罪深き萌えもん世界   作:haruko

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第0話 1 始まらない

萌えっこもんすたぁ、ちぢめて萌えもん。

この世界に存在する不思議な生き物で、人間と萌えもんは一緒に生活したり、一緒に遊んだり、一緒に萌えもんバトルをして強くなったり、そうやって人間と萌えもんは世界中で共存して生きている。

 

 

 

 

 

これはそんな世界で生きている、

萌えもんを持たない少年のお話。

 

 

 

 

 

ここはカントー地方の片隅、マサラタウン。

カントー一小さいとされている限界集落で何もないまっさらな街とさえ言われているが、そこにはカントー地方で最も有名な人、オーキド博士と呼ばれている人が、日々萌えもんに関する研究をしている。

 

 

「そういえば、もうすぐ萌えもんリーグのシーズンですね、博士」

 

「おお、そうじゃ。そのリーグを目指して旅に出るためにレッドとグリーンとブルーは明日萌えもんをもらいに来るんじゃからのう」

 

「は? なんですかそれ? 聞いてませんよ?」

 

「ん? 言っておらんかったかのう?」

 

「勘弁してくださいよ博士、萌えもんたちの状態チェックするのは俺なんですよ?」

 

「おお、すまんすまん。じゃがうちのポケモンたちの体調チェックはいつもお前がしっかりやってくれているじゃろうに。問題ないわい」

 

 

全く、おおざっぱな爺さんだな。

この耄碌の始まっている爺さんこそが萌えもん界の権威と呼ばれているオーキド博士。人呼んで萌えもん博士だ。若いころにこの研究室を作ってからうん十年ここに引きこもり萌えもんの研究だけをし続けてきたという名実ともにド変態の爺だ。

 

 

「……貴様今なにを考えておる」

 

「何も。あ、俺萌えもんチェックいってきまーす」

 

「こら待てミ」

 

 

 

 

バタン

…………

 

 

 

 

 

「相変わらず勘だけは鋭い爺だぜ」

 

「四年も一緒に研究所にいれば考えてることもわかるってことじゃないですか?」

 

「実際他の研究員は別の研究所に派遣されたりしてそんなに長いことここにとどまらねーしな」

 

「そうね、もともとこの町狭いから生まれた時から知り合いみたいなものだし、案外一番博士と付き合い深いんじゃないの? ミズキ」

 

「反吐が出るからやめろ。終わったぞおまえら」

 

「わーい。サンキューミズキ」

 

「ごくろーさまです、ミズキ様」

 

「おつかれさま。ツンデレミズキ」

 

「怒るぞ?」

 

 

 

今俺の目の前のベッドの上で跳ねたり座ったりくるくる回ったりしてはしゃいでるのが俺たちが研究しているこの世界の生物、萌えもんである。

 

 

 

今しゃべっている中で一番はしゃいでいる元気な男の子は

とかげ萌えもん、ヒトカゲ。

おしとやかで優しい、気のつかえるかわいい女の子が

たね萌えもん、フシギダネ。

生意気ながらも本当は爽やかでいい娘な

かめのこ萌えもん、ゼニガメ。

三匹とも俺が卵を孵し、育てた萌えもんだ。

 

 

 

このカントー地方の初心者トレーナーたちはこの三匹の中の一匹を選び萌えもんトレーナーとしての一歩を踏み出す。

その中の一人であるレッドとグリーンとブルーが明日こいつらの誰かと一緒に旅に出るのだ。

 

 

「まあレッドもグリーンもブルーもいい奴だからさ、一緒に楽しくやってくれよな」

 

「あたしはあんたが連れて行ってくれるのを期待してたんだけど?」

 

「そういうなって、ゼニガメ。楽しい旅ができると思うぜ。あいつらと一緒ならさ」

 

「うおー、もえるぜぇ! 俺早く萌えもんバトルしてみてぇ!」

 

「焦るなよヒトカゲ。あと十数時間のがまんだろ?」

 

「わたくし、うまくやっていけるでしょうか? ご迷惑かけないか心配で心配で……」

 

「大丈夫、誰と一緒でもお前はうまくやれるよ、フシギダネ」

 

 

三者三様の反応を見せているがなんだかんだ言って全員楽しみで仕方がないようだった。

まったく、かわいいやつらめ。

 

 

「おら、もう休め。明日ははええんだぞ」

 

「「「はーい」」」

 

 

元気よく返事をした三匹は飛び跳ねながら自分たちの布団にもぐりこんでいった。

 

 

 

 

 

「ねえミズキ」

 

「なんだよ、まだ起きてたのか、ゼニガメ?」

 

「俺も起きてるよ」

 

「わたくしも」

 

「おいおい」

 

 

明日早いって言っただろうに。

 

 

「とっとと寝ろ。明日からは大変なんだぞ」

 

 

 

 

「ミズキ」

 

「どうした?」

 

「私たち、今日旅に出るわ」

 

「なんだよ? さみしいのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてミズキはトレーナーにならないの?」

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「博士から、子供が萌えもんを持って一人旅をすることの年齢制限は十歳であると聞いております」

 

「ミズキってもう十四歳だよね? なんでまだここでじっちゃんの手伝いしてるのさ」

 

 

 

あの爺、余計なこと言いやがって。

 

 

 

「何でもねえさ、まだ俺はここにいて研究がしたい、それ以上も以下もねえよ」

 

 

 

 

「実は私たちね、誰がミズキに選ばれるか勝負してたのよ」

 

 

 

 

は? と思わず声が出る。

 

 

 

 

「俺たちがここに来たのが一年前くらいなんだっけ? そっから今までミズキに世話してもらってさ。ミズキと一緒に旅したいな、って俺が言ったんだ」

 

「そしたらゼニちゃんが大暴れしちゃいまして、それならばとわたくしが、全員でだれが選ばれるか勝負しましょう、という提案をさせていただいたのです」

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

 

 

ゼニガメが顔を赤らめて怒っている。

それを微笑ましく思いながらも、心中はあまり穏やかではなかった。

そんな風に思ってくれた、言ってくれた萌えもんは四年間で初めてだった。

いや、そんな風に思ってくれることなんかあるはずないと思っていた。

 

 

「と、とにかく!」

 

ゼニガメが仕切りなおす。

 

 

「私たちはそうやって勝負してたの。それなのにミズキは旅に出ない。だから博士に聞いたのよ。なんでミズキは旅に出ないのか? ってね」

 

 

「しかし、博士にもお答えをもらうことはできませんでした」

 

 

「だからここを離れる前にミズキに聞こうと思ったんだ。なあミズキ、俺たちと旅するのは嫌なのかよ?」

 

 

「わたくしたちと行くのが嫌なのであれば、そういってもらって結構ですよ?」

 

 

「私たちはミズキが好きなのよ。だから納得したいだけ。お願いミズキ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒトカゲ。

フシギダネ。

ゼニガメ。

 

 

 

 

 

 

俺は、

おれは、

ほんとうは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、そんなたいそうな理由はねえさ。じゃあな、いい夢見ろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか。でもやっぱ残念だったなあ……」

 

ヒトカゲがそう言って眠りに落ちる。

 

「わたくしもです。あなたとの旅を味わいたかった……」

 

フシギダネがそう言って眠りに落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

「わかったわ。

でもねミズキ、これだけは覚えておきなさい」

 

 

ゼニガメが今にも落ちそうな眼をして

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は明日来るトレーナーと一緒に最強の萌えもんになる

あとから来たって遅いんだからね」

 

 

 

 

 

 

 

そういいながら気絶するかのように眠りの世界へと意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう、ヒトカゲ。

うれしかったぜ、フシギダネ。

肝に銘じておくよ、ゼニガメ。

 

 

 

 

そして、

卑怯で卑屈で

お前らから逃げるしかできないこの俺を、

 

 

 

 

許してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「余計なこと言わないで下さいよ、博士」

 

「悪かった」

 

三匹が眠って数時間、ミズキはいつものようにデスクワークへと戻っていた。

 

「あいつらはおぬしのことを親のように慕っておったからのう。わしが何かを言って言いくるめるのは違うと思ったんじゃ」

 

「単に言い訳が思いつかなかっただけなんじゃないんですか?」

 

「……」

 

このくそじじい。

 

 

 

 

 

 

 

「ミズキよ」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ許せんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何の話ですか?」

 

 

「お前はこの四年間でたくさんの萌えもんと接し、すべての萌えもんに愛情を持って育ててくれた。そろそろ自分を許してやってもいいころじゃろう。明日の九時、三人はここを出るそうじゃ」

 

 

 

 

そうですか、としか返せない。

 

 

そして次にくる言葉もわかっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミズキ、お前も一緒に「博士」

 

 

 

 

 

 

 

静かで、小さくて、力強くて、

遠いのか近いのかもよくわからない。

そんな声をオーキドは受け取る。

 

 

 

 

 

 

「俺があいつらに与えてたのは愛情なんかじゃありませんよ、それに……

 

 

 

 

 

 

『四年も一緒に研究所にいれば考えてることもわかるってことじゃないですか?』

 

『実際他の研究員は別の研究所に派遣されたりしてそんなに長いことここにとどまらねーしな』

 

『そうね、もともとこの町狭いから生まれた時から知り合いみたいなものだし、案外一番博士と付き合い深いんじゃないの? ミズキ』

 

 

 

 

その通りだよな。みんな。

 

だからこそ、この人に嘘はつかないさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許すとか、許さないとか、そういう事じゃないんですよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺には、そんな資格はないんですから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミズキ……」

 

「風に当たってきます」

 

 

 

 

乱暴に空いた扉の音が酷く虚しいことだった。

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価、改善点、必要なタグ、等々
ありましたら是非、遠慮なく言ってください。
精一杯の努力でお答えしたいと思う所存にございます。
初投稿のぺーぺーの精一杯ですが…
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