モモン等がカジット達を補足する少し前の事だ。
冒険者組合の行動は早かった。リイジーと漆黒の剣の言葉に、アンデッドが噴き出すのでは無いかと冒険者達に、墓地の有る区画へ急行するよう緊急依頼を発令した。
緊急依頼は逃げられる確率が低く、冒険者だけでなく町の危機に発令される事が多々有り、その名の通り緊急性の高い依頼であり、冒険者組合の権限で発令する事が出来る。
町を守るのは、一定以上のプレート持ちに課せられる義務みたいなモノなのだ。
冒険者のイグヴァルジ率いる<クラルグラ>は、エ・ランテル出身者が多く、組合近くの酒場へ繰り出そうとしていると、森の賢王に跨ったリイジーと漆黒の剣の面々の懇願に近い報告に、即座に墓地の門の前へと急行した。彼等からすれば、生まれ育ったエ・ランテルを自分等が守るのだと意気込んでいたのだ。
しかし、門前へ来てみれば佇む衛兵達と、光の壁を生み出し、スケルトン共を撃破し続ける女が2人。
彼の知らない、強力に見え、自分達の侵入を拒んでいるように感じる光の壁の存在は、彼の自尊心を大いに刺激した。
「おい!この魔法を消しやがれ!」
「馬鹿言わないで!遠距離攻撃で落とす事を考えなさい!」
英雄願望が強いイグヴァルジが受けたショックは大きく、彼の罵声にも聞こえる言葉に、フドウは邪魔な奴が来たと内心思いつつ、侵入を拒む。
女に拒否された事態は彼の神経を更に逆撫でする。
「んだと!?原因を消せに行けねぇとこのままだろうがっ!」
「原因はモモンさんが既に解決しに行っているから、此処を凌げば良いの!」
イグヴァルジの怒声はフドウの神経を逆撫でする結果となる。
思わず、彼を喚く肉袋と認識し、魔法の標的にしそうになるが、人間に擬態しており、『フドウ』を演じている自覚を有るためか、気の迷いと判断した。彼女は、内心黙れと思うも言葉にすることは無い。
「イグヴァルジ!アレを見ろ!」
「んなっ!?」
仲間の声と指差した方角にソレの姿を見て、イグヴァルジは絶句した。
それは巨大な人骨の集合体。骸骨の巨人。
その巨体と生者へ対する怨念。骨が擦れる事で生じる金属音に似た音は聴く者の恐怖心を煽る。
ミスリルクラスの冒険者である彼等も気圧された。
「っ・・・
イグヴァルジへの苛立ちが一定以上に達していたフドウは、
拳大の太陽光を凝縮したかのように輝く光球は、流星の如き筋を残しながら進み、着弾と同時に破裂した。
「■■■■■■■■!」
特に大きな、骨が擦れる事で金属音に似た甲高い、怨嗟の籠った音を残し、光が消えれば
「スケルトンだけじゃないのは分かったでしょう。死にたくなかったら大人しくしなさい!」
「ち、ちくしょう・・・っ」
フドウは一度振り返り、誰が喚いていたのか確認しようと思ったが、唖然とした顔ばかりで確認する気が失せ、迫りくるアンデッドに意識を集中する事にした。
イグヴァルジは完全に格の違いを見せつけられる結果となり、唖然とするしか無い。フドウの言葉に彼は正気に戻ったが、悔し気にそう漏らすしか無かったのだ。内心。何故女如きがコレ程の力を持つのか。蒼の薔薇の存在を含めて忌々しく思う。特に英雄願望の強い彼は強い嫉妬心を抱くのだった。
冒険者組合。組合長アインザック率いる冒険者の応援部隊が着いたのはその頃だ。喧噪は騒がしくなる一方であり、フドウのストレスも更に酷くなる一方だ。
一方のモモン、エンリ、ルプーは事件の犯人であるクレマンティーヌとカジットを追い詰めていた。
「カ、カジットさっ―――」
「まったく馬鹿が多くて困る。カジットとやら。早々に片づけさせてもらうぞ」
巨大狼に騎乗した漆黒の戦士達の登場に、迎撃しようと杖を向けたカジットの弟子たちは、モモンとエンリの刃に掛かるか、ルプーに噛み殺されるかの三択だった。弟子の内一人がカジットへ助けを述べようとしたが、モモンは敵を前にして、振り返った彼が全てを述べる前にその首を刎ねる。
使い魔の様に使う為移動中にスキルで召喚した
「くっ・・・」
「子猫ちゃん!来てくれたんだ!」
道具である弟子がゴミのように殺され、多少不機嫌になるカジットと比べ、クレマンティーヌは無表情で自分を睨みつけるエンリの姿に上機嫌だ。
彼女からしてみれば、エ・ランテルから脱出しようとした矢先に、遊びたかった相手が、わざわざ来てくれたのだ。嬉しくない筈がない。
実に対照的な反応だ。
「やれやれ。エンリ。彼方で、『本気』で相手をしてやれ」
「モモン様。よろしいのですか?」
モモンはそんなクレマンティーヌの反応に対し、テキトーに指差し、エンリとのタイマンをさせる事にした。エンリとしては、雪辱の機会に恵まれたと考えるが、このままルプーも含めて、数で潰すべきと考えていただけに意外そうだ。
そして、本気でというのは姿を本来のモノへ変えて良いという指示だ。エンリは確認するようにモモンを見る。
「構わん。ご指名なのだろう?機会をやろう」
「感謝します」
「あははっお優しいご主人様ですねー」
モモンとしては、ンフィーレアが攫われたのはエンリの怠慢等ではなく、タイミングが悪かっただけだと考えている。だが、エンリの気が晴れないと考え、命じたのだ。
モモンの姿は、寛大なる支配者の姿であり、エンリは自然と命令を受ける騎士の如く跪いた。その姿に、クレマンティーヌは増々面白そうだと考える。この漆黒の戦士の前に、彼女の、「エンリの首を見せたたらどんな反応をするのだろうと、想像するだけで絶頂しそうになる程だ。だが、彼女の冷静な部位が押し留める。
「クレマンティーヌとやら。すまないが彼方で遊んでくれるか?私は彼と話が有る」
「いいですよー」
「クレマンティーヌっ!オヌシ!」
「カジッちゃん。頑張ってねー」
戦力を分散させ、随時投入は基本的に愚策である。
クレマンティーヌの冷静な部分は、エンリに手傷を負わせ、逃走すべきと判断しており、カジットは丁度良い囮なのだ。
故に、己を見て抗議しようとする彼を見捨てるのはごくごく一般的な判断だと言える。歩き去る彼女と、ソレを見てついて行くエンリの姿に、何を言っても無駄だと理解したカジットは、巨大な狼から降り、己を見る漆黒の戦士。モモンを睨みつけた。
狼がどれ程の戦力かは分からないが、戦士相手とは言え、己の切り札が通用すると考え、不遜な態度を見せる。
「潰せ!スケリトル―――」
「
「んなっ・・・」
月を背後に、上空からその凶爪をモモンへ振り下ろそうとした多くの人骨が集った骸骨竜。
だが、アンデッドを感知する能力を持つモモンには奇襲にすらならない。魔法で戦士化したモモンの振り上げた刃により、咆哮をあげる事も出来ずにその身を一撃で縦に一刀両断にされたのだ。骨塊が墜落し、大地を振るわせる。
スケリトルドラゴン。
この世界では並みの戦士では手も足も出ず、アダマンタイトクラスの冒険者ですら、奇襲が成功すれば無視できないダメージを与えられるアンデッドであり、知られてはいないが、第六位階以下の魔法を無効化にし、魔法の絶対耐性を持つと言われる死竜。
数年を費やし、生み出したアンデッドが一撃で撃破された現実に、カジットは絶句するしか無かった。
「脆いな」
「馬鹿な!スケリトルドラゴンが一撃だと!?」
(あぁ。そういう事か)
モモンは剣を肩に担ぎ、つまらなそうに言葉を紡ぐ。その言葉にカジットは現実へ引き戻された。
到底信じられぬ現実なのだ。彼にとってスケリトルドラゴンは、英雄クラスの相手ですら倒せる可能性が有る存在だったのだから。
正に目を剥いていると言いたくなる程、大きく開けた血走る眼と、青白い肌に、血管の浮かぶ禿げ頭の彼の姿に、モモンはカジットがスケリトルドラゴン程度を一体だけ出したのは、それで十分だと思っていたのだと理解した。
モモンとしては、万が一が無い様に発動した
モモンは、気を抜かないようにする方が難しいと思うのだった。
「さっさと次を出せ。私も暇では無いのだ」
「舐めるな!アンデッド共!」
モモンの言葉に、カジットの中で何かが切れた。
まるで道端の小石を蹴るような、自分が何をしたのかも理解していないような言い様は、カジットにとって己の夢を、希望を、努力を嘲笑われたに等しいのだから。
懐より取り出し、掲げた死の宝珠が暗い光を発し地面が盛り上がる。土を押しのけ、地中より出てきたのは腐った人間の手、襤褸となった服を着た死骸。目撃者・情報屋・衛兵等々服だった布を見れば老若男女関係無しだと言わんばかりである。そして、空よりもう一体のスケリトルドラゴンが降りてきた。
腐臭を撒き散らすアンデッドの一団は、英雄クラスですら警戒するに値する事を熟知しているカジットは、激怒している事もあり正しい判断ができない状態になっているため、己がどれ程危険な判断を下したのか気付ける筈も無い。
「許さん。許さんぞ!エ・ランテルを滅ぼし、私の夢を叶える為に貴様には死んで貰う!」
「やれやれ。魔法詠唱者の基礎も、PKの基礎も知らんのか」
弱々しい光を灯す死の宝珠。内包されていた魔力の大半を放出したと分かっているカジットは更に激昂した。禿げた頭に血管が浮かび上がる。血圧が急上昇しており、切れそう程太く見える。
対して彼が手に持つ、死の宝珠は淡く明滅していた。その輝きは、何処かカジットに対して呆れているような、馬鹿にしているかのようだ。
モモンは前衛の過剰召喚に加え戦力の随時投入。戦力差を理解せず、冷静さを失い、激昂するばかりで撤退を考慮しない等々、カジットの行為が余りにも愚かだとしか思えなかった。
『ルプスレギナ。私が全滅させる。私の合図で殺せ。』
『はい。アインズ様』
故に、念のために所持していたアイテムでメッセージを発動させ、で後ろで静観していたルプスレギナに命じた。時間の浪費だと判断したのだ。
態々名前を正式名称で伝えるのは、本気を出せという事である。ゾンビがメインの雑魚の集団とは言え、数が多い。案山子を斬るようなモノだが、剣の鍛錬になるとモモンは判断した。
(アインズ様。御褒美をありがとうございます)
「さて、やるとしようか」
だが、ルプスレギナは思う。
激昂し、召喚した己の戦力が塵のように吹き飛ばされれば、カジットはどのような顔をするのだろう。内心楽しみで仕方がない。尻尾をゆらゆらと揺らし、狼の咢が、口角が吊り上がる。油断すれば涎が垂れそうになる程に。
そんな彼女の様子を知らないモモンは散歩に出かけるような声音で歩を進めた。
勝負は一瞬だった。
モモンは一足跳びでスケリトルドラゴンの頭上に上がり、宙で体を回転しながらの振り下ろしで一刀両断。着地と同時に
手首を捻り、肘を先行させ剣先を遅らせながら斬る。大振りに見える割にコンパクトな挙動だが十分な遠心力により重い斬撃となり、肩を見て、動きの予測をする相手にはフェイントとなるの斬撃だが、碌な知能も無いゾンビには意味がない。
そして重要なのは足運びだ。倒れ伏すゾンビの頭蓋等を踏み砕き、肉塊により足を取られぬように、血で滑らないように気をつけながら円の動きを意識し、無暗に跳ばずに切り続けるのは意外と難しい。
結果だけを言えば、体で覚える為と割り切れば十分な鍛錬になるのだ。
「バ、馬鹿な・・・」
己の夢を叶える為に費やした時間が、作り出した戦力が、瞬く間に崩壊していき、終には全滅した事実にカジットは膝を折った。
幼き日の誓いが、死んだ母を蘇らせる為に犯した罪が、全てが剣により断たれた。その程度のモノなのだと、モモンの持つ剣の、鈍い輝きが告げていると思わざるを得ない。
その顔に浮かぶのは、絶望しか無かった。
「さて、ご自慢のアンデッドは品切れかな?」
「何故だ・・・」
腐敗した血を剣を一度振る事で吹き飛ばし、カジットへ切先を向けて宣言するモモンに、カジットは項垂れ、呟く。
「ん?」
「何故オヌシのような、英雄を超える者が、ワシの夢が叶う寸前に来るのだ」
その怨嗟に満ちた一言に、モモンは気になったのだろう。疑問に満ちた声を漏らす。
そんなモモンの様子を知らずに、カジットは目前に迫った死に、その運命を科した神へ怒りと憎悪を言葉にする。
「神は!幼き日に母を奪い、蘇らせる機会すら与えてくれなかった神は!蘇らせる為に、研究の為にワシ自身がアンデッドとなろうとする事も許さぬというのか!」
正に激情の吐露と言える。
母の死を切欠に、聖職者へ進んだカジット。
幼き日。無邪気に遊んでいた為に、普段より遅れて家に帰れば倒れ伏せる最愛の母の姿が有った。何とか母を救いたいと努力したのだが、結果は外道へ堕ち、リッチへ至る事で更に、蘇生の研究をしようとすれば、死が眼前へ迫っていたのだ。
彼にとって、これ程理不尽な事は無いのだろう。
「一言で言うのならば、いや・・・」
モモンはカジットへ対して、少し哀れに思った。
しかし、事情が有ったとは言え暴虐な行為は認められるモノでは無いと鈴木悟の残照が訴える。脳裏に浮かんだたっち・みーも、首を横に振り、今のアインズ・ウール・ゴウンとしての心は、考慮に値せずと言っていると感じた。
己の心のジレンマを感じつつも、モモンは簡潔に伝える事にしたのだ。
「運が無かったな。殺れ」
モモンの突き放した一言は、カジットは始め、音としてしか認識出来ず、言葉として認識すれば、顎が落ちる程大きく口を開け唖然とした顔を見せた。心の何所かで見逃す可能性が有ると考えていたのだ。
青白い顔色を含め、絶望と失意で固まればこんな顔をするのだろうと言わんばかりだ。そしてそのまま、人間形態になったルプスレギナは、その剛腕でカジットの首を捩じ切った。脊椎ごと引き抜かれ、鮮血が噴水の如く放物線を描き噴き出す。まるで赤い水芸だ。
断面より噴き出す鮮血が数滴顔にかかるが、ルプスレギナは気にも留めず、心に満ちた感情が抑えきれずに表を出た。
「く、くふふふっ!スンゴイ良い顔だったっす!何て良い顔!あははははっ!」
首の無いカジットの体が俯せに倒れようとも気にもならない。彼女は、口角が歪に吊り上がった、歓喜に満ちた顔で嗤う。
月光に照らされ、その整った容姿に返り血は美しいアクセントとなり、その姿は月へ狩の成果を見せつける狼にも見えるだろう。
(うーん。<悪のギルド>を突き進んだギルドだけど、ルプスレギナもか。だったら、デミウルゴスもストレスが溜まっている可能性も有るかな?)
モモンの内心は、ギルド長モモンガとしての感情が大きく現れていた。
そして演じていたとはいえ、人間に対して友好に接する事が出来るルプスレギナですら、こうも楽しんでいるのだ。ならば、NPCであり、完璧な悪魔として創造されたデミウルゴスが気になってしまう。
既に彼の中では、夢破れ、絶望の中で無残に死んだ男の事等欠片も残ってはいない。
『おぉ・・・偉大なる死の王よ』
(インテリジェンスアイテムだと?ユグドラシルでは無かったアイテムだな)
カジットの遺体よりモモンの足元へ転がった死の宝珠は、モモンへ思念を発した。
モモンはフドウより借りた真実の目の効果により、その説明文によりユグドラシルでは作成出来なかったアイテムだと判断する。
「死の宝珠。ほぅ?低レベルであれば思考を誘導し、手に取った者を操れるのか」
『左様でございます。私は世界を死で埋めつくす事が私が世に在る使命だと考えておりましたが、貴方様に御仕えする事こそ、この世に生み出された意味だと分かり、歓喜しております』
説明文は散文で簡潔に書かれたモノであり、使用できる魔法等々見れば、少し看過出来ない内容だった。付与された能力により、レベル40以下程度ならば心に干渉できる様子である。
己には効かないと分かれば、モモンは死の宝珠を拾い、しげしげと眺めながら問う。その行為が己に興味を持って頂いたと感じた死の宝珠はこれ幸いだと、己を売り込んだ。
「では、コレはお前が操っていた。という事か?」
『それは誤解でございます。この者は不遜にも、貴方様の領域である死に干渉し、弱き魂を引き抜こうと努力しておりました。ですが、人としての寿命では叶わぬと考え、死の魔法詠唱者になろうとしたのです。私は、死の魔法詠唱者になる最も効率の良い方法を選ぶよう誘導したに過ぎません』
モモンがカジットの死体を指差せば死の宝珠は焦った。多少思考誘導したとはいえ、操っていたと判断されれば、己が仕えたい相手に仕える事は叶わず、処分されるか、また幾星霜と無頼の時を過ごす事になるのだから。
死の宝珠の正直な答えに、モモンは少し興味を抱く。先程は興味が無かったが、死の宝珠の述べたのは、カジットはレベル5以下の蘇生を実現しようとしていたという事なのだから。
そして疑問に思った事が有った。
「死者の書が無ければエルダーリッチにはなれぬ筈だが?」
『然り。ですが、数多の怨念や負のエネルギーが有ればスケルトンメイジには成れましょう』
モモンにとって、死の魔法詠唱者が意味するのはエルダーリッチなのだ。初期であるスケルトンメイジを取得する方法は有るには有るのだが、需要が無かった為に彼でも知らなかったので意外に思う。
そして、疑問は疑問を呼ぶ。
「気になるのは、負のエネルギーとは何だ?ネガティブエナジー系列の魔法か?」
『アンデッドや悪魔の持つエネルギーで御座います。貴方様であれば呼吸の方法を問う程簡単な内容ですので、知らぬのは当然でありますれば』
モモンの問いに死の宝珠は意外に思いつつも、失礼にならぬように指摘するしかない。人間であれば冷や汗で背中がぐっしょりと濡れる程の緊張を覚える。
だが、幸いなのかモモンとしては余り気にはせず、何処か同情に似た感情を覚えた。
鈴木悟であった頃、取引先の先方の上司に会った際に、カツラがズレていた為、どう指摘するか迷ったのだ。言葉にせず、己のネクタイの結び目を何度か目の前で触れれば、彼は幸いにも己のネクタイが歪んでいるのだと考え、一度退席し結果、鈴木悟は気まずい思いをしなくて済んだのだ。
「それにしても、私が死の王だと何故思う?死の気配等感じないのでは無いか?」
『仰る通りであります。死の宝珠と銘じられた私ですら気付く事に遅れ、申し訳なく思う次第』
モモンは話題を変えようとした。
モモンはアンデッドの気配を発さないように装備で誤魔化している。何故死の宝珠が気付いたのか疑問に思うも、返ってきた答えに完全な隠遁は難しいのかと思案し、後程追加で、更に隠蔽用アイテムを装備する事を検討した。
「成程。だが、私に仕えるのであれば死を量産することも、人を操るのも私の命令の下でなければ許さんがどう思う?」
『私は道具でございます。貴方様の意に準じる事こそ至高の命でありますれば・・・』
モモンはコレクター気質が有る。故に問題が無いようであれば取りあえず収集する事にした。低レベル相手限定で、思考誘導程度だが操る事が出来る死の宝珠。この有用性を調べたいと思うも、己だけで運用し、フドウ―――ジュンにバレれば面倒になると判断し、注意事項のように問う。
この言葉に死の宝珠は、己はアイテムである事を思いだした。持ち主の意に反するアイテム等ゴミにも等しい。中には仕様で持ち主や担い手を傷つけるモノも存在するが、強大すぎる力を持つモノ特有であり、例外である。
道具は使われてこそ道具足りるのだ。そして、意思の持つ死の宝珠は、死の王に使われる程嬉しいモノは無かった。
「仕える事を許そう。だが、しばらくは出番は無いぞ」
『感謝いたします。如何様にも御使い下さい』
モモンとしては様子見のつもりの一言だったが、死の宝珠には己を気遣った一言にしか思えず、感動から激しく明滅する。
玉だが感情表現豊かだ。
「さて、ルプスレギナよ。落ち着いたな?私はンフィーレアを確保しに行く。有用なアイテムは剥ぎ取っておけ」
「了解です」
モモンは死の宝珠片手に、ルプスレギナに言えば、彼女は確りと御辞宜をして見せた。彼女の肌は褐色だが何処か赤みが抜けていた。
至高の御方の前で勝手な行動をしたというのに、慈悲深く待って頂いた事実に血の気が引いていたのだ。
モモンは彼女の様子に気付いていたが、指摘せず、ンフィーレアが捕らわれているであろう霊廟へと歩を進めた。
霊廟の最奥。地下に有る、蝋燭の淡い光源により、薄暗く不気味な雰囲気を醸し出す一室。幾何学模様のように描かれた魔法陣の中心にンフィーレアは俯きながら立っていた。
透明な衣を身に纏い、宝石の有る、網状のティアラに似たモノを装備しており、眼球を潰されたのか眼窩より流れる鮮血は涙にも見える。
(この程度の傷はジュンの魔法で十分だが、問題はコレか・・・)
モモンの姿より、本来の姿に戻るアインズ。
アインズはンフィーレアの状態をジュンより借り受けた<真実の目>で検分する。結果、額に装備されている『叡者の額冠』が問題だと判断した。
効果を簡潔にまとめれば、着用者を2階位上までという条件を無視した、
ユグドラシルでは確実にありえないアイテムであり、使い方によっては有用だが、装着者という消耗品が必須であり、付与や呪詛まで用いた呪いの品とも言える。
また、装備者は誰でも構わない訳ではない為無理に使う価値が有るのかは疑問である。
「・・・さて、どうするべきか」
検分により、アインズはンフィーレアの発狂を防ぐには叡者の額冠の破壊が正しい選択だと判断した。
ンフィーレアを発狂させずに、何とか外せないモノかと考えるが、答えが即座に出るモノではない。
『死の王。何を御悩みになられているのですか?』
「いや。発狂させずに外したいと考えている。私の名声を広めるには、彼が必要なのだ」
ンフィーレアへ右掌を向けたまま動かないアインズに、死の宝珠は道具たる己が話しかけるべきなのかと考え、問う。アインズとしても、意見が欲しかった為、聞く相手が死の宝珠である事を承知の上で話しかけてみた。
『この術式で御座いましたら、装備者が完全に気を失っておれば、呪詛による使用リスクの発現はしない筈で御座います』
「分かるのか?」
『はい。私の仕様上似た呪詛を用いますので』
死の宝珠としては少々意外だと感じつつも、アインズの望みを叶えるべく、解析結果を述べる。
死の宝珠はインテリジェンスアイテムである。よって、一定以上の解析能力を持つ。特に、術式の解析については優秀なのだ。
「盲点だ。装備者をアイテムにするという点から、意識が無いモノだと判断していた」
『貴方様は死を司るので御座います。であれば、生かす為であれば気付きにくいのかと・・・』
アインズとしては、死の宝珠の答えは正に盲点であり、思い至らなかった事を失態と捉える。死の宝珠は、発狂しようとも蘇生すれば良いだけだと思うが、アインズがンフィーレアを死なせない事を前提と考えていた事が要因だと遠まわしに言うしか無い。
「死の宝珠よ。
『問題は御座いません。ですが、発狂は呪詛によるモノ。解呪に成功すれば良いのですが・・・』
アインズは確認する。
嘘が有れば、術式解析の為に解体・破壊するつもりで。慎重な彼にしては珍しい行動でもある。死の宝珠が『死』に関係する物である事から、何処か波長やら相性が合ったのだろうか。
「解呪には何が良いか」
『この術式による呪詛であれば第五位階相当。万が一が無いようにするのであれば、第七位階であれば問題御座いません』
「意識を完全に失わせるのはどうするべきか」
『
「
『私はアンデッドの生成限定ですが、似たような効果が有ります。私に使われている術式の方が高度でありますれば』
打てば響くとはこの事だろうか。死の宝珠は即座に答える。
アインズはさり気無く<真実の目>により、死の宝珠の持つ能力と最後に答えた
(<真実の目>の効果は恐ろしいな。術式迄分かるのか)
ワールドアイテム<真実の目>は、装備者が知りたいと考えれば解析結果を知らせる仕様でも有った。仔細の内容を一々装備者へ伝えていれば情報過多になり、負担が大きい為だろう。
「成程。死の宝珠よ。お前は早速役立ってくれる」
『勿体なき御言葉。私は御身の道具であります』
兎も角、アインズは上機嫌で死の宝珠を褒めた。拾い物だが、アインズのコレクター魂を満足する逸品だったのだ。
殆どのアンデッドや即死に関する魔法を使えるようにする上に、魔力の貯蓄が出来る。死に関する魔法限定の、魔力を貯蓄できる叡者の額冠と言うべきアイテムなのだ。
デメリットとしては、精神耐性が無40レベル以下であれば、死の宝珠の意思に認められなければ思考誘導により操られる事だろうか。
(第七位階・・・スクロールか何か、アイテムを使った体裁であれば問題無いか)
アインズは自分達の名声を稼ぐには、公衆の面前でジュン・・・フドウがンフィーレアを完全に癒すのが良いのだと考えた。
アインズの
(それにしても、意外にも立派なバスターソードだな。薬師で魔法詠唱者である以上、レリックかレジェンドクラスのロッドだと言うべきか・・・)
今のンフィーレアの恰好は隠すべき所が隠せていない、ZE・NN・RAに近い恰好である。安心して気が抜けた事も有り、男の悲しい性なのだろう。アインズはついついンフィーレアの得物を確認してしまう。
ンフィーレアのモノは、顔や体格には不釣り合いの中々凶悪なモノだったのだ。そして同時に思うのは、この恰好のまま公衆の面前に出る等、一生モノの黒歴史になると考える。
アインズはモモンに変装し、身に着けている真紅のマント。ネクロプラズミックマントを取り外し、ンフィーレアを包み、肩に担いでこの一室を後にした。
グロ描写「シリアスが死んだか」
残酷タグ「クククッ所詮我等の中では最弱」
R15タグ「だが、ヤツは強い」
ギャグ野郎「HAI!御ネンネしてなー!」←ヤツ
シリアス「我は甦る!シリアルとなってもな!」
てな感じでお送りしました。なぜかラストに入れてしまった・・・蛇足だと分かってるのにっ!
いやー。着実に強化されていってます。アインズ様。
死の宝珠がなんでか知りませんけど、リリなの風インテリジェントデバイスに(笑)
それにしても、ンフィー君の御姫様レベルがヤバい気が・・・うーん・・・
あ、次の更新ですが、10日は参議院選挙なので・・・そうですね。うーん。来週日曜辺りと、結構曖昧ですいません・・・
ペロ「・・・うーん。ンフィー君。華奢で女顔だしなぁ」
ぶく「ぬぅぅ。悪くは無いけど、何か違うような、でも・・・」
やま「ガン見していて、説得力は無いと思うな。ボクは」