天使がダンジョンに堕ちてくるのは間違っているだろうか 作:河灯 泉
パッシブとアクティブってわけでもないしなぁ……どう区切ろう?
自分とはなにか。
――私とは俺である。
――俺とは私である。
自分を構成したもの。
自分で構成したもの。
それらを思い浮かべる。
情報を手繰る。
名はエル。
種族はセレスティア。
頭の羽は白く、背中の翼は黒い。
白髪赤瞳の堕天使。
ついでに裸族……ってやかましいわ。好きでマッパなわけじゃないから。変態と呼ぶな。
……誰に向けて言っているのか。
自分か。
そうか。自己確認みたいなものか。そっかそっか。
なら、いいか。
ボーナスポイントは……たしか40は超えていたはず。
細かい数値は、後から出せないのか。まぁいいけど。
優等生ってレベルじゃあ、なさそうだ。
実にグッドだ。グレートだ。ナイスな出来だ。
学科は他種族専用のを除いて全て履修していたが……使えなくなっているっぽい?
……ぽい?
魔法は……Wiz仕様のトゥルーワードを使用。
真言葉か。胸が熱くなるな。
あとは、スキル……アビリティ?
これはシステムがどうなっているのかわからないから未定、と。
てか。
ここは、どこだ。
見渡す。
木、木、木。つまりは森の中。
しかし、天井……の水晶みたいなものや周囲の壁が見えるから屋内と推測する。
……それにしては明るいな。
まるで昼間のようだ。
んー。
こうも明るいと自分のきめ細かくて白い肌がより一層美しく輝いて……っていかんいかん。
ナルシストかと。違いますよと。
とにかく。
この状態で出歩くのは危険すぎる。
人でも魔物でも、裸で遭遇して良いことはなにもないだろう。
この世界の人間が裸族である可能性がないとは言い切れないが。常識的に考えてそれはないだろう。
常識なんてものを持ち合わせていないのに常識で物事を考えるという不思議。
まぁ。
そんな戯言はさておき。
「【
透明化の呪文を唱える。
水晶を覗き込んで見ても自分の姿が反射していない、つまりはなにも見えないので、ここはアンチスペルゾーンではないようだ。よかった。
……あれって魔法に対しては効果があったけど、呪文に対してはどうなのだろうか。
それとも、ここでは呪文も魔法の内なのか。
いや、というか魔法だろう。呪文も魔術も魔法も、同じようなものだろう。科学者からしてみれば。
別に自分は科学者ってわけじゃないが。理科は不得意でしたよ。
他に考えることもあるのだろうが、散策中は思考に余裕があるので仕方がない。
生まれたてだもの。寄り道くらいは仕方がない。しゃーないしゃーない。
自分の記憶、というか元々の姿を失ったはずなのに知識の残りでどうにかなっているからね。
ひとまず、魔法が使えるだけでも結構なアドバンテージになるはずだ。
力だってそれほど弱くはないだろう。
そういえば、ポイントの振り分けはどうなっているのだろうか。運に極振りとか勘弁な。盗賊にでもなれってか。
HPに直結するから生命力は多めに欲しいんだけど、どうだろうなぁ。セレスティアは脆くていかん。
ちなみに。
今は裸足なので宙に浮いて行動している。
素足で歩いたら石とか踏んで怪我しそうだし。なにより土が付くから嫌だ。
セレスティアは浮遊持ちなので常に地に足をつけている必要はない。
翼を動かすわけでもなく、天輪が現れるわけでもなく、なぜか浮ける。
移動速度は人間が歩くのと大して変わらない程度だが。
これのおかげで水のあるディープゾーンと先述したアンチスペルゾーンのコンボがあってもセレスティアなら突破できる。それ以外にもフェアリーやノームなら突破できるが。後衛型しか残れない鬼設計の迷宮を思い出す。
まぁ、浮遊付随のアクセサリーでも装備していればそれ以外の種族でも簡単な話なのだが。
しかし、歩き続けて(セレスティア的には浮くのと歩くのは日常用語として同義であるような気がした)からふと改めて考えさせられるのが、生命体の存在である。
気配……というか勘というか。それは生まれた時、いや生まれる前から、全方位から感じ取っていたのだが。
まるで、この場そのものが生きているような。
「あぁ、そういえば」
今まさに思いついた、思い出した魔法。
声を出しても小声だったので透明化は解除されていない。
「【
自分の位置を調べる
こちらではどんな風に教えてくれるのか。
[座標点算出……ERROR?]
[迷宮都市オラリオ……地下]
[迷宮第18階層リヴィラ付近]
「うん……うん?」
XYZ軸で表せない処に居るのか。
それとも。
……それとも?
……。
まずは、わかったことを整理しよう。
迷宮都市オラリオという場所がある。
そのオラリオの地下には迷宮がある。
迷宮の第18階層にはリヴィラという場所がある。
そして自分がいるのはリヴィラの近くである。
……。
ふむ。
リヴィラという名があるのだから言葉を交わせる者が存在するということだ。
街……なのだろうか。
迷宮の中なのに?
「ま、考えてもなにも起きはしない。行動あるのみさ」
匂いがする方向へと歩を進める。
いや、浮いたまま滑っているんだけど。
人の匂い。人の臭い。
生活臭とも呼べる、営みの証。
透明化を解くのは問題があるのでそのまま潜入させていただこう。
こっそり衣類を失敬させてもらうけど、そのうち返しに来ないとね。
盗人風情に成り下がるつもりはございませんので。
もしもそこで見破られたら……その時はその時だ。
トゥルーワードは全能ではないが、万能である。大抵のことには対処できる。
いざとなったら、強行突破も視野に入れておこう。
第18階層という場所まで来ることができる者を相手に生まれたての自分が勝てるとは、思えないが。転生ボーナスが適応されていれば最低でも最高のΩまであるはずなのでどうにかなるだろう。
まぁ。なんであれ、レベル1であることに変わりはないので無理はしたくない。
……できれば、平和にいきたいな。
頼むよ、まだ見ぬ文明人達。敵対なんてしないでおくれ。
迷宮の外で使うと規模1割が適応されなくなって本当の核撃になるから。
てか、迷宮の中でその1割を使う方がもっと危ないような気がする。
……。
最終手段があるって、贅沢なのだろうけど悩ましいことだなぁ。
これらの最上級呪文が使えること自体、恵まれている証拠なのだろうけど……。
あぁ、本当に。心配性だなこいつ。
楽観主義になりたい……。
いや、自分は混沌にして善のつもりだけど。混沌にして中立……では、ないかな?
堕天使だからねぇ……秩序も混沌も善も悪もありそうな。かといって中立かと問われればまた疑問を抱く。
善が盗みをするのかと。
いやいやいや。非常事態だからどの属性でも問題ないだろうさ。
……D&D?
うん。
気にしない気にしない。
属性とか似たようなものだから。ね?
……って、誰に向けて言っているのか。
ふぅ。
そろそろ森が途切れるし、ちゃんと集中しないと。
目的はこの世界の情報収集と衣類の奪取。
さぁ、ミッションスタートだ。
なお作者は考えはするけどその考えが良い方向に転ばないタイプ。
小説って難しい。
ストーリーを考えていると文章にまで気が回らない……それで逆もまた然り。