天使がダンジョンに堕ちてくるのは間違っているだろうか   作:河灯 泉

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本当に人様に読ませられるような作品であるのかと、ふと考えてしまうことがある。

まぁでも。
読まれもしないのに書くのもなんだか悲しいことですし。
投稿しなきゃ自分以外の誰かがそれを目にするはずもなく。

なにが言いたいのかってーと。

ありがとね?


Bell

 ……。

 

「――ぅ」

 

 ……ん?

 

「ヴ? お、ぉおぅ……ごぶ」

 

 可愛らしい少女の声で出してはいけない呻き声が漏れる。

 さらについでのおまけとばかりに吐血した。

 目を開けると見えてくるのはいつもの景色。味気無いダンジョンの天井。

 

「いっつ……」

 

 起き上がろうとすると全身が軋む。

 ギシアン? いえ、ギシバキゴキって感じで。

 ……冗談が言えるなら大丈夫か。

 

「あれ、私はなにをして……あ。あーあー、はいはいはい」

 

 混乱していてもすぐに落ち着くセレスティアの精神よ。

 便利だ。本当に。

 持ち直しの速度が速いと生存率が格段に上がる。

 想定外の出来事を想定するのが一流の冒険者です。

 

 ……嘘です。想定できりゃ「とでも言うと思ったかい? この程度、想定の範囲内だよぉ!」と言えるのだ。それができないから想定外なのだ。

 

 って、話に関係ない上に今なにを考えていたのか霧散しちゃった。

 

「ん~? なんで満腹なのかな?」

 

 なにかあったっけ?

 なにがあったっけ?

 

 意識がなくなる前、なにをしていた?

 

 ……。

 わからん!

 

 ウサギ……アルミラージの首を咥えてそのまま噛み殺した記憶はあるが、その辺りから曖昧でほとんど思い出せない。

 

「うぇ……気持ち悪い」

 

 全身が血まみれだった。

 特に口と首元が血でドロドロビカビカに汚れている。

 自分の血かどうかはわからない。傷はほとんどなくなっている。

 肌に張り付き凝固した血の感触が気持ち悪い。

 

「てか寒っ」

 

 見渡すと辺り一面氷景色。

 数十にも及ぶモンスターの氷像が散乱している。

 倒れて砕けたのか氷と魔石だけ残っているところもあった。

 

「んー? んー。……うん」

 

 まぁ。

 とりあえず、回収しよう。

 地上に戻ったらなにもかもを買い直さないといけない。

 いや、まず必要なのは住処か?

 生活するのにこれでお金足りるかな?

 

「うわー……また半裸族に逆戻りかぁ」

 

 革鎧は全壊。リサイクルできるかもわからない残骸だけが散らばっている。

 リュックもあちこち破れ、穴だらけで入れた物がこぼれてしまう。

 武器は全損。ダガーもナイフも潰して溶かさないと資源にもならないだろう。

 念の為持っていた風呂敷包みがあって良かった。これで魔石を包んで持ち帰れる。

 残った服は……ぼろぼろのシャツか。それ以外の選択肢がない。

 

「よし。そんじゃ、改めまして行きましょうかね!」

 

 地上へ向けて、れっつらごー。

 

 

 

 

 

 ―― 第7階層 ――

 

 

 

「つ、疲れた……てかまたお腹空いた」

 

 満腹から飢餓状態までこれだけ持ち堪えられたんだからまだ良い方だろう。

 上に向かえば向かうほど楽になるとはいえ、疲労は溜まるし魔力は減るし拳は痛むしで消耗しないはずがない。

 浮遊状態からの飛翔、勢いをつけたライダーキックとか楽しかったけど天井が低くなってきたのでもうここからは使えない。

 もうさっさと出て行けとばかりにダンジョンからぞんざいに生み出される虫共を焼き払う。

 アリっぽいモンスターの断末魔がお仲間を呼び寄せるが、そのお仲間もすぐに焼死体の仲間入りとなる。いや消滅するから死体は残らないのだが。

 魔石を拾う作業も飽きてきた。てか労働の割に稼ぎにならないような気がする。もう風呂敷がいっぱいだ。

 

 ……なんとなしに魔石を口に入れてみた。

 飴玉の代わりにビー玉を舐めるような感じで。

 それネタ的にはおはじきだろって? 知らんがな。

 流れでなんとなく噛んでみた。……あ、砕けた。

 仕方がないので飲み込む。

 

「……微妙」

 

 美味いわけでもなく、かといって不味いと吐き捨てるほどでもなく。

 余らせるのはもったいないから全部食べておく。これで空腹が紛れてくれれば御の字だ。

 ごちそうさま、と。

 

 ――さて。

 あと少しで地上だ。

 深夜だからか、これまでの道のりでも冒険者の気配がほとんどなかった。

 すれ違いそうになったら頑張って避けていたのでまだ誰とも出会っていない。

 

 そんなこんなで第6階層。

 ふと。

 人の気配がした。

 闘争の気配。若々しい気配。初々しいとも言う。青いとは、言わないでおく。

 

「一人か……ちょっと危ないんじゃないかな」

 

 おそらく男。反応が小さいからたぶん少年であろう。

 こっそり様子を見に行く。

 私の感知範囲内で未来ある命が消えるのは気分が悪い。

 

 こそこそ。

 

 ……見えた。

 

 奇しくも私と同じ白髪赤眼の少年。防具の類を身に付けていないが、大丈夫なのだろうか。

 と。心配はすれど、助けはしない。

 なぜだかはわからないが、彼はそれを望んでいないような気がする。

 

 その彼と相対するはウォーシャドウ。

 質量を持つ影のようなモンスターで分類がどこに属するのかよくわからない奴である。

 物理攻撃が通じるので霊ではなさそうだが。

 

 複数のウォーシャドウに囲まれても、彼の瞳は諦めていなかった。

 あれを無事に切り抜けられるほどの実力は有していないだろうに。

 命を懸けて闘志を燃やし、勇猛果敢に戦う。

 その姿は、とても眩しくて。

 

 とても、羨ましいと思えた。

 

「……」

 

 殲滅。

 決して優雅と言える戦い方ではなかった。

 泥臭く、血に塗れた戦闘だった。

 それでも、私には彼がとてもかっこよく見えた。

 

 そして、

 その彼と、

 目が合った。

 

 瞬間、

 

 それはまるで成り上がる英雄の一幕のような。

 そんなものの始まりを告げられたようで。

 胸に込み上げるこの気持ちはなんだろうか。

 これを言葉に表すなら、

 

「それはきっと――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 どさ。

 

「ってうぉい!?」

 

 物思いに耽っていたら少年が突然倒れた。

 思わず素で突っ込んじゃったじゃないか。

 てかそもそも少年はこっちに気付いていないのだから目が会うはず無いじゃないか。

 

 ……なんだかなぁ。

 

 冷めた。

 興が醒めた。

 気持ちが落ち着いてしまった。

 セレスティア精神さんお仕事頑張りすぎィ!

 

「もしもーし? 大丈夫ですか~」

 

「……」

 

 あ、ダメだこれ。

 気絶しちゃってる。

 

「はぁ……まったくもう、しょーがにゃいにゃあ」

 

 茶化さないとこんなことはできない。

 少年をお姫様抱っこする。

 背中には翼と風呂敷包みがあるから。仕方ないじゃないか。他に手段がないのだから。

 浮遊ってこういう時とか便利だ。揺れないから。

 

 私のシャツと少年の服を挟んで少年の体温と心音が伝わってくる。

 だが、それが段々と微弱なものに変わっていく。

 

「……ちょっと弱ってきてない!?」

 

 そうだった。怪我人だったんだ。

 ついうっかり見殺しにするところだった。

 

「【DI(ダールイ)AL(アリフラー)】」

 

 すぐさま治療の呪文を唱える。

 浅かった呼吸が落ち着いた健常な状態に戻った。

 危ない危ない。

 

「うぁ……本格的に私もやばぃ、か……」

 

 立ち眩み。

 だが、根性で踏ん張る。

 魔力が底を尽き掛けている。

 空腹な上に魔力切れ、体力も限界。武具も道具も無し。

 

「さっさと上に行きたいんだけど……」

 

 肝心の道がわからない。

 

「少年少年。起きてください」

 

 ……。

 

 ぼごっ。

 じゅぼ。

 ずもももももも。

 

「あぁもうそっちはお呼びじゃないってのにぃ!! 【MA(ミームアリフ)HA(ヘーアー)LI(ラーイ)TO(ターザンメ)】」

 

 少年の返事の代わりに湧いてきたモンスター共を八つ当たり気味に大火の呪文で焼き払う。

 そして更に枯渇していく魔力。

 だるい。

 身体の疲労に重ね掛けされる倦怠感。

 頭がガンガン痛む。

 薄れていく感覚。

 

「んなろぉぉぉ!」

 

 気合一発。

 浮遊する余力もないので走り駆け出す。

 少年を抱えている分機動力が下がるが大した問題ではない。

 途中湧いて出てくるモンスターは蹴り殺す。可能であれば速度に物を言わせて振り切る。

 

 

 そうして。

 ようやく。

 

 

「……で、た」

 

 地上だ。

 生まれて始めての、外だ。

 なんて広い世界なのだろう。

 空に浮かぶ雲に光が差し、朝日が昇ろうとしている。

 ダンジョンの中しか知らないとやはり時間も感覚も感性もおかしくなってしまう。

 狂ってしまう前に、ここに来れて良かった。

 なんかタワーの上から熱い視線を感じるがそれはきっと気のせいだと思いたい。

 殺意とか嫉妬とか観察とか色々と混じった複雑な気配だが、それ以上のことはわからないので放置する。こんな状態じゃどのみちなにもできないし。

 

「う……うぅん」

 

「あ、少年少年。自宅はどこでしょう」

 

「ん……」

 

 フラフラと、半分以上夢心地であろう少年に肩を貸してゆっくり歩く。

 私だってもうちょっと過労死しそうなくらいに疲れているのだが、この少年を放ってはおけない。

 宿屋の場所だって知らないし、深夜……いや、早朝に出歩いている人に道を尋ねるのも危険だ。

 そろそろ、本気で倒れそうだし。

 たぶん今の私は一般人以下の戦闘力しか発揮できないだろう。変質者に襲われたら終わるね。

 

 ……歩く。

 

「ベル君!?」

 

「かみ……さま」

 

 街の明かりから少し離れた寂れた場所。

 教会だったであろう廃墟の前で見た少女は、

 それはとっても。

 とても、

 とてもとても、

 とてもとてもとても、

 それはもう言葉では言い尽くせないくらいに、

 

 

 神秘的だった。

 神々(こうごう)しく、神々(かみがみ)しく。

 魂が震える。アレが神であると。天上の超越者であると。存在と本能から告げられて。

 

「ぁ、限界……」

 

 それで、

 もう、

 意識が……。

 

 

 ボクもう疲れたよパトランシュ。

 

 くぅ~ん。

 

 

 

 ……。

 

 むしろ迎えに来るのが私じゃないのかと。

 天使じゃなくて悪かったね。堕天使でごめんねぇって堕天使で悪いかよおい。

 

 

 ……。

 

「神様。僕、強くなりたいです」

 

 ……。

 そう、かい。

 ……素敵だな。

 かっこいいな。

 羨ましいな。そして、少しだけ……ほんのちょっとだけ、妬ましい。

 熱い。眩しい。温かい。

 ……。

 

 頑張れ、男の子。

 

 

 

 ……ねむ、ぃ――――――




ステイタスに悩む。
どういった表記にすれば良いのか、皆目見当も付かない。


MAHALITO【マハリト】:大火。魔法使いスロットレベル3。ベギラマとかファイラ的なグループ(列)を攻撃できる呪文。
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