天使がダンジョンに堕ちてくるのは間違っているだろうか 作:河灯 泉
なおこの小説は読者の皆様方が原作の流れを知っている前提で書いております。
いやだってそうしないと原作通りに進むところで書くの疲れて本分が薄く本文が短くなってオリジナルの勢いが無くなってなんのための二次創作だって話になってしまいますので。
ご容赦下さい。
「いいよ。ベル一人でいけば?」
「え? でもエルは……」
「じゃあね」
そう、一方的に言ってしまって。
なにがなんだかよくわかっておらず途方に暮れているベルの気配を感じ。
ちょっぴり、後悔した。
でも今更、ここで戻るわけにもいかないので。歩き続ける。
『
ガネーシャファミリアというところが主催する、モンスターサーカスのようなもの。
つい先日までベルとダンジョンに潜っていたのだが、わざわざお祭りの時まで働く必要も無い。
それで、ベルとデートをして後でヘスティアを弄ってやろうと思っていたのだが。
ベルの知り合いのエルフからヒューマン宛に忘れ物の財布を届けて欲しいと頼まれた。いや頼まれたのはベルで私はどこか見覚えがあるエルフから隠れていただけなのだが。
この時点で、運命の神と云う者がいるのならこれはもうなにかがあると踏んでいた。
確証は無い。ただの勘だ。
頼まれ事を一つ受ければ問題が一つ二つやって来る。それが祭りの最中なら確実に起こりうる。起こるべくして起こってしまう、起こされてしまう。
イベントだ。
お祭りだけにね。
それに関与してはいけない。
きっと、私はそれを避けなければいけない。
ベルのため……という言い訳はある。
……んー。
なんかね。
このままベルと一緒にいたら、邪魔者としてうっかり排除されそうな気がしたのだ。
成長の機会をみすみす逃してしまう。私とはそんな障害となりうる存在である。
……うまく説明できないな。
だからとにかく。勘なのだ。
長年培ってきて、それに生かされてきた。冒険者の勘なのだ。
……はぁ。
せっかくのお祭りなのにこれはいけない。
気を取り直して。気分転換。
楽しまなければいけない。
強制するのは良くないが、できる限り楽しく過ごさなければいけない……うん、この言い方はダメだから。
楽しもう。
よし。
お祭りだ。騒げや歌え、踊れや笑え。
さて。
やはり祭りというだけあって串物が多い。
歩きながら食べるのはやめましょう。転んだら死にます転ばずとも死に掛けます。
もぐもぐと。見かける端から買って食べる。
焼き鳥……リンゴ飴……焼きそば……じゃが丸くん……焼きとうもろこし……ケバブ……。
なぜこれだけ食べられるのか。さっぱりわからん。
堕天使時代ならまだ納得できただろうが、童女姿でこれだけの量を食べきれるものなのか?
体積おかしくないか?
いっつぶらっくほーる。
うーん実に不思議な身体だ。
神秘によって構成された影響かな?
まぁ、いいや。
どこからともなく剣呑な気配が漂ってくる。
せっかくの祭りだというのに。どこの無粋者だか。
人ではない。いや、戦う人間の気配もあるにはあるが。
これは……モンスターかな?
サーカスから解き放たれちゃったのか。それとも――
「敵を知り己を知れば百戦危うからずってね。深く探れ探せ――捉えろ【
広域索敵呪文を作成。
では早速、情報を処理……できない!?
まずいカット不要部分を削除、じゃなくて即刻即時廃棄投棄しないと脳が頭が沸いちゃう壊れる壊れる限界になる脆い人間め堕天使ならこの程度ただの頭痛で済ませられるのにああもう対象は人族以外だけじゃないってのいちいち設定しないといけなかったかこれはまいった魔物化物怪物でいいんだよ獣人さん方は除外して神様連中も弾いて建物の構造なんかは透過してるし無視して奴らの大まかな位置情報なんかを優先して取得しないとサイズも違うし反応がおかしなのもいるし状態異常も入っているのかなこれあぁ面倒だそれは後回しにして――
……がつんっ?
思考が止まっていたのは数瞬か数秒か数分か。
気がついたら、道端で倒れていた。
周りに人の姿は無い。
ただ、目の前に一体。
一人ではなく、一体。
モンスター……か?
「ぅ……いったぁ~」
主だった負傷は無いし、血も流れていない。
ただ、吹き飛ばされただけのようだ。
「これはこれは……レベル1の子供に当てて良い奴じゃないね」
立ち上がってもなお見上げることしかできない。
圧倒的サイズ差。
存在感も威圧感も桁違い。
戦闘力は……どうだろう。見掛け倒しでは、ないだろう。残念ながら。
索敵の反応には無かった……ん。いやあるな。微かに、僅かに反応している。
遠くのでかい方に意識をもっていかれていたか。
「ステルス性が高いのは……まぁ厄介だわな」
その上、硬そうで鋭そうで速そうだ。
生物としても、地上で敵に回すにはあまりに危険な狩人。人類がそれに勝るのはサイズの影響が大きい。
そんな生物に似た、でっかいモンスター。
つまるところ。
めっちゃ強そうだ。
地上に現存する中では節足動物最古の存在。
4対8本の細く頑強な脚。
半弧を描く特徴的な尾とその先端にある針。
身体の三分の一程もある巨大な鋏。
下にも横にも上にも付き、死角を埋める複数の眼。
元となった生物の甲殻は名前が示す本分本業の甲殻類のそれに劣ると言われていたが、はてさてこれはどうなのか。小口径の拳銃程度なら余裕で弾けるだろう。
ちなみに。ザリガニやカニ、虫なんかにも似ているがこいつは蜘蛛の仲間らしい。
モンスターに進化系統や分類があるのかという疑問は置いといて。
目の前に佇む不動の姿はまるで騎士のようだが。しかし中身は狡猾で密かに獲物を仕留める機会を窺う狩人。
体長は目算3,4メートルといったところか。
どこから現れたかなんて知らんが、逃げ道は無さそうだ。
戦うしか、生き残る道は無い。
「このサイズで、このサイズの毒食らったら即死しそうだなぁ……」
嫌だなぁ。
そんな泣き言を聞いたからか。それともここまでの思考がほんの一瞬だったからか。
奴は、動き出した。
ギチギチと身体を鳴らしながら向きを変え、ご馳走を目の前、口と鋏の前に。
「怖いなぁ……本当に」
そう、言いつつも。
私の口は、まるで楽しんで笑うように、緩く弧を描いているのだった。
最早判り切った生物の強敵でしょうが。実はまだこいつの名前を明かしていない!!
(一体どこの砂漠のハンターなんだ……?)
星座の敵全部出そうかと考えたが多分そこまで続けられないだろうということでお蔵入り。
鳥とかに食われてはいるけど魔物として巨大化したらめっちゃ強いと思うの。アレ。
MASDUCALFIC【マスデュカルフィック】:索敵。魔法使いスロットレベル4。オリジナルで割となんも考えないまま作られた呪文。