その後もう一回自分で見て手直ししたからそのせいで文章おかしくなってるという可能性も否定できませんが・・・。
「これより本艦全クルーの任務はロストロギア、ジュエルシードの回収になります。今回は特例措置として結界魔導師のユーノ・スクライアさん、現地の魔導師の高町なのはさん……次元漂流者のディルムッド・オディナさん……以上三名が臨時局員の扱いで事態に当たってくれることになりました」
「「よろしくお願いします!」」
「及ばずながら力を貸そう」
三日後、なのは達は手続きを終え、正式に管理局の協力者として扱われることになった。
ディルムッドに関しては次元漂流者であり、最初は状況を理解していなかったせいで
妨害を行っただけでこちらに敵対する意思は無く、その実力を見込んで協力を依頼した……という形で無理矢理組み込む事となった。
勿論事件後に何らかの処置は下されるだろうが、それまでは身柄は保証されるとのことだった。
緊張している二人と落ち着いた様子のディルムッドが紹介されてそれに答える。
会議の最後に、クロノになのはが微笑みかけてそれに彼が赤面し、それを見たユーノが気に入らないという顔をしており、それを見た周りのクルーが微笑ましい気分になる終始穏やかな会議であった。
今後はアースラの方でジュエルシードを探索し、場所が判明次第なのは達が現地に向かうことになっている。
「何かわかったか?」
会議が終わりなのは達が封印に向かっている間、ディルムッドとクロノとエイミィはフェイトの事を調べていた。
「ディルムッドが会ったという人物……プレシアという名前で間違いないか?」
「あぁ。フェイトがそう言ってから間違いはない」
クロノの問いかけに頷く。時の庭園に向かった時フェイトが言っていたので間違いない。
「だいぶ前に姿を消した大魔導師に同じ名がある。その人物もプレシア・テスタロッサという」
「テスタロッサ……同一の人物と見ていいだろうか?」
「偽名という可能性もある。断定はできない」
以前ディルムッドが行ったあの地に行ければすべて解決できるかも知れないが、その術も手順もわからずそれはできなかった。
「どんな人だったの?」
「ミッドチルダの中央都市で魔法実験の最中に次元干渉事故を起こして追放された人物だ」
もし同一人物であればそれほどの人物がジュエルシードを欲する理由はなんなのだろうか。
「それよりもさっきこの子にこっちが補足したジュエルシードを1つ取られちゃったんだけど……」
「約束まで後4日ある。俺は君達と友でありたいし、協力して行きたいと思っている」
「だよねぇ~……」
約束を違えるなら敵となるということを改めて伝える。あれから三日ほどは特に動きを見せなかったフェイトだったが、今朝から行動を再開したらしい。
ジュエルシード集めを急ぐフェイトが三日姿を現さなかったのはアルフが止めてくれていたからなのだろう。
「さて、せっかく時間があるのでな……少し鍛錬してくる」
「わかった。何かあったら呼ぶよ」
そう言ってモニタールームから退出する。正式な協力者となったことである程度の自由が認められたのだ。
「万全では無いから動けなかった……など言い訳にならんからな」
一日でも早く、本来の力を取り戻そうとディルムッドは訓練室に向かったのだった。
―――――――――――――――
「……このような心地よい疲労感は久しいな……」
数時間後、鍛錬を終えたディルムッドがシャワールームで息を吐いた。
サーヴァントとして召喚された時は全盛期の姿であり、死を迎え、英霊となった時点でこれ以上の成長の可能性がなかったので鍛錬など行っていなかった。
あの時は力の消費を抑える為、普段は霊体化し戦う時だけ全力を尽くすと言ったスタンスであったので、戦い以外で疲労を感じるのは本当に久しかった。
「だが今は成長しているのを感じるな……」
動けば動くほどそれが力になっているのを感じる。それが己が人であるという実感を与えてくれた。もしかしたら聖杯戦争など夢であったのではないかと思ってしまう程に。
鏡に映った己の姿を見つめる。
そこにいるのはフィオナ騎士団の勇敢な騎士ではなく幼さを残した少年だった。それは間違いなく、ディルムッドの幼き日の姿である。
――――唯一つ胸に穿たれた傷痕を除いて
それは聖杯戦争の時、令呪によって強制され自らの破魔の紅薔薇で刺し貫いた時の傷である。あの戦いが現実であった事を事実として認識させ、その傷痕はまるで死に際に憎悪に飲まれた己への戒めにも思えた。
「忘れたりしないさ……」
もう二度と同じ過ちは犯さない。三度同じ事が起きるくらいであるならば、再びこの傷痕に槍を突き立てよう。
そう覚悟を決め、身体を拭いて服を纏ってシャワールームから出る。小腹が空いたのでそのまま食堂へと向かった。
「帰っていたか、なのは、ユーノ」
「あ、ディルムッド君」
「ついさっきね」
食堂に着くと、そこには二人の姿があった。今日二人が捜しに行ったのはフェイトが今朝手に入れたジュエルシードである。
「ご苦労だったな。隣、失礼するぞ」
「うん、どうぞ」
食事を受け取り、わかりやすく凹んでいる二人と同じテーブルにつく。
「さて、せっかくの機会だ。聞きたいことがあったんだろう?」
「にゃはは……気が、付いてたんだ」
「さすがにあれだけ見られていればな……何から聞きたい?」
何度かこちらを見ているなのはの視線を感じていたのだが、彼女達がジュエルシードの回収に行ったり、ディルムッドがクロノやエイミィに捕まったりしていたので話す機会が無かったのだ。
「最初は……ディルムッド君の事かな?」
「俺の事はあの時、リンディ殿に伝えた事が全てだが?」
日本における彼の知名度は低い。神話の英雄であると言われても彼女にとっては実感がわかないのだろう。以前図書館で出会ったはやてのように知っている方が珍しいくらいだ。
「昔の凄い人だって言うのは聞いたけど……そうじゃなくて、前の世界で戦ったって言う話が聞きたいの」
どうやらそちらではなく、サーヴァントとしての生き方が知りたいらしい。
「そうだな……」
最初は躊躇ったが二人に語る事にした。主に信じられず、騎士としても散れなかった絶望の生を。
「一度目の生では俺は忠義と愛を秤に掛け、愛に生きる道を選んでしまった。その結果、主君に見捨てられ命を落としたが……その生き方に後悔はない」
「その主さんを怒ったり憎んだりはしなかったの?」
「むしろ恨まれる事をしたのは俺だ。俺が恨むことは無い」
主に忠義を果たせなかったがグラニアを幸せにすることはできた。それを否定する事はこの三度の生涯の間、永劫に訪れないだろう。
「だがもし二度目の生があったのならば……今度は忠義に生きようと思っていた」
そしてその機会は訪れる。
聖杯戦争。ランサーとなり新たな主君の元でその願いを果たそうとした。
「英霊がサーヴァントとなるには何かしらの願いを持っているのだが、俺は『主君に勝利と聖杯を届ける』という事自体が願いだった」
「ディルムッド自身には願いは無かったって事?」
「我ながら無欲な物だと思うがな……ただそれだけが願いだった」
しかしディルムッドの願いは虚しく悲劇は繰り返される。
「細かな説明は省くが、俺のマスターは少々特殊でな。主と婚約者の二人で一人のマスターとして参加した」
「それって……もしかして」
「運命とは何とも残酷な物だった。我が身の呪いは再び同じ状況を生み出し、同じ結果を引き起こすことになる」
「そんな……」
呪いは再び主君の想い人を誑かす。どれだけ誇りを唱え、忠義を尽くそうとしても、彼は己を信じることは無かった。
「そして最期はまた主に見捨てられ、俺は散った」
やはり最期だけは言葉を濁させて貰ったが全て語り終えた。
「最期には絶望しか感じられなかったが……なのは。君の言葉で悩みが晴れた」
「え? 私の……言葉?」
「『話さないと、言葉にしないと伝わらないこともある』。君がフェイトに言った言葉だ。俺ももっと主と向き合っていれば……死は避けられなかったとしても分かり合う事ができたかもしれない」
幼い少女の純粋な言葉はディルムッドにとっては天啓であった。
「だからなのは、フェイトと向き合って欲しい。彼女の悲しみを、苦しみを。彼女自身から聞いて、君の思いを伝えてやれ。そうすればきっと……フェイトは救われるはずだからな」
もっとも言わなくてもそうするだろうがなと言って、食べ終えた食器を持って立ち上がる。
「後、俺は敬われるのは慣れていない。変に意識せず対等に接してくれる方がありがたい」
慣れない事をして少々気恥ずかしかったので振り返らずに食堂から出て行った。
―――――――――――――――
なんは達と話してから一週間……つまりディルムッドがアースラ所属となってから十日後。突如発生した異常事態にアースラには動揺が走っていた。
「何してんのあの子達?!」
最初に異常を感知したのはジュエルシードを探知していたエイミィだった。突如発生した魔力流にそれに呼応するように発動した六個のジュエルシード。
「海中にあるジュエルシードを全部纏めて強制発動させるなんて……!!」
「このままでは街に被害が出るぞ……!!」
暴走したジュエルシードの魔力が旋風を巻き起こし、海流を巻き込んで六つの水竜巻となっていた。
映像の中で、それを引き起こしたフェイトが封印しようと隙を狙っているが回避するのが精一杯でそれどころではなさそうだ。
ディルムッドが人民への被害を徹底的に嫌っていた事を誰よりも知っているはずなのにこのような無茶をしなければならない程、二人は……特にフェイトは追い詰められていたのだろう。
「ディルムッド君の紅い槍で…」
「すまないが無理だ……!破魔の紅薔薇の効果範囲は刃先のみ。あの規模では……」
あの吹き荒れる竜巻のどの部分にあるかわからないジュエルシードを的確に狙って撃つことなど不可能に近い。
その前に飛行能力を持たないディルムッドではあの場所にたどり着くことさえ叶わないだろう。
「フェイトちゃんっ!!」
警報を聞いて駆けつけたなのはとユーノがブリッジに駆け込んできた。
「あのっ!私急いで現場に行きます!」
「その必要はないよ。放っておけば自滅する。その後に捕獲すればいい」
「私達は常に最善の選択をしないといけないの。残酷に見えるかもしれないけれどこれが現実よ」
水竜巻を必死でかわすフェイトの姿を見てなのはが出撃を進言するが、クロノがそれを却下し、
すがるような眼でクロノの隣にいたディルムッドを見る。
「リンディ殿の指揮下にいる以上、それに異議を唱えるなどできまい」
「そんな!ディルムッド君はフェイトちゃんを見捨てるの?!」
はっきりと言い放つディルムッドになのはが裏切られたと抗議の声を上げるが、ポタリとディルムッドの掌から何かが零れ落ちたのに気が付いたなのはがそれを見て絶句した。
「どうしようもあるまい……!今はどうすることも……!」
爪が食い込むほど握り締められた彼の掌から血が滴り落ち、床を濡らしていたのだ。
目の前の被害を止めることも、苦しむフェイトも見ていることしか出来ないことを誰よりも悔しがっていると悟った。
やるせない想いを抑えていたディルムッドは、突如ゲートが起動した音に反応し振り返る。
「ごめんなさい!高町なのは、指示を無視して勝手な行動を取ります!あの子と…お話しないといけないから!」
「僕も行きます!すみません!処罰は後で受けますから!!」
ユーノが独断で起動したゲートから二人がが飛び出して行った。どうやら気付かれないように念話でやり取りして合わせたらしい。
「ふっ…。話をしなければ……か。リンディ殿、少しよろしいか?」
唖然とするブリッジ一同の中でディルムッドが一人笑みを浮かべていた。画面の中ではユーノとアルフが協力し鎖を呼び出して竜巻を抑えている。
「俺も出る。出陣の許可を」
直接は何もできないが、援護くらいしてやらなければならない。
―――――――――――――――
「くっ……!」
ユーノはアルフと協力し、鎖で水竜巻を抑えていたが、引き千切ろうと暴れる勢いに振り払われないようにするのが必死だった。
「守りながらじゃ……キツイ……ね!」
ジェエルシードから発生したエネルギーの余波が、二人を襲い、
それらを辛うじてシールドで防いでいたが一瞬でも意識を鎖から離すと水竜巻に身体を持っていかれそうになり、最小限のシールドしか展開できない。
そこに先程よりも威力の高いエネルギーが襲い掛かり、防げないと判断した二人が鎖を一度解除しようとした。
「解くなっ!」
その瞬間上空から聞きなれた声が聞こえ、解除しようとした鎖を再び強く握り直す。
エネルギー波が二人を襲う直前、鎖の上に器用に着地した男が紅い槍を振るってそれを消し去った。
「守りは引き受ける!お前たちはあれを抑えることだけに集中しろ!」
鎖を足場代わりにしたディルムッドが破魔の紅薔薇を振るい、二人を余波から守る。
「ディルムッド!やっぱり無事だったんだね?!」
「そちらも息災で何より…と言いたいが、積もる話はこれが終わった後だ!」
ユーノとアルフの鎖の間を何度も飛びながら、飛来する攻撃を全て叩き落としていく。
「俺にできるのはここまでだ。フェイト! なのは! こちらは気にせず全力を注ぎ込め!」
ディルムッドの視線の先ではそれぞれが桜色と金色の巨大な魔方陣を展開した二人の姿があった。
「サンダー……!」
「ディバイィィィン!」
フェイトの周囲に雷光が集い、なのはの杖の先には桜色の輝きが収束していき。
「レイジ―――!!」
「バスタ―――!!」
二つの極光が同時に解き放たれた。
「ユーノ。命の恩人だよ君は……」
「あはは……二人とも本当にこっち気にしないで撃ったね……」
鎖に乗っていたディルムッドも一緒に吹き飛ばされて海の藻屑になり掛けたが、ユーノが鎖で捕まえてくれたので辛うじてそれは免れた。
余波で降り注いでいた海水の雨が降る中、雲の切れ間から光が差し込んで二人の少女を照らす。
「友達に……なりたいんだ」
そんな中、なのはがフェイトに想いを告げる。
穏やかさを取り戻した空気の中で、ようやく届いた彼女の言葉の結果をこの場にいる全員が見守っている。
――――しかしその時間は
『ユーノ! ディルムッド! 気を付けろ! 次元干渉攻撃が来るっ!!』
クロノの念話が静寂を破り、突如上空から降り注いだ紫の豪雷がフェイトを貫いたことで終わりを告げた。
「フェイトちゃんっ?!」
「フェイトォォォッ!!」
衝撃で吹き飛ばされたなのはとアルフの叫びが響き渡り、人型に戻ったアルフがフェイトに向かって飛び出す。
雷鳴が響き渡る中、上空を見上げたディルムッドは気が付いた。
空中に漂うジュエルシードを巡って、フェイトを救出したアルフと念話の直後に転移してきたクロノが奪い合っているその向こうで、体勢を崩したなのはの真上に魔力の光が集っていた事に。
「ユーノ!俺をなのはの元に投げろ!」
「は…はいっ!」
突然の怒鳴り声にユーノが反射的に鎖で捕まえていたディルムッドを勢いをつけて投擲する。
フェイトへの魔力譲渡と大出力の砲撃を使ったなのはには殆ど魔力は残っていない。そんな状態であの攻撃を受ければ先ほどのフェイトと同じように無事ではすまないだろう。
なのはを守るため、上空に飛び出したディルムッドが槍を振るうと、魔を払う紅槍と正体不明の紫電の光が激突する。
「くそっ……!!」
しかし先ほどユーノとアルフをを守る為に酷使していた破魔の紅薔薇はその強力な雷を防ぎきる事が出来なかった。
「ディルムッド君っ?!」
―――刹那の激突の後、紅い薔薇が散り、同時に紫電がディルムッドを貫き意識を奪った
ディル以外に第4次で脱落した4人だそうかと思ったけど収拾つかなそうだから止めたでございます。
脳内ではプロットありますからこれが完結したらいつかどこかでリメイクで書くかもしれないですけど。