天使がダンジョンに堕ちてくるのは間違っているだろうか   作:河灯 泉

17 / 17
閑話というか閑章というか。
読んでも読まなくてもいい話。


God

『あら、どうしたの?』

『い、いや、なんでもっ、ない……!』

『ほら、力を抜いて……私に全部を任せて』

『あ、ふひぃ……!?』

 

 はぁ……はぁ……。

 

 くぐもった嬌声と、鼓膜から脳を蕩けさせるような甘い声。

 そして、少しだけ荒い息遣い。

 

 

 

「……なにをしている」

「邪魔をしないでくれ、今いいトコロなんだ」

 

 アジアンは紳士である。

 たとえ、至上最高……天上の美の女神が目の前にいたとしても、愛する相手はただ一人。愛を囁き視線を向けるのはその一人だけである。

 どこにいようと、その人がピンチであれば颯爽登場。手遅れなんかありはしない。危機一髪はよくあるが。

 少々変態じみてはいるが、それはまさしく極・限・愛(ラヴ・マックス)

 

「フフフ……良い声だねマリア。いつかボクもキミをそんな風にナかせて――」

『なんか寒気がする!?』

『……オッタル』

「はっ」

 

 主神の命に従い、鬱陶しい黒尽くめの男を排除しにかかるオッタル。

 オラリオ最強の男は、建物への被害を考慮しながら不審者を捕らえようと動き出す。

 無論、バベルの塔が崩れないように手加減はしている。

 

「またボクとマリアの愛の営み邪魔をするって言うのかいこの猪男!」

「貴様は元々蚊帳の外だろう」

 

 それを見ていた他の眷属たちは思う。

(((あぁ、またか)))

 と。

 これがフレイヤファミリアの日常である。

 マリアローズとアジアンという不可思議な二人組が参入してから、こんなものだ。

 

 

 

 

 

 ところずれてフレイヤのお部屋。

 決していかがわしいことをしていたわけではなく、ただ普通にステイタスを更新していただけのマリアとフレイヤ。いかがわしくなんてない。ないったらないのである。

 

「フレイヤ……様はエルをどうするつもりなのさ?」

「あら。私がナニをすると思っているのかしら。それと、様付けはいらないわ」

「……だって、気に掛けてるじゃない。あのサソリみたいな奴もフレイヤが嗾けたんでしょ」

 

 うつ伏せになっているマリアが批難の視線を送ると、馬乗りになっているフレイヤは恍惚とした笑みを浮かべる。エロいというか、正直怖い。

 

「あの子は濁り水。色々なものが混ざり、本来の色彩を見失ってしまっているの」

「だから捨てるの?」

「いいえ。放っておけば、自然と落ち着いて沈殿するでしょうね」

「なら――」

「でもね。遠心分離って知ってる?」

「……無理矢理にでも分けようって言うんだね」

「そうよ」

 

 止めても無駄だ。

 これは、マリアにはどうすることもできない。

 フレイヤがやると言えばやる。やりたいと思えばやってしまう。ヤってしまう。

 

「それに……あの子に悪影響を与えないように見張っておかないと」

「ベル……だっけ?」

「そう。ベル・クラネル。私が見てきた中でも特別輝いている魂」

「……エルは、ぼくの友達だから。あんまりやり過ぎないで欲しいかな」

「考えておくわ」

 

 更新終了。

 服を着直したマリアは外で騒いでいるバカ(アジアン)を止めに出ようとする。

 

「それにしても……本当に貴女は凡才ねぇ」

「そんなの、ボクが一番よく知ってるよ。ていうか()()呼ばわりはやめてよね」

「うふふ、照れちゃって可愛い子」

「……うるさい。そんなんじゃないったら」

 

 これはとあるファミリアの一幕。

 別に本編にはなんら影響のない、いやあるにはあるのだが、それを知ろうが知るまいが大筋が変わることはないのである。

 

「アジアーン!! いい加減にしろこの変態!」

「ああ、愛しのマリアー! ボクの胸に飛び込んでおいでー!!」

 

 マリア の 跳び蹴り!

 アジアン は 動じない!

 

 そして交わされる熱い抱擁。

 別名、博愛固め。

 

「離せっ! やめっ、ちょっとどこ触ってんの!?」

「マリアマリアマリアマリアはぁはぁはぁはぁはぁ」

「誰か助けてー! オッタルー!?」

 

 

 

 オラリオは、今日も平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルは猿、私が蠍か……犬か蟹なら同士討ちでもさせられたかもしれなかったね。どうやって合流するのかとかそういうのは置いておいて」

「エルも大変な目に遭っていたんだね。ごめんね、助けに行けなくて」

「いやあれは来られても毒で即死するだろうから良かったよ。流石にこの姿で蘇生は使いたくないし」

「……そう、だよね。足手まといになってたよね」

「いやまぁ……事実だし、そうねぇ。……それはそうとして。良いナイフだね?」

「神様がくれたんだよ」

「大切に扱いなよ。神器って括りがこっちにあるのかどうかは知らないけど、神造神剣の類になるんじゃないのかなぁ……てかこれ打てるの鍛冶の神くらいじゃないの? 支払いとかどうするんだろ」

「あ、ごめんエル。最後の方聞いてなかったけどなにか言った?」

「いんや。なんも言ってませんよー」

 

 

 

 

 

「ベルさんや。私は最近サポーターの必要性を感じてきたよ」

「確かに。魔石を回収している間に襲われるとちょっと面倒だね」

「魔石ごと砕いていいなら楽なんだけどねー。それすると稼ぎにならなくて潜ってる意味がなくなっちゃう」

「僕もエルも火力要員(アタッカー)だから重い荷物は持てないし」

「次に潜るまでに少し考えておいてね」

「え、僕が?」

「私がやっても面白くないからね。読心の呪文使っちゃうのは反則っぽいし。……あ。アスカさん、そっちの魔石は全部回収しました?」

「今しがた終えたところでござるよ」

「すいませんね、アスカさんならもっと深いところまで一人で行けるでしょうに」

「いやいや、拙者はしがない駆け出しの冒険者。冒険者としての先輩方と一緒に行動できるのはこちらとしてもとても助かるのでござる」

「本当は同じファミリアの人と潜るべきだったんでしょうが」

「丁度動ける人がおらず、エル殿から誘われた時は嬉しかったでござるよ」

「まぁ今のこの臨時パーティーでも15階層あたりまでなら行けそうだね」

「うーん、でもやっぱり荷物が増えるとちょっとつらいかな。動きづらくなってくるし」

「だね。鞄が重くなってきたしそろそろ帰ろうか」

「うむ」

 

 

 

 サポーターさんサポーターさん。

 天使のようで悪魔のような、お強い堕天使が必要ではありません……ね。

 

 ――はぁ。

 お呼びでないと。

 

 ならば、それはやはり。

 ベル・クラネルの役割なのだろう。

 世界は廻り。

 人は移ろう。

 

 救いはあるか?

 嘆きはあるか?

 怒りはあるか?

 悔いはあるか?

 笑いはあるか?

 驚きはあるか?

 

 

 

 ……なら、いい。

 

 エル・クラネルは、まだ生きるぞ。

 人生を、謳歌してみせるぞ。

 

 さあ。

 紡ごう。

 何れ成る、英雄の御話を。

 




前書きにあんなこと書いてあったのに読んでくださってありがとうございますね?

前に薔薇のマリアのアニメ化しないかなって書きましたが。
同作者様の灰と幻想のグリムガルがアニメになっていました。これは驚いた。



リリどうすっかなぁ……原作キャラが蔑ろにされてきてるからどうにかしないとなぁ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。