大江山の鬼共   作:ヴェルクマイスター

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オリジナル要素が出てきます。


第一話

 明朝。

 俺は、数年ぶりとなるDMMORPG『ユグドラシル』を起動させる。 5日ほど前に、私用メールアドレスに一通のメールが届いていたからだ。

 差出人は、『モモンガ』さん。 内容は、あの人気絶頂だったユグドラシルが5日後サービス終了するのこと。 そして、最後に皆で集まりたいと言うお誘いだった。

 このメールを見た時は、『懐かしい』や『楽しかった』と言った感情が芽吹いて、すこし涙ぐんでしまった。

 

 何故、数年ぶりの起動かと言うと、所謂仕事である。

 仕事と聞くと、皆はこう思うだろう。 定休日とか有給休とれるじゃないか、とね。 もちろん定休日等はあったさ、入社したてはね。

 入社時から五年位は、学生時代のin率や時間ではないにしろ、結構ユグドラシルを起動させ、『星熊 勇儀』としてのロールプレイを楽しでいた。

 でも、出世するとそうはいかなくなったんだよ。 部下の尻拭いは当たり前、残業も当たり前、親密な他社との付き合いや、上司達の付き合い、他にもたくさん原因はあるが、主にこのせいでも合った。

 するとどうだろうか。 必然的にユグドラシルには入らなくなったし、『アインズ・ウール・ゴウン』の皆とも連絡を取らなくなっていた。

 

 仕事に生きる。 と言っても、宝くじであたった30億があるでしょ? と質問されたら、少し困るな。

 その30億で一生暮らしていけるかもしれないが、仕事をしない人間はどうなると思う? 真っ当で立派な大人と言えるだろうか。 ・・・言えるはずがない。 そう言う人間は、社会不適合者やマダオ、ゴミクズ、人類のダニ等といった、堕ちた人に成り下がってしまうんだ。

 そう、仕事って言うのは人のステータスだ。 人間に無くてはならない物、必ず必要なもの。

 

 ・・・まぁ。 その無くてはならない物で、俺の三度目の人生がなくなったわけだが・・・。

 そんなこんなで、忙しくロクにインできなかった俺には、片手間でできる息抜きが必要だった。

 趣味の一つである車の観察、乗車。 これが俺の新しく始めたものだった。 資金はユグドラシルで課金してたとはいえ、かなり有り余っていたため、車に意識を向けるのは実に簡単だった。 いや『浮気』か。

 ちょっとした仕事の合間や、会社経由で仕事用の車一台と、完全個人用の車を四台買い、そのままユグドラシルを置いて没頭してしまった。 まぁ、そのうち二台は勇儀姐さんの痛車なんだけど。

 

 

 大分話がずれた。

 

 とにかく、『モモンガ』さんからのメールに返信をすることにしたんだ。 過去の出来事になるが、ユグドラシルでの人生は、すごく充実していた。 俺自身が勇儀姐さんに成りきれていたと言う事実もそうであるが、現在所属しているギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の前に、我らだけで結成されていたギルドのことも含めて全部。

 返信の内容が、ユグドラシルのサービス終了日は、仕事が休みなのでその日の朝から参加する、と言う主旨を打って伝えた。

 すると、10秒後には『モモンガ』さんからの返信が帰って来ていて、中身は非常に簡素であったが、そんなに嬉しいんだろうなと、苦笑が隠せなかった。

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 ――ナザリック大地下墳墓 第九階層――

 

 

 ユグドラシルへと入るときに感じる、不思議な感覚を久しぶりに味わう。

 

 

「ん・・・。 最後はここで落ちたのか」

 

 

 瞑っていた目を開けると、数年前から見ていなかった、懐かしき見知った廊下があった。

 五メートル先には、豪華なマホガニーで出来た巨大な両開きの扉が有る。 そしてその先には、『アインズ・ウール・ゴウン』のギルドメンバーが一同に集っていた、四十一人分の円卓と席が揃う大きな部屋だ。

 

 流れるような動きで、メニューを開き、アイテム欄から『星熊之盃(ほしぐまのさかずき)』を取り出し、左手へと持つ。

 『星熊之盃』とは、勇儀姐さんが持っている『星熊盃』だ。 クリエイターツールを使って、ただの『盃』から擬似させた物である。 外見こそ星熊盃だが、効能を似せるにはすごく苦労した。 試行錯誤を繰り返して、様々なデータを組み合わせることでやっと真似る事ができたんだよ。

 そして、異形種『鬼』だけの唯一の回復アイテム『酒』を、取り出して、ゆっくりと注ぐ。 口に盃を付けて一献、喉を潤す。 すると、体力は限界にも関わらず、回復するエフェクトが体を包み、俺の頬が朱色に染まる。

 

 

「ふぅー・・・。 あれま、設定が戻ってる」

 

 

 こうやって酒を飲んでも、ユグドラシルでは味が無いから何も感じることが出来ない。 が、それだけでも俺の気分が上がるからいいんだけどさ。

 まだ酒が残っている星熊之盃を片手に、コンソールを開いて回復エフェクトをオフにして、そのまま扉へと歩く。

 

 

 カラン。 カラン。 カラン。

 

 

 足を進める度に、鳴り響く下駄の足音。

 

 メールで朝と伝えたが、さすがに六時は早すぎたかとすこしばかり後悔しながら、心地良い下駄の音に耳を傾ける。

 高級感が漂うマホガニーの扉に手をそっと添えて、いざ開かん。

 

 

 ――――あ、おかえりなさいです。 勇儀さん!

 

 

 音もなく扉が開いた先には、俺達『アインズ・ウール・ゴウン』のギルドマスター『モモンガ』さんが片手をあげ、嬉しい表情のアイコンを出して、俺を迎えてくれていた。

 

 

「・・・、えっと。 大分、待たせちゃったかい?」

 

 

 なにこれ、すげー緊張するだけど。

 仕事上、目上の人達に結構挨拶とかしてて、余裕だったから緊張とは無縁だなって思ってたらコレかっ。

 

 

「今さっきログインしましたからそこまで待っていなですよっ」

 

 

 モモンガさんのうれしいアイコンが駄々漏れ!

 もし、俺がモモンガさんの立場だったら、もっと怒ってるとおもうんだけどなぁ。 このギルドに途中参加者で、数年間もログインしないやつなのに、よく寛大で要られるよ。 俺なら絶対切れてると思う。 あ、モモンガさんが眩しい!

 

 ・・・でも、まぁ。

 

 

「・・・ありがとう、モモンガさん。 そしてただいま!」

 

 

 そんなモモンガさんだからこそ、我らだけのギルドから移籍しても楽しかったのだろうと思う。

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

「え、勇儀さんって男の方だったんですか!?」

 

 

 あの後は、お互いに自分の席へと座って色々ぶっちゃけた話しをしまくった。 特に仕事の話しとか 仕事とか仕事とか。

 

 

「うん? もちろんさ。 元々ユグドラシルを始めたのも、星熊 勇儀としてなりきれると確信したからであって、リアルではちゃんとした男だよ」

 

 

「うはー。 すごい一筋魂感じますね・・・。 確か、勇儀さんのロールプレイって言うのは聞いたこと有りますけど、ずっと女性の方だと思ってましたよ・・・。 だって、声とか歩き方とか、仕草とか女性のそれですもん」

 

 

 モモンガさんが困惑のアイコンを出す。 そんなに意外かなぁ。 まぁ、ガチのネカマじゃない限り、こんなことする奴なんていないだろうしね。

 でも、ちょっとうれしく感じる。 他人から観て、俺が星熊 勇儀として、ちゃんと成りきれているってことを証明されたからだ。

 

 

「照れること言ってくれるねぇ。 あ、わかってると思うけど、私ネカマでもそっち系でもないからね?」

 

 

「ええ。 もちろんわかっていますよ!」

 

 

「ん~? それは本当かい? こりゃ確認しなきゃだめだね。 ちょっと闘技場行こうか」

 

 

「え゛ぇ゛っ。 あ、えと。 で、出来れば遠慮したい感じ、なんですけども・・・」

 

 

 俺は今、すっごい笑顔だと思う。 モモンガさん、かなり焦って動揺してるし、今にも逃げ出しそうな勢いだ。

 

 

「つべこべいわず、ほら! さっさといくよ!」

 

 

 自席からいきよい良く立って、右手の人差指に装備されている指輪を発動させる。 

 この指輪は『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』と呼ばれ、このギルドに所属する全てのメンバーが保有している超便利な代物だ。 何故たいへん便利な物かというと、ナザリック大地下墳墓は、原則全階層を徒歩で移動しなければいけならない。 この条件を、システムの中から違反と断定されない程度に改良し、テレポートと言う魔法が込められているのが、この『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』と言うわけだ。

 即ち、この指輪さえあれば、ナザリック大地下墳墓をどこでも行き来できるということになる。 もちろん制限区画は数個程あるが。

 

 『キラリ』と指輪が光ると、視界が一面黒く染まり、目がやられないようにゆっくりと光景が写り始める。

 

 

 

 

 

☆ 円形闘技場 ☆

 

 

 

 

「ここに来るのも、何時ぶりだろうかねぇ」

 

 

 俺の前に広がる景色は、茶釜さんが創りだした建造物。 古代ローマのコロッセウムを基に考えた場所らしい。

 丸く連なる、無数の客席。 回りには、色々な所に装飾された膨大な魔法の光がこの場所を明るく映し出している。

 

 

「たしか、此処にはアウラとマーレがいたはずだけど・・・」

 

 

 アウラとマーレ。 同じく茶釜さんが創りだしたNPCだ。 二人はダークエルフの双子と言う設定で、姉が男装のアウラ、弟が女装のマーレと製作者の趣味満載な外見をしている。

 

 そうこう懐かしんでいる内に、モモンガさんが闘技場へと転移してきた。

 

 

「・・・・・・勇儀さん」

 

 

「あん? なんだい?」

 

 

「絶対の絶対に、手加減してくださいよ」

 

 

 すごくせっぱ詰まった声音で話しかけてくるモモンガさん。 それとプラスさせて、汗アイコンを出している。

 数年ぶりとなるユグドラシルに、数年ぶりとなる戦闘・・・。 モモンガさんとの戦いは、数えきれないけど、またそれも数年前の事。 

 俺はコンソールを開いて、モモンガさんにバトルを申し込む。 このシステムは主に、ギルド同士やギルド内同士のためにある戦闘システムだ。 この戦闘システムのメリットは、バトルにおけるルールを細部までに設定できたり、バトル終了後にはアイテム体力やMP、装備の耐久値などが全てリセットされる事だ。 逆にデメリットと言えば、一対一でしか戦うことが出来ないくらいか。

 今回のモモンガさんとのバトル設定は、片方がHP三〇パーセント以下になると負ける。 と言う風にしてある。

 あとは相手の承諾を待つだけ。

 

 

「あはははは!」

 

 

 俺は右手に持った星熊之盃を、アイテムボックスへとしまう。

 

 

「山の鬼に――――」

 

 

 アイテム欄から俺の得物を選び、呼び出す。

 

 

「横道はないよっ!!!!」

 

 

 『鬼の器』と名前に記載された、異形種『鬼』専用の片手武器だ。 形状は、皆が知っている通りに鬼の金棒である。 ただ、全長は俺の顔の部分に持ち手があるため、二メートルちょっとだと思う。

 この武器は遺産級で、ダメージ量とレア度的にはそこまで高くないが、注目するべき点はそこではないのだ。 最大の長所となる着目点は、この武器能力。 それは相手を攻撃して与えたダメージ量÷5分の数値を、防具の耐久力を削ることだ。 耐久力が無くなった防具などは、強制的に装備から外れて、修理をしない限り再装備不可能となる。 かなり嫌われた武器で、俺が重宝したものだ。

 

 俺が決まったセリフが終わると同時に『バトル・オン』と目の前に文字が表記される。

 

 

「いや、ほんとお願いしますっ!? <マジック・フィールド/魔力の砦>」

 

 

 モモンガさんは初っ端に、自身を護る上位の魔法を展開させる。

 あぁ、甘い。 モモンガさん、それは鬼に対して定石すぎるよ!

 

 

「残念! 今の私は久しぶりの戦いで、体が喜んでるのさっ!! <オニノシセン/妖かしの珠>」

 

 

 鬼の器を持たない左手を上に掲げて、モモンガさんへと振り下ろす。すると、頭上から赤黒く輝く光弾が発生して、手を振り下ろした方向へとまっすぐ発射される。

 <オニノシセン/妖かしの珠>と言うのは、異形種『鬼』がたった一つしか持たない遠距離攻撃の妖術と呼ばれるものだ。 鬼にとっての魔法とも言える。 この効果は、攻撃から身を守る魔法のバリア系の耐久値削りに特化した攻撃方法なのだ。 デメリットとしては、連発不能であることと、異形種『鬼』の能力値からして精々5発が限界ってところ。

 俺の妖術がモモンガさんの展開したバリアにあたると、勢い良く爆発して煙がモクモクと脇でてくる。

 ふーむ、どうしようか。 このまま、モモンガさんに突っ込んで鬼の器を振るうのもありだけど、それこそ俺が定石となるな。 よし、歩いていこう。

 

 

「<サモン・ダーク・デッドナイト/死の従騎士召喚>」

 

 

 ゆっくり、ゆっくりと近づいていく俺に、召喚魔法を使用したモモンガさんは続け様に召喚魔法を唱える。

 

 

「ちょ、ちょっと、怖いですよ、勇儀さん! <サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル/根源の火精霊召喚>」

 

 

 なるほど、ダーク・デッドナイトを繋ぎの時間稼ぎとしてプライマル・ファイヤーエレメンタルで俺にダメージを与えるって所か。 まだまだ序盤だな。

 素早く接近してきたダーク・デッドナイトは、いち早くに俺を切りつける。 ・・・が、それだけだ。 攻撃を受けたエフェクトが出るが、実際のダメージ量はたったの1。 『鬼』の種族防御力値と一つの種族レベルの効果が桁違いに高いため、大抵の攻撃は二桁以内で収まる。

 剣を振り下ろし、ダメージを与えたダーク・デッドナイトに、趣向返しとして、俺は鬼の器を上へと振りかぶり、そのまま真下へと振り下ろす。

 俺の攻撃を受けてしまったダーク・デッドナイトは、たったの一撃で体力を全て奪われ、その体を霧散する。

 

 ふふっ。 片手で壊し、片手で死を与える。 何もかもを片手で壊滅させる! それこそが俺、星熊 勇儀としての戦闘スタンスだっ!

 

 

 ――――キュオォォォォオオオオ!!

 

 

 モモンガさんが召喚したプライマル・ファイヤーエレメンタルは、周囲の酸素を莫大に吸い上げ、炎を辺りへと撒き散らす。

 既に戦闘状態となったプライマル・ファイヤーエレメンタルはこちらに顔を向けて咆哮を放った。

 いいねぇ。 ほんと、わくわくしてきたよ。

 

 

「さぁ、戦いはまだ始まったばかりさっ! 来な!」




主人公のアインズ・ウール・ゴウンに入るまでの過去話は、間話としてちょくちょく入れていきます。
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