豪華絢爛な応接用の客室にて、嗅いだことも無い、甘く優し気な匂いが彼の意識を覚醒させる。朦朧とする意識の中辺りを見渡すも、何処か現実離れした光景に唖然としてしまった。
「っ・・・ここは・・・?」
「ニグン隊長!」
「兄さん!」
ニグンは自身は死んだ気がしていた所に、ロンデスと弟のシグンの声に、ふと我に返る。そして、ふら付きながらも立ち上がろうとするが、上手くいかない。そんなニグンに2人は駆け寄った。長い時間眠っていた為に、彼の体の節々が痛みを発しているが、そんな事を気にする余裕はない。
「ロンデス!シグン!俺は生きているのか・・・?」
「はい」
「良かった・・・」
ニグンの言葉に不安そうだが、ハッキリと答えるロンデス。そして、死んだ様に眠っており、起こそうと体を揺らしても起きなかった兄を心配していたシグンの目からは大粒の涙が零れ落ちる。
「泣くなシグン。それにしても、ココは・・・っ!」
そんな弟の様子に、何とか手をシグンの頭に乗せ、安心させるように撫でるニグン。だが見覚えも無く、現実味を感じられない絢爛な部屋に現状を把握できないでいた。今3人が着ている服も、法王も着た事も無いだろうと思われる程、触感が滑らか、且つ美しい絹糸のバスローブである。この服を客人に対して着せるレベルである事からして、此処の主は信じがたい程の資産家であると確信した。
そして、ふと視界に影が有る事に気付き、凝視した。
「お目覚めになられた様ですね。私はユリ・アルファ。暫くの間、皆さまを丁重に扱いますよう申し付けられております」
視界に人が一人立っている事に中々気づかない等、ニグンには恐ろしい内容であった。
そして、その人物は美しい容姿をしたメイドである。キツそうな釣り目であるが、丁寧な御辞儀も含めて、否を見つけられない。また、先程まで動転してたとはいえ、立っている事を気づかせない事は、手練れでは無いかとニグンは考える。これ程の美人であり、手練れの者を3人の専属として配置させた人物が気になり始めた。
ニグンの頭は、ようやく目覚め始めたのだろう。眠る寸前の事態を思い出し、嫌な予感がしてきた。
「・・・我々は助けられたのか?」
「捕らえられたのです。彼方様方をどう扱うかは、彼の御方の御心次第です」
思わず生唾を飲み込んで、恐る恐る聞くニグンに対し、ユリは事実を答えた。その言葉からして、何が有ったのか悟るニグンだったが、決して『人間』には出来ない魔法の数々が使われた可能性を思いつき、冷や汗を流し続ける。そんなニグンの様子に、シグンとロンデスも嫌な予感がしてきた。静寂の中、3人の心臓がバクバクと五月蠅く感じる程音を立てていると、ノック音が3回響きわたる。ノック音に、3人は思わず、身を寄せ合い、扉を見つめる。ユリはそんな3人の様子を変に思いながらも、一礼して、扉を開く。
「あれ?気が付いたんだ」
「あ、貴女は・・・一体我々を捕らえて何が目的だ!それに、私の部下は!」
ジュンは何故男3人で固まっているのか不思議に思う。そんなジュンに対し、ニグンは目的と、己の部下の安否を問う。ジュンに近づこうとするニグンの腕をシグンとロンデスは掴み、近付かないようにしている。ベリュースの様に、アレを引き千切られて絶命するニグンを見たく無いのだ。
「・・・残念だけど、数名は死んでしまったよ。まさか、尋問して、3回話させたら死んじゃうし、魔法で『魅了・支配』したら1回でダメだとか思わなかったから」
「なっ!?馬鹿な!本国が我々にそんな事を!?」
ジュンは率直に言う事にした。ジュンは言外に死んだ理由は『スレイン法国』に有るように言う。ニグンは機密保持の魔法が有るのは知っていた。そしてソレが、説明を受けていた内容と、一定時間喋れなくなるのでは無く、正しく口封じになると知ってしまった為に、絶句し、体から力が抜けてしまい思わず膝を付いてしまった。
ニグンの心には祖国に対する不信感と、己の信仰心に罅が入る音がしたのを感じならも、それでも尚、ジュンを見てしまう。まるで、祖国が見捨てた事を否定する材料を探すかのように。
ニグンの姿に、ジュンはスレイン法国の上層部に、ある者達の姿が思い浮かぶ。人を人とも思わず、自分達が楽をする為に使い潰すアレ等を。
「後でもう1回来るけど、ちゃんと考えてくれれば生き残っている部下には、温情を与えても良いと考えているよ。自決とかしたら、どうなるか・・・分かっているよね?」
「・・・分かった」
長く見ていれば、同情してしまう。ニグンの、そんな縋るような視線をジュンはあえて無視した。そして追い詰め過ぎないように、時間を与える事にしたのだ。ソレが一番の慈悲であると言わんばかりに。
そんなジュンに対して、ニグンの返事は何処か、心此処にあらずと言わんばかりに、力が抜けているモノであり、ロンデスとシグンは心配そうに、ニグンに寄り添う事しか出来なかった。
「ユリ。彼らに食事を。ナザリックの素晴らしさを少しは理解出来るようにね。ただ、例の時間に粗相をしない程度でお願い。服装は、ちゃんと洗っているんでしょう?」
「はい。畏まりました」
ジュンは部屋から去る前に、ユリにそう申しつける事にした。暫くすれば、王座の間で、一つのパフォーマンスを行う為だ。現状手に入れた情報からして、彼らに多大の恐怖とストレスを与える事になるのを承知していが故の言葉である。ユリは、彼等が少し哀れに思うも、ソレを言葉にする事は無かった。ナザリックに所属していない彼等の心境を理解こそすれ、配慮してはならないのだから。
各々が時間迄にする事をし、日の出の時刻に王座の間に集結した。その中にはニグン達とエンリの姿も有った。いる場所は最後尾である。
皆が揃った王座の間に、骸骨の姿のアインズは転移で現れ、一度王座に腰かけた。そして、ジュンは転移で王座の後ろに現れ、アインズの左隣へ立つ。
ニグン達は恐怖で頭が如何にかなりそうだった。伝説を越えた強大過ぎる者達が介し、王座に座る者に跪いているからだ。己の自信と自負を打ち壊した女、エンリも静かに跪く姿に、ニグン達も跪かずにはいられなかった。
「先ずは、私が勝手に動いた事を詫びよう」
アインズは静かに立ち上がり、謝罪にもならない言葉を述べる。アインズの行動を理由も無く否定、拒否する者はナザリックにおらず、支配者の言葉が全てであるのだ。
「私は名を変えた。私はアインズ・ウール・ゴウン。アインズと呼ぶがよい」
アインズの改名に、王座の間に咆哮が響き渡る。歓喜の叫びである。
アインズは王座にて宣言する事の重要性を正しく認識していなかったのだが、コレこそが、アインズのみがナザリックの支配者であり、ナザリックの全てがアインズの物である。下僕も含めてアインズのモノとなったと宣言したに等しい行為なのだ。
異論を挟ませぬ物言いは、彼等にとっては正に至福の言葉である。己の造物主が去ったのは止むを得ない事情があると認識はしていても、それでも、捨てられたと思わない者がいない訳では無い。そんな彼等の孤独を含めて、アインズがその大いなる慈悲を持って包み込んだと、己等が命を持って仕える主がいてくれるのだと、感涙する者すらいた。
唯一、この流れについて行けないのはニグン達3人だけである。まさか、敵対した相手が、死の神。スルシャーナに似た存在だとは夢にも思わなかった為である。
エンリは、ナザリックの者達の感激度合から、拍手を持って歓迎し、讃えるべきと判断した。エンリの行動は列の後ろから伝播し、正に万雷の響きとなり、アインズを讃える賛辞となる。
アインズは拍手に驚きこそすれ、暫く彼等の好きなようにさせたのだが、収まる気配が無かった為、右手を掲げる事で拍手を終了する様に指示した。ソレは効果覿面である。一瞬にして王座の間に静寂が戻ってきた。
「そして、正式に宣言する。これよりギルド、スカイ・スカルは協力関係となり、ジュンとアンジェの発言権はアルベドと同等なモノとする。ただし、ジュンを始めとするスカイ・スカル所属の者の言葉に納得がいかなければ、非常時以外では守護者に相談するか私に直訴せよ」
アインズは静かになった中で宣言する。アインズ的には己と同等の命令権を与えようと考えていたのだが、当のジュンが拒否した為の措置である。この宣言にデミウルゴスとアルベドは内心驚いていたのだが、ジュンは何でも無い様に、微笑んでいる。
そして、ナザリックの者は先程、あえてジュンは遅れて登場したのは意味のある行動なのだと判断した。アインズが咎めない事が、発言権こそアインズよりも低いが、アインズと同等の扱いをしなければならないのだと。その権利を勝ち取ったジュンに対し、彼らはジュンが並々ならぬ相手である事を理解した。
彼等の気持ち等知らないジュンは翼を広げ、己の姿を隠した。その上で該当する装備を己のアイテムボックスへ収納した上で、戦闘形態へ移行し、背中の翼を収めたのだ。
シモベ達は驚愕した上で認めざるを得なかった。守護者からの通知は正しく、今のジュンは、正に『力ある者』であると思い知らされたのだから。
「非常時且つアインズさんがいない場合は、私とアルベド、デミウルゴスの3人が指揮を執る事になります。理解しておいて下さいね」
悪魔であり、露出度が非常に高い姿に似合わず、ジュンの声音と表情は優しいモノであり、不満を言う者は居なかった。ジュンが1人で指揮を執らないと宣言したのだから、不満を出せないが正しい。
ニグンは唖然とジュンの姿を見る。己が学んだ悪魔という存在は、アレほど優し気に笑える存在なのかと。そして恐怖がオーバーフローを起こしたのか、ジュンの姿が美しいと思わざるをえなかった。
「そして、今後の方針だが・・・我々を知らぬ者が多すぎる。このアインズ・ウール・ゴウンをだ。皆が生み出した者達よ。我が愛しき子らよ。汝らはこの事態をどう思う」
そんな、ニグンの心境を感じ取ったのか、アインズは最後尾で怯え、竦み、縮こまる3人を見ながらも、大きく腕を横へ広げ、ナザリックの者へ問いかける。多くのシモベ達はアインズの意図が分からず困惑しつつも、唯々アインズの次の言葉を待ち、傾聴するしかできない。
「私は哀しい。我々は、忘れ去られたのだろうか・・・アルベドよ。どう思う?」
「はっ!我々は貴方様の目であり手であります。貴方様の寂しさも怒りも憎しみも、ソレ等を生み出すモノは、我々が全て排除致します!」
そんな中アインズは言葉を続ける。その寂しげな一言に、ナザリックの者は一様に怒りを抱いた。そして、彼等の気持ちをアルベドは代弁する。アルベドの言葉にシモベ達は一斉に頷く姿は勇ましく、ソレがまたアインズには誇らしい。満足気に一度大きくアインズは頷き、デミウルゴスを見た。
「防衛戦の責任者であるデミウルゴスに問う。私の哀しみを、何をもって癒す?」
「天地にいる全ての知性体に、アインズ・ウール・ゴウンの名を知らしめる事が最良の手かと存じます」
アインズの言葉に、デミウルゴスは歓喜を抱きながら答える。アインズの一挙一動が己の造物主。ウルベルトが監修したのでは無いかと思える程、洗練されている気がしたのだ。まるで姿は無くとも、傍におり、アインズを支えているのでは無いかと思いたくなる程である。
「ならば、このアインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ!英雄譚も神話も、全てを塗り替え、我々こそが至高であると知らしめるがよい!」
シモベ達の熱気や高まっている。そんな雰囲気を感じ取ったアインズは大きく、スタッフ・オブ・アインズウールゴウンを持った左手を振り上げ、そして、振り下ろし、その先端をシモベ達へ向け宣言する。その声には先程迄の悲しげな雰囲気も、寂しげな含みも無い。正に支配者の威圧を伴った至言である。
アインズの言葉が、『命令』が下された。その威厳ある御姿を前に、直で命令された。シモベ達ならず、守護者の心を満たす『言葉』である。
「「「■■■■■■■!!!」」」
心に幸福が満ち、誰が発端かは不明だが、歓喜の咆哮で空気が炸裂した。多くのシモベが跪きながらも、右の握り拳を振り上げ、咆哮する姿は勇壮である。
喉よ枯れよと言わんばかりに、声の大きさこそが忠誠心のパラメータと言わんばかりに咆哮する者達。至高の41人の旗が、熱気と叫びにより揺らめく。
だが、この声にニグン達は唯々震える事しか出来なかった。彼等にとって神話級の魔物達の咆哮を直で聴いたのだから、仕方は無い。失禁しないように、スケジュール・時間調整したユリの手腕が素晴らしいのだ。
(・・・絶対にモモンガさんは凡人じゃない。確か、第二次大戦のドイツが好きだったっけ?でも、詳しくは知らない筈・・・?)
ジュンは今のアインズが恐ろしかった。異世界に転移して数日で、シモベ達の趣向を読み、その心を鷲掴みにする演説等、出来る筈も無いのに『して』見せたのだから。恐怖を微笑みで隠しながらも、背中を伝う冷や汗の存在を感じずにはいられなかった。
孤児で小学校卒業が意味するのはアインズが幼少期に、叡智の片鱗を見せ、企業のバックアップを受けた証拠である。そして、思うのだ。通常であれば、そのままバックアップを受け、高校か大学、上手くいけば大学院迄進学する筈である。己がそうであったからこそ、理解している。だが、アインズは、もしかしたら幼少期に『何か』を見せてしまったのではいかと。すべてを思い通りにしている上層部を破壊するナニかを見せたのでは無いかと思ってしまうのだ。パンドラズ・アクターの姿から、嘗て、世界征服を企んだと言われている、独裁者の姿が思い浮かぶが、ネット上には既に正しい情報は無く、アニメやパロディ等マヌケな男として描かれたモノしか残っておらず、史実とは程遠い姿しか知らない筈だと思いなおした。だが、思うのだ。恐ろしいナニかにアインズが変わったのでは?と疑ってしまう。
己の言葉を尊重し、頼ってくれる姿と、この支配者の姿がイコールで繋がら無い。カリスマ性・忠誠度維持の支配者ロール、魔王ロールだと思いたいのだが、少し違う。そんな違和感を覚えながらも、ジュンはアインズを信じたいと、心の片隅で思うのだ。
(素晴らしいですよ皆さん。コレが、我々が生み出したナザリックです)
ジュンの考え等知らず、アインズの心には満足感と自負が満ちていた。未だに応えるべく咆哮するシモベ達の姿を見ながら、仲間達と共に創り出したナザリック地下大墳墓が、己の言葉一つで此処まで反応を示すのが嬉しいのだ。そして、同時に思うのだ。彼等を護り、共に在るのが、支配者としてすべき事であると。ジュンを盗み見れば、優し気な微笑みを浮かべており、それが不思議と優越感と満足感に繋がる。
40人の幻影がアインズとジュンの後ろに勢ぞろいしており、笑い転げる堕天使以外、大半は落ち込んでいるウルベルトを慰めている事は知る由もない。たっち・みーの幻影も慰めている事から、『娘を嫁にやった気分』とやらを感じているのかもしれない。
「・・・さて、コレから地表部へ行くとしよう」
だが時間は有限である。
アインズは静かにすべく、杖を元の位置へ握り直し、一度地面を突いた。先の爆発の様な歓喜が止まり、王座の間に静寂が戻る。アインズはシモベ達の一指乱れぬ行動に一度大きく頷き、
「エンリ。プレアデスの後ろへ行け」
「はい。畏まりました」
黙々と進むアインズの3歩後ろに続くジュンとアルベド。そしてデミウルゴスを筆頭に守護者とシモベ達が続く。アインズは
シモベ達は新参者であるエンリをプレアデス級にアインズが重用する。そう述べている様に感じ、嫉妬半分祝福半分にエンリを見ている。
故にニグン達、スレイン法国の3人は思う。先程の演説や、人智を越えた力と住居から『目覚められた』のだと。死の神スルシャーナの上位に坐す、『冥府の王』がアインズ・ウール・ゴウンであるのだと思った。
「では、皆さん。今から結界を張る為にも、スカイ・スカルをドッキングさせます。多少揺れますが、気にしないで下さいね」
幾分緊張と警戒を見せる守護者とシモベがいるのを感じながらも、ジュンはそう告げて、ライトに合図を送った。30メートルもある水晶ドクロが悠然と降りて来るのは、実に威圧感が有ると苦笑いを浮かべている。
中央霊廟の真上へ降りてきた瞬間、中央霊廟が地鳴りと共に左右に分かれ、高さ20メートル、直径10メートル程の水晶の柱がせり上がって来る様に、皆の視線が釘付けになってしまう。そして、水晶ドクロが柱と接続し、そのまま降下。接地した。
「これが、るし☆ふぁーさんやタブラさんを始めとした、アインズ・ウール・ゴウンの生産組が総力を挙げて創ったナザリックの守護神」
何が起こるのか分から無い皆を放置し、ジュンは言葉を続ける。
その言葉に合わせる様に、水晶ドクロは左右に分かれながら、元の霊廟部位へとスライドする事で、一体化していく。元々水晶柱が有った部位には、高圧の蒸気が吹き、ソレが煙となって隠しているのだ。
そしてソレは、一歩毎に地鳴りと地震を伴い、前へと進みだし、皆にその姿を見せた。
「モモンガーGODです」
ジュンの言葉に、皆言葉が無かった。ソレは、20メートル程有る、水晶製のアインズのゴーレムだった。
皆が唖然としている中、モモンガーGODは両肩の玉に内蔵されていたを棒を引き抜き、双方の柄を胸の前で接続、暴風を伴いながら回転させれば、棒はスタッフ・オブ・アインズウールゴウンの形となり、左手に握ったソレを大きく天へと掲げたのだ。
その姿は魔法詠唱者であり、支配者に相応しく、勇壮な御姿であった。故に、モモンガーGODはそこに立っているだけで皆に壮厳さを伝える。
「「「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!アインズ・ウール・ゴウン万歳!」」」
誰が発端なのだろうか。歓声で空気が爆発した。聖歌の如く、ソレは祈りに似た歓喜を伝える讃美歌である。
だが、そんな賛美を受け取るアインズは動揺から、伝達魔法をジュンへと繋げた。
『ちょっ!聞いてませんよこんなの!例のレアメタルも大量に使っているんでしょう!?コレ!』
『使ってますけど材料は私持ちです。何か問題が?』
アインズの慌てた声音にジュンは遠くを見るような、生気に欠ける目をしながら、自暴自棄気味に語る。
モモンガーGODがシモベ達へ感じさせる壮大さは、内蔵された熱素石という、エネルギーを生み出すレアアイテムが原因である。
嘗て敵対ギルドの連合により、支配していた鉱山を奪われそうになったのだが、ジュンがその作戦を失敗させ、運営の介入によりアインズ・ウール・ゴウンが一定量以上を販売する経緯を作ったレアメタル。ソレを大量に消費して作られる熱素石は武器にしろ、ゴーレム等の動力源にしろ、実に良いエネルギー源になるのだ。
そんな貴重なアイテムをモモンガーGODは大量に使用している。アインズの腹部にあるワールドアイテムと、ローブの肩にある赤い玉。そして、スタッフ・オブ・アインズウールゴウンの、ヘビが咥えている7つの神器級アイテム。その全てに該当する部位は熱素石や貴重な鉱物を利用しており、水晶の体は高位物理無効と、自己再生するようになっている。よって、必要な物資は非常に頭がオカシイ額となるのだ。ジュンが遠い目をするのは仕方がない。
『いや、色々有りますよ!なんで私なんですか!』
『例の大侵攻。全員招集したのに、結局大半を一人で殲滅した事によるトロフィーみたいなものと考えてください』
アインズの抗議に対してもジュンは非常にテキトーに返す。完全に他人事扱いだ。悪乗りした生産職程手に負えない。馬車馬の如く材料集めにMOBを狩り、イベントをこなし、邪魔をするプレイヤーを蹴散らした日々は地味に思い出したくも無い。
『何を隠しているんですか?』
『・・・地味に魔法効果強化とか色々弄ってます。乗れますよ。しかもレアメタルで強化しまくっている上に、マスタースカルの内蔵先なので、ワールドアイテムの干渉も受けません』
だが、それも仕方が無いだろう。そんなジュンの心血と、生産職達の熱意を持って生まれたモモンガーGODは完全にチートだ。アインズが乗ればレベル100プレイヤーへの即死攻撃成功率が90%を越える為、例えプレイヤーが2000人いようが、ロンギヌスを使おうが、敗北しない。
正に、神か悪魔か・・・
ジュンは、自身の姿のモデルとなったデビルマンレディーの作者。その代表作の一つを電子書籍化し、ソレをるし☆ふぁーに見られた不運を嘆く。
まぁ、ペースを良く持っていくアインズの狼狽える姿に、仕返しが出来たと満足感を抱き、そして少々可愛いとも感じているのだが。
『・・・勝手に動き出しますか?』
『基本的には動きませんが、緊急時には・・・と、このギミック発見した時に見つけたメモには』
だが、アインズにはたまったモノでは無い。仮想敵が増えたに等しいのだから。モモンガーGODはレベル的には100だが、そのサイズが規格外なのだ。物理法則が成り立っているのなら、物理系の攻撃の威力は如何程になるのか想像したくも無い。
そして地味にるし☆ふぁーは同じ原作者の、魔神皇帝や超魔神。宇宙的な魔神も購読したのだろう。実はスカイ・スカルとナザリック中央霊廟のドッキングと言いながら、設定上では、スカイ・スカルで運んだりする事も出来るのだ。
因みに、現在の中央霊廟は既に左右の再接続が完了しており、水晶で覆われたような、まるで水晶で出来た霊廟に見える、非常に美しい外観なのだが・・・ジュンとモモンガーGODを操作しているライト以外は誰も気づいていない。
『なら良かった・・・と言う訳ないでしょうが!』
『ですよね。私も、スカイ・スカル作る際の材料が随分とかかるなーとは、思ってました』
タブラとるし☆ふぁー主催で、悪乗りした生産職のギルドメンバーの成果に、アインズは精神安定からか、何度か蛍火の光を明滅させる結果となり、ジュンは作成に使用した資材の数々を思い出し、そしてアインズの様子に色々な意味を含む、満面な笑みを浮かべた。
『ユグドラシル時代には専守で、ワールドエネミー等に侵攻された時限定で動かせたみたいですけど、結構自由に動かせるみたいですね~』
『確実にヤリ過ぎだ』
頭を抱えたくても、部下達の手前抱えられないアインズの姿を見れただけ良しとするジュン。終には呆れて言葉を失ったアインズ。そんな2人を余所に守護者達とシモベ達は熱狂していた。
「なんと素晴らしい!正に至高の傑作!」
「アインズ様の白き御骨を水晶に変えてはありんすが、その威厳を表すには正にコレしか無いという表現!美しいでありんす!」
その美しさと芸術性から讃えるアルベドとシャルティアは、アインズ関係で反目する事が多いとは見えない程、喜色満面である。
「正ニ勇壮ナ御姿!」
「何考えていたんだろうね・・・」
「でも凄いよね!カッコイイよね!」
その勇壮さを讃えるコキュートス。マーレは、某ヒーロータイムを楽しむ子供にしか見えない程目を輝かせている。アウラは、讃えたい半面、かかった資材と労力を思い浮かべ、何処か遠い目をしている。ジュンの要請でMOB狩りマラソンに参加した、ぶくぶく茶釜の思い出を引き継いでいるかの様子である。
「まさか杖が内蔵型とは・・・感服に値するね」
「これは、手入れに専用のチームが必要ですな」
ギミックに、非常に参考になると言わんばかりのデミウルゴス。セバスはそのサイズから、外装を磨くなど清掃のスケジュール調整を脳内で行う。
そんな、まるで祭りの様な様子に、ジュンは一度アインズを見た。アインズも少し持ち直した事もあり、一度大きく頷いた。
「・・・コレがこの地に在る限り、幻術どころか結界も展開します。守護神の名に恥じないとは思いませんか?」
「皆よ。暫くは自由にして良いが、己が役目を忘れるな」
ジュンは一度拍手した。まるで空気が破裂したかのような音に、騒しさは消え、ジュンの言葉が示す様に、皆はナザリックの地表部を薄っすらとした稲妻が、半球状の膜を作っている事に気づく。
そしてアインズの言葉から、ちょっとした自由時間が得られた事に気づき、一斉に返事した後でモモンガーGODの足元に駆け寄るシモベ達を尻目にアインズとジュン、エンリはカルネ村へと転移するのだった。
尚、ニグンを代表としたスレイン法国出身の3人は既に気絶しており、地味にユリが毛布を掛けているのだが、それに気づく者は非常に少なかった。
カルネ村にてガゼフと別れの挨拶と、ちょっとしたお願い事をした後に、村の再興や森に関する興味深い事を知ったりと、カルネ村関係の事が終われば、ナザリックの様々な調整、スレイン法国の捕虜の処遇等々、忙しく動き回る支配者2人。
結局ニグンはジュンが捏造した話。ナザリックが太古より存在し、つい先日目覚めたのだという話を信じ、ジュンに対して忠誠を誓い、生きている部下達の保護を懇願した。
最後に、守護者達との会議を終わらせれば、既に深夜の時間となっており、2人は水晶化した中央霊廟の屋根の上に座り、月見酒と洒落込んでいた。
尚モモンガーGODは現在ナザリック内部に収納されており、結界の稲妻のエフェクトは消えている。
「全てはこれからですね。さて、どうなるか・・・」
「何か手掛かりが有ると良いんだけど・・・あと、アルベド達への説得が妙に完璧すぎるんですが、何故ですか?」
星空の下力の涙の力で、肉体を得ているアインズは酒と夜空、そしてジュンとの時間を楽しみながら、今後について少々憂いを見せている。
ジュンは先の会議で、アルベドが見せた難色を論破するアインズと援護するデミウルゴスの姿に、少々アルベドが可哀そうに思えて仕方が無かった。
「どうという事はありませんよ。デミウルゴスと調整しただけです」
「同じ男同士って事もあるんでしょうけど・・・重宝しすぎると、アルベドが拗ねますよ」
微笑みの下では、泣きたいのを我慢しているのだろう。ジュンはアルベドが不憫でならなかった。
だが、アインズの言い分も分かる。アインズが先程提示した内容と、己が提示した内容。何方も今後必要なのだから。その結果姿を消しているが、近くにエイトエッジアサシンが2体。彼等が影ながら就いているのだ。
「中々積極的ですしね。難しいものですよ」
「今の私と同じ距離感で、ゆっくり弱さを見せたら良いと思いますよ。今のアインズさんが弱さを不意に見せたら胸キュンするかもですけど」
アインズは決してアルベドを蔑ろにしたい訳ではない。ただ、接し方をどうするか迷っていると、遠まわしな言い方をしており、ジュンは少し鈍化した思考の下、アインズの肩に頭を乗せながらそう言う。
アインズ的には、アルベドとこういう落ち着ける時間を堪能できるか、少々怪しく思う為、難しいと判断しているのだが。
「・・・もう精神は完全に女性ですか?」
「ですです。もう、なんだか・・・前世が男で、その記憶を持っている感じです」
余りにもごく自然に、しな垂れかかってきたジュンに、確認の意味を込めて問うアインズ。
ジュンは自身の行動や思考が、女らしいかもしれない行動を、ごく自然に行ってしまう事にそう判断した。男性の価値観や思考も、理解できる。だが、現在の己の思考は、既に女のモノだと思わざるをえないのだ。
アインズが狼狽える姿を、『可愛い』と判断する等・・・男であったら『ゲ〇』ではないか。そして、人間であった己は、同性愛者では無かった。嘗ての価値観は、『骸骨には萌えん。てか、兄さん並に信頼して、尊敬している人が可愛いとか・・・無いわー』と判断しているのだから。
「酔ってますね」
「少しだけね。けど、生理とか来たらどうしよう・・・」
アインズがさり気無くジュンの肩を抱き、己へ更に引き寄せる。ジュンは脈が無いが暖かいアインズの胸板に安心感を覚えながら、己の今後について不安になった。
『親になる事』に恐怖しか無く、彼女を作らなかった男性時代に反し、今は真逆の思考をしてしまう現在。その鍵を得たい半面、今感じている安心感を失う可能性を恐怖してしまう。
「私も子供を求められていますからね。困ったモノです」
「・・・さっさと、アルベドと結婚すれば万事解決なんじゃないですか?私もあんなに嫉妬されずに済みますし」
そんなジュンの思考を知らないアインズの言葉に、ジュンはアインズの膝を枕に横になる。アインズに今浮かべている表情を知られたく無かったのだ。
見当違いなのかはジュン自身、自覚は無いが、その表情は明らかに嫉妬している『女』の顔である。
アインズはジュンの表情が見えず、拗ねているような様子に、苦笑いを浮かべながらジュンの頭を優しく撫でる。
「それは、追々ですよ」
「それにしても、子供かぁ・・・」
ジュンは、アインズは己が甘えられる相手である。そう感じずにはいられない行為に、つい子供について考えてしまう。
「何か思い入れが?」
「・・・少し父を思い出しました。結局最期の死に顔しか知らない父を」
不安げなジュンの言葉に、アインズは問いかける。
ジュンにとって親は理解できない存在だ。結局、両親と話しをした記憶が無いのだ。そして、知る機会は幾らでも有ったのに、一度も電話すらしなかった父に不信感や憎悪を抱いていたのだ。結局、アースコロジーで何らかの研究をしていたらしく、機密保護の為、幼かった己と接触する事が出来なかったと、ユグドラシルを引退した兄に聞き、非常にやるせない気持ちを抱いていたのだ。ウルベルトが引退した理由も、アースコロジー関連であり、就労規約に12歳未満との接触が禁止されていたと聞いた時は、思わずその研究機関の運営者に憎悪を向ける程である。
下手に漏えいすれば、その時点で兄と己は殺されていた内容なのだろうと、理解したのだ。アースコロジーの支配者は、虫を殺すかの如く、利用価値も考えずに、『思い通りにならない』というだけで、無意味に『人』を殺すのだから。
「捨てられたって思っていたんです。アルベドは母になりたいのかなぁーって、それも納得できるなーってぇ・・・」
憎んでいた父の真実を知り、数年悩んでいた。数年も苦しんでいた。
『女』になったが故に、何も言わずに引退したタブラが、アルベドにとっては、己と同じく『父』であるならば、憎悪を抱くのはごく自然である。そう思えて仕方が無いのだ。
ジュンはアインズから感じる暖かさに、安心感からか、少々支離滅裂気味にそう言葉を紡ぐ。
アインズはジュンの事情を良く知らない。だが、女にとって『母』になる。この意味が『男』である己には計り知れぬ程、重要である事は理解した。
「私も親に・・・」
「なれる。だがその前にゆっくりと休むと良いさ」
不安気な言葉を漏らすジュンに、アインズは優しく頭を撫で、優し気な言葉を贈る。
アインズの暖かさが、優しさ非常に心地良いのか、不安よりも安心が勝ったジュンの瞼は自然と下りていき、終には寝息を立て始めた。
「モモンガしゃん・・・」
「あぁ。なれるとも・・・今はその時では無いだけだ」
幸せそうな微笑みを浮かべながら、嘗てのアインズの名前を漏らすジュンに、アインズは空を見上げながらそう呟く。
そしてアインズは、ふと既視感を覚えた。何処で、何に対しての既視感であるのか気づいたアインズは少々悩んだ。
「・・・やれやれ。そろそろアレにも仕事を与えるか」
悩んだ結果そう呟き、伝達魔法を飛ばすのだった。少し気が進まないのは、伝達魔法を飛ばした相手がハイテンションだからである。
そんなアインズを他所に、2体のエイトエッジアサシンは困り果てていた。
「・・・現状をアルベド様に報するのを良しとするか?」
「否だ。一度デミウルゴス様にお伺いし、適切な判断基準をご指導賜ろう」
「そうだな」
エイトエッジアサシンの職務は、外へ出ている守護者や支配者の行動を、定時にアルベドへ報告する事である。
情報の収集を命じられれば収集し、非常時には『何が有っても情報を持ち帰る』ように厳命されているのだ。また、一定の『判断権』を有している。
だが、今彼等が見た内容を正直に伝えれば面倒事になると判断しており、多少曲解又は、改竄した方が今後のナザリックにとって有用と考え、その答えを導きだしたのだ。
情報の改竄や故意に報告しない行為は、アインズを激怒させる内容なのだが、『ジュンとアインズの逢引』は、アルベドに知れられて良いのか、という観点から言えば、最良の判断である。
この日。ある意味世界の時間が刻を『再び』刻み始めた事を知る者は、暖かくを冷淡に夜を照らす月だけだろう。
尚、アインズとジュンを肴に自棄酒をする蛸と山羊がいるのだが、ソレを知るのは巻き込まれた鳥と聖騎士だけである。
色々と書きたい事はありますが、先ずは謝罪を。
予定が狂いに狂い、お待ちしていた方々に大変申し訳無く思います。また、私の体を労り、暖かい言葉をかけて下さった方々に、此処で感謝の意を申し上げる所存で御座います。
今後は、先ずは改訂作業を軽く行い、その後閑話を、予定では3話~5話程上げてから、二巻分に入ります。
まぁ、肩の不調のせいで、かなり遅れると思います。閑話が出来上がったら上げたりしますが・・・まぁ、今の状態が続くなら、2~3週間に1話でしょう(’・ω・‘)
えー。改名の際、シモベ達が大喜びしたのは・・・
「お前たちは俺のモノだ。お前たちの悲しみも、孤独感も俺のモノだ。だから、お前たちがそんな感情を抱かなくても良い」って言われた感じ。暗に「他の皆のように隠れない」って意味合いも含まれてます。
あと、パンドラの製作者ですからねー。少し大袈裟にしてみましたw
実は、私のアインズ様。ギルメンを探す気は有ります。有りますが、自分に色々言い訳して結構遠まわしにしてます。
まぁ、幻影が見えている上に、ジュンもいるので急がなくて良いや。って考えてます。
尚。モモンガーGOD簡単に言えば・・・
マジンガー(グレート・カイザー含む)+グレンタイザーです。完全にド・チートですが、実は使い道があんまりないという、ある意味笑える結果w
アインズ様専用チューンをしていますが、基本的には魔法効果・威力・範囲増強。そして一定のスペックを持ってます。また、自動HP回復持ちな上、熱素石が大量に使われているので、MPも回復します。搭乗中は、モモンガーGODのMPを消費します。
口からルス〇ハリケーン、目からビーム。そしてモモンガ玉(仮称)からファイヤーもします。
SRW風に言うならフル改造で・・・
HP8000
EN400
運動性80
装甲1850
「HP/EN回復中・バリア(1000以下無効)」
いや、コレだけで十分だろ。と言いたくなるスペックです。
あー・・・肩痛い。