魔王様の友人は風変りな悪魔(元男です)   作:Ei-s

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少し遊び過ぎたかな?ルビがガチで大変(^^;)


第二話

モモンガがアルべド達に指示を出している頃、ジュンは眠りの世界に旅立っていた。小さな呼吸音を立てており、それを、腰まで伸ばした金髪と少し吊目のキツそうな印象を与える20代前半に見える長身の美女。純白のチュニックに、碧いトーガを身に纏ったアンジェと名付けられたNPCは呆れ気味に、まるでだらしない妹を見るような目をして起こさない程度の溜息をついた。

 

「アンジェ姉さん」

 

そんなアンジェに、ジュンを起こさない程度の声の大きさで話しかけたのは15才前後に見える美少女。黒髪を肩まで伸ばした少し垂れ目の紅眼。漆黒のチュニックに紅のトーガを纏ったライトと名付けられたNPCだ。ジュンが15才前後であればこうなのだと思わせる顔つきをしている。

ライトの呼びかけにアンジェは静かに部屋を出ようと歩き出す。ライトは3歩空けてついて行き、音を立てないように、そっと扉を閉めた。

 

「沼地が草原に変わってる」

 

「下にナザリックは有る?」

 

ライトは簡潔にアンジェに報告した。一文だけでアンジェは事の重大さを仮定ではあるが認識し、先ず把握すべきは友好勢力が近くにいるか否かと判断した。ユグドラシルにおいて、幾ら強力なプレイヤーであるジュンも一定条件下では多勢に無勢。敗北をした事も多々ある為だ。

 

「有る。けど、ジュン姉ちゃんが起きるまで接触は控えるべき。会った事ないもん」

 

「いえ、話に聞くモモンガ様なら接触を図る筈よ」

 

ライトの考えは安全を重視したモノだが、この非常事態に対応する者が、製作者の内の一人により記された記録から行動を予測するアンジェ。

不躾な対応により、万が一にも友好な関係が崩れないよう対応すべきとの判断だ。

 

「・・・アレとかをパンドラボックスに入れておく」

 

「えぇ。私が担当するわ。貴女は周囲1キロの警戒網作成と物品整理をしておいて」

 

ライトはジュンが少し前に手に入れた超級なアイテムを、安全且感知されない特殊な神話級の宝箱、パンドラボックスに収めて移動する事を提案。アンジェはそれに対し、ナザリックの対応をかって出た。また、周囲の仔細な状況把握と安全確保をする事に決めた。

 

「ジュン姉ちゃんは?」

 

「あの子の事だからパニックになるでしょうし、モモンガ様なら指示を出し終わるか、ある程度落ち着けばあの子に伝達魔法(メッセージ)を飛ばすでしょう。落ち着いてからで良いわ」

 

2人揃ってジュンを起こすべきではないと判断した。寝ぼけるか慌てるかで誤って使用したスキルに巻き込まれる可能性を思案した為だ。特にアンジェは記録に有るとんでもない伝説に目眩を覚え、こめかみに手を当てている。ライトは話しながらクリスタルモニターをアンジェにも見えるように展開した。9つの枠が有り、中央にはナザリックの入口に固定した。

ふと、ライトは万が一ジュンが力を示す必要が有るのでは。と考えた。自身所かアンジェにも感知させない人間化は問題になると思った為だ。

 

「一応フードも用意しとく」

 

「あと、スペアキーも出しておいて。ナザリックからの接触が終ってからだけどステルスを全開でお願いね」

 

「障壁強度30%。ステルス機能50%。対情報系20%でいく」

 

パンドラボックスに入れる物品を追加しようとすれば、アンジェも同じ答えに至ったのだろう。更にこのギルドホーム。スカイスカルの機動用スペアキーも入れる事になった。

そんな中、入口に固定した画像に3人の人影が映され、アンジェは思わずナザリックの対応の速さに舌を巻いた。頭部1対、背中からは全身を覆い隠せる程大きな一対。計2対の黄金に輝く翼を広げた。頭上には光の輪を形成する。太陽の光に似た淡い緋色の輝きを放つ姿は、正に見る者に天使と思わせる姿だ。

ソレを見たライトはアンジェの足元に、楽に通れる程の穴をクリスタルモニターを色々タッチして形成した。アンジェは穴の形成を確認して頷く。そして浮遊したままで話すのだ。

 

「ええ。私は出るから、ジュンが落ち着いてからで良いから内容を確認させなさい」

 

「分かった」

 

そして、アンジェは手早く移動した。傍から見れば穴に落ちる形だ。

 

セバスをはじめ、ナーベラルとルプスレギナはナザリック周辺。あくまで見渡せる距離だが一面草原である現状に危機感を覚えた。彼等の記憶上には毒の沼地だった筈なのだ。すると頭上がふと明るくなった。セバスは何も思わなかったが、属性(アライトメント)がマイナス寄りのナーベラル、ルプスレギナ両名は不快感と、自身より強力な相手であると感知し、警戒する。

ふんわりと降りてきたアンジェはその翼と頭上に輝く光の輪と放っていた陽光色の光を消して、一礼した。

 

「初めまして。私はアンジェ。ジュンに生み出された者よ」

 

「此方こそ初めまして。私はセバス・チャンと申します。モモンガ様に仕える執事でございます」

 

「モモンガ様に仕えるナザリックが戦闘メイドプレアデスが一人ナーベラル・ガンマ」

 

「同じくルプスレギナ・ベータ」

 

アンジェは自身が武器等を所持していない事をアピールするかのように軽く両手を上げながら挨拶した。それに応える様にセバスは執事らしく、姿勢が良く30度程軽く腰を曲げたお辞儀をして見せた。ナーベラルとルプスレギナは先のオーラに関する事で少々不快感を持ってはいたが、少しスカートの端を持つように返礼した。そんな両名の様子にアンジェは少し頭を下げた。

 

属性(アライトメント)がマイナスの方には不快だったようね。ナザリックに入る際は気を付けるわ」

 

「そうなさるのが宜しいかと。ご配慮感謝します」

 

アンジェは自身が入る予定の場所は元々墳墓であり、所属する多くの者が属性(アライトメント)がマイナスである事から配慮する旨を伝えれば、その配慮にセバスは微笑みをもって答える。如何にも穏やかな老紳士な気風のセバスにアンジェも微笑みを浮かべたが、自身の目的を忘れた訳では無いため、元の真剣な表情に戻した。

 

「さて、話に聞くモモンガ様なら現状の把握で良かったかしら?」

 

「左様で御座います。また、知的生命体がいた場合については無傷で連れてくるように。との事」

 

「一応此方で半径1キロ以内の確認と警戒網の作成はしているけど、其方でも確認するのでしょう?」

 

「はい。上空よりは情報量が少ないかと存じますが、必要な事でしょう」

 

アンジェとセバスの両名は内心驚きを隠せなかった。

アンジェはモモンガのあまりにも危険を除く方向の考えに。セバスはモモンガの判断を読める程アンジェが情報を持っている事に。

セバス的にはナーベラルとルプスレギナの両名がこれ以上無用な警戒心を抱かない様に一つ咳をして話題を変える事にした。

 

「して、ジュン様はいかがなさいました?」

 

「・・・あの子。寝ているのよ。寝ぼけるだろうから、モモンガ様のモーニングコール待ちよ」

 

セバスの問いにアンジェは思わず顔を俯かせた。その表情からナーベラルは不敬であると感じた。

 

「失礼を承知で申し上げますが・・・」

 

「それ以上は言わないで。パニックになると困るの」

 

ナーベラルの問いが何であるのか分かっていたアンジェは恥も承知で自身等の安全を優先したと顔に書いてある様子で答える。思わず溜息をつきそうな表情だ。

 

「パニックですか?」

 

「えぇ。こんな非常事態ですもの。落ち着いたら問題無いのだけど、落ち着くにはモモンガ様の一言が一番だと思うのよ」

 

ルプスレギナはモモンガを始めとした至高の41人の友人である人物が容易く狼狽える姿が想像出来なかった。そして、アンジェの答えにやはり、最後まで残られたモモンガが一番最高なのだと思った。

アンジェはルプスレギナの考えを察し、がそう判断したのは変なことではないと想い微笑んだ。一方のナーベラルとセバスは、モモンガの一言で落ち着く者の人物像を掴みかねていた。モモンガ曰く、強大な力を持つ人物がそう狼狽えるようには思えない為だ。

セバスは早急に行動すべく、一度手を叩いた。

 

「さて、御喋りはココまでです。我々も確認に参りますよ」

 

「はい」

 

「了解っす!」

 

ルプスレギナは少し気を抜いたのか、警戒を解いたのか、ついプレアデス同士で話す口調で返した。不躾な態度にセバスとナーベラルに睨みつけるが、アンジェは小さく笑った。嘲笑ではなく、微笑ましそうに。

 

「いえ。構わないわ。あの子もルプスレギナさんの口調は知っているだろうしね」

 

そしてそう述べた。アンジェ自身自然体で接するように生み出された為に、堅く気取った態度が苦手なためだ。ルプスレギナは少し照れた様子で、ナーベラルとセバスはルプスレギナの態度に溜息を噛みしめながら行動を開始した。

ナーベラルは探知に有効な魔法である兎の耳(ラビッツ・イヤー)を発動させウサ耳戦闘メイドとなっていたが。

 

第六階層アンフイテアトルムに転移したモモンガは守護者であるダークエルフの双子の姉弟。アウラとマーレに先ず、客人が来る可能性が有る事、その客人が『ジュン』であり、人間では無い事、守護者達を集めている事を伝えた。また魔法の確認を行う。再詠唱時間や総MP。魔力量も完全に体感で行える点に安心感を得た。逆に不安を覚えたのはフレンドリーファイアが解禁されている点である。

そして、スタッフ・オブ・アインズウールゴウンの能力の一つ。炎で出来た竜頭で筋骨隆々の男の上半身をした根源の火精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)を召喚。アウラとマーレの戦いを見ながら、ついに伝達魔法(メッセージ)でジュンに話しかけた。

 

『ジュンさん。聞こえますか?』

 

『ふぁーい。何ですか?モモンガさん・・・あれ?何で俺の声!?』

 

ジュンはモモンガの声が聞こえた為か、微睡みながら自身の声が女性の声になっている事に気が付いた。しかも、己の外装データを構成する際に一度見直したアニメの声と似ている事にも。一方のモモンガは返ってきた声が己が知っている声では無い為、少しばかり警戒心を覚えた。

 

『って、なんでモモンガさんの声が?しかも渋めになってる?って、え?ウソ!?』

 

『落ち着いて下さい。ジュンさん』

 

モモンガは、反応は良く知るモノである為少し試すことにした。内心人が慌てふためいていると、自身は落ち着くのは真実であると思いながら。

 

『モモンガさん?俺だって分かりますよね?ユグドラシル2でも始まったんですか?』

 

『・・・自分の胸でも揉んだら分かりますよ』

 

声が変わり、自身を認識されない可能性に不安に思っていると良く分かる声音のジュン。モモンガは少しばかりの罪悪感を覚えなくもないが、己の良く知る人物なら素直に行動する筈と思った。

 

『胸?ハラスメントコードに引っかかる・・・えっ?』

 

ジュンはモモンガに言われるままに自身の胸に両手を当てた。丁度外側から挟み込む様に。そして、自身の知らない柔らかい感覚。指が沈み、思わず2度3度指を動かす。思わず知らない感覚に恥ずかしさを覚えながら、恐る恐るそっと手を自分の股下に添える。

生まれた時より有った、実戦投入する予定がいつになるか分からなかった相棒が無いのを知り、思わず呆然自失して呟いた。

 

『・・・マジ?俺、女になってる?』

 

『私もアバターのまま骸骨です。NPCは意思を持って普通に受け答えできます。このように魔法も使えます』

 

モモンガはその呟きに律儀に答える。ジュンの余りにも想定外の事態に遭った時の反応の悪さを思い出しながら。そして、直視したくないモノに関する事を呟く筈と思っている。

 

『現実?』

 

(あ、ジュンさんだ)

 

その呟きにモモンガは安堵した。そして、孤独では、1人ではないと思う自身に嫌悪感を覚えた。

一方のジュンはフリーズしたコンピューターのように思考が停止、再起動するかのように感情等が動き始めた。そして、意外すぎる現実に感情は抑えきれなかった。

 

『「うぇぇえええええ!?」』

 

伝達魔法(メッセージ)でモモンガと繋がっている事も忘れ、ごちゃ混ぜになった感情は声となって放たれた。

咄嗟に頭上を見上げ、ダイヤモンドダストのようにキラキラした粒子と共に放たれた咆哮は水晶の壁と共振し、指向性をもって天井に亀裂を生じさせた。亀裂から覗く数億の宝石を散りばめた様な夜空にジュンの思考は再度停止する。美しさに魅入ってしまったのだ。

自身がユグドラシルで使えたスキルを使用した事よりも、その空は衝撃的だったのだ。

 

『ちょ!何が有ったんですか?』

 

『・・・セイントスマイト・ボイスバージョンを撃てちゃった。って、それより星が凄いですよモモンガさん!ブループラネットさんの言ってたモノよりスゴイかも!』

 

モモンガの言葉に我に返ったジュンだが、興奮して止まなかった。正に星屑の空。現実でも仮想現実でも見た事がない。ただただ心奪われる美しき星空に感動を覚えていた。だが、急に落ち着きを取り戻し、首を傾げた。

 

『あれ?』

 

『悪魔に精神安定スキルは無かった筈ですよね?私はアンデットなので一定以上の感情を覚えると安定化するみたいですが、どうしました?』

 

『多分、真実の目の効果だと思います。装備者への精神攻撃無効化って有りましたし』

 

ジュンの様子に精神攻撃無効のスキルにより強制的に落ち着いた経験を持つモモンガの言いように、ジュンは自身の額に装備している、透明化させているアイテムに意識を飛ばした。

世界級(ワールド)アイテム真実の目。

かつて、ユグドラシルの公式大会。近接戦PvP限定戦で優勝賞品でもある特殊なワールドと銘打つ職業レベルを取得しようとしたら、得たのは運営がネタで用意していた超特殊職業レベル『ワールド・ブレイカー』。そのお詫びとして専用装備として世界級アイテムを進呈する事となり、ジュンの要望に最も適していた真実の目が贈呈されたのだ。

効果は単純。同じ世界級アイテム等を所持している者以外の相手のデータをアカウントやプライバシーを除く範囲で、直接見ている時に限り閲覧可能。また、世界級アイテムの仔細設定等も直接見ている限り閲覧可能。ついでの如く、世界級アイテム・超級魔法以下の隠蔽・閲覧妨害・閲覧感知を無効化し、装備者に対する精神攻撃無効化等が有る。

鑑定能力としては優秀な装備である。ジュンがコレを欲した理由は相手のステータスの仔細とアバターや装備品からPvPやPKKの勝率を高める算段であり、ユグドラシルの裏設定等も知りたかった為である。また装備している事を空きスペースに隠蔽と透明化を加えて分からないようにしてある。

事実、裏設定から推測した条件等が丁度ミッシリングになっていた箇所で、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは当初の予定を凌ぐアイテムと化した。

 

「ジュン姉ちゃん」

 

「ライト。だよね?」

 

「アンジェ姉さんの指示で色々やったけど、確認お願い」

 

ジュンが過去の事を思い出していたらライトが話しかけてきた。ライトは自分の右手の上に浮かせていた青い半透明なウィンドウ。クリスタルモニターをジュンの手前迄移動させた。ソコにはアンジェとライト両名が行動した事が細かに書かれていた。

ジュンの目つきが鋭いモノにかわり、ライトはそれが誇らしげに見ていた。

 

『モモンガさん。現状とか把握したいので、後で掛けなおします』

 

『了解です』

 

ジュンの言葉に丁度アウラとマーレが根源の火精霊(プライマル・ファイヤーエレメンタル)を撃破した為良いタイミングだとモモンガは思った。一度セバスに伝達魔法を飛ばせば無事にジュンのNPC。アンジェと接触し現状は地上から再度確認を行っており、また、アンジェの判断で既に半径1キロの警戒網を作成したと聴いた。デミウルゴス級の智謀を設定されたアンジェの優秀さに、無くしたはずの胃が痛む感覚を覚えた。そして、ちゃんと見たことも無いのでジュンと合流次第アンフイテアトルム迄来るよう指示を出した。丁度その頃、第一~第三階層の守護者である真祖の吸血鬼シャルティアが転移でやってきた。抱き着かれたり、シャルティアが挑発めいた事を言えば胸に関する事で言い争いに発展し、マーレはそれをオロオロしながら見ていた。

モモンガがシャルティアとアウラの言い争いにその製作者達を思い出し、密かに心温まりながら各階層守護者を待っていると伝達魔法(メッセージ)を受信する感覚を覚えた為右手を自身の右こめかみに添える。

 

『モモンガさん。異世界っぽいです』

 

『今セバス達に地表の捜索をさせてますが、一面草原らしいですし、ジュンさんが言ったような空が有るなら尚更その可能性が高いです』

 

ジュンの短刀直入な言いように、先程興奮気味に話していた内容から判断したモモンガ。その言葉にジュンも早急にモモンガに逢う必要性を感じたが、一点気になる事が有った。

 

『念の為、全力戦闘モードになった方が良いですか?』

 

『・・・いざという時には、ですかね。守護者達をアンフイテアトルム迄集めてますし、一度本来の姿になってもらいます』

 

それは、ナザリックのNPCから攻撃される危険性だ。

モモンガ自身現在はあまり疑ってはいないが、かなり余計な事をした自覚が有る為ワンテンポ遅れで返答した。友人に『人間と思われていたから、私のペットだと判断していた。あと、ウルベルトさんの弟、アバター的には妹とは知らないみたいです』等言えるはずも無い。

ジュンはモモンガが暗に守護者への説明の必要性を訴えた事に、モモンガの立場が自身より上である事を示し、また、敵対行動をしないと分かりやすい形で示す事にした。

 

『分かりました。一応献上品?っぽく世界級(ワールド)アイテム包んどきます。終了間際に手に入ったんですよ』

 

『マジですか!?』

 

それは、ユグドラシルにおいて200しかないアイテムを渡す。正確には使用権限を渡し、ナザリックでの保管をお願いするという事だ。

スカイ・スカルに保管するには不相応なアイテムである事も要因ではあるが、守護者へのアピールとしては十分であるとジュンは考えた。

モモンガは終了間際とは言え、世界級アイテムを発見した事に対して純粋に驚いていた。総数が少ない点と、使い捨てである物が多々ある点等から実に手に入れずらいのだ。事実、ユグドラシルにおいて総所持数トップがアインズ・ウール・ゴウンの11個である。

 

『詳しくは後で』

 

『分かりました。セバス達に案内させます。あと、リング・オブ・アインズウールゴウンは・・・』

 

『分かってますよ。顔見せしてからか、非常時以外は使いませんし、外せるか試してみたら外せました。着け直しも出来ますよ』

 

ジュンが実際に逢う旨を伝えればモモンガは既に手配済みと言う。懸念の一つであるギルドの指輪についてはジュンがナザリックに赴く事にした時に、モモンガと話しながら既に試していた。

指輪というある意味シバリが大きいアイテムの装備制限が無い事はモモンガにとっても有りがたい話だ。

 

『お願いしますね。あと、支配者らしい態度をとってますが笑わないで下さいね』

 

『魔王ロールですね。分かります』

 

モモンガの最後の懸念は、先に言う事の重要性を示すモノとなった。ジュンは兄のロールプレイに関して、横で見て楽しむ派だったのだ。ジュンは声は真面目そうだが内心笑っていた。モモンガの見た目からして魔王としか思えなかった為だ。そして、付き合いの長いモモンガはソレが手に取る様に理解している。

 

『・・・笑うなよ』

 

『りょ、了解です。あと、俺やアンジェを呼ぶ時は呼び捨てでお願いします』

 

一拍置いて告げた言葉はトーンが低く、ソレを聴いたジュンは手早く伝えるべき事を告げて伝達魔法(メッセージ)を切った。そして、パンドラボックスの中身を確認して、ライトに物品整理を進める様指示し直し、手早くフライの魔法を使いスカイ・スカルを出る。

ジュンとの通信が終わり内心溜息をつきたくなったモモンガがだが、自身に90度キッカリのお辞儀をするアウラとシャルティア。そして、いつの間にか発動している絶望のオーラ。内心精神状況次第で発動するのかと思いながらも、2人を許す事から始めた。

 

確認作業が終わり、中央の霊廟の入口へ戻って来たセバス達4人。

セバスはモモンガから連絡が有った為報告をしており、ソレを見ながらアンジェは溜息をついた。

 

「・・・あの子ってば」

 

「モモンガ様もこの異常事態に負の爆裂(ネガティブ・バースト)をお放ちになりました。お怒りなのでは?」

 

「いえ。あの子の場合は違うわ。ナーベラルさんも聞こえたでしょうけど・・・」

 

まだ兎の耳(ラビッツ・イヤー)を使用している事も有り、兎の耳を忙しなく動かしながらナーベラルはアンジェの溜息に対して自身の考えを伝える。内心ソレは無いとも思っていたが。アンジェも即座に否定して、実に悩ましそうに左手でこめかみを揉みほぐす。調査中に突然発せられた魔力を伴う声が実にいい具合にアンジェの頭痛を誘うのだ。

 

「・・・完全に驚いたお声でした」

 

「うぇぇえええええ!?は、無いっす」

 

言いずらそうだが、言葉を選ぶナーベラルと選ばないルプスレギナ。思わず笑ってしまいそうになるルプスレギナに一応形としても行動する事を選んだナーベラル。

 

「ルプスレギナ」

 

「ぅへぁっ!?」

 

名を呼び、慎む様に指摘すれば、つい右手で額を軽くたたき、舌を少し出す。人が見ればテヘペロな状態のルプスレギナだったが、すぐさま後頭部に軽めだが衝撃を受け、舌を噛んでしまった。

ルプスレギナの視界に入ってない人物は1人しかおらず、恐る恐る振り向いてみると、ニコヤカに笑みを浮かべたセバスと目が合った。笑顔とは対照的過ぎる程鋭い眼光に体は即座に反応した。地味に湯気を纏っている手刀が再度振るわれない為に。

 

「ゴメンナサイっす!」

 

その反応は幸いにも綺麗なお辞儀をアンジェに向けてする事だった。地味に頭の位置がアンジェの手が届く範囲であり、アンジェはルプスレギナの頭を撫でるべきかと悩むが、撫でるのを止め、小さきく笑った。

アンジェ的には現状でのジュンの行いについては敬われる事は無いと断じる内容であり、軽蔑されないだけマシと考えている為だ。故に、主人への軽視に関して怒るのは筋違いと判断しソレを胸の内に秘める意図が有ったが故の微笑みである。

 

「アンジェ様。先ほどモモンガ様よりジュン様が降り次第、御二人をアンフイテアトルム迄お連れするよう仰せつかりました」

 

「お願いするわ」

 

その意図はセバスに正しく伝わり、予定を伝えるのであった。ナーベラルは兎の耳(ラビッツ・イヤー)を解除し、ルプスレギナの頭を軽く小突いていた。下手すれば首が飛ぶ失態で有った為だ。

 

(心配事は多々有るけど・・・どうなるかな?)

 

しばし待っていると、赤い正に宝箱的な箱を抱えたジュンがフライの魔法で降りてきた。内心不安点の多さに嫌な気分を味わっているが、その顔を見る皆には悟られない。

だが、アンジェはジュンの行動に頭を悩ませるばかりだ。

 

「お待たせアンジェ。皆さんも待たせた様子で、すいません」

 

セバス達が返事をする前にアンジェは静かにジュンの持つ赤い箱を指さした。エモーション機能が有ればハテナマークを浮かべ不思議そうに首を少し傾げるジュン。何を意味しているのか分からない様子のジュンにアンジェは皆が聞こえる程の溜息をついた。

セバス達3人はアンジェの気苦労を察し、気の毒そうにアンジェを見つめる。

 

「パンドラボックスよ。貴女が持ってどうするの・・・」

 

「あぁ。けど、大切な物が入っているから」

 

「駄目よ」

 

アンジェの一言に、手荷物等を従者に持たせるのが上位者の行動であると思い出したジュンだが、大切な物を自身で運ぶ事を主張するも、アンジェは一刀両断にした。ジュンはどうしたものかと思い、ふとナーベラルと目が合った。

 

「なら、ナーベラルに持ってもらうよ。最終的にはモモンガさんに見てもらわないとダメだから」

 

「失礼ですが、中を検めさせて頂いても宜しいでしょうか?」

 

ジュンの主張に安全の為にも中身を確認しようと、不敬を覚悟してセバスが話に割り込んだ。アンジェは見せても良いと考えていたが、ジュンの答えは違った。

 

「セバスさん。駄目だよ。守護者がいる前で開けた方が皆も安心できるだろうし。それだけ大切な物が入ってるんだ。中身はモモンガさんには伝えてあるし、決して危険物では無いからさ」

 

首を横に振り、拒否を示した所かモモンガの名前を出してまで検査を拒否するジュンにセバスは不信感を覚えるも、その宝箱が何であるのか理解すれば、検査をしない方が良い。万が一危険物であれば、盾になる守護者がいる所で開けた方が良いと判断した。

 

「・・・畏まりました。では、私がお運びさせて頂きますが、宜しいですか?」

 

「うん。中身を見た時にビックリして固まらないでね」

 

「問題御座いません」

 

だが、万が一の事態に、第一の盾となるべきは己と判断したセバスは箱を受け取り、両手でそっと持つ。そこで、ナーベラルとルプスレギナはその箱が何なのか気付いた。

神器級(ゴッズ)アイテム。パンドラボックス。

世界級且探知に特化したモノや超級探知魔法以外では、蓋が閉じている状態では探知されない特性を持つ箱。一時ユグドラシル内において、パンドラボックスを利用したイベントが有った。仔細は彼女等が知る由もないが、希望と絶望が有ったらしい曰く付きのアイテムである。

 

「さて、そろそろお願いしますね」

 

「畏まりました。此方へどうぞ」

 

セバスが確り且大切にパンドラボックスを持っている事を確認したジュンは笑みを浮かべて案内を要求した。セバスは一礼してから先導し、5人はナザリック大地下墳墓へ入って行った。




オリジナルスキル・魔法紹介
セイント・スマイト<聖なる一撃>
第6階位 ハイ・クレリックの攻撃魔法。
クレリック系の最低限のダメソ。光弾を放つ。
消費が少なく威力もそこそこだが、アライトメントが中立以下の相手やアンデット系悪魔系には更にダメージ補正が有る。
ユグドラシルでは同レベル帯(レベル100)の悪魔系、アンデット系以外には牽制にもならない。アライトメントが極悪の相手には牽制程度にはなる。

セイントスマイト・ボイス<聖なる一咆>
セイント・スマイトを聖光の悪魔により強化・改変したモノ。基本性能は同じ。
消費を5倍に上げ、状態異常「怯えⅢ」を80%併発(光系弱点の相手では100%発揮。弱点を無効化している相手では同じく80%。装備や魔法・スキル等により多少は上下する)。
完全に牽制用のアクションスキル。声である為、一定距離内の聞こえる相手には必中属性を持つ。但し「難聴」「声系無効」等の無効スキル持ち・状態異常中には必中ではない。また、オブジェクト系の破壊効果が高く、ノックバック効果も有る。
部類的には第8階位相当。

ってな感じでお送りしました。少し修正かけて、次で会う事になります。重くなりすぎたからバッサリ切ったのwあと、次はやっとジュンが変身します。デヴィールw
次回の更新は遅くても月曜になると思います。

追記。チェニックやトーガは古代ローマの衣装です。
アスカ・ラン+天使(エンジェル)→アンジェ
不動光(漫画版にいる弟。不動明みたいな容姿)→野郎一人いてもなぁー→ライト(女の子です)
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