一応抑えたバージョンなのですがね・・・
あと、アルベドの出番・・・(´・ω・`)
書類の奔流が落ちつきを見せた頃、モモンガはジュンを伴いアンフィテアトルムまで転移した。ナーベラルとルプスレギナには行先を伝えており、
マーレは地表にて作業の下準備を行っており、アウラ1人が様々なモンスターに指示を出していた。地表の更なる捜索を行うために部隊編成を行っているのだ。アウラがモモンガ達が転移して来た事に気付き、即座に走り寄り、一礼した。
「如何されましたか。モモンガ様。何かご用命ですか?」
「うむ。少し試したい事が有ってな。」
モモンガの機嫌が良さそうな様子にアウラは子供らしい笑みを浮かべる。そして、モモンガの三歩後ろに付き添い、微笑みを浮かべるジュンを一瞥した。ぶくぶく茶釜を始め、アインズ・ウール・ゴウンの女子メンバーが悪乗りで色々ジュンを構った事が有ったのだ。
マーレや己の製作にも色々関与したとぶくぶく茶釜がやまいこと話していたのを聴いていたアウラは、モモンガの機嫌が良い要因がジュンに有ると思っている。
モモンガはアウラがジュンに対して何か含みが有るのは見て取れたが、取り合えず実験を行う為、
アウラはモモンガが淡い紅い光を纏った事から、純粋に子供らしくワクワクと好奇心から楽しみにし、キラキラした瞳で見ている。その様子にジュンは
「え!?モモンガ様、ですよね?」
「そうだアウラ。何所か変か?」
光が収まり、アウラは見た事が無い短髪で黒髪の、人間の男性がモモンガの衣服を纏っている事に驚愕した。
そして、おずおずと自身無さ気に問いかければ、主であるモモンガの声に何所か安堵した様子である。モモンガはそんなアウラの様子に方眉を上げ疑問を覚えた。己の顔つきが何か変なのだろうかと。
「い、いえ。ですがその御姿はどうなさいました?」
「なに。
歯切れが悪い返答のアウラだが驚いたのはモモンガが肉を纏った事と、何故『人間』の姿を選び、あまり見栄えが良く無く厳つい印象を与える顔を選んだかの3点である。ペロロンチーノが書いた本では、生前の姿はあまり優れた容姿では無いと理解しているので、この顔こそが生前の顔なのかとも思う。
だがそんな自身の心の機敏よりも、アウラから見て長い時の流れの中忘れていた行為を、純粋に食事を楽しんだと言わんばかりのモモンガの様子に、機嫌が良い要因が分かり安心した。再びシャルティアとアルベドの間を取り持つのは勘弁願いたいのだから。
「色々と試したい事が有るのだ、良いか?」
「はい!良いも何も、ナザリック地下大墳墓は全てモモンガ様の物!お付き合いさせて下さい!」
「頼むぞ。アウラ」
故に元気良く返事をするアウラ。モモンガの喜びは己の喜びと言わんばかりだ。
モモンガはそんなアウラの様子にそっと、その頭を撫でた。まるで絹糸の様に柔らかで手触りが良い感触に、モモンガは触覚は元の姿よりも強化されていると感じた。
一方のアウラは撫でられた事に驚きはするも、己の頭で感じる暖かな感覚が気持ち良くまるで猫の様に目を細め、照れてた笑顔を見せた。そんなアウラにモモンガも小さく口角を上げて笑う。ジュンはまるで出張から帰ってきた父を出迎えた娘とは、こんな雰囲気なのだろうかと思った。
「まるで親子みたい」
「子供か。今は考えられんな」
ジュンの一言に、モモンガは笑みを消してジュンに向き合った。
その表情は肉と皮が有る人の顔であり表情もハッキリと分かるだけに、鋭い視線と苦虫を噛みしめている様な岩の如き無表情はソレだけで威圧感を伴う。アウラはモモンガが後継者について考えていないのか分からないが、大人しくジュンとモモンガの会話を聴いておいた方が得と思い黙る。
「えっ?どうしてですか?」
「そもそも、この肉体にそういう機能が有るか分からん」
ジュンの純粋な疑問の声にモモンガは己の体を見ながらそう答える。
現在、肉を纏ってはいるが元は骸骨なのだ。現在の状態で脈が有るのは感じてはいるが、時間制限も有り、生理現象の有無は自覚は無く、気候も温かいと思わなければ寒いとも思わない。余りにも奇妙な話でもある。
「それにだ。現状が落ち着かない以上、子供が原因で失態を犯すのは愚策というものだ。子が無事に成長して、気に病む可能性も捨てきれん」
「・・・あれ?NPC創造の余りレベルは無いの?」
「私の分は、パンドラズ・アクターと守護者クラスの分量を残し、全て仲間達へ回したからな」
現状は子供を育てる環境に無い。そう宣言しているに等しいモモンガの言葉にジュンは納得しかけるが、ソレが全てでは無いとジュンは思う。何故かモモンガが己を視界に入れ、その視線からかは不明だが背筋が寒いと感じるのだ。その為、ジュンは会話の方向性を変える事にした。あえて少し考える様な素振りを見せて、感じた悪寒を勘違いと己に言い聞かせる様に。
原則、どんな最弱ギルドでも初めに700レベル分のNPCを作れる権利が与えられる。そこからメンバー加入分や、敵対ギルドの壊滅、課金等の方法で保有レベルを増やせるのだ。
ジュンはナザリック地下大墳墓はNPC創造限界に達していると思っていただけに、純粋に驚いた顔をした。だが心の中で、モモンガが創れるのは1人では無い気もしていたのだが。
アウラもてっきり至高の方々は既に、仲間を御創りにならないつもりだと思っていただけに、創れるのに制限が有ると知り驚愕した。
「ジュン。お前は最低でも守護者クラスを5人分創れる筈だが、どうだ?」
「仕様が変わって無ければだけど、少しは敵対ギルドも落としたから・・・6人分は行ける筈」
ジュンの返答はウソである。実際はあと7人は創れる筈だと思っている。そして、稼働してはいないが既に1人は作成済みなのだ。
モモンガはジュンのウソにも気づいてはいるが、あえてソレは気付いていない様に振舞う。
2人は同時に思う。全てを語っていないと。だがソレは追及するものではなく、時が来れば話すだろうという確信も持っている。ジュンは作ったNPCは己に忠誠心を持っているかどうか不安に思った。
アウラの目には、モモンガとジュンは純粋に創るか否かを話し合っている様にしか思えず、デミウルゴスの言うモモンガの後継は実際に子供を作るのではなく、守護者級の者を子供として育てるか否かを迷っているように思えた。
「子供よりも部下になってしまうかな?けど、ユグドラシルの記憶は無いだろうし・・・」
「教育でどうにかなるか?」
ジュンは自身の不安を解消すべく少し暈しながら述べた。モモンガは純粋に解決策を探るべく疑問という形で述べる。暗に、ジュンが既に1体作成していると勘づきながら。
「教養が有るのが、アルベド、デミウルゴス、セバス、アンジェ、司書長・・・あとパンドラズ・アクター」
ジュンは教養が有りそうな者達を上げていく。最後の者は申し訳無さそうに付け加えた。設定の概要は知っているが、実際に動き出したら面倒そうだとも思いながら。モモンガは黒歴史1号をデミウルゴス級の智謀の者にしたのを後悔している。どの様な教育を行うのか全く予想が付かないからだ。
「・・・セバスや、アンジェくらいか?他は趣味趣向が過ぎる可能性が有る」
「武力なら、皆十分なんだろうけど・・・」
モモンガはパンドラズ・アクターを始め、ウルベルトが己の悪の美学を詰め込んだデミウルゴスと、守護者統括であるアルベドを含めて除外した。心労は要らないのだから。また、教育に関して挙げた2人は
ジュン的には単に除外されたのは職務の関係で忙しくなる為だと思っている。パンドラズ・アクター以外は。
「あ、あの!そろそろ実験を始めませんか?」
アウラはココに来てジュンとモモンガの思考を元の検証を行う事に戻すべく発言した。これ以上2人がこの話題で相談し、結論を出せば非常に面倒な事になると判断して。思考を遮った事に叱咤されるかもしれないと思い、目を瞑って肩をすくめて衝撃に備える。
だが、2人はまるで叱られそうになった子供の様子であるアウラに小さく笑みを漏らした。
「そうだったな。では記録は頼むぞ」
故に、モモンガは何度かアウラの頭を軽く撫で、ジュンにそう言うのだった。アウラは上手く地雷を回避し、安堵したと言わんばかりの表情を見せた。
モモンガ初めに行ったのは自身が傷つくレベルである
次に耐性の問題だ。スケルトン系列には多くの無効スキルがある。昨日と同じ様に検証した結果、耐性的には元と略同じ事が分かる。睡眠に関して、少々眠気的なモノを感じなくも無い事から少々耐性が劣化しているようだ。
次に、一端効果をきり、剣を振るう。すると、剣は普通に手から落ちた事からゲームと同じく所持していない為振るえないと判断し、次に
「奇妙なモノだ」
モモンガは、まるでココだけはゲームの法則が生きている様に思え、疑念が生まれる。生きているとしか思えないNPC達と比べ、この異様にゲームを思わせる法則は何なのだと。
だが、愚痴るのは後にでも出来るのだ。故に今度は
するとどうした事だろうか。鎧を着ている感覚も、剣を握る感覚も、少し変わった気がした。軽く肩や首を回し、剣を持った腕を上下してみる。
「どうしたんですか?」
「
ジュンの疑問の声にモモンガはそう答えながら、歩いたりして先程の感覚の違いを述べる。アウラはそんなモモンガの様子に、何故そもそも剣を使っているのか、今更だが疑問に思った。
「モモンガ様。何故剣をお使いになっているのですか?」
「そもそも私は前衛職を持ってはいない。このアイテムより前衛職を手に入れればどうなるか・・・」
アウラの疑問の声にモモンガはそう答えながら剣を振るった。
先程とは動きのキレが違う。速度が違う。暴風が吹き荒れ砂塵が舞う。ジュンとアウラの髪を大きく靡かせその違いを見せつけた。先程とは格段の差が有る威力にアウラは疑問等吹き飛び、唯々唖然とするばかりだ。
「成程。下位の前衛職でこの違いなら、魔法職を入れればかなりの強化になりますね」
「問題は、入るモノによるがな」
2人の共通認識として、上位の職業が入り、十分な戦闘時間を確保出来るなら長所を伸ばすか、短所を補えるか選べると判断する。また入れられない職業レベル・種族レベル等も有る筈だと思うが、時間的に書類が溜っている筈だと思う。
アウラは2人の何でも無いと言わんばかりの言動に内心複雑な気分でもある。更なる力を得たモモンガを称える気持ちと、忠誠心を示す機会が有るのか疑問に気持ちが鬩ぎ合うのだ。
「アウラよ。この事は一先ず秘密で頼むぞ。良く実験に付き合ってくれた」
「はい!モモンガ様!」
モモンガは骸骨の魔法使いであり、豪華なアカデミックガウンに似たローブ姿である元の姿に戻し、アウラの頭を再び撫でた。アウラは先程の感覚と今の感覚、今の自身の頭を撫でる手は冷たいが、心が暖かくなるのは同じだと思い先程と遜色も無い笑顔を見せる。
アウラの様子に満足したのか、モモンガはジュンを伴い執務室へ転移した。残されたアウラは気持ちを切り替えるべく、軽く両頬を叩き元の仕事へ戻るのだった。
2人であれば効率が良いのだろう。書類仕事は順調であり次から次へと濁流の様にやって来る大量の書類。その全ての決裁を終らせた。
異様に決裁が早い事にアルベドが一旦確認ついでに報告をしに来たのだが、結果は歯軋りを我慢する結果となった。ジュンはモモンガの右側に立ち、無言で書類の手渡しを行っており、アルベドに信頼感と連係を見せつける形になったのだから。
「モモンガさん。時間も出来ましたし、見回りついでに空を見に行きませんか?」
ジュンは時計を見て時刻が既に深夜の時間である為、己が見た感嘆に値する夜空をモモンガに見てもらいたく思ったのだ。モモンガは外に対して不安を感じない訳では無いが、息抜きに外出する事に魅力を感じた。
「私達と分かりにくい姿で行く必要が有りますね」
「そうですね。変に遅らすと不安になりますし」
だが、妙に警戒網等の作成が同期していないように思えたのだ。その為、一見己等だと分からない方が良いと判断し、廊下に控えるナーベラルへ
『嫉妬、強欲、憤怒・・・でしたっけ?』
『えぇ。デミウルゴスの親衛隊ですが、ああ。今地表部はデミウルゴスが管理してましたか』
カラスに似た頭部を持ったボンテージ姿の女悪魔、角等が無ければ一見美男子と思う男性型の悪魔に、悪魔と想像すれば正にコレ!と言わんばかりの悪魔。其々レベル的にも高い者達である。本来であればこんな入口に門番として立つ者達では無いからだ。
デミウルゴスの親衛隊である三魔将は困惑していた。明らかに漆黒の戦士はナザリックの者。それも最上位の者であると感じていたのだが、彼の御人は鎧を着る戦士ではなく、魔法詠唱者だ。また供にしている純白のローブを纏った者はナザリックの者では無い。余りにもチグハグに思え、つい観察してしまった。
ジュンが
「これはモモンガ様。供を連れずにジュン様と御2人で如何なされましたか。それに、その御召し物・・・」
「何、無駄に敬意を示せば仕事に支障が出るだろう」
デミウルゴスは一目でモモンガとジュンである事を察し跪く。三魔将もデミウルゴスが跪く事から、この漆黒の戦士と思わしき者が己等が仕える者であると知り、デミウルゴスに習い跪いた。そして純白のローブを纏っている者こそ、ある意味ナザリックの重要機密になる可能性が有る者だと知った。
デミウルゴスの疑問にモモンガが何でも無い様に答える。その姿にジュンはモモンガの切り替え具合から何度目かは分から無いが、本当にヒラの営業マンだったのか懐疑的だ。
「正に支配者に相応しきご配慮と存じますが、例えジュン様とデートを兼ねていると致しましても、このデミウルゴス。護衛をお付けになられないのは見過ごす事は出来ません」
デミウルゴスはモモンガが現状の進展具合を極秘に確認したいと考え、またシモベ達の仕事がこれ以上遅延しない様にとの配慮であると感じた。ジュンを供にしている事から気分転換の散歩も兼ねている、いや、デートも兼ねているのだと判断したが、最上位の2人がお忍びで外出しようとしても、周辺の安全確認が万全で無い以上、護衛も無しに外出させる等彼の矜恃が許さない。
((ちょ!?))
2人は心の中で同時に驚愕した。思わず口を開けてしまうが、モモンガの顔はフルフェイスのヘルムに隠されている為伺う事が出来ない。デミウルゴスはジュンの口が開いているのをフードの影から確認できた為、内心邪魔する事になり申し訳なく思う。
「ふむ。お前が来ても問題無いか?」
「はい。私の我儘を聞き入れて頂き、誠にありがとうございます」
モモンガはデミウルゴスの主張に、余計な供を沢山連れなくて良い口実になると判断し、手早く済ませる為に確認を取った。
デミウルゴスはアンジェの案内の下、アルベドと共にスカイ・スカルの視察を行うべく待っていたのだが、視察よりもモモンガ達の護衛の方が優先度は高い。と言い訳してついて行く事にした。
モモンガが歩き出し、ジュンが慌ててついて行くのを尻目に立ち上がり、三魔将に急務が出来たとアルベドに伝える様に命じ、紳士然とした歩調で優雅に2人の後に続いた。
『モモンガさん!デ、デートって、何で訂正しないんですか!?』
『いや、そう判断するなら変に沢山連れないで良いかな?と思いまして』
『だとしても!』
ジュンは
ジュンが一層抗議の声を上げようとするが、丁度外に出た。
『・・・確かに素晴らしいですね』
モモンガは感嘆した。ヘルムのスリットから見える満点の星空。手が届きそうな様で届かない。そう思わせる煌めきをもっと近くで見たいと思った。故に、アイテムボックスから、翼を模ったネックレスを取り出し、己の首に掛けた。
『誤魔化されてあげます・・・って!何で!?』
『いや、デートっぽいでしょう?』
美しい夜空に感動している様子のモモンガにジュンは仕方ないと感じた。
ふと後ろを見ればデミウルゴスに、何所か機嫌良さそうに見られている事に気付いた。驚愕したのはソレを問う前にモモンガが行動した為だ。昨日もされた横抱き。お姫様抱っこである。モモンガはその姿のまま、ネックレスの力で
お姫様抱っこで夜間飛行、確かにデートっぽいとジュンは思いながら、モモンガのノリの良さか、好奇心だかに小さく笑った。
2人がそんな姿勢で飛ぶ姿にデミウルゴスは、ナザリックの明日は明るいと思いながら自身も飛ぶべく、蛙に似た頭部と三つの爪が特徴の翼が特徴的である半悪魔形態となり、2人の後を追う。モモンガは遊覧も目的なのか、それ程速度を出していない為あえてゆっくりと飛ぶのだった。
「ブループラネットさんに見せたいですね。星の明かりだけで全てが見えるかの・・・ようだな」
「確かに。ブループラネットさんが居たら、何て形容するのでしょうね・・・」
雲を突き抜け、モモンガはヘルムを投げ捨て、魔力の塵となり消えて行くヘルム等気にせず、美しい夜空と今にも落ちてきそうな満月、雲に少々覆われているが、月と星の明かりだけで隅々まで見渡せそうな緑の大地に言葉も無かった。
暫く見つめており、かつての仲間の言葉通りだとジュンに言おうとすれば、デミウルゴスが近くにいた為口調に気を付ける。ジュンは気付いていないのあろう。ただ、美しい自然に、朝日の様な暖かな笑みをモモンガに見せた。
「宝石箱、と言えば陳腐に聞こえてしまう。実に素晴らしい」
「万華鏡とかですか?」
モモンガはジュンの問いに、適当に答えながら、「その笑顔が大地よりも、夜空よりも美しい」と言いそうになったのを恥ずかしく思う。
モモンガの内心に気付いていないジュンは小さく笑い、モモンガも釣られる様に笑った。
「モモンガ様がお望みとあらば、ナザリックの全軍を持って、手に入れて参ります」
「フッ・・・この世界がどの様なモノと分からぬ現状でか?面白い事を言う」
2人の仲むつまじい様子にデミウルゴスは、蛙にみたいな大きな目を細め、笑みを漏らす。2人の笑い声が収まったのを良い切欠として口を開いた。記念になる良い行事となると思いながら。
モモンガはデミウルゴスの言葉に気が早いと思いながらも、好奇心を刺激された。
「だが、そうだな・・・世界征服なんて面白いかもしれないな」
「ぉぉっ!」
モモンガの言葉にデミウルゴスは小さく感嘆の声をあげた。ナザリックの者達がモモンガの手足として動く未来は甘美なモノであり、己等の忠誠心から世界を献上出来ると思えば、歓喜が身を支配する。
モモンガが冗談のつもりで言った事とは欠片も思っていない。
「どうせなら、って、ちょっと待って下さい」
ジュンもモモンガの冗談に乗ろうとしたのだが、アンジェから
『ジュン。ナザリックから10キロ程離れた位置なんだけど、何かが燃えてる黒煙が有るみたいなんだけど、どうする?』
『行くよ』
アンジェの言葉は、上手く行けば実になる内容だった。その為、モモンガの顔を見た。先程までの穏やかな様子で無い事から、真面目な話だとモモンガは察す。
「モモンガさん。人がいるかもしれないし、情報を手に入れるチャンスだと思うので行きます」
「待て!」
直ぐにでも行動すべく装備の指輪の効果で裸になるジュンに、モモンガは制止の声を上げた。未知の世界に住む相手とのファーストコンタクトになる可能性が高いのだ。一人で行かせる等、モモンガの選択肢に無かった。決して色々と観察する為に制止したのではない。
「デミウルゴス。影から監視・護衛等を出来る者を5体程追わせろ。今すぐだ」
「畏まりました。モモンガ様」
デミウルゴスの配下に適した能力を持つ者がいると把握していたが故の言葉である。モモンガが求めるのは隠密性に優れ、ジュンの手軽な駒となる者であると判断したデミウルゴスは即座に
モモンガがジュンの行動に安全策を付け加えた事に、ジュンは笑みをもらしモモンガの腕からその身を投げ、即座に戦闘形態となり大きな翼でモモンガと視線を合わせる位置へ飛ぶ。
「ありがとうモモンガさん。アンジェも連れて行くから心配しないで」
変身前とは少し違った勝気だが優し気な笑みと言葉を残し、アンジェの
モモンガとデミウルゴスはその幾何学的軌道を残し、あっという間に見えなくなったジュンの後ろ姿を見ていた。
紅きマントが気流の関係からか靡く姿は、黄金で装飾された漆黒の
「少し聞きたい」
「何でございますか?」
この時、モモンガは無意識だが口を開いた。先程迄ジュンと話していたような穏やかな声ではない主人の声に、デミウルゴスは気を引き締める。
実際にモモンガの内心は少数で行かせた事に関する心配と、そのまま己の手が届かない場所まで飛び去ってしまうような思いがごちゃ混ぜになり、ある感情を抱かせていた。だが、モモンガ自身その感情の名は知らない。
「鳥は、自由に飛ぶからこそ美しい。野花は気に入ったからと手折れば2、3日で枯れる。では、如何するべきだと思うか?」
「広大な土地を御持ちであれば、その土地を自由に飛ばす事も可能でしょう。野花であれば、土ごと植え変えれば宜しいかと」
無意識なのだろう。右掌を何かを掴む様にジュンが飛び去った方向へ向け話すモモンガに、デミウルゴスは言葉に気をつけながらモモンガの答えになるべく述べる。下手な言葉を言えば激しい叱咤を受けるのを直感的に感じて。
モモンガはデミウルゴスの言葉に、右掌を自身の顔に近づけ魔力でヘルムを形成しながら振り返った。
「唯の土地では心持たないな。鳥が気に入る様にせねば。土壌の差が有り、養分が多すぎても野花は枯れる」
デミウルゴスには、ヘルムのスリットから爛々と深紅の鬼灯を輝かせるモモンガから凄まじい執念を感じた。並々ならぬ感情であり、ソレが抑制されていない様子である事が恐ろしくも喜ばしい。暗に言っているのだ。翼を折る事や、凍結させる等の手段で手元に置きたく無いと。
「特性の檻を作らねばならんな」
モモンガの小さな呟きは、デミウルゴスには心の底まで届く至言であるように思えた。激しく隆起する大地を見下ろしながら降下する主に続く。
途中アンジェと合流したジュンがソコに着いた時、全ては終わっていた。
崩された煉瓦に、未だ轟々と燃え盛る民家。激しく楽しんだ痕跡が転がっていた。何かが焼ける匂いに鉄の匂いや海鮮物が腐った臭いが混ざり合い、酷く気持ち悪い。土は赤や白といった色にまみれていた。
「コレはっ・・・」
「何が有ったのかしら。野盗やモンスターでは無いようだけど」
ただ無頼に扱われた村娘に、縛られたまま首の無い男の死体。捨てられたと表現すべき物がその壮絶さを物語り、ジュンは思わず絶句した。悪意を感じる所業。まるで人を人とも思わぬ行為の痕跡しか見て取れぬ。
アンジェの冷静な観察眼から使われたのは剣である事と、小麦が燃える匂いから食料が燃やされたのをジュンは感じた。
「疫病でもないし、宗教的な問題でも無いみたい」
ジュンは心が強制的に落ち着かせられる感覚を味わいながら、息が有る者を探した。
特徴的な宗教的シンボルも無く、村娘達の白く悲惨な姿から疫病でも無い。赤ん坊の首を抱いた妙齢の女性は慟哭したままこと切れたのだろう。膝立ちのまま、今にも叫び声が聞こえてきそうだ。
「もう少し、早く来れたら助けられたのかな?」
老若男女関係なしに、ただ只管殺戮と快楽を求めた様な壮絶さはジュンの心に火を灯す。悲しそうな表情から感情が抜け落ちていく。
冷静な思考が囁く。かつて、今孔明と称えられたアインズ・ウール・ゴウンのぷにっと萌はこう言っていた。『殺戮には2種類有る。報復か、挑発か』だと。
故に現状から推察するに、この様な辺境と思わせるような土地で、100名程の農民を襲う理由は明らかに後者だ。
「餌かな?」
「でしょうね」
鋭い視線であり無表情になったジュンに、アンジェは簡潔に話す。アンジェは感じていた。長らく対人戦を行っていなかった主が、久方ぶりに人族に対し、否、この惨状を生み出した者に激怒していると。ジュンの中で何かが回り、カチリと音を立てた。
(許せねぇな。あぁ。だが、まだ早い・・・)
怒りは思考を鈍化させる。故にジュンは心に貯めこむ。怒りに闘争心が、破壊欲が騒めき、全身に力が漲るも、まだ早いと自分に言い聞かせ、抑え込み人の姿になる。口調が男のモノに戻っている等気付きようがない。
そして、優し気にこと切れた子供の瞼をそっと閉じさせた。
「蘇生は、無理なのは理解しているわね?」
「勿論だ。だが、少しくらい救いは有っても良いだろう?」
ユグドラシルにおいてデスペナルティは5レベルダウンであり、設定上プレイヤーキャラは1レベル迄、つまり、キャラメイキング迄レベルを下げる事が出来る。だが、作成したNPCは違う。マイナスとなれば消滅するのだ。そして、村人達のレベルは、総じて5以下。魔法の法則はユグドラシルのモノを引き継いでいる為蘇生は不可能だろうと予測している。ジュンも憤慨こそするが、蘇生出来る可能性が低い上にメリットもそう感じない為する気が無い。だが、何もしない程価値観が変化している訳でもない。
ジュンは装備の指輪を使い、修道衣を身に纏い、ある長い杖を取り出した。黄金の長杖であり、先端には十字架が模られたシンプルな杖だ。使用する魔法は決まっていた。
「
淡い黄金の輝きが躯を優し気に包み込む。血や糞尿等で汚れた姿は元のキレイな姿へ。欠損していた姿は元の健康そうな姿へ。黄金の光に触れた炎は即座に鎮火し、残ったのは荒れ果てた村跡と、傷一つない眠ったように亡くなった村人達だけだ。特に、慟哭していた母親らしき女性の亡骸は、赤子を大切そうに抱きしめた状態であり、表情は安らぎを感じている様である。
ジュンは分かっている。これが偽善でしかない事を。だが、この顔を見ればやった方が良かったと自己満足と分かりながらも思うのだ。
ジュンが使用した魔法はハイ・プリーストの職業レベルを取得する際に覚えるイベント魔法だ。ユグドラシルにおいてはゴミ魔法と言われる、死体のオブジェクトの修復と洗浄。そして、使われた一帯に一定時間アンデットが近寄れなくなるだけ。それでも、ジュンがこの魔法を使った理由は、魔法の説明文に『死者の安寧を約束し、良き未来を願う』と有る為だ。
魔法の成果にジュンは装備の指輪で、再び裸になり、戦闘形態を取る。一度装備を外してから変身する事で装備制限のクールタイムを無視できる為だ。
「おい。居るんだろう」
静から動へ。声に威圧感が伴い、気配を感じた民家の影をその金色の瞳が射貫く。厚みの無い影から闇が膨らみソレ等は出てきた。
痩せこけた人型であり、背中には蝙蝠に似た翼、指先は途中から爪と一体化している漆黒の悪魔が五体。種族名をシャドウデーモンという彼等は黄金に輝く目に怯えと敬意を示してジュンの前に跪いた。
『ッ!御初に御目にかかります。私共は・・・』
「いい。この近くに人間の村が有る筈だ。見つけておけ」
ジュンに見下ろされる形となったシャドウデーモン達は自己紹介をする前に命令を受けた。ジュンの圧倒的な威圧感は、直接モモンガに会った事が無い彼等にとって凄まじいモノであり、力ある者の命令を受けた事実は満足して頂ける仕事をするモチベーションとなる。彼等は無言であるが一礼して影に沈んでいった。余計な言葉を残せば己等の仕事にジュンが不満を持つだろうと察して。
「助けるのかしら?利益が有る様には思えないけど」
「この世界の情報が友好的かは知らんが手に入る。ナザリックからも近い事から上手く行けば小指程度には役立つ」
アンジェはジュンの行動に違和感を感じた。自身も利益という言葉を使ったが、本来ジュンは損得で動かないと知っている為に。激怒している筈の双眸は冷たい輝きを宿しており、その瞳の奥に苛烈な色を見てアンジェは納得した。苛立っているのだと。
「これは間引きでもなければ戦闘でも無い」
ジュンは随分とキレイになった死体達を見ながら、先程迄の惨状を思い出す。
疫病・口減らし・生存競争のどれでも無い。ただ殺戮・破壊されたモノ。利益を生む可能性を高める為の餌でしかなく、徒に消費され、楽しむための道具とされたソレ等を。思わず歯軋りをした。余りにも気分が悪くなる。
「無意味な死だ」
空を見つめるジュンの一言に感情は宿っていなかった。その事がアンジェには恐ろしく感じる。
アンジェの目には月の光に照らされたジュンの背中は、普通よりも大きく見えた。
アンジェは目を逸らすかのように無言で魔法を使い、穴を掘り始めた。村人の躯が安らかに眠れる場所くらい作ってやろうと思って。
ジュンは気付かない。自身が人間であれば憤慨する前に卒倒する光景であった事を。
ジュンは知らない。己がこれ程怒りを抱いているのは『人間が殺された』事では無く、『意味のない死』が量産された事を。『詰まらない真似』をした者を『狩る』べきだと思っている事を。
故に、釣る事にした。不快な奴等を掃除する為に。
美しい星空の下、月は雲に隠れた。今宵はもう惨劇を見たくないと言っている。ジュンはそう感じた。握りしめた拳から血が流れている事も気付かず、唯々空を見詰めるばかりだ。
本作のモモンガ様(人間体)の外見イメージは、少し若い傷無しの鷹山 澪士(アニメ版ウィッチブレイド)でお願いします。歳を重ねての渋みが足りない+覇気が無いと良い感じの2枚目半・・・普通顔っぽいからw日野さん。声渋い。渋いよw
次のラストくらいです。炎莉―――じゃなかった。エンリさんが出るのは。
今孔明・・・現代の諸葛亮孔明って意味で使ってます。
村の様子については、抑えました。書いていたら、ドンドン酷くなってきたので書き直し3回です。もし、修正前のを見たいという方が居たら、小話を書く事にします。正式に決まりましたら活動報告に進展等書きますね。
次回の更新は遅くても日曜までには上げます。