に疑問の声を漏らすしかなかった。王命より村々を回ろうとした矢先の出来事である。この光景は異様としか映らなかった。
そんなガゼフにアンジェは廃墟の影より姿を表す。途端に剣に手をかけるも、抜こうとしない戦士達にアンジェは一定の評価を下した。実に良く訓練された良兵であると。
「君は・・・」
「失礼。私はアンジェ。怪しいと思うだろうけど旅の者よ」
「ではアンジェ殿。私はこのリ・エスティーゼ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この村で何が有ったのか教えて頂きたい」
ガゼフの目には警戒の色が有った。故にアンジェは名乗る。それが一番手っ取り早いのだ。また、己から『怪しい』と言い出す者は大抵後ろ暗くない者であり、ガゼフの目にはアンジェが例外である一握りの極悪人には見えなかったのだ。アンジェの美貌から、男を篭絡する訓練を受けている可能性も否定はできないが、そうではないとガゼフは己の勘を信じる事にした。
「簡単よ。虐殺が有ったの。アレを見なさい」
アンジェが指さしたのは燃え残った民家の壁だ。そこには亀裂が有った。明らかに刀剣類によるモノである。何故剣と断定するのかは単純である。その亀裂の長さと厚みから推測しているのだ。
「私達が着いた時は既に全滅。麦が燃える匂いからして野盗では無いけど、女は犯された後だったわ。そして、あの子は考えたの。コレは餌だってね」
「戦士長!やはりココは撤退すべきです!」
アンジェの言いようは副長が予想していた通りだった。それはガゼフも理解していた内容だが、何故この村の痕跡だけでアンジェが予測できたのか謎である。何故そのように推測できたのか気になったが、それ以上にこの地位を授けてくれた王に対する敬意と、国民を虐殺した相手へ怒りが込み上げてきた。
「副長。であるのならば、其れこそこの王国から締め出さねばならん!俺は王国戦士長!この国を愛し!守護する者!そして、示す!弱き者を助ける強き者がいる事を!」
馬上で剣を抜き放ち、鼓舞するガゼフの姿はアンジェの目には勇ましく、そして無謀に見えた。要するに馬鹿である。通常であれば撤退するのが正しいのだろうから。だが、ガゼフの鼓舞に当てられた彼の部下達も剣を抜き放ち、吼える姿は
アンジェは少し認識を訂正した。『気持ちの良い馬鹿の集まり』だと。
そして不憫に思う。この者を殺すのが目的の一端だと確信したからだ。
「ならば案内するわ。丁度今、村の防衛が成功して数人捕まえたみたいだしね」
ガゼフがこの廃村に着いた時、既にカルネ村の戦闘は終わっていたのだ。
ガゼフは何故アンジェがそのような事が分かるのか理解できず、そして、己を誘い出すべく村人を虐殺していた者達を数人とはいえ捕まえた。虚偽の情報と言えばそこまでなのだろうが、ガゼフはアンジェが真実を語っている様に思えたのだ。この規模の村人を虐殺するなら最低でも30人はいると予測していただけに、流石にガゼフも危ぶむ。かのアダマンタイト級冒険者ならば可能な所業だが、ガゼフは目の前の女をどうにも実力者には思え無いのだ。故に、無意識の内に剣を握る手に力が籠る。アンジェが虐殺した者の一味である可能性も否定できないのだから。
実際のアンジェの実力はフル装備のガゼフが100人いようとも傷一つつけられないモノなのだが、彼女の着るトーガには虚偽情報系魔法が多数込められている為、その結果ガゼフには認識できないのだ。
「勘違いしないで。私はさっき
「では、貴女が彼等を弔ってくれたのか?」
緊迫した空気の中でもアンジェの微笑みは変わる事は無い。ソレ所か丁寧に教えてくるのだ。まずますアンジェの存在が分からなくなってくるが、ガゼフは彼女以外の者達が実力者であり、彼女は埋葬や物品の管理などを行っているのではと考えた為の質問である。
「えぇ。信用しがたいと思うから、どうぞ」
「副長!・・・いや、問題無い。馬の空きが無いので、私の後ろに乗ってもらえますか?」
「えぇ。ありがとう」
ガゼフが抱いている疑念を見透かすように、両手を差し出すアンジェ。副長は馬から降りて拘束しようと思ったが、ガゼフの鋭い声に止めた。
ガゼフは、一先ず信じる事にしたのだ。万が一、己の勘や感覚が狂わせられているのならば、それは後に致命傷となり、己どころか部隊が壊滅する恐れがあるのだから。
馬に跨らず、器用に足を揃えて横座りしているアンジェの姿を一瞥しながらも彼らは走る。これ以上犠牲者を出さぬ為に。
その頃カルネ村では敵味方問わず負傷した者達の治療が終わった所だ。敵側については応急処置のみであり、武装解除して下着一枚にした上で、縄で拘束した状態で適当な民家に押し込んでいた。その後は村人が率先して葬儀の準備に取り掛かる。下手に長引かせれば死体はアンデットになり襲われる為だ。ジュンが負傷した村人に対し、正に聖女を思わせる用に、励まし、微笑む様子に、先ほどの惨劇を忘れそうになる男がいたが、アインズの観察するような目に、慌てて立ち去るのだった。
なお騎士達を拘束したのはエンリであり、流れるように縄を使う姿に、何人かの男が無言で見つめていた事をここに記す。
その後、アインズとジュンは村長の家にて歓待を受けた上で事情説明をしていた。
村長夫妻はアインズの言う『僻地で研究している魔法詠唱者であり、久しぶりに買い物をしようと思えば森で道に迷った』という言葉を信じ、この近辺や、貴族相手に注意すべき事柄についても事細かに伝えていた。アインズ達2人にしても、かなりロクでもない貴族がいるというのは、何と無くだが理解したのだ。まだ尋問をしていない為、確定では無いが、かのスレイン法国がバハルス帝国とリ・エスティーゼ王国の反目も視野に、王国の重要人物の暗殺が目的であると二人は推測した。恐らく貴族の発注ではないか、とも考えられる。国家間の問答など、所詮ポーズでしかないと理解している為、2人はかなりドライに物事を考えている。一辺も汚染されていない自然の植物の種一つで戦争できる。そんな世界が有るのを理解している為だ。
ジュンがこの一帯の貨幣の価値がどれ程なのかという質問に対しても村長夫妻は丁寧に答えていく。
「フム・・・」
「それで、この村を救って頂けた貴方様方にお支払いできるのは、恐縮ながら家々から掻き集めても銅貨5000枚が限度となります」
アインズは腕を組み、難しそうな表情を見せた。その姿に村長は機嫌を損ねる可能性も理解しているが、全財産の推定金額を提示するしか無かった。もし銅貨5000枚をアインズ達が受け取れば、間違いなく餓えで死ぬと理解していてもだ。
アインズは強大な力を持つアンデットを従え、ジュンは素手で人体を引きちぎる怪力を見せた。また、ジュンは治療が得意であり、かなりの重傷者も死んでいなければ事も無げに完治させる特級の治療師でもある。通常これ程の者が唯の辺境の村に立ち寄るのは稀どころか皆無に等しい。そして力に合った報酬を受け取らねば安く見られ、良くない事が起こるのだ。具体的には良いように使われる。それがこの世界の常識なのだ。故に、村長的には何とかして恩人へ報酬を支払いたいと考えているのだが、無い袖は振れないモノである。
「アインズさん。ここは分割払いにしてもらいましょう。下手に徴収しようとしたら、皆さん餓死してしまいます」
「分割か・・・宝石等の換金はお願いできますか?」
アインズが考えていたのは現地の通貨を手に入れる方法である。現在手持ちのユグドラシルの新金貨を提示しようか、しないかで迷っていたのだが、ジュンは村長のあまりにも悲壮な雰囲気と村の様子から、提示した金額が死を意味するモノだと理解したのだ。
アインズは現物が欲しかったのだ。故に宝石関係のアイテムを提示したらどうなるかと思案した。
「高価すぎなければエ・ランテルでなら可能です。ただ、貴方様方が御付けになられている指輪では間違いなく買い取りはされないでしょう。・・・エンリなら知り合いもいますし、道案内等に適していると思います」
だが、宝石類をはじめとした貴金属系列やら装飾品はカルネ村では扱いようがない。エ・ランテルでも上級貴族が身に纏う物以外なら扱えるのだが、村長はアインズやジュンの手にある指輪類を見れば、明らかに望みは薄いとも思った。
エンリは定期的にやってくるンフィーレア・バレアレと交流が有る。彼の祖母、リイジーなら何とかなるのでは無いかと思い、エンリをアインズ達と行かせるのが良いと考えたのだ。村人。特に数人の男がエンリを恐れている雰囲気も有る為、心の整理をするには良い切欠になるだろうと考えて。
ついでに言えばジュンに対しては男ならば未だに腰を引いている。先程治療中など、特有の病気かと優し気に聞かれた上で治療魔法をかけられ、村長の持病の腰痛まで治っていた。
「失礼ですが、エンリが恐ろしいのですか?」
「そ、そうでは御座いません。ただ・・・」
村長に言いようが少し気になったのだろう。ジュンの眼光と声に鋭さが混ざり、つい村長は言葉を詰まらせ、咄嗟に座りなおすフリをしながら股間の位置を変えた。気分を害せばナニをされるのか分から無いのだから。
「ただ、本当にアレはエンリだったのかと疑問に思えるのです。あの子は優しい子でしたので・・・」
「ジュン。で、あるならば暫くエンリをお借りできますかな?」
村長は自身の真意を語った。アインズは村長の姿勢から何を恐れているのか理解している為に、嗜める意味も込めて名を呼び、村長の案を自分好みに改変して提示する事にしたのだ。
「エンリを、ですか?」
「別に売り買いする事では御座いません。数日後にエ・ランテルまで行こうと思いましてね。早ければ数日間、長ければ2週間程エンリの時間を頂きたいのですよ」
村長の顔に疑念が浮かぶが、アインズが即座に子細を伝えれば村長の緊張は解けた。アインズの案ならば色々と融通が利くのだ。ジュンもエンリの能力の細部も解析できる上に、色々と試させる事も出来る。また、村人達の心の整理にも丁度良い時間となるのだ。
「妹のネムは、子供に長旅は厳しいでしょうから私たちが責任をもって面倒を見ます。村の者達は皆家族ですから」
「では、そのようにお願いします。エンリをお借りする事で分割にしますし、お借りする分は天引きしますのでご安心を」
「あ、ありがとうございます!」
故にネムの面倒等をどうするかを、村長が明確にすればアインズも問題無かった。地味にアインズにとってもネムは可愛らしい小動物に思っていた為である。珍しく破顔するアインズは元々報酬を貰う気は無かった為に色々と緩和した。村長にとっては大盤振る舞いであり、迷わず机に額を当て一礼してしまう程である。地味に痛そうな音がしたのだが、感激している村長は痛みを感じなかったようだ。
そんな中、ジュンにアンジェから
『アインズさん。アンジェからですが、獣を連れて来ているようです』
『やれやれ、やはり面倒ですね・・・』
アインズは村長を慰めながら、ジュンと
『あの2人と数名をナザリック迄運んでもらえますか?あと、アルベドは面会には外した方が良いのでは?』
『・・・仕方ないですね。念の為に2人に関しては、殺さない・傷つけないように言っときますよ。この件が終わったら、話したい事が有ります』
『?分かりました』
ジュン的にはロンデスと少年の2人以外はどうなっても良かった。真実の目で見ずとも下種である事が丸分かりである為だ。アルベドに関しては明らか人間を下に見ていると分かる態度であった為に、目標と接触するのにはデメリットにしか思えないからだ。
アインズはコレは良い切欠となると判断して、あの2人に関しては取り扱いに注意すべきと判断した。その上でジュンに色々と話さなければならないと思いながら。
実際問題として、アインズの忍耐力は限界なのだ。ジュンが2人を気に入っている節が有るので処分したくてたまらないのだが、そんな事を全く見せない。長い裾に隠された手がいつも握りこぶしになっているのはアインズの秘密になりつつある程である。
ジュンは内心『何の話だろう?』と思うが、取り合えず今は急ぐべきだと判断した。
村長の家から出た2人は
特に母の尊厳を汚されたと思っているエンリにはジュンに対する敬意は大きくなるばかりである。ネムはジュンが神様ではないのかと思い始めていた。奇麗になっていく死体達に村人は救われる気持ちで心の平穏がやってくる。大人の男性以外は、なのだが。
死体が奇麗になれば後は村人に任すのだが、正直村人は埋葬した後にジュンに何か魔法をかけて、死者の安寧をお願いしたくなってきた。その為、それと無くエンリにその旨を伝えるようお願いした。
「エンリ。私達の予測では、そろそろ獲物が来ますよ」
「ジュン様。私にやらせてはくれないでしょうか?」
そんな事とは知らず、ジュンはエンリに話しかけた。エンリは図々しい事を言うのを躊躇った所、ジュンの一言にそんな思いが吹き飛び目に闘争心を宿らせる。右手のブレスレットはエンリの闘争心に反応してエンリの体に赤いラインを奔らせた。
「エンリ。ネムの前ですよ。それに、私の事はジュンで構いませんよ」
「はい。ジュン様・・・あ」
だが、ジュンはエンリの手を取り、心を落ち着かせようとした。エンリは不思議そうに己を見るネムと目が合い、闘争心が霧のように散り、元の姿に戻る。
そして、ジュンの一言に何気なく返事した際に、ごく自然に敬称をつけてしまった。それが可笑しくてつい吹き出してしまえば、ジュンも吊られて笑ってしまう。ネムも何だか楽しそうだと思い笑い出した。
「アインズさんと話し合ってみましょう」
「ありがとうございます!」
一頻り笑えば、ジュンはエンリの言った事をアインズに提案する気にになっていた。地味に今のエンリのレベルが上がるのかと思いながら。だが、その前に一つ確認すべき事が有った。
「ですが、憎しみで殺すのですか?」
「違うと言えば嘘になります。けど、ネムを護りたいです」
「良い答えですね」
ジュンの目に真剣な色が宿った質問。それは目で、虚偽は許さない。そして嘘は分かると言わんばかりだ。
エンリはジュンの目では無く、元々本心から語るつもりだった為、物怖じもせず、真剣な眼差しをジュンに返す。その答えにジュンは満足して笑みを浮かべなおした。
そしてエンリは村人のお願いについて相談してみた。ジュンの答えはNO。既にやったのだから再びやる意味が無いのだ。
ジュンはその背中を見ながら思う。遺族の気持ちを汲み取るのならば、やった方が良いのだろう。だがMPもタダではない。それにこの後どれ程使うか分からない以上、やりようが無いのだ。
エンリの言葉を聞いた村人は
彼らが村に着いたのは昼過ぎであった。葬儀も無事に終え、皆食事を摂り終えた所だ。村の青年が村に土煙を上げて接近する騎士の集団を発見したのだ。皆の顔に緊張が奔る。エンリに至っては既に変身済みであり、身を隠すべく見張り塔の影に隠れる。
「落ち着いて下さい。我々が対処します。料金は加算しませんのでご安心を」
「エンリと村長殿以外は皆さん、村長殿のご自宅に集まって下さい」
「おぉ!ありがとうございます!」
アインズの一言は村人にとっての福音に思えた。そしてジュンの指示に従い、落ち着きながらも足早に向かっていった。内心、何故漆黒の鎧を着た女戦士がいないのかと思いながら。村長のお辞儀の角度は90度であり、腰を痛めないかとジュンは場違いと理解しつつも思った。
そして、先頭の馬の後ろに見知った顔が有る。そう思わせるべく名を大きく呼んだ。
「アンジェ!」
再会を喜ぶように、手を大きく横へ振るジュン。何も知らない村長とエンリは知人が乗っていると思う。アインズは笑みをかみ殺すのに必死だ。
そして、ガゼフとアンジェの乗った馬がジュンの前で止まり、アンジェは自然に降りた。
「ジュン。紹介するわ。この人がガゼフ・ストロノーフ。王国戦士長という地位にいるそうよ」
「王国戦士長!」
アンジェが馬上のガゼフの顔を一瞥して、紹介する。村長はまさかの人物が辺境の村に現れた事に驚愕し、エンリは彼等から見つからない位置取りに専念しながら強化された聴覚で会話を聴いている。
「馬上から失礼する。貴殿等がこの村を救ってくれたのか」
「私はアインズ・ウール・ゴウン。此方がジュン。確かにそうです」
ガゼフは真っ直ぐとアインズの目を見ていた。ガゼフの勘が、この魔法詠唱者が最も強いと語っているのだ。
アインズはガゼフの警戒の色が有る目は気にもせず、普通に紹介した。ガゼフは自身の視線等気にも留めない事から、アインズの実力を上方修正する。少なくとも、自身より弱い相手の視線等気にしないのが常識であるからだ。
そして、何より警戒心を見せたのはジュンの服装である。ガゼフが見た事が無い一品だが、一目で神官が着る服だと分かる物なのだ。法国の神官は基本的に貴族相手であり、このような土地に来るはずも無い。しかも、来るのならば馬車の一つや二つ利用する。実に奇妙なチグハグ感が気になり、ガゼフには疑わざるを得ないのだ。
「感謝の言葉もない。それに、埋葬までして頂けるとは・・・」
「気にする必要は御座いません。義憤だけでは無く、頂きたいモノも有りましたので」
どのように警戒しようともガゼフは敬意を示す。少なくとも彼らが居合わせなければ、自身が守るべき王国の民は死んでいたのだから。
そして、民の死者は丁重に扱ったと判断しているのだ。
通常農民が亡くなった際、神官は呼ばれず、埋葬され粗末な石を積むのが農村の埋葬なのだ。だが、木製とは言え、市民や町民のように十字架を誂え、ジュンの恰好からして何か祈りの言葉をかけたと予想した為だ。
尚、アンジェが木製の十字架を作ったのは、彼女の中で墓とは十字架を立てる物だという認識が有る為であり、特に深い理由はない。
「成程。ところで、ココを襲っていた帝国の騎士達はどうなさいましたか?」
「・・・彼らは法国の者ですよ。隊長に関しては此方で処分しましたし、数人の捕虜は先ほど歯に仕込んでいた毒で自殺しました」
ガゼフは報酬目当てと言うアインズの言葉は鵜呑みにせず、自身の目的である者達を調べたい思いから口に出した言葉だ。そんなガゼフに、ジュンは少し、目を逸らし、思案するかのように間を置き、深刻そうに述べる。
「何!?」
「・・・ジュン。報告は聞いていないが?」
「つい先ほどの事だったんです。今、彼女に処分しに行かせてます。鎧は有りますし、生き残りも数名います。ソレをお持ちになったら如何ですか?」
法国の者である。この情報はガゼフにとって意外だったのだ。少なくとも法国には恨まれる筋合いは無いのだから。
アインズの問いただすような口調は威圧感を伴うモノであり、ジュンはあえて、何故この場にアルベドがいないのか分からせるような物言いをし、そしてガゼフに余分なモノの処分をお願いしたのだ。
その為にジュンは疑われやすいような恰好のままで行動しているのだから。このような場合、捕虜にどのような事をしても、情報を吐かせる事を期待しながら。
「装備は帝国の物ではないのか?」
「だからこそ反目を狙ったと、帝国と共に抗議出来るのでは?まぁ、帝国に攻められる口実にもなりそうですけど・・・」
ジュンはココで勝負に出るべきと判断し、少し区切る。あくまで、予測しているかのような雰囲気を作る為に。ガゼフの目をじっと見つめた。
「私に何か?」
「いえ。相当邪魔に思われているようですね。貴族が力を持ち、王の力は弱い・・・違いますか?」
「何の事か分かりかねる」
妙に見られればその視線が気になるのが普通である。故に問われれば、まるで確信しているかのような口調で喋れば、大抵の事は分かるのだ。
ガゼフは否定も肯定もしなかったが、現状を苦々しく思っているのが眉間の皺という形で出た。ジュンは王国には一定以上の調査のみが好ましいのではと仮定した。
アインズはジュンの行動が少し行き過ぎだと判断し、予定には無い行動をする事にした。
「ちょ!?何をするんですか!放してください!」
「私のジュンが失礼した」
その感覚はジュンにとって慣れ親しんだもの。だが、奇襲には気を配っておらず、味方であるアインズが行った事で反応が遅れた。ジュンは光で出来た鎖で縛られ、アインズに横抱き、お姫様抱っこをされているのだ。ジュンはアインズが公衆の面前で行った事に、視線が己とアインズに集まっている事に気付き、羞恥で顔を真っ赤にする。
(ア、ア、ア・・・アインズ様!?何故あの女を、私の夢である横抱きを!?予定では其処までする事は無かった筈!それに
木々の間に隠れていたアルベドがソレを遠方から見ており、木の一本を握力のみでへし折っているのだが、ソレは行っているアルベドすら気付いていない。少し色々と思案している様だ。
「ハハハ。いや、賢い奥方をお持ちで苦労なさっているようですな」
「むぐー!?」
ガゼフにとっては己から情報を聞き出そうとしたジュンを平然と拘束し、公衆の面前で平然と行う事から、ジュンがアインズの妻であると認識した。地味にエンリは違うと思っているが、アインズなら問題ないと思っており知らないフリをしている。
ジュンが咄嗟に否定しようとするも、さり気無くアインズはジュンの顔を己の胸元に当て、口を塞がれる事で意味の無い音となってしまう。まるでジュンを子猫のように扱う姿は、男の村人にとって衝撃的であり尊敬の目でアインズを見ていた。
「好奇心が強いモノでね。それに彼女はモンクでもあります。私より力が強いので、こうもしないとダメなのですよ」
「モンク、ですか」
「あぁ。法国とは関係有りませんよ。先も法国の者だと勘違いしてくれたので助かりました」
実に何でも無い様に話すアインズ。だが、神官の恰好でモンクまで納めているジュンをこうも手玉にとる姿は、ガゼフのアインズに対する警戒レベルを一段と上げる。そして、先程が指している事態が、村の襲撃を指しているのであり、ソレを利用する頭脳も持ち合わせていると判断もできなくも無い。
「戦士長!周囲に人影が!囲まれています!」
ある意味ニコヤカな会談は周囲を警戒させていた副長達の報告により変わった。ガゼフはアインズの行動が時間稼ぎではないのかと思う。剣を抜きやすい姿勢になりつつも、真面目にアインズの目を見る。
「ゴウン殿の目的も私の首か?」
「いえ。アイツ等にはジュンが用事が有るのですよ」
「・・・その事ですが、エンリにやらせてみようと思います。あと、終わったらジックリと話しをしますよ!」
だがアッサリ否定された上に、実に日常的な会話をするアインズとジュンに、ガゼフは何処か毒気が抜かれる気がした。コレが全て己をハメる為の演技なら、其処等の劇団員の演技等見れたものではないと確信して。
「怒った顔をみせるな」
「さっさと拘束魔法を解いてください!」
穏やかに笑うアインズと顔を真っ赤にして文句を言うジュン。実に日常的で戦場へ向かうとはとても思えない彼等の姿が自身よりも圧倒的強者ではないのか。自然とそう考えてしまう。
そんなやり取りをしながら、アインズがジュンの拘束魔法を解き、降ろしてやればジュンは目尻に涙を浮かべながらアインズを睨みつける。
『何考えているんですか!
目に見えるモノは光の鎖だけなのだが、悪魔を弱体化するモノや全能力にマイナス補正をかける魔法等々。少なくとも味方にする行動では無い。
だが、アインズは既に
『確認ですよ。レベル70以上がいれば何らかの反応が有ると思えば・・・』
『ぐっ・・・まぁ、仕方ないです』
ジュンの抗議は一瞬で無駄に終わった。時間に関する魔法はユグドラシルにおいて、70レベルを超えている者にとっては当たり前であり、同戦闘エリアでは普通に感知できるモノなのだ。アインズが敵に70レベル以上のプレイヤーがいないか確認する為と言えば、ジュンには納得するしか無いのだ。
悔しそうにアインズを睨みつけるが、そんなジュンの表情の変化を当のアインズが楽しんでいるとは思い至らない。ジュンにはアインズの顔が鉄仮面に見える程表情の変化が乏しいのだ。
「ところで、エンリというのは彼女の事だろうか?」
「私よ」
ガゼフは此方に向かってくる漆黒の
だが己の背後から声がした為、咄嗟に剣を握り、勢いよく振り返り、驚愕しながらバックステップで後退した。少なくとも王国戦士長の地位に着いてから背後を取られた事が無いのだ。
「な、何と破廉恥な・・・ん?その目は?」
「・・・精神が高ぶるとこうなるのよ。気にしないで」
そしてガゼフは思わず我が目を疑う。エンリの装備は露出こそ主に胸の谷間や脇、左の上腕辺りだけなのだが、体のラインが確りと分かるモノなのだから。少なくとも禁欲中の男の前には出せない恰好である。そして髪の隙間よりその目に気付いた。人間であれば間違いなくあり得ない黒と金とコントラストに。エンリは咄嗟に胸を腕組みする事でさり気無く隠そうとし、目を瞑る。戦闘で気が高ぶっていないと、流石に恥ずかしいのだ。
(吸血鬼。では無いようだが・・・)
人間ではない可能性をガゼフは視野に入れた。装備からしても唯の人間が身に着ける事ができる代物では無い。エンリの目はそう思わせるモノなのだ。
「エンリ。私達も行くけど、アインズさんが話終えてからね」
「分かってます。ただ、アイツ等には確りとやらなければならないんです。あの子の為にも・・・」
そんなエンリの様子から、先走らないように声をかけるジュン。エンリの言葉にガゼフは何か事情が有り、配慮すべきではと思うも、地位の関係から警戒心は解けないでいた。
「ガゼフ殿も当然来るのでしょう?でなければ、我々も身の潔白を証明できません」
「・・・重ね重ね申し訳ない」
「いえいえ」
そんなガゼフに対してアインズは社交辞令の様な口調で話す。無駄に警戒しているとガゼフは言われたようなモノなのだが、自身の実力では警戒するだけ無駄かもしれないと、自然体で会話する彼等を見て思わざるをえない。万が一の事態では、何とか部下達を生かす為に、情報を王へ伝える工夫を考える必要が有る。
結果、ガゼフの部下とアンジェを村の防衛に残し、アインズ達は打って出る事となった。
てな事で次回が陽光聖典戦です。入れようと思ったんですけど、1万8千行くかも?と考えて切りました。それに、いい具合に、もう土曜ですしw
なんか、オカシイ位王国の事情を読めるもんか?と思うモノですが、そんなに変でもないんですよね。王国貴族の悪評は公式の農村でも有名みたいですし、ガゼフがいて邪魔に思うのは?と考え、ガゼフがどちら側かと推測すれば、あら不思議。分かります。まぁ、普通仕草に関しては目を見るモノですが、ガゼフなら眉間に皺寄りそうwって考えましたw
ガゼフはかなり責任が高い地位にいますから、味方であると確定できない以上、疑うようにしました。最後に部下を置いて行きましたが、信頼よりも、万が一アインズ様達が法国の者でも、何とか逃がす為に置いて行きました。因みに遺書は書いて渡しています。
地味に村の男衆がアインズ様を崇拝しておりますwイメージ的には体長4メートルは有る虎?を子猫の様に扱ってる感じですw
・・・勝手にキャラが動くと言いますか、アインズ様。めっさフリーダムです。終いにはジュンの貞操濡れたトイレットペーパー並の強度しか無い気がしてきた・・・(^^;)
エンリの所属ですが、取り合えず2巻分はアインズ様方とエ・ランテル行きが決定しましたw2巻分から更にオリジナル色強くなりますw
アニメ終わっちゃったな・・・見るもん無くなったー・・・
では、次の更新は水曜になると思います。