魔王様の友人は風変りな悪魔(元男です)   作:Ei-s

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あと2か3話で一巻分終わり~何か、スンゴイ長かった気がするw
あと、戦闘とその他で持って行かれた・・・オノレ!脳内アインズ様!何故荒ぶってらっしゃる!生贄をお望みか!?
いや、待てよ?アインズ様が荒ぶれば、もう2話程延びるかも・・・(ーー;)



第九話

カルネ村より少し離れた荒野。殺気が原因なのだろうか、異様に寒々とした風が吹き荒れる。そこに20人ばかりの黒い牧師風の服を着た集団がいた。隊長であるニグン・グリッド・ルーイン以外は覆面をしている事から、一種の特殊部隊であると良く分かるだろう。

ニグンはターゲットであるガゼフがどう動くか分から無い以上、括目して待っていた。全ては人類を救う。その崇高なる使命の為に殺す。ただそれだけの為に。

ニグンにとって意外だったのは、ガゼフ以外に数人の人影が有った事だ。彼の予測では部下ごと突貫し、此方の包囲を抜けようとするというもの。だが、実際は見た事が無い神官服の美女、独特でセクシーな恰好の少女、漆黒の金属鎧(フルプレート)の女、中年の豪華なローブを着た魔法詠唱者の男と、完全に統合性の取れ無い冒険者らしき4人を連れてきている。

この事から暗殺されるのを分かった上でガゼフが彼らを見届け人に選んだというのか、そう思おうとしても違和感があった。だが、ニグンのやるべき事は変わらない。毅然とした表情で彼等を見た。

 

「ガゼフ・ストロノーフ。人類の為にその命、頂こうか。」

 

「失礼。皆さん。私はアインズ・ウール・ゴウンという。君達に質問が有るのだが良いかね?」

 

ニグンの言葉は宣告である。殺気に光る青白い瞳は確りとガゼフを捉えていた。だが、何でも無いように、アインズは気軽に道を尋ねるように言葉を発した。部下達が魔法を放とうと魔力を手に集めるのを感じたニグンは、一度右の手の平を部下達に向け、制止させる。

ニグンには、この魔法詠唱者の実力が分からない。女ばかりを連れてきている事から、彼の奴隷か何かではないか、もしくは神官服の女性は重要な護衛対象ではないかと考える。もしそうならば、任務外で抹殺する必要が有るか、任務を中断する必要性が有ると考えた。だが、それには情報が必要であると判断する。

 

「なんだ」

 

「何故虐殺を行い、死した女を犯してまでもガゼフ殿を殺そうとしたのか教えて頂きたい」

 

ニグンにはアインズの質問の意図が分からなかった。

今回の任務は陽光聖典配属試験も兼ねており一般の騎士も連れてきている。彼等にはガゼフを誘い出す為に、程々に殺せとは命じたが、人の尊厳を汚すように、とは命じていないのだから。今回犠牲になった無垢なる村人の冥福を祈っていたニグンは困惑を噛み殺し、コレはチャンスだと判断した。

 

「私からも質問が有る。貴様の隣の女。何故神官服に似た服をきているのだ?」

 

「これは異な事を。宗教は一つでは御座いません。人の幸福を思えば、その分宗教は有るモノです」

 

本来神官は奴隷に落とされる事は無い。余程の重罪を犯せば別だが、そんな聖職者は奴隷に落とされる前に逃亡する。

また、法国の神官服には様々な規定がある。やれ、染色の材料からその色の仕上がり、装飾に用いる金糸まで様々だ。そして、見知らぬ神官服は漆黒聖典など秘匿された部隊や重要人物が着る事が多々有る。

以上からニグンは判断出来なかったのだが、アインズの言葉に少し安堵した。本国は別だが任務で無ければ、彼に異教徒を弾圧する趣味は無いのだから。現状見届け人であり、此方の所属を知らなければ殺す必要性も無いのだ。

 

「異教徒か・・・だが、死した女を犯したとはどういう事だ?」

 

故に、ニグンは分からない。死者を冒涜せよという命令もしていなければ報告も受けていないのだ。また、此方を侮辱する為の発言としてはアインズの口調は淡々としたモノ。ただ事実を述べている様に聞こえる為ニグンは激昂する事も無く冷静だった。

 

「成程・・・一部隊の暴走ですか?」

 

「何を言っているのか分からん。いや、まさか・・・」

 

ニグンの様子からアインズは全てベリュースの判断だと認識した。そしてニグンも昨日、異様に自身を売り込んできた馬鹿がいた事を思い出す。弟やロンデスから非常に面倒で騎士に似つかわしくない人物と聞いていただけに、嫌な予感がした。

 

「この者がそう命じたようですが」

 

「ベリュース!アインズ・ウール・ゴウン殿。その者が確かにそう命じたのだな?」

 

アインズは何でも無い様に、布で包んでいたソレをニグンに向かって軽く放り投げた。

放物線を描き、軽く包んでいた事から空中で結び目が解け、ソレが何なのか分かれば陽光聖典の者達とガゼフを驚愕させた。ソレは人の首だ。恐怖に固まり、水晶体が垂れ落ち、顎が砕けているのか大きく口を空け、口の中には砕けた歯の破片と肉片が見え隠れする首は何故そのような事になったのか分からないモノだ。

だが、先のアインズの物言いから推察すれば、話は簡単である。ニグンは敬意をもって問いかけた。ベリュースと陽光聖典の者が同種だとアインズが判断すれば、ソレは己の未来だと何故か確信した為だ。

 

「えぇ。残念ながら私が村を救った際、ロンデスという者に罪を擦り付けようとしていましたがね。いやはや、法国出身であるとまで言うとは、なかなかの教養をお持ちだったのですね」

 

「っ・・・村人達の前でか?」

 

アインズの淡々としながらも、侮辱する言葉にニグンは思わず舌打ちをしそうになるのを抑えた。抑えるしかない。まさか、これ程足を引っ張るなど考えられない所業に思わず地面に転がっているベリュースの首を踏み砕きたい程である。本国の者が試験である事からベリュースを隊長に任命した事が現状己等の首を絞める等思いもよらなかった。

だが、それ以上に確認すべき事が有った。アインズが暴露させたのが彼等の前だけならば、彼等を確実に抹殺すればまだ道はある。だが、アインズの返答は沈黙。ソレは肯定としてニグンは受け取った。

ガゼフも驚愕していない事から既に知っており、伝令を出した可能性も否定は出来ないが確実では無い。そして、まだ一点確認すべき事が有った。

 

「一つ聞きたい。彼等の生き残りはいるのか?」

 

ニグンの指す彼等とは誘導部隊の生き残りの事である。ニグンの質問に、アインズは再び沈黙で返した。思案からか、眉間に皺を作り、目を瞑る姿は決断を迫られた人間のソレである。

 

(シグン。ロンデス・・・)

 

ニグンの脳裏に有った撤退の文字は消えた。先ほどアインズが言った事から友人であるロンデスと、弟であるシグンが生きている可能性が有るのだ。ならば、やるべき事は決まった。

括目したニグンの目には強い意思が有った。一見半笑いに見える表情を堅く引き締め、括目しながら見る姿は決意をした人間でしか見せられない輝きが有る。

 

「・・・で、あるならば、人類を救うためにも、村人達を殺さねばならん」

 

「ほう。己が信ずる正義の為、ですかな?免罪符ではありませんよ?」

 

ニグンの言葉にアインズはその意思が本物なのか、声のトーンを一段低いモノとして確認するように述べる。

アインズとジュン、アルベドには感じられないが、濃厚な殺気が放たれており、まるでアインズの体が2周りも大きくなったのを幻視し、一部の者達は一瞬自身が死んだと誤認する程である。

 

「何とでも言うが良い!貴様等も神の御名の下に死んで頂く!」

 

ニグンは冷や汗をながしながらも、震えそうになる体を奮い立たせる為に大声を出した。自身の今感じている恐怖と、まだ生きているかもしれない弟と友を失う可能性に比べたら些細なモノなのだから。ニグンの大声は鼓舞となり、気を引き締め構えを取る部下達。

ガゼフは己が剣の柄に手をかけ、手の平が汗で濡れているのに気づいた。

 

「ジュン。これで良いか?」

 

「えぇ。狂信者の中でもマトモな部類なのですけど・・・スキル!神官の連鎖支援魔法(プリースト・チェイン・マジック)!」

 

アインズは正直どうでも良かったのだが、ジュンが彼の指示が大元であったのか確認したいという思いを汲み取り、聞いた事柄だったのだ。

ジュンは少し残念そうに、スキルを発動させた。神官系列において、一度に7種類の支援系魔法を行使し、強化率を上げるスキルを。

 

対神聖攻撃(アンチ・ホーリー)魔法からの守り 神聖(マジックウォード ホーリー)上位自動回復(グレーター・リジェネイト)上位硬化(グレーター・ハードニング)感知増幅(センサーブースト)超常直感(パラノーマル・イントゥイション)上位全能力強化(グレーターフルポテンシャル)

 

「ば、馬鹿な!」

 

ジュンの7つの魔法がエンリを一瞬で強化する。それは法国出身であるニグンにも知らぬ魔法ばかりであり、一瞬で強化される等知らないモノなのだ。7種類のエフェクトがエンリに重なり、ただ立っているだけで威圧されているようにニグンは感じた。

 

「エンリ。行きなさい」

 

ジュンの一言は目を瞑り、どうでも良い事とニグンの言葉を聞き流していたエンリの行動を許可するモノだった。括目したエンリの目を見たニグン達は己等の前に伝説級の魔物の大きな咢が向けられた様に感じる。

少し、皮肉気に笑みを洩らしたエンリは足に溜めていた力を一気に解放した。

 

「「なっ!?」」

 

地面の爆砕と共に粉塵が舞い、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)が光の粒子となり四散する。切り裂き、踏み台にし、縦横無尽に空を跳ぶ。

 

「何だというのだ!あの動き!武技ではない!」

 

「魔法で強化してあるのです。元々の能力に上乗せすれば、エンリには容易い事ですよ」

 

エンリはただ、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)を蹴り、空を駆けているのだ。人間が武技を使えばできそうな動きではあるがそう連続で使えないのが武技である。ガゼフの驚愕の叫びにジュンとアインズは調べる必要のあるモノをまた一つ認識した。

 

「おのれ!天使の再召喚を!かかれ!監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)

 

ニグンは炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)が易々と討ち取られる様子に、部下に再度の天使召喚を命じながらも、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)が全滅し、エンリが地面に着地した瞬間を狙い己の召喚した天使を向かわせる。

監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)が光り輝くメイスを勢い良くエンリの脳天めがけて振り下ろした。

 

「馬鹿な!」

 

だが、当たる事は無い。右薙ぎの斬撃でメイスの柄を切られ、股下から振り上げた逆風の斬撃で真っ二つになったのだ。防御力に優れた監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)が瞬殺されるのは陽光聖典にとって悪夢以外の何物でも無い。

ニグンの叫びを他所にエンリの表情は不完全燃焼という感じが見て取れる。

 

「まだまだ行けるでしょ?」

 

エンリは少し口角を上げ右手の平を上に向けニグンに向け、人差し指と中指を波が打つように数度自分に向ける動きをした。まるで女が男を誘う蠱惑的な挑発である。

 

「くっ・・・こうなれば、最高位天使を召喚する!」

 

「なに!?」

 

ニグンは理解してしまった。このままでは全滅すると。本国へ情報を渡そうとしても、実質動いているのは一人。下手に逃がそうとすれば一瞬で狩られると分かっているのだ。

故に、最大戦力を囮に、部下を3人程逃がそうとして懐から神官長より賜ったスレイン法国の至宝の水晶を取り出した。ガゼフは己の暗殺ごときにそれ程スレイン法国が力を入れていると知り驚愕しながらも疑問を覚える。

だが、そんな彼らに対してアインズ達はマイペースだった。

 

(熱い。熱いのに・・・早くシテよ・・・)

 

(あれは、魔封じの水晶・・・熾天使クラスだと厄介だな)

 

エンリは己の体に溜まった熱を口からフーっと吐き出していた。熱が一定以上の為、水蒸気が発生し、白い息を吐いた様に見えた。アインズはニグンの持つ水晶に込められている魔法が天使召喚の最上位級であれば面倒だと思っている。

 

「アルベド。アインズさんをスキルで護って下さい」

 

「っ!貴様に言われずともっ!」

 

アインズが思っている事をジュンは把握しており、アルベドに指示を出せば、アインズの身の安全を守る行為をジュンに言われ、エンリ程度(レベル40)が無双状態である脆弱な相手に、スキルを使う必要性を考えなかった己を恥じたが故の発言である。真にアインズの安全を考えるのならば最初から指示がなくとも使わねばならないのだから。ヘルムの隙間から黄金の目を敵意から光らせてしまった。流石に先程のお姫様抱っこと、ジュンの意思を優先するアインズの行動で色々と限界だったのだ。

アルベドのアインズの前で斧を構える姿は正に盾である。完全に慢心の無き姿は唯の小石すら自身の後ろに通す気はないと、全身で告げている。

 

(あれ、何で私にこんなに敵意を?)

 

(アルベド?あ。ジュンさんにまだ言って無かった・・・)

 

アルベドの過剰反応にジュンは違和感を覚えた。いくらタブラがギャップ萌でも自身にこれ程敵意を剥き出しにする設定をするのだろうかと。アインズはアルベドのジュンに対する敵意に未だにジュンに言っていなかった事と、少し気が早く根回しをするべく強引に事を進めた事が、アルベドの嫉妬を煽っていた事実に反省はした。だが、自重するは全く無い。

 

「出よ!威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!」

 

「なんと・・・魔神を倒したという天使をっ!」

 

そんな3人を他所に、魔封じの水晶から蒼銀の裂光が放たれた。全長は優に5メートルは有るかと思われる、幾千の翼を束ねたような白銀の巨人が、異形の天使が降臨したのだ。手に持つ黄金の杖に、十字架と魔法陣を組み合わせた光る紋様を、顔に当たる部分に浮かばせて宙に浮かび、蒼銀の後光を放つ姿は正に断罪すべく現世に舞い降りた天使そのものである。

その威光から召喚されたのが、かつて魔神を屠った天使である事実にガゼフは膝を折りそうになった。

 

「このスレイン法国の至宝をもって、貴様等を滅ぼす!でなければ、貴様らはこの先人類の障害となる!」

 

威風堂々と宣告するニグン。先程エンリが見せた容易く天使達を屠る姿からして、人間では無い。記述書にある邪悪なるモノ、悪魔だと判断した為である。スレイン法国の国是の下、人類の明るい未来の為に此処で確実に斃す。その意思が見てとれるだろう。

 

『ジュンさん。エンリにまだやらせる気ですか?ドミニオン相手ですけど。てか、コントか何かですか?』

 

『なかなかキツそうですけど、エンリを見て下さい』

 

一方のアインズ達は、余りにも下らない相手が切り札という事実に、気が抜けていた。伝達魔法(メッセージ)で駄弁り出す始末だ。だが、アインズ達にとっては雑魚だが、エンリにとっては自身のレベル以上の相手なのだ。

エンリはジュンの魔法で強化されているとは言えレベル40程。相手はレベル50程なのだから。だが、ジュンは全く心配していなかった。エンリと融合したアレの設定上、相手が強ければ強いほど精神が高揚し、戦闘力が微量だが上がる筈なのだから。アインズはジュンの言う様にエンリを見た。

 

「あ、ぁぁっ・・・!」

 

『成程。って、あの・・・アレも設定か何かですか?』

 

エンリは歓喜していた。今からアレを、白銀の天使を斃して良いのだと思えば、興奮から熱い吐息が漏れてしまう。その目は初恋の相手を見つめる乙女に似ていた。まるでデートを楽しみに、待ち合わせをしている乙女に見えてしまう。左手で撫でているのが右手に展開する刃の腹で無ければだが。

アインズは何を突っ込めば良いのか分からずジュンを見た。

 

『・・・大丈夫でしょう。それよりあの隊長格。彼は欲しいですね』

 

(・・・本当に気に食わん)

 

だが、ジュンは化学反応した設定を無視する事にして、ニグンの身柄が欲しくなった。何やら至宝だのとさっきから言い、ガゼフの反応から色々知ってそうなのだから。

アインズは正直ニグンを、さっさと暗黒孔(ブラックホール)等で塵も残さず消したい気分だった。ジュンの興味を引くのが非常に不愉快なのだ。

 

「今だ!ホーリースマイトを放てぇえ!」

 

そんな彼等を他所にニグンはドミニオンに指示を出す。

ドミニオンの持つ杖が砕け散り、その力が必殺の聖光となりエンリの頭上より降り注いだ。その衝撃は聖なる波動が周囲に突風を吹かせる程である。ジュンがスカートの前の部分を抑え、アインズがさり気無くジュンのお尻を触りながらスカートを捲れないようにする程だ。

 

「どうだ!これが最高位の天使の力だ!次は貴様等の番だ!」

 

堂々とアインズ達を指差すニグン。だが、怯えている姿を見せているだおうと思えば、違っていた。

 

「あ、あの、アインズさん?その・・・」

 

「あぁ。すまない。スカートが捲れないようにするためにな?」

 

ジュンが自身の臀部に感じる感触に、言いずらそうに顔を羞恥で真っ赤にしてアインズを見れば、少し笑みを洩らして手を放すアインズ。ジュンはアインズの行動が善意であると思い、お礼を言おうかと思うが、何を言えば良いのか分からなかった。つい俯いてしまう始末であり、その仕草にアインズは優し気な笑みを浮かべる。

 

「ダ、ダメージを負わないのは知ってますから。魔法障壁を張らなかった私が悪い訳ですし・・・その・・・」

 

「アインズ様!何故彼女のお尻を御触りに!?私のでしたら、どうぞご自由になさってください!」

 

あの程度でダメージを負わない為に油断したと言うジュンに対し、アルベドの頭はアインズがジュンの臀部に触れた事を認識した。つい、アインズの前に尻を突き出すアルベド。

 

「いや、たまたまジュンのスカートが捲れそうになったのでな。反射的に抑えただけだ。他意は無い」

 

「そ、そうで御座いましたか。大変失礼しました」

 

そんなアルベドの反応にあくまでも紳士っぽく返すアインズ。そんなアインズの対応に、アルベドは恥ずかしく思った。コレでは痴女ではないかと。だが、アインズはある事を忘れていた。今は肉が有る状態である事を。

 

(鎧の上からじゃ、感触も何も無いと思うんだけどな)

 

(タブラ・スマラグディナ様!何故もう少しセクシーなデザインになさらなかったのですか!)

 

アインズの心の声は目に表れていた。そして、アルベドは不幸にもソレを読み取る力が有ったのだ。

アルベドの今着ているヘルメス・トリスメギストスは彼女の能力を十全に発揮できる装備である。ただし、見た目は相手を威圧する目的も有り金属が全身を覆っている、正に悪魔の女騎士である。スーツアーマーに当たる部分も強固な作りとなっており、着ているアルベドの持つ女の柔らかさを表せる要素は皆無だ。ソコが戦闘中にアインズを悩殺できない部分でも有る為、自身の造物主の感性を嘆いてしまう。

タブラもそんな事で娘にディスられるとは露にも思わないだろう。アインズの目にはアルベドの肩に小さなタブラの幻影が乗っており、四つん這いのポーズで項垂れているのが見えていた。

 

「ふ、ふざけるな!馬鹿にしているのか!?」

 

ニグンは己の頭の血管が切れる音を感じた。眼前に映る光景は何だ。悪魔は倒れたのに、その余裕はなんだと目で語っている。そんなニグンの視線に、ジュンは少し申し訳なく思った。

 

「エンリ」

 

「フフフ。(さぃっ)(こう)です・・・!」

 

ジュンの一言に、エンリは自身の姿を隠している光の粒子を剣風で薙ぎ払った。着ている鎧の部分は少し罅割れており、ライダースーツの部分も破けてはいるが肌には傷一つ無いエンリが、その目を喜びで輝かせて立っていた。

 

「ば、馬鹿な!何故最高位の天使の一撃を受けて!」

 

「教えてあげましょう。ホーリー・スマイトは罪を犯した者に対して、その罪が重ければ重い程威力が増すもの」

 

ニグンは、思わず数歩後退して未だ健在であるエンリの姿に慄いた。そんなニグンにジュンは冷静にドミニオンの放ったスキルを少し恥ずかし気に厨二風に語る。相手が理解しやすい様に話すのが説明の様式だからだ。

ホーリー・スマイトは悪魔やアンデットに対して有効な攻撃であり、また、属性(アライトメント)がマイナスであればある程威力を増すのだ。だが、そもそもエンリの属性(アライトメント)はマイナスでは無く、0である。コレは、融合した物の属性(アライトメント)が0であることに加え、村の襲撃に対する反撃にベリュースの殺害が有った為である。単に人やモンスターを倒したら属性(アライトメント)がマイナスになる訳では無いのだ。

以上からドミニオンのホーリー・スマイトは悪魔への特効ダメージを与えるだけで終わる。また、先程ジュンがかけた支援魔法には光属性ダメージを軽減するモノに加えて自動回復や全ステータスアップ、防御力アップも掛けられているのだ。レベルが10以上離れていても、実質はそんなにダメージを負わないのだ。

エンリの鎧や服が煙を上げて修復している事から、HPは全快に近い状態である。

 

「っ・・・その容姿で、罪深く無いと?俺には悪魔にしか見えん!」

 

「悪魔か・・・フフッ」

 

ニグンにとっては魔神すら滅ぼした一撃を受けて無傷であり、黒目に金の瞳孔のエンリは悪魔にしか思えなかった。そして、ニグンの言葉にエンリは少し笑いを洩らして、唇を一舐めしたらドミニオンに向かって跳びかかった。

勿論普通に避けようとしたドミニオンだったが、ソレをエンリは6束の髪を伸ばし、ランダムに突き刺し、収縮する事でドミニオンに取り付いた。

 

「ほら!ほらぁ!どうしたの?その程度じゃないんでしょう!?」

 

そして右手の刃を振るい、左手で羽を引き千切る。エンリの楽しそうな声に反してドミニオンは傷ついていく。ドミニオンも必死で抵抗しており、振り落とそうとするがエンリの髪は何度か貫通して巻き付いており、抜きようも無くエンリの体をドミニオンの背に固定していた。

アインズ達を除く皆が、一方的に弄られる天使の姿に言葉が出ない。

 

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!?」

 

そして、終にドミニオンは浮ぶ力を無くし、地面へと墜落した。土煙が舞い、ニグンの悲壮感を思わせる声が荒野に響き渡る。砂塵が消えれば、弱々しく光を明滅させるドミニオンと元気そうにその首に該当する部分に跨ったエンリの姿が有った。その姿はドミニオンの青い血潮に濡れ、興奮しているように見える。

 

「まだまだ頑張れるでしょう?それとも限界?」

 

何処か、優しそうにも聞こえるエンリの言葉だが、今のドミニオンには手も、翼も無い。立ち上がる事も不可能である。弱々しくもがく姿は足を全て引き千切られた蟻を思わせるだろう。

そんなドミニオンの姿と蠱惑的なエンリの姿は、陽光聖典の部隊員にとっては絶望でしかなかった。

 

「はぁっ・・・良かったよ・・・」

 

そして、終にエンリの凶刃がドミニオンの後頭部に突き刺さり、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)は白銀の粒子となり消え去った。エンリは火照る体に快感の残照を、腕組みをしながら震るえる事で感じていた。

気づけば空は夕刻になっており、赤く燃え盛る太陽が沈むのが、陽光聖典の者達には神が見放した様に思えた。

 

「馬鹿な!馬鹿なぁっ!何故だ!何故魔神をも超える力を!」

 

膝を付き、地面を殴りながらもその視線をエンリから放さないニグン。悔しさや怒りからだろうか、毛細血管が切れ、目から血の涙が流れる。

既に勝機はなく、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)の召喚で勝機を見た、撤退予定の隊員は逃げずにいたのだ。情報も持ち帰る事も出来ない。完敗である。

 

「さて、エンリ。少し予定が変わりました。まだ戦い足りないでしょうけど、いらっしゃい」

 

「はい。ジュン様」

 

ジュンはエンリを優し気に呼び戻した。エンリは快楽の残照を十分に味わった事も有り、素直にジュンの傍に歩いて戻る。ジュンは陽光聖典の面々を一瞥したが、特に思う事は無かった。

 

「そろそろ良いですよ」

 

「そうだな・・・」

 

ジュンの言葉に、アインズは右手に魔力を集める。それは悍ましい程濃厚な魔力であり、ドミニオン等足元にも及ばないだろうと、目で、肌で彼らは感じ取った。心を恐怖が侵食する。『死』が目前に現れたのだ。

 

「い、いやだ!ニグン隊長!どうすれば!」

 

「っ・・・一つ聞きたい。金銭では駄目なのか?」

 

一人の隊員が恐怖に負け、ニグンに助けを求めた。ニグンは『死』を目前に無駄だと知りつつもそう提示するしか無かった。先のエンリの戦闘力も加え、友と弟が既にこの世にはおらず、自身の決意も覚悟も、命すらも無駄になったと痛感しており、茫然自失状態であった為だ。

 

「命には命だ」

 

「ガゼフ殿。ここは力を削いだ方が得策ですよ」

 

「あ、あぁ」

 

アインズは極めて無慈悲に振舞った。ジュンもガゼフに微笑みかける。先程から価値観が崩壊するモノを目の当たりにしていたガゼフは自失気味にそう答えるしか無かった。頭の片隅で、捕らえるべきだと訴えているが、体が行動出来ないのだ。

 

「せめてもの情けに、苦痛無く殺してやろう」

 

魔力が臨界に達したと思わせる程、アインズの手に込められた魔力は、一般人が見ればソレだけで卒倒する程の魔力だった。アインズの手の平が向けられた時点で、陽光聖典の者は動く気力を無くし、皆が皆へたり込んでしまう。ある者は神に祈り、ある者は神を罵る。何故神の為に生きた私にこのような死を強いるのかと。

だが、全ては無駄である。

 

暗黒孔(ブラックホール)

 

上位睡眠(グレーター・スリープ)個別指定転移(セパレート・テレポーテイション)

 

アインズが魔法を発動させた。時間がゆっくりと動く空間が展開され、全ての色が白と黒のモノとなる。陽光聖典がいる空間の中心に黒い穴が出現した。だが、彼等は穴に飲み込まれる事は無く、ジュンの魔法により眠らされ転移させられた。

穴は一瞬で陽光聖典がいた地点を飲み込み、半径10メートルは有るキレイな半円形を作成し、時間が再び元のモノへと戻った。

 

「何という力だ・・・」

 

「我々は流れの者。下手に徴兵等は考えない事をお薦め致しますよ」

 

ガゼフとエンリの目には一瞬で彼等が地面毎消え去ったように見えた。まるで空間ごと抉った地形にそう呟く事しかガゼフには出来ない。エンリはアインズを尊敬の眼差しで見ていた。

そんな中、一瞬だけ罅割れる音と共に、空に罅が入った。

 

「っ!今のは・・・」

 

「成程。彼らは監視されていた様ですね。私とジュンの攻性防壁が発動したので問題はありませんよ」

 

余りにも突然の出来事に対し、まるで我に返った様に周囲を見渡すガゼフ。空間の罅は既に消えており、アインズは少し不快そうに答えてやるしか無かった。

 

「そのような魔法も有るのか・・・」

 

「さて、一度村に戻りましょうか」

 

ガゼフは己の知らない魔法に、目の前の魔法詠唱者、アインズは神かナニかかと思い始めていた。そんな事とは露知らず、ジュンが極めて軽くそう言って歩き出した。

 

スレイン法国。土の巫女姫がいる地下神殿は劫火に飲まれていた。アインズとジュンの攻性防壁に引っかかった結果である。そんな煉獄において、全身に火傷を負った女が久しく自意識を取り戻し、周囲を見ようとしていた。

 

(あ、れ?わ、たし・・・)

 

「おやおや。人間というのは恐ろしい事をするモノですねぇ・・・」

 

だが、声も出なければ、殆んど炭化したような、何故生きているか不明な状態である。そんな彼女の脳裏に語り掛けるモノがいた。その姿は彼女の脳裏に浮かぶ。その姿は長髪の人間の頭に手足が生えた異形だ。声は男性でも無く女性でも無い。便宜上彼とする。

 

(モン、スター?)

 

「なるほど。残念ながら私は悪魔です」

 

疑問だった。彼女の脳裏に浮かぶこの生物は何なのか全く理解できない。そんな彼女に疑問に彼は簡潔に己の種族を語った。

 

(悪魔?あ、ぁ・・・炎が・・・神よ・・・)

 

「貴女は死ぬのです。ゆっくりとお眠りなさい」

 

悪魔と知り、先の茫然とした自我で見たモノは、空間が罅割れ、煉獄の炎が全てを呑み込まんとした光景である。体が動かないのがもどかしい。そんな彼女を彼は排他的にも聞こえるが優しく言葉を投げかけた。

 

(どうして?)

 

「また質問ですか?まぁ、これくらいでしたら我が主もお許しになるでしょう」

 

彼女には疑問だった。巫女姫に選ばれるまで学んだ悪魔というのは邪悪なるモノであり、人を堕落させる事に喜びを見出す存在の筈だ。死の間際に現れ、その死を看取る存在では無かった筈だ。彼女は思った。目の前の悪魔と名乗る存在は何なのかと。

そんな彼女の質問に、思考を読み取れる彼は呆れたように、哀れむ様に彼女を見た。

 

「何の事もありません。私は覗き見する者が何者なのか調べるだけの存在です。貴女はお眠りになれば良いのです」

 

彼は己の存在意義を語ったのだ。彼女は自身が見ようとしたモノに、彼が主と呼ぶ凄まじい存在がいる事に気付いた。そして、心の底より生きたいと願う。人類の危機が迫っている。ソレを伝えなければと。だが、彼女の体は崩壊寸前である。幾ら望もうとも叶わない。蘇生魔法により蘇るその瞬間までこの記憶を残さねばならないと、コレが神が与えた使命だと強く、強く確信したのだ。

 

「では、おやすみなさい」

 

彼はそんな生きたいと願う彼女の意識を塗りつぶす。

彼女は思い出していた。優しき父母を。厳しくも優しかったシスターを。そして、巫女姫に選ばれなければ添い遂げていた愛しき人を。

彼は、彼女の意識を楽しかった思い出で全て塗りつぶし、彼女は最期の瞬間も使命等思い出せず、楽しい夢の狭間にいたのだった。

 

彼女の遺骸を発見した神官は炭化した顔だというのに、笑っている様に見えたと言う。そして彼女を蘇生しようとしたが、彼女は灰になった。

確かに彼は悪魔だった。

楽しい夢の狭間に彼女の意識を追いやり、堕落させ、使命を忘れさせたのだから。




てな感じでお送りしました。最後に出てきたキャラはデビルマンを知っている方なら分かりますよねw口調は少しテキトー感ありますけど(^^;)
ナチュラル・エロなアインズ様に脱帽です。何故に荒ってらっしゃる脳内アインズ様wいや、マジで(ーー;)

ついでに言うとジュンの攻勢防壁はエグイです。ゲヘナの炎+悪魔召喚8thを改造して彼を召喚し、情報を奪おうとしたプレイヤーと周囲のプレイヤー情報(名前と主なクラス)を奪うもんです。ユグドラシル時代ではゲヘナが良い感じに囮になって、情報は奪われる。その情報を下に色々と調査して何が狙いなのか推測してたんですよね。で、何処から目的が漏れたのか分から無い。誰かが洩らしたって事で敵対ギルドを内部崩壊させるのがジュンの手ですw地味にカウンターディテクトとか突破するのが彼の凄い所wその代わり攻撃力から防御力1で、俊敏と特殊特化の柔らかいハグレメ○ル仕様。透過機能付きwしかも、召喚改造NPCって所がミソ。つまり、再召喚すれば良いだけで、使わない時はコスト不要。拠点防衛に該当しないw
ただ問題は彼を召喚する条件を『自身を覗き見とかして情報を奪おうとした』に限定しているので、純粋な情報収集はできない事なんですよ。現在はその制約が『彼が全力を出す条件』になっているのはまだ知りません。

あ、ニグンちゃん生きてますよ~。ついでに言うと他の陽光聖典の皆さんもw彼等の今後は次回分かります。

今回の最大の被害者は『ドミニオン』だった気がする。読み返して思ったけど、9巻時点までで、異世界側で唯一アインズ様にダメージを与えた(たとえ1でも)功労者が、アインズ様を楽しませるだけになっちゃったw

そして、地味にエンリ無双wついでに言うとレベル上がったから快感、ながーく感じてましたw殺す事じゃなくて、純粋に戦闘行為でハイになりますw一言で言うと変身したら『バトルジャンキー』になります。詳しくは『ウィッチブレイド』で検索w

あと、ブラスレイター見ました。コミック全く見つからないので、イラついていたら、バンダイチャンネルでアニメ版有ったのでw

次回の更新は多分土曜か日曜です。そろそろ更新日決めようかな?週1か2で確定だけど。
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