いや、魔法変えました。これについては、なんともいえねぇ。
イフリートは出番もなく出番がなくなりました。
1
「マルド・ギールは久しく忘れていた感情を思い出した」
藍色の髪を縛った一人の美青年―――マルド・ギールは打ち震えていた。片手に抱いた『END』と描かれた古びた本をそっと、地面に置く。
こんな事があっていいものであろうか、いやない。マルド・ギールは今までどれだけの時間と力を費やした事か、そんな物考えてもキリがない。幾度、この様な事があったのだ。
わなわなと唇を噛み締める、つぅっと血が流れた。その細目がギンッと見開かれた。
この感情は嫌いだ、人間に近くなってしまう。だから、忘れてしまわなければならない。
「―――それは、怒りだ」
グバァっと魔力の奔流が起きた。ただそれだけで風が突風へと変わりバサバサと髪が揺れる。
マルド・ギールが歩みを始める。周りを見渡せばありとあらゆる大地が陥没し、挙句の果てには焼き焦げている。
「この呪法の残留は―――ジャッカルか、ふんっ。幾度マルド・ギールに逆らえば済むというのだ」
心から叫びたい。
「この庭はっ! このっ! マルド・ギールが丹精込めてっ! 呪法さえも使わず作り上げたというのにっ!!」
憤慨だ。あの悪魔め、滅悪せねばならない。
「なに、体なぞヘルズ・コアでまた作ればいい」
まず先にこの庭を直さなくては、焼け落ちた花びらを手に取り呪法を唱える。
「―――ふんっ。このマルド・ギールが怒りを思い出す事になるとは」
たちまち庭園は元の姿に修復された。
あぁ、これこそが庭園の姿だ。マルド・ギールは思う。この可憐さと綺麗さを兼ねそろえた芸術的な庭園に思いを寄せて怒りを忘却しよ―――
「だぁぁぁぁっ!! 何やあの写真はぁぁぁ!! あんのクソガキぃぃ、思う存分に爆発させたるわぁぁぁ!!」
ドゴォォォォンっっ!! マルド・ギールの目の前の庭園が爆発した。爆発に呼応する様に周囲の草木も爆ぜる。
声がする方に振り返る。そこには、耳をピンっと尖らせたジャッカルが青筋を浮かべて辺りをドカンドカンと爆発させていた。
「ふんっ―――ジャッカル、貴様」
「ぁ? なんやねんな、こっちは忙しい言うのにやな」
マルド・ギールが打ち震える。ジャッカルは小首を傾げる。
駄目だ、この狐は、顔だけじゃなくて脳みそまで狐らしい。
マルド・ギールは眠りにつこうとしていた感情を呼び覚ます。
「貴様は―――このマルド・ギールから怒りという感情を思い出させたっ!!」
「はっ?! ま、待ってや! これには、深い訳っちゅうヤツがやな!?」
「まだ未完成だが、これを先に貴様にくれてやろう」
ゼレフ書の悪魔が持つもう一つの姿、エーテリアスフォームへとマルド・ギールは変わる。
未完成だが、それでもジャッカル一人滅するには容易い。
「堕ちよ煉獄へ―――メメント・モリっ!!」
「んぎゃああああああぁぁぁ!!?」
その日、
2
「―――うひゃひゃひゃっ!! ジャッカルのあの顔っ、マルド・ギールの怒り何度目っ。二日に一回は怒ってる」
絶賛大爆笑中。ヘルズ・コアを覗きに行くとジャッカルが収容されてた。
ラミーがファファファ笑ってたから、一発ぶん殴った。マルド・ギールがぷんすかして、本に頬ずりしてた。キョウカがそれ見て悶えてた。
今日も平和だ、皆人間じゃなくて悪魔だけど。
人間なんてオレしかいないけど。別に寂しくはない、シルバーにマルド・ギールにジャッカルもいるから。何かとこの三人は大好きだ。育て親だし、面白いから。
あ、後キョウカも少し。マルド・ギールの寝室にお邪魔して寝顔を撮ったヤツを見せたらお金くれたから。
「あーぁ……シルバー早く帰って来ねぇかなぁ」
この世界で初めて会って育ててくれた元人間な悪魔。言葉や常識、魔法を教えてくれたオレの親みたいな存在。
たまに、今みたいにどっかにフラリと出て行ってフラリと帰ってくる。だけど、帰ってくる度に色んな事を教えてくれるし、魔法の訓練もしてくれる。
「腹減ったし……
全属性を食べる事が出来て、その食べた属性を吐き出したり体に纏う事が出来る。まぁ、単純に吐くだけだからかわされたりするけど。
そして、氷の滅悪魔法。
育ての親であるシルバーから教わった氷の滅悪魔法。でも、マルド・ギール達の前では使うなといわれている。何故かは知らないけど。
シルバーと修行する時は、どこか少し遠いところへ行ってからする。まあ、外の世界ってのも楽しいから特に不満はないんだけどねぇ。
「腹減った!」
手から滅悪魔法で、氷を生み出し自分の口の中に放り込む。
「お、ぇ」
すぐに吐く。
なんでかわからないが、自分で作った氷は食えない。シルバーのは食べれるの不思議である。
前一度シルバーに聞いた時に言われた言葉は、
『お前は自分がした排泄物を食いたいと思うか?』
何ともいえない気分である。腹が減るとつい、氷を生み出して口の中に突っ込む癖をやめなければ。
そう考えてはいるが、どうも駄目である。早く治したいなぁ。
「早くシルバー帰って来ねぇかなぁ」
まだまだ沢山聞きたい事とか教えて欲しい事があるというのに。
じたばたじたばた。
………むなしくなってきた、暴れたら更に腹が減った。
「とりあえず、何か食べようかなぁ」
そう考えて自室を飛び出した。