余りにも感情を吐露するアルベドの姿に皆唖然とせざるを得ない。ルプスレギナとナーベラルはセバスを見、セバスはその視線から本来の職務に復帰したいと考えていると判断し、頷いた。2人は一度皆に向かって一礼してからアンフィテアトルムを後にした。
アンジェは地面を殴り、粉砕し、粉塵を撒き散らすアルベドの姿を極力見ない様にして、自身の創造に係わった者が創り出した存在に目を向ける。問題無いと言えば無いのだが、胸に寂しさが、少しチクリとした痛みとなり奔る。
「デミウルゴスさん。モモンガ様は私がウルベルト様に聞いていた以上に男なの?随分とプレーボーイなのだけど」
「意外だが、そうなのかもしれないね」
対するデミウルゴスはナザリック外の者相手には実に珍しく、ナザリックの者を相手にするかの如き微笑みをもって答える。彼としてもアンジェは安易に傷付けて良い相手では無いと判断したのだ。それに何所か馬が合う様な雰囲気から更なる情報を引き出してから判断すれば良いと考えたのだ。例え、気に食わない天使の気配を漂わせる女だろうと。
「至高の御方であり、最後まで残りし慈悲深き君っ!何故あの女を!女を!」
「分が悪いとしか言わざるをありんせん」
正に悲嘆な叫びを上げているアルベドに溜息を混ぜながらも冷静に指摘するシャルティア。彼女の中ではモモンガの心中をジュンが一定以上を占めている可能性を受け止め、ジュンの反応からモモンガの好意に自覚が無いと判断したのだ。最後の抱き寄せた行為なぞ、己であればそのままモモンガに抱き着く自信が有り好意を自覚しているのならばあの様なチャンス、逃すはずも無い。
アルベドは白目を充血させ、深紅の眼球に黄金の瞳という異様な形相でシャルティアに詰め寄る。
「シャルティアっ!何を弱気な!」
「妻の座は諦めとりはありんせん!だがおんし、彼我の戦力は認識してくんなまし!」
アルベドの叱咤に、逆に冷静になるよう訴えるシャルティア。通常では間違いなく見られない状態である。アウラは冷静なシャルティアを珍しく思い、ふとジュンとシャルティアを比較してみれば、圧倒的戦力差が有る事に気付いた。
「確かに強敵みたいだよねー」
「お、お姉ちゃん」
シャルティアのある一点を見つめてつい言葉を洩らしたアウラを、その視線の先に気付き、殺気を放ちながらも睨みつけるシャルティア。アルベドはアウラの視線の先に気付いた為、余裕が出来たのか眼球の色が通常のモノとなり勝ち誇った表情を浮かべ鼻で笑い胸を張った。その際、空気が揺れる様に震えたとアウラとシャルティアは感じた。アルベドの重量感の有る2つの果実にシャルティアの殺気は更に強くなる。マーレは己の姉が思いっきり地雷を踏んだ雰囲気を感じ、静かに後ずさった。
コキュートスは考えていた。
人間に近い容姿の美醜は虫である彼には良く分からないが、ジュンの姿を見て正直に思った事を口にしたのだ。
「フム。確カニ美シイ御方デアリ、相応ノ実力ヲ御持チト見ル」
この一言は彼等の思考を一時中断させた。正に空気が凍る一言である。彼等が良く分かっているのだ。武人として生み出され。虫である彼が美醜について語る。これは、コキュートスですら美しいと思う相手である可能性を考慮に入れなければならないという、ある意味女性陣には驚愕の一言なのだ。
「コ、コキュートス。君は彼女が美しいと思ったのかい?」
「?何ヲ不思議ガル。アノ肉体ヲ見タダロウ。正ニアレハ戦ウ御体ダ」
一番に我に返ったのはやはりデミウルゴスだった。その問いに対しコキュートスはいつも冷静な同僚が珍しく驚愕している事に気付いてはいるが、何が原因なのか分からぬまま言葉を紡ぐ。
その一言にセバス以外が安堵の溜息をついた。特にデミウルゴスには珍しく、本心が籠ったモノである事に気付いたのはコキュートスとセバスである。デミウルゴス的には同僚がジュンを懸想するのは都合が悪いのだ。コキュートスに問題が有る訳では無いのだが、デミウルゴスはそれ以上の優良物件をジュンの御相手としてターゲットにし、想定しているのだから。
「・・・意外と愉快な方々なのね」
そんな守護者一同の行動を蚊帳の外で傍観していたアンジェの一言に気付いたのはセバスだけであり、本人的も溜息を着きたくなるのを抑えた。だが、これ以上付き合う訳にはいかないと判断しアンジェに近寄る。
「私はペストーニャに御三方の部屋を用意するよう指示を出して参ります。何か特別に用意すべき物は御座いますか?」
「いえ。特に無いのだけど、スカイ・スカルから色々と物品。主に素材系なのだけど運ぶ為の人手を貸して頂けるかしら?」
セバスの申し出にアンジェはその気遣いに感謝した。異種族には各種族毎に生活様式が異なり、同種族であっても少々異なる場合が有るのだ。
アンジェ的には問題である素材の存在が頭が痛かった。簡易的な鍛冶道具が有る作業部屋だけでなく其々の自室。通路にすら山積み状態なのだから。
「畏まりました。プレアデスよりユリ・アルファとソリュシャン・イプシロンをお貸しいたします」
「確かデュラハンとショゴス・・・成程。助かるわ」
セバスはどの様な状態かは知らないが、大抵の物品を問題なく運べる2人を候補に上げた。プレアデスの副リーダーであり、姉妹の長女の立ち位置にいるユリがいれば仔細の調整等を行うと判断して。アンジェは其々の種族特性から、有毒な物品であっても問題ない人選は非常に助かるのだ。ただ、アンジェが2人の種族まで知っているという事実にセバスは少し思案気な表情を見せた。
「では、詳しい内容は2人に直接お申し付け下さい」
「セバス!もしモモンガ様がお呼びとあらば即座に私に報告を!あぁっ、湯浴みが必要だわ!これ程埃を被ってしまっては失礼にっ!?」
セバスがモモンガの下に戻ろうとしているのを感じたアルベドはお逢いする口実作りにもそう言うが、自身の恰好を気付き、慌てる。先程嫉妬の矛先を地面にぶつけていた為、衣服は勿論の事、髪にも砂塵を被ってしまっているのだ。もっとも、第三者が見てもそれ程気になりはしない
程度なのだが。美人が少々汚れてもあまり気にならない。精々1億点の持ち点から10点引いた程度であり、美人は実に得である。
セバス的にはモモンガへの感情から情緒が不安定になっているアルベドが更に行動開始を遅延しないようにと口を開いた。
「アルベド様。このナザリックの為に御働きになり、その結果埃を被ってしまったのであれば、モモンガ様であればお喜びになるかと」
「そう?そうなのセバス!?男性の視点ではそうなのね?であれば・・・」
「詳しくはデミウルゴス様にお聞きなるのが宜しいかと。このナザリック随一の智謀をお借りするのが良いのでは無いかと思われます」
セバスの言葉に己の行動を利用し、如何に接近するかを考えるアルベド。だが、これ以上の遅延は後々に多大な問題になる可能性を感じたセバスはデミウルゴスを薦めた。気に入らない相手とは言え、ナザリックの為に行動し、間違いなく軌道修正するだろうと思っている。
「デミウルゴス!」
「まぁ待ちたまえ。私も過度に汚れた格好で無いならば良いと思うよ」
「そ、そう・・・」
まるで獲物を見つけた大蛇を思わせるアルベドの視線に、少し時間を稼ぐ意味も含めてセバスの言った事を保証するデミウルゴス。考え込むアルベドの様子にデミウルゴスがセバスを一瞥すれば小さく頷いているのが見えた。
「では皆さま。私はこれで」
「あぁセバス。彼女の事をお願いするよ」
「畏まりました。では・・・」
各守護者だけで無く、アンジェにも一礼するセバス。デミウルゴスは言葉に意味を込めた。問題は無いと思われる相手だが、家令の保証が無ければ守護者の立場上必要が有るとの判断である。了承したセバスの後ろ姿を見送りながら、アルベドの確信を得る為に自分に嗾けた事を少し腹立たしく思うデミウルゴスであった。
「フフッ。念には念をといった所かしら?」
「君には私が就くよ。良いかな?」
「もちろん。探っても何もないからね」
デミウルゴスの言った意味はアンジェは正確に捉えていた。故にデミウルゴスの言いようにも余裕を持って返す。
表面的には唯お世話をし、ナザリックの威を示し満足して頂ける御もてなしを行うという意味なのだが、何の事ではない。完全に信用していない証拠なのだ。絶対者であるモモンガの身に万が一が起きないようにし、尚且つ自然に振舞って貰おうという守護者達の心配りなのだ。率直に言えば監視である。
故にアンジェは内心彼等を敬う。自然に主人の守護と満足を第一に考え行動できる彼らを。だが同時に理解出来ない一面も有る事も知っている。
「しかし、シャルティア。何故君は未だに立ち上がらないのかね?」
「モモンガ様の凄い気配を受けて、少うし下着に問題がありんすの」
デミウルゴスが未だに跪いているシャルティアに聞けば、返って来た言葉にアルベド以外が溜息をつきたくなる。力が抜ける。呆れる。正にそのような事態である。
「くっ!分かってたことだけど貴女もっ!」
「ハ!彼我の戦力を理解できない干物は大人しくしとるが良いんすえ」
アルベドがジュンの件を通達してからシャルティアは彼我の戦力差(主に胸囲)について考えていたのだ。自身はそれ以外では自信が有る故に。だが実際に逢えばどうだ。戦力差(戦闘に関する内容とモモンガへの自然な誘惑)は想定以上であるが故に、押せば成ると考えているアルベドの忌々し気な視線が気分が良いモノに思えるのだ。
「何を言うの。ビッチがっ」
「先程から余裕がございやせんよ?大口ゴリラ」
「ハッ!ヤツメウナギの分際で!」
だが、そんな余裕が有るが故に発した一言が、吹き飛ばす。アルベドがシャルティアの真の姿に言及した罵声は一気に怒りを沸き起こすのだ。自然に両者共殺気を放ち始め、それぞれ深紫と深紅のオーラを立ち昇らせる。
「あぁ!?私の姿は至高の御方に作られたモノでありんすえ!」
「それはコッチも同じ事だとっ思うけどぉ!」
罵声と共に殺気とオーラがぶつかり合い、威風を巻き起こす。面倒ごとに発展した気配を察知したデミウルゴスは少し距離を置く事にした。
「アウラ。すまないが2人の事を頼んだよ。私は彼女と話が有るのでね」
「エスコートをお願いね。ミスター」
「光栄だよ。プリンセス」
「ちょっ!?」
さり気無く、紳士な態度でアンジェと目線を合わせれば、同じ考えのアンジェは自然と右手を差し出し、デミウルゴスはその手を取って移動を始めた。アウラは距離を置こうとする2人に押し付けられた感が有るのは自覚したが、文句を言う前に行動する者がいた。
「マッタク、何ガ原因ダカ分カラン」
「コキュートス!マーレまでっ!?」
コキュートスの溜息混じりな声と、己を一瞥するだけで、歩数の関係から少し駆け足をする弟の姿に嫌そうに振り返るアウラ。アルベドとシャルティアの罵声と怒声、何故か混ざる嬌声に頭痛を感じるのだった。
そんなアウラの様子を正確に予測しているデミウルゴスとアンジェだったが、それ以上に大切な事が有る為気にも留めない。デミウルゴス的には万が一色気も無いガチバトルに発展すれば止めるつもりは有るのだが。
「実際問題彼女とモモンガ様の仲はどうなのかね?」
「あら?意外な質問ね?」
十分距離を取り、デミウルゴスの発した言葉にアンジェは思わず面を食らった。
アンジェ的にはナザリックの安全の為に、簡単に己の戦闘スタイルや武装についての言及が有るだろうと考えていた為だ。デミウルゴスは自身に良く似た思考をするアンジェに意味深気に笑みを返す。
「今後のナザリックにおいては重要な問題なのだよ。個人的も興味深い内容でもあるしね」
「えっと?どうゆう事ですかぁ?」
デミウルゴスの野望が大いに占めるが、ナザリック的にも戦力増強が有るのだ。
良く分かってないマーレの様子に、悪魔的な欲求でこの何も知らない少年に大人の世界を知らせるべきかと思うが、同じナザリックに所属する者である。守らなければという思いが強い為、一時の迷いで終わる。少し首を傾げ、キョトンとした表情にアンジェは微笑ましさを感じていた。
「ふふ。さっきも話していたけど、万が一、モモンガ様がいなくなった際に忠誠を捧げる者が必要って意味よ」
「えっ?ジュン様にモモンガ様のお世継ぎを?」
故にアンジェがデミウルゴス言った事を少し暈して説明する。マーレ的には話の流れから、ジュンにモモンガの子を産んで欲しいのかと思い、デミウルゴスとアンジェの顔を交互に見た。困惑が有るものの、悪意や不快感は無いマーレの様子にデミウルゴスは笑みを深めるばかりだ。
「ソレハ早計デハナイカ?アルベド、シャルティア両名モ居ル上ニ不敬ナ考エデハ無イノカ?」
「確かにナザリックの者がモモンガ様のお子を身籠れば一番だが、事は早い方が良い。コキュートス。君的にもモモンガ様のご子息に忠誠を捧げたくは無いか?」
コキュートスは仁義や忠義を重視する武人である。順序が違う可能性を指摘するも、デミウルゴスの言葉に思い浮かぶのはモモンガの子をその四本の手で抱き上げる事だ。
ジュンが母親ならば少し気弱な印象を与えるも心優しく、ナザリックの者へ慈愛を分け与えるだろう。だが、敵に対しては苛烈であり、戸惑い無く力を振るうと考えた。
幼少期は遊び相手として、少年期は武術の指南役として、青年期には剣を授けられ、忠誠を誓う相手として・・・
「確カニ憧レル。私ヲ爺ト呼ビ、ソノ成長ヲ・・・爺ハ、爺ハ・・・」
「・・・愉快な方ね」
下顎をカチカチとスズメバチの警戒音に似た音を歓喜の意味で鳴らせ、自身の幻視した光景に夢遊病患者の如く少しふら付きながら歩くコキュートスにアンジェの心中は複雑である。マーレはそんなコキュートスが心配なのかついて行った。
予想外な程男性守護者達はジュンとモモンガのカップリングに好意的な様子だ。自身は創造された側だが、ジュンのポンコツな部分も良く知っている為、妹や娘の様に思っている所が有るのだ。娘が嫁に行く算段が本人の居ない所で進み、それを相手が最上級の優良物件の為止めない自身。実に難解である。
だが、ここまで来たら止められはしないだろう。事実アンジェを見るデミウルゴスは何所か期待している様子だ。
「ジュンとしては友人・親友といった感じなのでしょうね。ただ気になるのはモモンガ様について詳しいという事よ」
「どういうことかね?」
アンジェの言いようはデミウルゴスにも疑問でしかない。自身の主について仔細理解している。知っているというのは、男女の間柄では無く、友としての認識ならばごく自然なものであるからだ。
「アンデットは通常感情や意思が希薄。であるならばモモンガ様も希薄なのが妥当なのでしょうけど。わざわざ注意する程の激情家だと仰ったわ。アンデット『なのに』では無く、アンデット『でも』と。ある意味恐ろしい事じゃない?」
「・・・成程。そこ迄深くご理解なさるのか」
アンジェは自身の知るモノがそれだけでは無い気がしていたのだ。アンデットは生者を憎むモノ。不変の本能の様なモノに違いが有るというのは並々ならぬ思想を思わせるに足りるのだ。故にトーガの裏に有る本の存在を気に掛ける。デミウルゴスは己の知らないモモンガの一面に其れが本性に近いモノなのか、それとも感情に近いモノなのか計りかねていた。
「ここまで来る途中にジュンはモモンガ様がナザリックを、他の至高の御方々が遺した貴方たちを我が子の様に愛しているとも言っていたわ」
「身に余る光栄だよ。だが、そうならばあの質問は・・・」
「ジュンは真意を分かっているようだったけど、まさかとは思うけど、ね・・・」
智謀の者が同時に考える。可能性である筈なのだが、信じられないのだ。2人的にモモンガは他の至高の御方々に信頼と友愛を感じていると考えている。彼等から見た御方々もモモンガを信頼している。故に、そんな事が有りえるのだろうかと。
「至高の御方々がモモンガ様を裏切るなど、考えられませんがね」
「もしくは、貴方達が他の方々に就くとかの確認とか?」
デミウルゴスの否定するつもりで紡いだ言葉にアンジェが返す。忠誠心を疑われるようで少々不快に感じるデミウルゴスだが、納得もした。少し離れた位置での見解、思案ならではの答えであり理解も出来る。
「確かに。だが、幾ら自分の造物主とはいえモモンガ様だけが残られた。この事実は変わらないよ」
「・・・ジュンにも仕えたくない?」
故にデミウルゴスは余裕を持って答える。仮にウルベルトがナザリックへ帰還し、モモンガと仲違いしようとも己が仕えるのはモモンガなのだと。アンジェはそんなデミウルゴスに煽るつもりで言葉を紡いだ。可能性は低いが反応を見せるかと期待して。
「(今は)残念だがね」
「ソコが、ウルベルト様の面影なのかしら」
だが、デミウルゴスの笑顔に何か含みが有る事しかアンジェには理解できなかった。それが異様にウルベルトの面影を感じさせる。
デミウルゴスはアルベドとシャルティアの話し声に少し盗み見ると、普通に話している事に気付いた。また、アウラがふら付いている事から軌道修正、もしくは兎も角頑張ったと思え、内心申し訳なく思う。
「コキュートス。そろそろ戻ってきたまえ」
「実ニ・・・実ニ素晴ラシイ。アレコソ正ニ望ム光景ダ」
「お優しい方に育ちそうですから」
デミウルゴスが何所か陶酔気味のコキュートスの様子にそれと無く根回しをしようかと考えていると、マーレが意外にもコキュートスと同じくモモンガとジュンの子供について考えている様子に少し驚いた。
「おや。マーレもそう思うのかい?」
「はい。何だか分からないんですけど、何だかモモンガ様はジュン様を大切にしている気がして・・・それに、何だかジュン様が話されてるとき嬉しそうでした」
デミウルゴスはモモンガがジュンとの会話に何所か安寧を感じているのではと、安堵した。だが、アンジェは先のジュンの恰好を冷静に鑑みた。
「そ、そう・・・」
「であれば良いんだがね」
アンジェはそう言葉を詰まらせるしか無かった。自然に胸部や臀部を強調してアピールしている様子にしか思えなかった為だ。デミウルゴスの何所か思案する言葉を冷静になった結果、ハッキリと聞こえた2人が慌てて駆け寄って来た。アウラが面倒臭そうにトボトボ歩いてくるのが印象的である。
「デミウルゴス!まさかっ!あのヴィッチッにモモンガ様の御子を!?」
「本気でありんすか!?ナザリックは遊郭ではありんせんよ!」
アルベドとシャルティアの言いように思わず頭痛を感じ、眉間を揉み解すデミウルゴス。確かに先程戦闘形態へ移行する際服を脱いだが、何をどうやってそんな認識になるか彼は理解できなかった。
「何故脱ぐのが前提なのかね」
「ゴメン。私も含めて脱がないと本当の意味で全力出せないのよ」
少し呆れ気味なデミウルゴスにアンジェは申し訳無さそうにそう言うしか無かった。ある意味宿命じみた所が有る故に。
「ベルセルクって知ってる?」
アンジェが口にしたのはある職業レベルの名称だ。取得条件も中々面倒な部類であり、メリット・デメリットがハッキリ有るというのは守護者達は理解しているが、アインズ・ウール・ゴウンは異業種のギルドである。そもそも取得条件的に取得できる者が少ない為詳しい内容は41人もあまり知らないのだが、運営が用意したイベントで一部が逃げまどい大半のメンバーが大笑いした為に、守護者達も少しは理解している。
因みに逃げたのがたっち・みー。追跡者の先陣がウルベルト・アレイン・オードルであり、ウルベルトはイベントのMVPに輝いていたりする。
「聞いた事は有りますね。確か、装備を制限する事で強化されるモノでしたか」
「ついでに言うと、自己再生効果有りになるのよね。ジュンは魔法やスキルも使用できる数を制限する事で強化率も上げてるし」
「な、成程。では、あの姿は装備を制限した結果だと?」
唯の裸族では無いのだ。ベルセルク取得者達は。ただ、その効果を高める為に色々と工夫をしたのだ。
守護者達もアンジェの補足説明に納得の色を見せる。ジュンの恰好は力を高める為に余計なモノを省いた結果なのだと。
「指輪と頭、四肢以外は無しだからね・・・」
だが、その一言は余計である。要するに胴体・下半身は装備無しであると言っているのだから。
ユグドラシルでは課金により下着のビジュアルデータを変更することが出来た。多くの者はロールの為に色々弄った。褌、虎柄ビキニ、網タイツ等々・・・ジュンの場合は更なる課金で自動的に白いパンツから変身時に毛皮になるようにしていた。よって、それが現実になっている以上、変身を解けば裸になるのである。
「や、やはりその様な露出狂にはモモンガ様は相応しくありません!」
「ナザリックの絶対的支配者たるモモンガ様の妃が一人というのは変な話だと思うがね」
「デミウルゴス!?」
幾ら力の為とは言え、その様な恰好をする者は相応しくないと言い張るアルベド。だが、デミウルゴス的には中々合理的であり、あくまで戦闘時に限る事からそれ程問題には感じなかった。まさかの主張にアルベドは驚きを隠せない。
「落ち着きたまえ。正妃はナザリックの者が好ましいと思っているよ。だが、王となる子を補佐すべき側近に相応しい御子がいても良いだろう?」
「教育で上手く活かせる自信が有るのね」
「個人的にはジュン様の詳しい情報が欲しい所だがね」
守護者統括であるアルベドに変な疑いを持たれては面倒であるとデミウルゴスは理解している。
デミウルゴスは自身の野望の為、ナザリックの為に自論を述べる。教育に失敗すればナザリックを割る可能性は否定しがたいのは彼自身が良く分かっていた為だ。子供の教育は完全に正しいと言えるモノが無いと判断しているアンジェにはその自信の程が良く伝わって来た。
デミウルゴスが知るジュンの情報は少なく、何よりモモンガの自然な心配りから、その関係性を正確に判断した上で行動したいと考えているのだ。
ジュンを友人かそれ以上に見ているだろう最高の主人であるモモンガ。もしモモンガとジュンがそういう関係ならば、最終的に自身の全てを使い2人に御仕えし、幸せになって頂ける様務める事が出来るのだ。なんと甘美な事だろう。
ナザリックに対するデメリットは基本的には些細な物であり、最大のモノは正妃にアルベドを据え、モモンガの寵愛を適度に与えられるよう図れば解消され、様々なメリットのみが残ると考えている。何よりジュンが幸せを感じ、笑顔で有るのならばモモンガの心にある空虚さが癒されると考えれば心が躍るのだ。全てを疑う君は孤独であり孤高で有る。だが、ソレを理解されずに心が擦り切れる可能性を鑑みれば碌な事ではない。特にモモンガがアンデットが故に慈悲を無くし、唯狂気を振り向くだけの存在となる事をデミウルゴスは望んでいないのだから。
「それなら良い物が有るわ」
「こ、コレは・・・」
アンジェは良い機会であると判断し、空間に手を入れ、手早く物を人数分用意した。アンジェが取り出したモノに守護者各員は唖然とした。そして、唖然としている隙にアンジェは皆の手にソレを置いていく。
黒い羊皮紙の表紙であり金で4枠を補強した一冊の本を取り出した。表紙には薄紫でこの様に書かれている。
堕ちたる聖者の友愛 著ペロロンチーノ 協力 ウルベルト・アレイン・オードル
我が夢の礎の為に我が友の物語をここに記す。
書かれている内容はユグドラシルにおいて、ジュンの生い立ちやモモンガが死者になる前に出会い、スケルトンメイジになった後でも友好関係を続けた的な内容である。作成者と協力者の悪ふざけが有り、かなりアレな内容である。
ユグドラシル。アバター的に女と男(骨)である事から少し甘酸っぱいのは仕様であり、ペロロンのロマンが込められており、タブラも悪乗りして色々と口を出した結果・・・今執務室でモモンガとジュンが完全に無言・無表情となり読み進める程、ハッチャケた内容なのだ。
「持ってきて正解だったわね」
己が手に置かれたモノに皆静かに読みだした事に、アンジェは以前ジュンが誤って複製したのを有りがたく思っていた。そして、皆が読んでいる間に、ナザリックの今後の行動をクリスタルモニターを発動させ、静かに書き込んでいく。
意外と皆手早く読み終えた様だ。30分もしない内に本が一斉に閉じられる音をアンジェは耳にした。
「ちくしょう!」
「なるほど。モモンガ様と長い時を共有なさっているが故の理解かね。それにしても度し難い者達だったのだね」
アルベド的には敵は着実に事を進めていると感じ、デミウルゴスは不快な連中に対して、このアインズ・ウール・ゴウンが作られた裏には御方々の大いなる慈悲が有ったと零れ落ちかけた涙をそっとハンカチで拭う。
「やっぱり嫌い」
「我慢しないだめだよ」
アウラとマーレの姉弟はアウラが珍しく悪態をつき、それをマーレが窘めた。だが、アウラは知っている。この気弱で大人しい一見自身より女の子をしている弟が珍しく憤慨している事を。
「成程。モモンガ様ニトッテハ馴染ミ深イ御方ナノカ」
「難しいものでありんす。ですが、ペロロンチーノ様の夢とは正に素晴らしいものでありんすえ」
コキュートスは伝説の始まりを見たと、英雄の物語に憧れる少年の如く純粋に楽しんだ。また、英雄を様々な角度で支援したのがジュンであると認識し、シャルティアは表紙に書かれた一文から己の創造主は歴史家になろうとしていたのか。素晴らしく仔細に残された資料を基に必ずモモンガの心を射止めると志を新たにしていた。
そんな守護者の様子にクリスタルモニターを7つに複製し、其々の守護者の前へ移動させるアンジェ。
「今後の計画の概要だけど、コレで良かったかしら?」
「フム。やはり君は有能なようだ」
「貴方に匹敵する頭脳を持つように生み出されたのだから」
今後の予定や必要となると予測できるモノを仔細纏めて書かれており、デミウルゴスは満足げに頷いた。そして、自身も少し思案する事にした。特に気になった点が有り、その詳細を練る必要性を認めている。
「いえ。攻撃に関しては負けているかもしれないけど、防御は負けていない筈・・・それに裁縫や料理、掃除等家事に関する事はどうかしら?いえ、モモンガ様はアンデット、お食事は取れない。スケルトン系列の感覚で楽しめるのは目や鼻、耳、触覚。であればソレ等を刺激する・・・駄目ね。私は家政婦では無いのよ!?何か、そう何か良い手が有る。やはり速攻で攻めなければっ!」
アルベドはブツブツと呟きながらアンジェの作った資料を精査している。口走っている内容から真面目に精査していない様に見えるのだが、実際は確認できており、自分の気になった事等を注釈として記入している。守護者統括の立場にいるのは伊達ではないのだ。
「お姉ちゃん。僕何だか寒い」
「今度ロングスカートでも履いたら?」
だが、変な雰囲気でも出しているのだろうか。マーレが寒気を感じた様だ。アウラは時間が有ればぶくぶく茶釜が自身に用意したロングスカートを貸すことにする。自身が身に着けるのは似合わないと感じてはいるが、折角用意して貰った物。例え弟でもあげる訳にはいかないのだ。
「デミウルゴス。スクロールの材料でありんすがどうするでありんすか?」
「何事も検証が重要だからね。ジュン様はお気になさるかもしれないが、一番初めの検証対象は決まったよ」
アンジェは消耗品の補充の急務性を説いており、その一番に必要となる物としてスクロールが書かれていた。ユグドラシルの物品が補充できない場合についてもマニュアルの様に記されている。デミウルゴス的には仕事を楽しみたいと考えている為、過去ウルベルトが洩らした内容から材料に適している可能性が高いモノを、素材となる人皮を『羊の皮』として報告する気でいるのだ。
「アンジェ殿。私ノ管轄下デコノ様ナ能力ヲ持ツモノガ居ルノダガ」
「8本足・・・ステータス的にはどうなの?その知能は?」
コキュートスは軍事以外ではあまり頭が働かない自覚が有り、個人的に情報の精査や情報を扱うのに適していると思われる部下を四苦八苦しながらも表示させようとするも、上手くいかない為アンジェが途中から表示させ、詳細を聞こうとする。
こうして、各々の守護者の情報共有をすませ、手が止まった者が多々いるのをデミウルゴスが確認した。
「さて、アルベド。そろそろ良いかね?」
「ええ。では、始めましょう」
デミウルゴスの言葉に、凛々しく答えるアルベド。
デミウルゴスとアンジェはその状態を上手くキープ出来ればモモンガの寵愛を受けるのも難しくないだろうと思う。
そう思われているとは知らず、アルベドの頭はフル回転する。説明と指示している凛々しい顔と声の裏は結局のところピンクなのだ。
(あの女が創った者。この者がこれ程正確な判断が出来るという事は、やはりあの女は至高の御方々と同等か、それ以上の実力を秘めているという事で間違いないわね。デミウルゴスはあの女もモモンガ様の妃にしたいようね。必要とあらば考えるけど、今の段階では邪魔でしかない。けど、モモンガ様的にもいた方が良い。難しい。難しいわ。それよりも、女として、サキュバスとして始めに寵愛を受けるのは私よ!っと仕事の前に湯浴みをしなきゃ)
そんなアルベドの姿を迎賓席から見る半透明のタブラ。激しくその身をプルプル震わせ、蛸に似た頭部を抱え込んでいる事は誰も知らない事だ。
ベルセルク(職業レベル)ゲーム内の通称:ストリップマン
取得条件(スケルトン等無効化系耐性スキルを多く持つ異業種は取得不可)
1.前衛職攻撃系レベル10以上・HP・物理攻撃のステータスを一定以上を有す。
2.PvP・GvGの合計勝利数1000以上。撃破数5000以上(敗北時・被撃破時にはその分減少する)。
概説
・スキル:
・精神系状態異状、狂気・混乱弱化 怯え・恐怖耐性小 がスキル:
・スキル:
・スキル:
・クールタイムの緩和に課金アイテムは使用可能。
ゲーム時の使用感等
取得条件の割に、通常では旨味が少ない。だが、装備出来る武器数(最大5)を課金して増やしていると中々侮れない。使用できる武器の種類も必要となるが最低でも5パーセント増加できる事からステータス廚をはじめ異形種狩りを推進させた職業レベルである。実用性等を考慮すれば精々7%が限界。回復値は増加値の50分の1であり、凶悪である。
取得するモノが只のステータス廚等では無用な長物になる。これは装備を外すorしていない(武器は装備を外す必要が有る)事でステータスを上げる為である。素で多くの無効化系耐性スキルを得る事が出来る異業種は取得できない事から、原則状態異状攻撃に弱くなり、装備を除いた分だけ弱くなる為である。ウェポンマスター等多くの武装が出来る職業レベルと相性が一見良さそうに思えるが、実際はあまり変わらない。
モンク等の無手がメインであり武器がサブというビルドをしているプレイヤーには人気であり、彼等の取得しているキャラが一時猛威を振るった。
某プレイヤー以外に、狂気的ビルドをしたプレイヤー達により通称がストリップマンになってしまった。候補にはクロス・アウト。たいへん結構!。マスクマンw。等が有ったある意味不遇な職業レベルである。この異名が広がり、取得者は変〇と認識され異業種狩りが随分減ったのはある意味不幸中の幸いと思いたい。
ユグドラシル最盛期において、ベルセルク取得者の有志により『嫉妬する者たちのマスク』と下着データを褌等にした状態で某日の数日後
個人的な感想ですが、ネタビルドやロールビルドがガチビルドを軽快に倒しそうな気がするユグドラシルwwwついでですが、ジュンの強化値ですが、MAX14%です。内訳としては武器5%(ロングワンド、ショートワンド、ライトメイス、ヘビーメイス、短剣)防具4%(胴、マント系、腰、下半身)その他合計4%(アクセサリ系、魔法・スキル等)+1%(
オリジナル職業レベルベルセルクに関しての説明はこんなもんでw他にナニが居たのか分かりやすいかな?あ、たいへん結構な方は下着を肌色に変えただけです。ジャ〇プ系とガン〇ンも実はかなり強いって設定ですw
あと、最後なんだか物足りなかったのでタブラさんにご登場して頂きましたwD.B.さんありがとうございます。何か物足りない気がしてならなかったんですよー
次回の更新ですが、月曜9/21になると思います。皆大好き誤発注(笑)