忠義の騎士の新たなる人生   作:ビーハイブ

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ぬーん。ちょっと文章読みにくいかもしれないです。
結構四苦八苦したんですが、私の文章力ではこれが限界です。申し訳ないです……。


番外編:新しい家族

 

 

 

 

 

 

 

――『十二月九日』――

 

 

 

 砂漠での戦いが起こる二日前。八神家ではちょっとした騒動があった。

 

 

 時刻は夕方。今朝方友人宅から返って来た彼女達の主、八神はやてが上機嫌に夕食の支度をしている中、ヴィータを除く守護騎士達は緊張していた。

 

 その理由は昨日の夜にやって来た黒騎士……バーサーカーにあった。

 現在バーサーカーはヴィータと共に蒐集を行っておりこの場にいない。来たばかりで悪いとも思ったがすぐに戦いに向かって貰ったのは主とのエンカウントを遅らせ、その間に良い案を考えようとしたからだ。

 

 朝からずっと念話でどうするべきかと守護騎士の将と参謀と守護獣は話し合っていた。

 日常に溶け込ませるにはあの外見は少々問題がある。どこかの城であれば廊下に立っていて貰えば問題ないが、あいにくこの家は一軒屋である。

 

 最初に浮かんだのはこっそり家の中に隠れておいてもらうという案だ。 

 はやては足が不自由なので、天井裏に入ってもらえば鉢合わせることは無いだろう。

 

 ただ時々バーサーカーは呻く。それも憎念篭った声で。

 

 そんな呻き声が真夜中に天井裏から聞こえてきたら幾らなんでも不気味過ぎて気が付くだろう。床下も同様で、食事中に下から呻き声が聞こえればお茶の間が凍りつくのは間違いない。

 

 次に屋根の上にでもと思ったが、閑静な住宅街の屋根に漆黒の鎧を纏った騎士がいたら間違いなく管理局の前に警察が来る。

 

 そんな事になればはやての私生活に悪影響を与えることになる。それだけは絶対に避けなければならない。

 

 第三の案はいっそどこかの管理外世界で待機してもらおうかという物だ。

 流石にそれは酷いと思ったのと、最悪管理局に見つかって捕縛される可能性もあり、それで万が一バーサーカーが敵に回れば、ただでさえ厳しい蒐集を行うのがより困難になるだろう。

 

 上手く隠し通すアイディアが浮かばず、惜しいが仮面の男を見つけて引き取ってもらうしかないと諦めていた時、ヴィータから念話が入ったのだ。

  

 曰く、いい案が浮かんだと。

 

 シャマル達には他に妙案が浮かばなかった。

 だったらいっそそれに賭けてみようということになり、彼女の帰宅を待っていたのだ。

 

「ただいまー」

「あ、ヴィータ帰ってきたなぁ」

 

 そう言って彼女を出迎えようと玄関に向かったはやてとシャマルを見送った……見送ってしまった。

 

 色々と疲れていたシグナム達は致命的なミスを犯した。ヴィータの言う案の内容を聞いていなかったのだ。

 

 三人の中ではあの異様な存在であるバーサーカーを、はやてと会わせるのはマズイという暗黙の了解があり、ずっと彼女と接触させずうまく隠す方法を模索していた。

 

「ヴィ……ヴィータ?! その人誰?!」

 

 だから彼女が玄関からバーサーカーと共に入ってくるなど全く想定していなかった。

 はやての声で瞬時に己のミスに気が付いたシグナムがソファから立ち上がって玄関へ向けて駆け出し、ザフィーラもそれに続く。

 

 そしてたどり着いた先でシグナムが見たのは、ヴィータの後ろに立っている漆黒の魔力に包まれたバーサーカーの姿だった。

 

 唯一の救いは手にあったのが無毀なる湖光ではなく、昨日出発前に念のためにと持たせた木刀に変わっていたことだろう。それでも禍々しい輝きを放つ木刀は恐怖を与えるのに充分な威圧感があったが。

 

「えっと……ヴィータ? お客さん……やないよね?」

 

 はやてが恐々と尋ねる。気絶しないのはヴィータと一緒に入ってきたからだろう。もしバーサーカー単体で見たらどうなっていたか。

 

「ひ……」

「ひ?」

 

 しばらく緊張して口を開かなかったヴィータが四人の視線が集中する中、意を決して口を開く。一体彼女が何を言うのか……この状況をどうやって打開するのかと息を呑んで見守る。

 

 

 

 

 

 

「ひろった……」

(えぇぇっ?!)

 

 あまりにも予想外……それ以前にあり得ない言い訳に、シャマルは声を上げそうになるのをギリギリで堪えた。

 シグナムはガクンと身体を崩しかけて慌てて体制を立て直し、ザフィーラに至っては絶句して固まっている。

 

「ひっ……拾ったぁ?!」

「うん。ウチで飼っていい?」

「飼う?! 人間って飼うもんなん?!」

 

 はやても想定外の返しに思いっきり動揺している。

 確かに昨日飼いたいとか言っていたが、本当に聞くとは思わなかった。

 

 そしてこのままでは混迷を極めて行くだけなので、第二十三回家族会議を行うことになるのであった。

 

 

―――会議開始から一時間後

 

 

「なるほどなぁ……」

 

 守護騎士からの説明を受けてはやてが頷いた。

 蒐集の最中に出会った事は言う訳にはいかなかったので昨日ヴィータが歩いてる時に見つけた次元漂流者(それについても説明済み)ということにした。

 

 理性を奪われている事と鎖で制御されている事は伏せている。

 言えば優しいはやては解放を望むであろうし、守護騎士達としてもバーサーカーの現状を何とかしてやりたいとは思っている。

 しかし、そうすれば制御を離れたバーサーカーが何をしでかすかわかったものではない。それに加えてこの鎖の効果を知らないので迂闊に手を出すことはあまりに危険過ぎた。

 

「それで放っておけへんから昨日連れてきたけどどうすればええかわからんかったから……」

「この時間までヴィータちゃんと散歩して来てもらったんです」

 

 はやての言葉をシャマルが引き継ぐ。

 

 偶然この世界に漂流して住む場所がない。無口で鎧を外そうとしないが、大人しい黒い鎧を纏った騎士。

 

 言っていて相当無理があるように感じていたが、シャマルの絶妙な嘘によってバーサーカーの立場はそんな風になった。

 

「まぁ、みんなが大丈夫やっていうならわたしは一人くらい家族が増えても問題あらへんけど……」

 

 居場所がないとなればはやても放って置けなかったのだろう。少々不安げであったが佇むバーサーカーを見ながらそれを受け入れた。

 

「ところでこの子の名前は?」

「え?」

 

 はやてに言われ、シャマルがきょとんという表情に変わる。

 最初は黒騎士……仮面の男からバーサーカーと言われてからはずっとそう呼んでいた。

 

「名は知りません。我々は黒騎士と呼んでおりました」

 

 最近はバーサーカーと呼んでいるが、それをはやてに聞かせるのは憚られた。

 

 狂戦士(バーサーカー)など彼女は絶対に呼ばないだろう。しかし理性を失った彼から本当の名前を聞くことは難しい。

 

「そういやぁアーサーって言ってなかったか?」

「確かにそう呟いていたな」

 

 ヴィータが思い出したように言い、シグナムが同意する。

 

「ほんなら名前はアーサーに…」

 

 とりあえず仮の名前をと思いはやて決定しようとした瞬間。先程まで大人しかったバーサーカーが急に頭を抱えて呻き声を上げ始めた。

 

「なんかようわからんけどアーサーは止めた方がええな」

「そのようですね」

 

 激しく拒絶するその姿にはやてが自分で却下し、ザフィーラが同意する。確かに以前アーサーと呟いてはいたが、その声に篭っていたのは憎悪だった。

 

「でもアーサーかぁ……」

「どうかしましたか? 主はやて」

 

 その名に心当たりがあったのか、はやてが右手で顎を抑えながらうーんと思案しており、そんな彼女にシグナムが尋ねる。

 

「ちょっと読んだの昔やから忘れとるとこあるんやけど、アーサー王伝説って物語があってな……ちょっとそこから名前を取ってみようと思って」

 

 全部は覚えていないけど。と前振りし、はやてがバーサーカーに向き合う。

 

「じゃあまずは……モードレッド」

「■■■■■■■■■■■ーーー!」

 

 しょっぱなから吼えた。それはもう近所迷惑になりそうな程に。

 念のためにシャマルが展開していた防音の結界がなければ近所の人が出てくる所だっただろう。

 

「次は……ガウェイン」

「詫びを入れそうな雰囲気になりましたな」

  

 先ほどまでの咆哮がピタリと止み、バーサーカーが膝を着いた。

 そして手を着き、頭を垂れる姿はまるで誰かに謝罪しているようにも見える。

 

「ガラハッド」

「今度はなんか気まずそうな反応してんぞ」

 

 そのままの姿勢でこちらを向く。甲冑で隠れて見えない表情が微妙に判る気がした。

 

「後もう一人有名な騎士がおってんけど……えーとなぁ……」

 

 理性は無いが心と記憶はあるのだろう。

 それ故にはやてが告げる名前に本能的に反応しているのだろう。名前を聞く度に色々な感情が想起されているのかもしれない。

 

「あ! 思い出したで! 確かラン――」

「はやてちゃん! なんか嫌がってますからそこから名前取るのは止めましょう?」

 

 色々な反応を示すバーサーカーが面白かったのだろう。そのまま面白がって続ける主をシャマルが慌てて止める。

 理性が無い事を知らない主に悪気はないのだろうが、これやったらバーサーカーがどうなるかわからない。

 

「ほんならシャマルが決めてーな」

「うぇえええ?! 私ですか?!」

 

 予想外の振りにシャマルが素っ頓狂な声を上げる。

 そんな事言われると全く考えていなかったので何のアイディアもない。シャマルが冷や汗を垂らしてながら仲間に助けを求めて視線を向けるが、全員顔を逸らし、目を合わせなかった。

 

『頑張れ』

 

 飛んできたザフィーラの念話を聞いて、守護騎士の絆ってなんだろうと黒い想いがちょっと込み上げてくる。

 ありませんと言いたかったが、期待した目で見ているはやての期待を裏切ることはシャマルにはできなかった。

 

「黒騎士なので……クロ……とか?」

 

 精一杯考えて出た名前を言った。というか彼女にはそれが限界であった。

 

 仮面の男が言っていた『湖の騎士』という言葉から名付けようとも思ったのだが、そこからは特に浮かばず、はやてにどこでその名前を聞かれたか? と問われても困るので口には出さなかった。

 

 案の定、「それはないわ」と言った四つの視線を感じる中、バーサーカーだけは全く反応を示さなかった。

 

「……拒絶しないな。クロでいいのか?」

 

 シグナムの問いかけるが相変わらず反応はない。しかし、先程までの様に過剰な反応を示したりもしなかった。

 バーサーカーが拒絶しなかったのは無関心……彼の出自に関係した名前ではないので全く気にならなかっただけだ。

 

 

 守護騎士達もその詳細を伝えられていない彼の四肢と胴体、頭部を縛っている合計六つの鎖は魔法で編まれた特別な物である。

 

 それぞれ一つ一つの鎖ごとに暗示の効果と『狂化』を増幅させる効果が与えられており、単純なダメージでは破壊できないが『魔力の流れを止める事』ができれば消失させることが可能だ。

 

 六つの鎖全てに縛られている現在のバーサーカーは『狂化』スキルがAまで増幅された状態で、一つ失われる事に『狂化』のランクが一段階低下していき、全てが破壊されると彼を苦しめている『偽りの記憶』と『狂化』スキルが喪失する仕組みとなっている。

 

 ただし消滅するまではその効力は永続的に続くので、本来は言葉だけでこのように暴走するなどはありえない。だが、かつての仲間達の名は、白銀の鎖の支配を押し退けようとする程バーサーカーの過去を刺激し、心を抉ってしまう。

 

 そのせいであのように暴れそうになったのだ。

 

「それでええんや……」

 

 そんな事は知らないはやてはただ残念そうに呟いた。

 冗談などではなく、結構真面目にそこから名前を取ろうとしていたのだ。

 

 彼の本当の名前がわかるか、もしくはいい感じの名前が決まるまで間はその名前で行くという事に決まった。

 

 本日の家族会議は終了し、それぞれが自分のやることに戻る中、命令を下されないバーサーカーはその場に静かに佇んでいる。

 

 

 

―――――結局、はやてが最後の名前を言おうとした瞬間、バーサーカーの様子が変化していた事に誰も気が付くことはなかった

 

 




そんな訳でランスさん八神家に入る。です。

ホントは料理手伝わせて大根で白鳥とか作っちゃうとか書きたかったんですが、あのフルプレートで食べ物触るのはどうかなぁと思い断念。あの鎧を脱ぐ時が来たらやりたいですね。

バーサーカーの姿でどうやって受け入れさせようかと悩みましたがこんな感じに。

神性スキルの説明が訳わからなくどうしようかと悩むこの頃。
アポクリファの赤ライダー見て神性は神性持ちじゃないとダメージ与えられないかと思ったんですが、それは『―――――』の持つ別のスキルのようで……。

おかげでエルキドゥで捕まるってバッドステータスにしか見えない。

アポクリ見て私の中のモードレッドさんの評価は180度変わりましたけどね。
なにこの子かわいい。超私の好みです。

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