魔王様の友人は風変りな悪魔(元男です)   作:Ei-s

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第十四話

漆黒の剣とンフィーレアはカルネ村へと入り、数々の驚愕すべき事態に遭遇した。完全にゴブリンと共生してるようにしか見えない現状と労働力と化したアンデッドの存在が大きい。この現状へ至った説明をアンジェから受けたが、彼等の物差しでは完全な理解はできないのが正直な処だ。それ程、カルネ村の現状は常軌を脱している。

そんな中、村人の驚愕を含む声がしたのに気づき、村の入り口を見れば大きな狼に乗った漆黒の戦士とその仲間と思われる存在を見た。

アンジェはンフィーレア達に一言述べ、モモン達の方へ向かい、二、三話せば別方向へ向かった。

アンジェは簡潔に、彼等の名前を伝え、一度ナザリックへ転移する為にエンリの家へ向かったのだ。

 

「はじめまして。私がモモンだ」

 

ンフィーレア達は、強大な魔獣を2体も従え、謎の恰好をした人物を連れている漆黒の戦士に唖然としていると、モモンは彼等へ近づき名乗った。

会った事は無いが、著名な大貴族や王族を思わせる程、その言葉に覇気を感じるンフィーレア達。話半分で聞いた彼の評価が、まだ過小評価だったのではと思う程、特に眼光の威圧感が凄まじく思うのだ。

 

「ふむ。見慣れない人種で警戒しているのか?悪いがヘルムを被らせてもらうがよろしいかな?」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

自然と委縮している彼等の様子に、モモンはそう判断し、ンフィーレアの了承を得てからヘルムをナーベから受け取り、被りなおす。

ンフィーレア達は、ここで、モモンの顔立ちが南方にいる人種。平たい顔系統である事に気付いた。

ともかく、視線が直接合わなければ、彼等の緊張は多少和らぐ結果となった。

 

「えーっと、南方にはモモンさんに似た顔つきの民族がいるのは知っていますが、その・・・隣の仮面の女性や、今乗っている狼の方が印象が強いと言いますか・・・」

 

「コレで良いのかな?あと、ルプー。そんなに変なんですか?」

 

ペテルは、自分達の反応が失礼に当たるのではと思い、モモンの誤解を解こうと考えた。

ソレに対し、フドウは仮面とフードを外してペテル達を見るが、彼女の美貌に対し、男性陣は思わず彼女を2度見してしまう。

 

「あ、いえ。きれいな顔ですし、面倒事を避ける為だと理解しました。その、狼ですか。森の賢王とかそういう強力な魔獣なのかと思いまして」

 

「森の賢王はこの子ですよ?なんでも、森の勢力バランスが崩れて、縄張りだからもう安心。って訳にはいかなくなったので対処させていただいたんです」

 

「な、なるほど・・・」

 

黙して、女性の顔をじろじろ見る行為はあまり宜しくない。どこか、モモンに見られている感覚を覚えたペテルは慌て気味で話題を、ルプーにすることにした。

フドウの回答に、更に驚愕する事となる。モモンが騎乗しているルプーは、伝説にある森の賢王よりも強力であると告げられたのだから。

 

「明日か、明後日辺りに一度、エ・ランテルで冒険者登録して、最終的にはカルネ村の防衛に残そうかと考えてますね」

 

「ぼ、防衛にですか!?こんな立派な魔獣を!?」

 

((・・・え?))

 

フドウとしては、今後の予定として述べた内容であるが、信じられないと言わんばかりのニニャの言葉に、フドウとモモンは内心理解が追いつかず、唖然とした声を上げた。

森の賢王は2人にとって、ただの大きなハムスターなのである。その容姿は可愛いものとしか思えないのだ。

 

「いや。拙者などルプー殿と比べられれば赤子に等しいでござるよ」

 

「はー・・・私達を瞬殺する森の賢王よりも強力なんですか」

 

「このような精強な魔獣がこれ程謙遜するとは・・・」

 

「意外、でもないのか・・・?」

 

2人の反応を他所に、森の賢王の言葉に、漆黒の剣の反応はモモン達の精強さに、理解の範疇を超えているのだと実感している。まさに、言葉がないと言った所か。

 

「すいません。皆さんは森の賢王が恐ろしく感じるのですか?」

 

「まぁ、モモンさんはルプーさんを従えているので何とも思わないかもしれまんが。はい」

 

「ナーベはどう思うの?私は可愛いと思うんだけど?」

 

「そうですね。可愛いかは分かりませんが、力ある強い瞳をしているとは思います」

 

認識の差異がどのようなモノなのか。それを知るべく聞いてみるモモン。その返答を行ったのはペテルであり、この世界の一般的な反応なのだ。

そして、フドウはナーベに聞いてみる。ナザリックの者の反応としてはどうなのか知りたかった為だが、ナーベの回答も、ある意味望んだモノではなかった。

 

『そんな、馬鹿な・・・』

 

『可愛くないんだ・・・』

 

思わずメッセージの魔法で唖然とする2人。視線を合わせながらであり、彼等には目で会話しているように思え、フドウの驚いている様子から、モモンもヘルムで顔が隠れているが驚いているように思うンフィーレア達だった。

 

「それよりもモモンさんの奥さんってアンタなのか?」

 

「え?えぇ」

 

「いやー。アンジェさんも美人だったけど、アンタもスゲー美人だな!モモンさん。やっぱり優しいのかな?」

 

そんな空気を変えようと考えたのはルクルットだった。何処か戸惑いの混じるフドウの視線に気づきながらも、少し茶化してしまおうと考えたのだ。

 

「そうですけど・・・何か有りました?」

 

「いやいや。美人を2人連れてるし、装備も立派だから貴族の道楽なのかと思ってよ。けど、こんな立派な魔獣が従ってるからそうじゃないんだと思ってさー」

 

だが、聞き方がナンパ調だったためか、フドウは自然と警戒した視線を向ける。

何かフドウが困っているように感じたのか、モモンを乗せたままルプーはルクルットへ近づいた。

 

「あー。モモン様を疑ってるって事で良いんすか?」

 

「い、いやそうじゃないって。顔近づけるんは止めてくんない!?」

 

「酷いっすねー。私。そんなに怖いんすか~」

 

ルクルットは自分の頭を丸齧りできるルプーの顎が、鼻息が聞こえそうな距離まで近づき、そう言われた事に自然と怯えが混じる。

その反応が面白いのか、ルプーは新しいおもちゃを見つけたと言わんばかりに、鼻先で彼の額を突こうとしており、ペテル達は怯え混じりに剣に手をかけようとした。

ルプーの顔つきからして、狼の顔だが、何処かサディスティックな雰囲気や、獲物だと認識られたと感じたのだろう。

 

「ルプー。面白がるモノではないぞ」

 

「うぃっす」

 

「そんな化け物を犬みたいに手懐けるのかー。やぱっり、スゲー人なんだな」

 

思わず噛みつかれ、即刻絶命するピンチを味わっていたルクルットの膀胱が緩む前に、モモンはルプーの頭に触れながら制止すれば、興味を失ったようにそう言って彼から距離を取るルプー。

そんな一人と一匹の様子に、つい尻餅をついたルクルットの言葉には安堵と尊敬の色が有った。

 

「あの、モモンさん」

 

「何かな?」

 

ある意味会話が途切れたと感じたンフィーレアは、覚悟が決まったのかモモンへ話しかけた。

 

「僕はンフィーレア・バレアレと言います。その、カルネ村を救っていただいた方を、王国の貴族ではないかと疑いました。すいませんでした!」

 

「話が見えないが?」

 

「あの、エンリを連れていくという事で、そういう扱いをするのかと勘違いしてました。すいません」

 

ンフィーレアは明言しなかったがソレが正解である。ルプーとナーベは、彼が謝っているのは理解したが、どう考え、どう思っていたのかは理解できなかったのだ。もし、ルプーが理解していたら彼の頭は食いちぎられる事となっただろう。

モモンとしては王国の貴族の悪評が事前知識として有している事もあり、彼がカルネ村へ来た理由を推察し、随分ロマンチストな己の思考に自嘲しながらも、微笑ましく思う。

 

「気にする事ではないさ。私としては彼女を正式な部下に欲しいのは間違い無いからね。彼女を鍛えた部下からの報告には光るモノが有ると書かれている上に、フドウの付き人にも丁度良いしな」

 

「は、はぁ・・・護衛ではなく、付き人ですか」

 

モモンとしては、正式にエンリの身柄が欲しいと言っているようなモノだ。

彼はコキュートスからの報告で、エンリの成長具合や評価点を聞いており、また、この場合、対外的にもこう言う事で、公にも己の陣営だとするのが良いと考えた。

ンフィーレアとしては、熊も狩る実力を持つエンリが護衛ではない点で安心していいのか、それとも唖然とするべきなのか分からず困惑気味である。

 

「気落ちするな少年。彼女から聞いたが君は薬師なのだろう?色々と話がしたいのでついて来てくれ」

 

「はい」

 

その困惑した様子をモモンは落ち込んでいるのかと思い、そう告げてルプーから飛び降りエンリの家へと歩を進め、ンフィーレアは一拍遅れで返事をしてモモンの後を追う形となった。

 

家へと着けば、丁度ネムが死の騎士の所へ出かけた所であり、家にいるのはエンリだけだった。

彼女は昨日フドウの作ったハーブティーを見様見真似で淹れ、2人へ出す。椅子に座わり、ヘルムを机に置いたモモンは一言エンリへお礼を述べ、茶を一口含む。

つい昨日飲んだモノと違い、渋みが強いと感じたモモンはソレを指摘し、向かい合わせに座る事となったンフィーレアを見た。彼はエンリがお茶を入れてくれたという事に、嬉しさからか頬を染めていたのだが、モモンの視線に気付けば姿勢を正す。

 

「さて、ンフィーレア君。コレはポーションなのだが、君が取り扱っているポーションとの差異を知りたいのだが?」

 

「これは、まさか神の血っ!?」

 

モモンがマントの裏から出した真紅の血の如き赤いポーションにンフィーレアは思わず身を乗り出した。

その視線は熱く、ある意味野望に満ちた男の目をしており、モモン側の壁際に立ち、ンフィーレアの顔が見える立ち位置にいるエンリは内心ンフィーレアの変わりように驚くも表には出さない。

 

「あ!失礼しました!コレは魔法での産物で、劣化しないポーションだと言われていまして」

 

「で、あるならば薬師としては素晴らしい研究対象という事なのだね?」

 

「はい。全薬師の夢です」

 

2人の会話は、男のロマンを語っているようだ。興奮しているンフィーレアは、エンリは見た事が無いのもあり、何処か不思議そうである。

 

「手探りにはなるだろうが研究してみないか?ただ、秘密が漏れるのを防止する為にカルネ村へ移住して貰いたい」

 

「あの・・・」

 

だが、その興奮はすぐに収まる事となる。モモンの提案に対し、ンフィーレアの反応は歯切れの悪いモノであり、エンリを一瞥したのだ。

この反応に不思議に思うエンリに対し、モモンは何かを察した。

 

「エンリ。席を外してくれ」

 

「はい」

 

故に、モモンはエンリを退席させた。彼女は会話に入らぬようにとの配慮だ。エンリは、何処か自分に聞いて欲しくないと言っているように感じ、本来の業務である復興作業の陣頭指揮を行うべく村の広場へ向かうことにする。

エンリが外出してから1分くらい経った頃、モモンは会話を再開する事にした。

 

「さて、彼女に聞かれたく無かったんだろう。何が有るのかな?」

 

「その・・・エンリはモモンさんについていくんですよね?」

 

モモンの配慮にンフィーレアは意を決したのか、しっかりとモモンの目を見て話しだした。机の下で隠れている両手は強く握りしめられ、掌にじんわりと汗が滲むのを自覚しがらも、目を逸らそうとしない。

 

「君はエンリに惚れているという事で良いのかな?」

 

「はい・・・すごく強くなったのは分かりますけど、やっぱりエンリが好きで。結婚とかしたかったんですけど、中々言えませんでした」

 

モモンは彼の物言いに、情報を確定する言葉を述べる。慌てて来た様子からして、仮定していた内容だけに違和感は無い。だが、彼の真剣な様子は予想外でもある。一見18歳未満に見える彼の物言いは30を過ぎていたモモンには子供の戯言に聞こえるのだ。

故に、気に入っているエンリの将来がかかっている内容であり、また、人間に悪魔を受け入れる。逆もまた然り。不確定要素が多い内容だけに、モモンの視線は強くなり、威圧感が滲み出る。

 

「それで?エンリの両親が亡くなって、今私に言うという事は何だ?私の許可が欲しいのかね?」

 

「・・・はい。村人から聞いた話ですけど、何か貴重なマジックアイテムを使った事らしいですし、僕がその対価を払い終えたらエンリを解放して欲しいんです。それで、改めて結婚を申し込みたいって思います」

 

モモンの言葉は棘の有るモノだった。

ンフィーレアは一度息を呑み込むと自分の意志を伝えるべく頑張る。最低限のケジメはシッカリつけると言わんばかりであり、その眼には何年浪費する事になると分かっていても、やり遂げようとしているのだと、強い意志が宿っている。

モモンは内心、感心していた。彼も有数な薬師である。できないという事も無いだろうが、エンリと融合したのはNPCであり、その価値は金銭で換算する事は難しく、レベル100だった事もあればユグドラシル金貨5億枚が最低限の相場でもある。そもそも、ナザリックのNPCだった訳ではないため、モモンの独断で決を行うのも問題だ。

 

「君も私の部下となり、神の血の精製に殉じるという事ではダメなのか?」

 

「確かに魅力的ですけど、僕にメリットが有りすぎですし、御婆ちゃんが何て言うか分かりません。それに、やっぱり・・・」

 

モモンの妥協案は、ンフィーレアにとってメリットばかりで信用に欠けるのだ。

彼は打算込であり、ンフィーレアの取り込みも視野に入れているが、好意30%以上の割合であった。ソレを断るのは何故かとモモンは考え、ンフィーレアの目の奥に在るソレに気付き、夢よりも大きなナニかが有る気がしたのだ。

 

「エンリを己の女にしたいという気持ちが大きいのかね?」

 

「カルネ村が襲われて、エンリが貴方のモノになると考えて、やっと僕にとって、どれだけ大事だったのか理解したんです」

 

モモンの尋問する衛兵に等しい雰囲気に対しても、ンフィーレアは正直に、心のままに答える。

コレが分かれ目だと本能的に感じ取っているだけに、目を逸らしはしない。

何処か『お義父さん。娘さんを下さい』をしている空気である。

 

「薬師としての感情よりも、男としての感情が強いか」

 

「そう、なります・・・」

 

最後にモモンは確認する。そしてンフィーレアは肯定した。

ンフィーレアは薬師の夢とエンリを天秤に架け、エンリを選択したのだ。

彼の意図が明確に伝わり、モモンは目を瞑り黙考する。その沈黙が酷く重いモノであり、彼には時間の流れすら遅くなっている気がした。

そして、1分だか1時間だか、ンフィーレアの体感時間が過ぎ、モモンは静かに目を開けた。

 

「アレはもう二度と手に入るか分からない品物でな。先ずは保留としよう」

 

「えっ!?」

 

モモンの言い様は現状維持の推薦だった。

ンフィーレアに顔は憂いからか暗くなり項垂れる。だが、モモンの言葉には続きがあった。

 

「私としてはエンリの感情が大きい。エンリが君と結ばれる事を強く望むのであれば私としては構わないさ。一ヵ月以内にはカルネ村へ戻そう。頑張って口説くといい」

 

「と、いう事は・・・」

 

モモンの決断は容認+経過観察なのだ。モモンの言葉に、何処か信じられ無いと気色を浮かべ、モモンの顔を見るンフィーレアは、その鉄仮面の如く厳つい無表情と、感情が分かりにくい目に明らかな暖かさを感じた。

 

モモンは、後はンフィーレアの頑張り次第だと思わせ、彼が悪魔であるエンリを受け入れる。エンリが人間であるンフィーレアを受け入れれば問題ないと判断した。不都合が有るならンフィーレアを処理すれば良いだけである。殺さないプランであればナザリックで監禁か洗脳でもすれば良いだけなのだから。

だがモモンの言葉は若いンフィーレアには希望に等しい。恋は盲目とはこの事だろうか。

 

「その時、神の血の研究もしたいという事であれば、カルネ村へ移住するのならば材料や現物も渡そう。私個人としては期待しているよ」

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

故に、夢を見せるモモン。彼の決断次第では、女と薬師の夢が現実化する夢想。

モモンの目尻を少し緩ませた、穏やかな笑みの裏に在る実情を知らぬンフィーレアは頭を下げ、歓喜に震えるのだった。

 

実態として、モモンはンフィーレアを気に入っている。可能ならば処理をする選択肢は選びたくは無い。だが、彼のタレントがソレを許しはしない。

一人の男としての判断は、アインズとしての、絶対的支配者の判断に勝るのは非常に難しいモノなのだ。

 

一方の残された漆黒の剣と、フドウ等は気長に談笑していた。

先のルクルットの食われかけたのが、ある種のブラックジョークだと認識された事が大きい。

ムードメーカーは貧乏くじを引くのが仕事かもしれないが、彼の生来の性格からして、あまり気にしないのかもしれない。

 

「しっかし、モモンさん。意外と年行っているんだな。聞いた話だと、アンタも親友の妹なんだろ?で、その子も?」

 

「そうですね。この子はナーベと言いまして、モモンさんの友人の娘なんですよ」

 

茶化しながらも明るく喋るルクルットに、その精神力の強さ(無神経さかもしれない)に、呆れ半分ながらも普通に返答するフドウ。

内心どう考えようが、顔に出さないのはある意味必須スキルなのかもしれない。

だが、至高の御方の娘と称されたナーベは、内心歓喜しており、緩む口角と目尻を隠すべく、少し俯いた。

 

「へぇー。よろしくねナーベちゃん。俺と付き合わない?一目惚れなんだ」

 

「黙りなさないゴミムシ。舌を引きちぎりますよ」

 

「えっ!?」

 

明らかに、ナーベはルクルットの軽薄さを嫌悪して返答した訳ではない。歓喜の一時を下等生物に邪魔されたから、物言いもキツイモノとなる。

その言い様は、存在の半ムシで完全に興味がない様子であり、その対応にフドウは焦り、声に出てしまう。

 

「厳しい断りの言葉ありがとう!じゃあ、友達からってのはダメ?」

 

「ヤブ蚊が―――むぎゅっ!?」

 

オーバーリアクションで腰を下げて握手を求めたルクルットに対し、今度は見下した目をして返答しようとしたナーベの頭に、フドウのチョップが落とされる。

地味に脳天にクリティカルヒットし、ナーベは奇声を上げ、口はミッ○ィーぽく×印になてしまう程であり、コミカル感を演出してしまう。

 

「ナーベ。モモンさんが覚えられない人間の顔を覚える必要が有る貴女が、そんな態度でどうするの?」

 

「し、しかし。こんな下等生物の顔など―――うきゅ!」

 

ナーベが振り向けば、威圧感のある笑みを浮かべたフドウが説教をはじめ、問答無用で反論を聞き終えずに再びチョップがナーベの脳天に振り下ろされた。

 

「真面目で素直はのは良い事だけどソレだけじゃダメなの。モモンさんは記憶力はいいけど、久しぶり会って、名前を忘れていたら失礼になるし、モモンさんの恥になるんだよ?」

 

「ナーちゃん怒られてやんのー。まぁ、私は匂いで覚えられるけどね。私が入れない所で大丈夫?」

 

「姉さんも!?」

 

人間の見下しに関しては触れないものの、モモンのフォローをする為の役割を求めるフドウと、乗っかる形で茶化すルプー。

ナーベ。フルボッコである。

 

「すいません。ナーベが失礼を」

 

「いえ。ウチのルクルットも失礼しました。所で、先ほどルプーさんの事をナーベさんが姉だと言いましたけど、何か有るんですか?」

 

「同じくらいに生まれたので、姉妹として育ったからですね」

 

そしてペテルへ頭を下げ、質問にも答える事で彼等からの口撃を抑制した。さり気無くナーベの失態をフォローしている。

彼等からしても、魔獣(ルプー)と育ち、姉妹と名乗る関係性は疑問に思わなくもなかったが、ルプーは会話し、人並みの感情や思考能力が有るのを感じ取っている。意外と在りえるかもしれないと納得し、魔獣であるルプーにまで嗜められるナーベに対して哀れに思う事は有れども、追い打ちに指摘する気にはなれないのだ。

ナーベの自尊心を大いに刺激する行為なのだが、その視線の意図に気付ける程、今のナーベには余裕は無い。一歩間違えていればモモンへ恥をかかせると知ったため、モモンの下へ行き、謝罪し、己の首を切るべきかと真剣に悩んでいる為である。

 

「ナーベ。モモンさんは許してくれるけど今後の課題として覚えておきなさい。他人が嫌いなのは分かったけど、数日前に彼女がこの村に来た時にモモンさんは演技の重要性を言ったんだから」

 

「畏まりました・・・」

 

ナーベの纏う空気に思い詰めていると感じたフドウはあえて嗜める。引き合いに出したのはアルベドであり、彼女の価値観を多少でも知っている者からすれば説得力は有る。

ナーベは自責の念を感じながら、下等生物である人間を尊重する演技を行う事に一定の納得を覚える。だが、気分は良いモノではない。それは、彼女の堅い表情が物語っているが、フドウは敢えて指摘する事は無かった。ストレスは与え続けられるのは良くないのだ。

 

「何か有ったんですか?」

 

「よくある事ですよ。故郷でモモンさんはある一団のリーダーをしていたんですけど、本拠地を襲撃される事が多かったので彼女を含めて部下達は基本的に仲間以外を嫌ってるんです。特に人間を」

 

ニニャは彼女等のやりとりに何処か親近感を覚えた。そして一縷の好奇心から聞けば、フドウは何処か面倒そうに述べる。

嘘がブレンドされてはいるが、フドウの言い様はそれが事実である様子であり、また、ナーベの人間嫌いを納得させるには十分だ。

漆黒の剣の面々は、フドウやアンジェから、ナーベがモモンの親友の娘だと知っており、その忠誠心の強さや、フドウ曰く、素直で真面目な人だと聞いている。

それならば、親や主人の命を狙う者を好きにはなれないのは普通だ。彼等はナーベを同じ人間だと思っている為、同じ人間を嫌うのは、その醜悪な部分を多く目にし、耳にした為だとも考えている。

 

「成程。であれば、基本的に人の襲撃が多かったのであるな?」

 

「そうです。中には私を人質にしようとした人もいましたし、結果こんな失礼を・・・」

 

ダインの確認に対し、フドウは本当に申し訳なさそうに頭を下げた。モモンがフドウ己の妻とした背景には、人質にされた過去が大きいのだと4人は思う。

フドウとしては、実際は何とも考えてはいないが、彼女が頭を下げた事でナーベへの追及をこれ以上するのは、普通ならばできない事である。特に、自分が原因でフドウが頭を下げたという事実から、ナーベの白い肌は自責からか血の気が完全に失せ、何処か青白い。

彼女の様子からしてこれ以上聞くのは良い事ではなく、遺恨が残る可能性は十分感じられる為に、この話題は打ち切るに限る。

 

「少し、分かる気がします」

 

「ニニャさんも何か有ったんですか?」

 

だが、何処か親近感を覚えていたニニャは、ポツリと呟いてしまった。

彼女の何処か親と逸れ、泣きそうな子供に似たモノを感じたフドウの優し気な問い方に、ニニャは簡潔だが話す気になった。貴族に似た雰囲気を持つモモンの存在は少々引っかかるが、ソレは過去の事例から他人を警戒を常にしているからだとも思った事も有る。

 

「どこにでも有る話ですよ。姉が貴族に連れていかれまして。今ドコにいるのかも分からないんです」

 

「コイツの目的は、生き別れの姉さんを探すってのも有るんだ」

 

ニニャの目の奥に暗い光が在るのを感じたフドウは何処か寂しげに彼女を見ており、そんなフドウの様子にルクルットはそう付け加える事で、暗にニニャの目的は復讐では無いが、貴族への憎しみを忘れられないだけなのだと釈明する。

 

「私達の知り合いが王都へ向かっている筈ですし、何か分かるかもしれないのでお姉さんの特徴とか名前を教えて頂けますか?」

 

「良いんですか!?」

 

「分かるとは限らないですけど」

 

ニニャを気の毒に、そして、何処か過去の己を思い出させる目にフドウはついそう聞いてしまった。

少しでも情報が欲しいニニャは喜色を見せるも、確実に見つかるか不明であり、陽炎のような希望なのだと自覚させる為に、フドウは注意事項の如く付け加える。

 

「それでもお願いします!名前はツアレ。ツアレニャーニャ・ベイロンです!皆さんよりは美人じゃないですけど、ソコソコ美人で金髪です」

 

「分かりました。では、そう伝えておきますね」

 

だが、希望の光は人を惑わせる誘蛾灯なのだろう。頭を下げるニニャの頭部を、何処か悲し気に見るフドウの姿に、ペテル達3人は何も言えなかった。

フドウは、ツアレニャーニャが生きている可能性が低いと認識している様子であり、ニニャの手前彼等は言葉にしなかったが、ペテル等の考えも同じなのだ。実際はニニャもそう考えている。だが、希望に縋りたいのが人間だ。

 

漆黒の剣の様子に、その考えの遷移が面白いのかルプーの尻尾がゆらゆらと揺らめくのが、何処か考えの差異を表しているかのようだった。

 

かくして、モモン達は漆黒の剣やンフィーレアの案内の下、城塞都市エ・ランテルへと向かう事になったのだが、翌日は漆黒の剣とンフィーレアを休ませ、手ぶらで行くのもどうかと思ったエンリは森の賢王とネムを連れて薬草採集をした。森の賢王を連れていくのはネムの足として使い、また、薬草を効率的に見つける為であり、ナザリックで一晩過ごし憔悴した彼女のリフレッシュも兼ねている。

同じ新参者でもエンリと違い成果を挙げていない上に、守護者の容認も無いのにアインズの従者的立場になるのは非常に気に喰わないと考えている者が多い為だ。

 

なお、ルプスレギナはアインズに乗られ、ペットの様に撫でられたりされた上で、お手製の首輪(人間形態ではペンダントのように首に下げている)を下賜された事も有り、嫉妬と渇望の目で見られている。特に某守護者2名の視線が強いが、彼女等が純ナザリック製のルプスレギナを害す事は無い。隙あらばOHANASHIしようと企んではいるが問題無いだろう。

 

ともかく、暫く会えないのは幼いネムも理解しており、姉妹の時間を大切にしてあげたいと考えた村長がモモンへ提案し受け入れられた為だ。

何処か寂しげなネムの様子に、連れていこうかと悩むモモンだったがフドウに嗜められ、その姿を見た村人達は苦笑いを浮かべ、ンフィーレアと漆黒の剣の面々は、モモンが本当に優しい御人なのだと認識した。

 

そしてエ・ランテルへ向かうに至って問題が有った。エンリの服装である。

現状では町娘風の娼婦であり、セクシーすぎる。そして、元の服のデザインでは近接戦闘がメインのインファイターであるエンリには不都合が有る。

そこで、アインズとジュンは取り合えず魔法で作る事にした。

アインズは己のデザインセンスがあまり宜しくはないと考えており、それはジュンも同じである。困った2人はエンリが来ている普段着を参考に上位物理作成を使い、アインズの執務室で弄ってみる事にした。

 

「何とか形になりましたけど・・・ゴテゴテしすぎですかね?」

 

「まぁ、本気を出す時に脱げば良いじゃないですか。本気を出すなら自動で変わりますし、問題無いんじゃないですか?」

 

2人はマネキンに着せられた一式を前にして、疑問符が語尾に付く出来に少し悩まし気に眺めている。

アインズ的にはコンセプトである軽装戦士に反し、重装戦士に見えるフルプレート気味のデザインに。

ジュン的にはユグドラシル時代の、職業:ベルセルクの保持者である友人達や、己の所業を踏まえているが、問題が無いとは思えない事に疑問符が付いていた。

 

マネキンに着せられているのは、赤褐色のマントを羽織った黒い鎧だ。

何処かエンリが普段着に着ていた服に、胸や肩に装甲を付け足したデザインと、人間の変身を解除した際に生成される鎧の、波のような曲線を多用したデザインを組み合わせた黒い鎧に、乾いた血に似た赤みの強い褐色のフード付きのマントを羽織った感じだ。右手には装甲は無いゴムのようなインナーと手袋だけだが、左手は変身解除した際の籠手と同じデザインであり、スカートには深いスリットが入り、その下は左手と同じく変身解除したモノと同じデザインのパンツと刃の着いたブーツだ。さり気無く投擲用に使える短剣が腰に有り、左側に数本の柄をマントの隙間から覗かせている。

金属の如き冷たい光沢を放ちながらも柔軟な装甲だが、重量は見た目に反し軽い。問題点としてエンリの場合本来の姿の方が防御力は高い点か。上位クラスの装備である為当然の結果だが。

凝り性の2人が合同で作った事も有り、マントの縁には銀糸が。鎧の縁には朱金で装飾が施されており、マントで隠れて見えないが背中にはアインズ・ウール・ゴウンの紋様が彫られている。

 

「アインズ様。ジュン姉ちゃん。何かよう?」

 

2人が鎧を前で悩んでいると控えめなノック音の後に、一見15歳のジュンに見えるメイド服を着たNPC。ライトが入室してきた。彼女はジュン製であり、生産系である事からナザリック内では扱いが難しく所属も曖昧なNPCである。

 

「・・・えっと、ライト。その恰好はなに?」

 

「取り合えずこの階層で仕事する時はメイド所属って事になったから着てみた」

 

(メイド服か・・・)

 

ジュンは思わず2度見をし、いつものトーガではないライトの恰好を指摘すれば、ライトは何でもない様に答える。郷に入れば郷に従えを実践しているに過ぎないのだが、ジュンは少し幼い己の姿をしたライトが着ている事に動揺したのだ。

アインズも内心、新鮮であると思うが骸骨顔の御蔭で表に出ることは無い。

なお、メイド服は実装されなかったメイドNPCのモノであり、お蔵入りしていたモノだ。

 

「とりあえず、コレ。どう思う?」

 

「・・・低位の状態異常系の防御アイテムが有れば良いと思う」

 

話を本来のモノへ無理矢理戻そうとするジュン。アインズに見られている感覚を覚えた為だ。

ユグドラシル時代は、アバターだった頃はネタや効果で服装を変えまくったりしていたが、己の体となった以上意外と気になるモノだ。

チャイナ風の装備は効果から。戦闘形態はその時の精神状態から余り気にはならないが、メイド服は少し抵抗が有ったみたいである。家事スキル+の効果が有れば着るかもしれないが。

ジュンの、何処か挙動不審な様子に首を傾げるライトであったが、2人謹製の装備の見分をした。

装飾や性能は上位物理作成で作ったとは思えぬ程良い出来であるし、バランスに関しても、エンリ本来の姿からして問題は無さそうだと判断したが、抵抗・無効系のアイテムが無い事に気付いたのだ。

 

「?けど、エンリには大抵の・・・あ、そうか。確かに無いと不自然だね。コレで良いかな?」

 

エンリは、種族的には悪魔と不死系でもあり、妖精の要素が強いリビング・アーマーのハイブリットである。

ハイブリットである為、精神系・即死系の無効スキルは有るが、大抵の状態異常に対しては無効化ではなく抵抗のスキルを有している。まだレベルが低い為性能は最大で<中位>だが、レベル100になれば最大で<上位>となり、大抵の状態異常の効果を半減・無効化する事が可能となるのだ。

故に人間に擬態するという観点からすれば、何の対策もしていなのに、毒もマヒも効かないのは異常である。ライトの指摘に、ジュンは虚空に手を伸ばし、自身のアイテムボックスから首に下げる小瓶を取り出した。小瓶の中には小さな桃色の貝殻が光を反射し、控えめで穏やかな光を発している様にも見える。エンリと融合したNPCと同時期に創った神話級の対状態異常系アクセサリーだ。デフォルトで上位アイテムに偽装されている。

 

「良いの?」

 

「どう思う?」

 

「・・・上位に偽装されている以上、問題は無いだろう」

 

過剰とも言えるアイテムを持ち出したジュンに、ライトは少し冷や汗を流しつつ確認するが、聞かれたジュンはアインズに判断を投げる。

アインズとしては実に面倒且つ悩ましい。魔法で解析した結果、地味に厄介な対策アイテムだったからだ。

そして、エンリの変身の際にどのような扱いになるのか分からない事も有り、少し悩むが対策としては有効であり、また偽装されている事から容認する事にした。

 

かくして、エンリの装備は決定した。

翌日の昼前。エンリに装備が渡されたのは出発の少し前であり、彼女が着替えるのを村の入り口近くで出立の準備を終えた皆は、前日に採取された薬草類の多さに驚きながら待っていた。ンフィーレアは薬草の多さもさる事ながら、地味に希少性の高いモノも一定数ある事に何とも言えない表情をしている。

そして、見送りなのだろう。一足先にネムがカイジャリと共にいる。

 

「って、おい・・・」

 

「えっと・・・モモンさん。護衛ではなく従者なんですよね?」

 

エンリの装備に何時もの軽口が出ないルクルット。現役冒険者である故に、漆黒の剣の面々は装備の高価さに言葉が出ない。

太陽の光を浴びて、赤褐色から深紅へと色を変異させたマントを靡かせ、真面目を通り越して抜き身の剣を思わせる程鋭い視線。エンリの雰囲気が装備と噛み合い、著名な冒険者にしか見えないンフィーレアは、隣でルプーに騎乗しているモモンに問いかけるしか無かった。

こんな装備をエンリが持っている筈もなく、彼は、完全にモモンがエンリを正式な部下にすると行動で示しているようにしか思えず、また、何処かカラーリング的にもモモンに通じる為複雑な感情を抱く。

 

「あぁ。道中何が有るか分からないからな。実力も有る以上、一定の装備を与えるのも上に立つ者の責務ではないかね?」

 

「そ、そうですか。あと、何で色合いがモモンさんと似ているんですか?」

 

実態はともかく、ンフィーレアの認識ではエンリはモモン達の仮の部下である。そんな状態にも関わらず、高価な装備を与える財力は驚愕に値し、また、カラーリングからして正式な部下に取り入れるのは確実であると感じるのは普通だ。

 

「ん?彼女に合う様にしたのだが・・・確かにそうだな。基本的に暗色系は汚れが目立ちにくい利点が有るのだが」

 

ンフィーレアの指摘に、モモン達は初めてエンリの装備とモモンの装備の色合いが似ている事に気付いた。彼女本来の色合いから配色し、モモンの言う利点から深く考えていなかったのだ。

だが、この色合いであれば色々と邪推されても可笑しくは無い。

 

「えっと。エンリはどう思うの?」

 

「私は特に何も無いです。血を被っても目立ちにくいでしょうから」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

フドウは、着ている本人が気にならなければ良いと思い、問えば、あまりにも実用性を重要視したエンリの返答に、モモンとンフィーレアは言葉が無かった。

エンリ・エモット。彼女は人間であった頃から鈍感である。

 

「あのね。ネムはカッコイイと思うよ」

 

「ありがとね。ネム」

 

エンリの装備に、妹であるネムは凛々しくカッコイイと思っていた。大きくなれば冒険者になる。等と言い出さないかエンリは心配になりながらも、その頭を撫でた。そんな姉妹を優しく見守るフドウ。実に穏やかな雰囲気であるが、ネム以外の2人の装備からして、出陣前の家族といった所だろうか。

 

「・・・ンフィーレア君。少なくとも私に他意は無い事は理解してくれ」

 

「あ、分かりました」

 

エモット姉妹とフドウ団欒を他所に、何とも言い難く、気まずい思いをするのはモモンとンフィーレアである。モモンの言葉にワンテンポで返事する事から、モモンの関与は勘違いだったと即座に判断したのだった。

 

「けど、これじゃあエンリがモモンさんの妹か娘みたいですね」

 

「エンリは16だったか。確かに可笑しくは無いが・・・」

 

ンフィーレアはモモンに、先日の問答から抱いていた『厳格な父』の影を見た為に出た言葉である。

モモンとしては、エンリは既に身内だと判断しているが、彼的にはこの話題はまだ早いモノだと判断しており、何処か語尾のキレが良くない。

 

「モモンさん。その話は速いです」

 

「確かにな。すまない」

 

「いえ。御心使いありがとうございます」

 

「ありがとうございます!」

 

そして、そう判断していたのはフドウもだ。モモンの何処か上から目線の謝罪の言葉に、エンリは2人の気遣いが嬉しく思い、ソレはネムもだった。

 

「あれ?そういえばモモン様達の年は知らないっす」

 

「姉さん?・・・確かにそうですね」

 

ここでふと、ルプーはモモン、フドウとしての設定年齢を知らない事に気付いた。そして本来の姿であるアインズ、ジュンとしての年齢も。ナーベはルプーの指摘で自身も知らない事に気付いたようだ。

 

『私はリアルの22歳で良いかな。もうすぐ23歳だけど。アインズさんは40手前とかですか?』

 

『そんなに老けて見えてましたか。34です』

 

『えっ!?兄さんより年下だったんですか!?』

 

咄嗟にフドウはメッセージの魔法で相談し、リアルの年齢のギャップに驚くも顔には出さない。彼女的には、リアルのオフ会で会った鈴木悟という人物は、覇気は無いがふとした拍子に見せる深く思案深い空気から、少なくとも兄、ウルベルトよりも年上だと思っていた為だ。

アインズ的には、予想外に下駄を履かされていた事に、少なくないショックを覚えるモノである。男女問わず、実年齢より上に見られるのは気分の良いモノでは無いのだ。

なお、かつての世界では、実年齢に対し若々しい反応を返すのは学習の機会が少なくなっており、ボキャブラリーが少ない事からである。この傾向は、基本的に貧困であればあるほど強い。

なお、アインズの言った34歳という年齢は満年齢で言っており、ジュンの理解は間違いではないが、ウルベルトとは1歳しか変わらない。

 

「モモンさん?」

 

「いや、お恥ずかしい。実は年を余り気にしないものでね。思い出していたんですよ」

 

「へぇー。結構年上だと思うけど、何歳なんですか?」

 

「34です。フドウは23ですね」

 

モモンの、何処か気まずそうな空気にンフィーレアは、何か気分を害す事があったのかと思うも、彼の反応から、何処か若々しさを感じるモモン。

モモンの年齢は地味に気になっていたのだろうか。ンフィーレアの問いに、耳を澄ませえる面々。

 

「モモン様。パパより少しだけ年上ー」

 

「ネ、ネム!申訳ございません!」

 

「すいません。余計な質問をしました」

 

ネムの言葉にモモンはグラスブ・ハートを喰らった衝撃を受ける。アンデッドである為即死はしないが。慌てて謝るエンリとンフィーレアに気まずく思うフドウ。

この世界では、一般的な結婚年齢は15~20辺りなので、それ程酷いズレでは無い。彼女らの父母は15で結婚し、直ぐにエンリが生まれた事もあり、33歳で比較的若い事も有っただけだ。

 

「いえいえ。ですが、エンリくらいの娘がいても可笑しくないのは理解したかな?」

 

「そ、そうですね」

 

何でも無いように、寛大な空気を醸し出すモモンに、ンフィーレアは肯定するしかなかった。

だが、何処か気まずい空気だ。

 

「おい。コレって有りなのか?」

 

「ま、まぁ貴族とかなら良く有る年齢差じゃないか?ほら、嫡男というヤツだったらさ」

 

漆黒の剣の面々としても何とも言えない。ルクルットの疑問の言葉に対し、ペテルは己の持つ知識から何とかモモンをフォローしようとする。

彼等的にも、34歳が21歳を娶るのは問題である気がしたのだ。言い方は悪いが、貴族でも王族以外であれば早々無い年齢差なのだ。

妾ではよくある年齢差である点も、更に問題かもしれない。

 

「うーむ。よもや吾輩よりも年上だとは」

 

「え?」

 

「こう見えて29なのである」

 

「・・・マジ?」

 

そして、ダインの一言で更に絶句する漆黒の剣。

コソコソ話をしている彼等だったが、ルプーには丸聞こえであり、彼女は、何故彼らがモモンの年齢で、それ程話しが飛躍し絶句するのか理解できなかった。感情の遷移が面白いので何も言わないのも彼女らしいが。

 

「ともかく、出発するとしようか」

 

「いってらっしゃーい!」

 

「姉さん。ネムの嬢ちゃんは任せてください!」

 

モモンは、これ以上何かを言って、行動の開始が遅れるのを避けるため、そう言ってルプーを歩き出させた。ふと後ろを見れば、大きく腕を振るネムと、エンリへそう言っているカイジャリの姿も見える。

それだけではない。いつの間にか集まった村人達も含めて手を振り、何かしらの声を上げているのが分かり、モモンは出立としては中々のモノだと思いながら、前を向きなおし、軽く手を振った。

 

(アインズさん。相変わらずサービス精神旺盛だね)

 

言葉少なく、背中で語ると言わんばかりのモモンの姿は未知数の実力と噛合い、大胆不敵な益荒男であると思わせる。生粋のパフォーマーであり、信奉者を自然に増やす彼の手腕に、内心舌を巻くフドウだった。

実際には無意識に行っている事など、知ったとしても、信じないだろう。




ンフィー「お義父さん!」

漆黒の戦士「モモンだ。パパンでは無い」


てな感じで出立です。あと、エンリとネムの年齢はネットで探しました。悟さんやダインの年齢は捏造なんでよろしくー。

エンリちゃん。服装チェンジですwイメージ的には漆黒の女戦士かなw
公式の村人の服にモモンさんのアーマーをウィッチブレイドのように曲線を追加したモノやマントを着せた感じかな。なお、スカートのスリットは深いので、激しい動きをすると・・・刺激的なパンツが見えます(笑)

おや?シリアスさんの様子が?なに?来週から少し働くって?いや、普段から働けよ。
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