これまでに比べて投稿が遅くなってしまいました。申し訳ございません。
一応理由といたしましては
・夏が終わりリアルがかなり忙しくなった
・やる気の問題
・先日からちょくちょく言ってた絶不調パソコンの修理
となっております。
ゆえにこれからは早ければ週一、遅ければ月一ほどの投稿ペースになってしまうかもと思われます。
ゆっくりと完結を目指していこうとは思っていますのでご支援ご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。
追記 ロックカットとボディパージの効果をごっちゃにしている個所があります。本編には特に影響しないため無視しといてください
「マスター、おかわり!」
「はいはい」
受け取った旅館備え付けの和風の陶器に何とも不似合な洋風のスープが注ぎ込まれる。四人で囲む食卓ということで、先日の五割増しで料理を作ったにもかかわらず、すでにキャンプ時用に持参してきた大なべの底が見えている。笑顔の男と萌えもん一匹に招待客一人は唖然とするだけでいまだほとんど箸をつけていなかった。
「どうした? 食わないのか?」
ミズキがいったん鍋にお玉を入れ、先に淹れておいたコーヒーを飲みながらその固まっている招待客に向き直る
「いや、食べてるは食べてるんだけど……」
「あの女はカビゴンか?」
「いーや、俺の愛するラプラスさ」
頭に丸くたたまれている耳がぴくっと動いた。聞こえていたらしい。そして軽く赤い顔を隠すように一心不乱に真ん中の肉料理にかぶりつく。
「しかし、ミズキ。これ全部お前が作ったのか? 旅館で頼んだわけじゃなくて?」
「こんな和風の旅館できのみ入りミネストローネなんか出てくるかよ。旅先では旅館で料理を頼むより適当に食材を買ってくる方が安上がりだし、何よりスーが俺の飯を気に入っちまったらしくてな。基本的には自炊だ」
「ああ、カゲ知らなかったのか。ミズキって料理だけじゃなくて家事全般すごくうまいんだぜ。うちのかあさんがたまに休みの日に家事手伝いとして雇ってたくらい」
ええ……と言わんばかりの表情でカゲがこちらを見る。なんだよ、俺が自炊できちゃ悪いってのか?
「イメージに合わねえ」
ほっとけ。
「んで? そろそろ解説してくれるんだろうな?」
「まあな。じゃなきゃ俺たちがジム戦をした意味もお前らがここに来た意味もなくなるしな」
孤軍奮闘したご褒美ということで大量に作ってあげた料理をすべて平らげ苦しそうにひっくり返っているスーを横目にカゲがテーブルをはさんでミズキに要求する。
それにこたえるように最近お馴染みのメモ帳が出てきた。
「これは今朝、俺がスーと一緒に話して決めておいた作戦だ。それを見て、お前らはどう思う?」
それを持っているカゲを膝の上に置き、頭の上から覗き込むようにしてレッドが小さな何枚かのメモ用紙を確認する。
はじめに目についたのは、いわ萌えもんの名前。レッドも知っているようなメジャーな萌えもんの名前が多い。おそらく出てくる萌えもんを予想したものなのだろう。実際にこの中のイシツブテとイワークは出てきたのだ。
その次に書いてあったのは四角の枠の中に無数の矢印があっちこっちに書きなぐられてるような図だった。ところどころに漫画で出てくるとげとげした吹き出しのような、おそらく衝突のことを表している、ものが書かれている。これでだいたいの動きを解説したのだろうか。
その後にも、相手の使うであろうわざ、こちらの使えるわざが書かれていたりととにかくすごい量のメモであった。
そしてその膨大な量の文字で、赤い丸で囲まれたワードに目を止める。
ロックカット。
タケシのイワークがつかったいわタイプの萌えもんのすばやさを飛躍的に増大させるわざだ。
もともといわタイプはその体の重さゆえに力は強くぼうぎょは固い、その代わりに動きは鈍重であるといった、所謂ハードパンチャーのような萌えもんがほとんどであり、そのいわ萌えもんのすばやさを増大するというロックカットというわざはかなり有用なものである。現実タケシのイワークもそれでとんでもないスピードを手に入れて、渾身のすてみタックルをぶつけてきたのだ。
「ロックカットがどうかしたのか?」
カゲが問う。このメモの何を見せたいかは分かったが何を言いたいかが分からない。
「ロックカットがどういうわざか知ってるか?」
「……どういうわざか? いわ萌えもんがつかうすばやさを高めるためのわざ……」
「俺が言いたいのは、どういう原理ですばやさを高めるわざなのか、って話だ」
「原理?」
今度はレッドが不思議な顔をする。
「萌えもんの世界に物理法則を無視したわざなんて存在しない。それぞれのわざには効果があり、その効果を生み出す理由がある。しっぽをふるでぼうぎょりょくが下がるのは相手をちょうはつしてぼうぎょという行動を薄くするから。なきごえで相手のこうげきりょくが下がるのは高波長の音波を発することで相手の三半規管にダメージを与えこうげきの力を弱めさせるから。当然ロックカットというわざにもいわ萌えもんのスピードが上がるカラクリが存在するんだ」
「そりゃあやっぱり、軽くなるから? ロックカットによって体を削り、身軽にすることによってもともとの筋力で軽くなった自分の体を扱うことができるようになる。それに相手に体重の重さを利用されることもなくなる、だからロックカットってわざは強いんだろ」
レッドが答える。さすがにタケシに挑むにあたって前情報は調べたのだろう。
「そう。その通り。いうなればロックカットっていうのは、自分の体をわざと傷つけることによって一時的に無理やり戦闘を有利にすることができる一種のドーピング効果なんだ」
気が付くとミズキはまた一枚メモを取出し解説するための文字を書き始める。
「はあ……で、それが一体今回の戦闘と何が関係するのさ?」
「大ありさ。俺が今回の戦闘で狙っていたのは、
ロックカットを使うエース級のいわ萌えもんだからな」
当然レッドとカゲには?マークが飛び交う。そんな二人の様子を横目に見ながら倒れているスーは誇らしげににやにやと笑いを浮かべている。
「……タケシがロックカットを使ってくることを狙ってたってこと?」
「大正解」
いやいやいやいや、とレッドが思いっきり首を振る。
「わからないじゃん。タケシがロックカットを使ってくる萌えもんがいるかどうかなんて」
「その通り、わからない。だが俺たちはいることにした。いなかった場合はおとなしく負ける、それぐらいしないと勝てない戦力差があった。だから賭けに出たんだ」
あんまり好きな手段じゃないが、と付け加えた。
「……まあ、それはじゃあいいよ。でもなんでロックカットを狙ったのさ? さっき俺たちに言わせたように、ロックカットっていうわざはいわタイプの必殺技みたいなものなんでしょ?」
「そのとおり。確かに性能だけ考えたらロックカットはタケシの虎の子の必殺技だろう。実際俺たちもイワークよりももっとこうげきりょくの高いロックカットを使う萌えもんがいたら勝てなかったかもしれない。だが、仮に、ロックカットを使ってきた萌えもんのこげきを一発、たった一発でいいから耐える。それさえできれば勝つ事が出来るという確信があった。だから俺は終始、タケシの最後の萌えもんのロックカットを見据えてバトルし続けたんだ」
「???? 何が何だか分からなくなってきた……」
わかりやすく頭を抱える。
「まあ今は俺が最後の萌えもんにロックカットを使わせることを目標にしたことを覚えておいてくれ。そしてそこまでプランを立ててジム戦に挑んだ。そして多少のイレギュラーはあれど予想していたイシツブテはノーダメで突破することに成功した。それでパニックに陥ってもらうのが理想ではあったんだがさすがはジムリーダーって感じだったな」
そして次に出てきたのはカブトプス。
「正直カブトプスに関しては本当にただの想定外だった。一個たりとも対策を用意してなかったし、スーにも何も伝えてなかった。あとから思えばだが、カブトプスは最悪の相手だったといえるだろう。だからその場で勝つ方法を考えたんだ。ただ勝つ方法じゃなく、相手の最後の萌えもんからロックカットを引き出すような、そんな作戦を考えた」
「……で、ラプラスのとくせいを利用して戦おうっていう作戦を思いついたわけだ。ちょすいで回復しながら相手の体力を削り、最後の一匹を万全な体制で迎えよう。そうすればタケシも全力で最後の一匹で倒そうと向かってくる。ひいてはロックカットを使ってくる可能性も上がる。そういう考えだったんでしょ? でもその目論見ってタケシにばれたんじゃん。どうやってそっから勝つ事が出来たんだよ? わけわかんねえ……」
「あってたのは最初の一言だけ。あとは全部不正解だ」
「は? どういう事?」
目を丸くする、とはこのような顔を見て思いついた言葉なのだろう、とミズキは思った。
「どうもこうもねえよ。お前でもそういう風に考えれたっていう事はタケシも同じような考え方ができただろう。もっと言えばタケシなら、その前の全力疾走はみずでっぽうを引き出すためのおとり動作だったってところまで気づいていたかもな」
レッドから見て、その顔はどう見ても作戦をみやぶられた者の笑顔ではなかった。
「だが、そこから先は読めなかった。おそらくタケシはお前と同じような予想を立て、みずでっぽうを中断し、鎌を使った接近戦に切り替えた。そうすれば倒すことはできないまでも、スーに対して致命傷を与えることができる。それさえできれば最後の一匹でスーを仕留めることができる。こういうように考えた」
その思考こそが俺の仕掛けた最大のトラップであるとも知らずに。
「俺がさっき言ったように、お前の予測、並びにタケシの推測はそのほとんどが間違っていた。俺は相手の体力を近距離戦で削ろうなんか考えてなかった、万全な体制で三匹目に臨む気もなかった、タケシの全力を引き出すことでロックカットを使わせようという気もなかった、そして何より」
俺のスーは“ちょすい”ではない。
周りの酸素が一気に消し飛んだような気分を味わった。
「ラプラスのとくせいには二種類ある。一つ目は戦闘での効果を実感しやすいゆえに、かなりメジャーなとくせいとなっている、ちょすい。海で育ち、海の加護を受けたラプラスがみずのエネルギーを体の中に流し込む力に目覚め、みずタイプのわざを自分の体力に変換してしまうというとくせい。そしてもう一つ」
陸の力強さをその身に宿し、その自らの背中に背負う甲羅の力を体に流すことであらゆる攻撃から受けるダメージのスイートスポットを少しずつずらすことのできる、オーキド博士が甲羅の名とともに名づけたとくせい、
“シェルアーマー”
「確かにちょすいと違いあまり表だって役に立つことはないと言えるとくせいではあるが、よりラプラスの耐久力という面を光らせているのはほかでもないこのシェルアーマーだ。だから俺はこれを利用しようとした」
思いついたのはカブトプスの攻略法を探すために相手の体をじっくりと見定めた時。
俺が研究所で見たカブトプスの姿より、腰より下の筋肉がしっかりとつき、腕の鎌が大きく見えた。
そのとき、ふと考えた。
もしかしてこいつは、いわタイプの萌えもんとしてではなく、いわタイプ殺しの萌えもん殺しとして育てられた一撃特化型のカブトプスなのではないかと。
一人一殺の覚悟として相手にこうげきする、そういう役割を与えられたほかのいわタイプとは違うパワータイプなカブトプスなのではないかと。
つるぎのまいを使ったとき、俺の疑問は確信に変わった。
ならばカブトプスがメインのわざとして狙っているのは
鋭い鎌から放たれる、スピードを殺したカブトプスによるいちげきひっさつ。
きりさく。
「タケシは自分が育てたカブトプスが最低限の仕事を失敗していることなど考えてすらいなかった。俺があの段階で最終局面の撒き餌をしているなんて考えもしなかった。その結果、きりさくがクリティカルヒットした、なんて言う幻想を抱きながらラストバトルへと突入する」
あと一撃さえ当てれば勝てる。
そんな精神状態でタケシはイワークのボールをほおったことだろう。
そこまでくれば相手の行動なんて決まってくる。
ロックカットがあるなら即座に使う。
タケシの中での負け筋は、
スーが技をかわし続ける。
これしかなくなった。
ならば、回避能力、という隙間を最後に完全に埋めるために、必ず勝利に研磨をかける。
自分で建てた勝利の体を、少しずつ自分で削り落としているとも知らずに。
「そこで俺たちはロックカットの隙を狙ってなきごえを放つ。ここまで欺き、体力を節約してきたことでなきごえさえ入れば一発くらいは確実に耐えられる。そう思った」
ここまで来てやっと俺の予定通り。
そこで俺はスーに最後の指示をだした。
俺たちがここまで、育てに育てたとっておきの若芽。
“しおみず”
「し、塩水?」
五分ぶりくらいに声を上げるレッド。この反応から察するにほとんど知らないわざらしい。まああまり実用性に優れたわざとも言い難い代物だから仕方ないと言えば仕方ないのだが……
「一昨日あたりから俺がスーに特訓を施して覚えさせた新しいわざだ。傷だらけの人間が海水につかるとしびれるような痛みが走るのと同様に、戦闘によって受けたダメージが多ければ多いほど使われた萌えもんにダメージが増える、という具合の面白いわざだ」
擦り傷に塩を塗りこまれたら痛いだろ?と付け足すと黙って聞いたままのカゲとスーの二人が顔をゆがめる。想像したら痛かったらしい。
「いや、でも! イワークはあの時ノーダメージだったじゃんか! 確かにみずタイプのわざはイワークには大ダメージを与えられるだろうけど、一撃に至るまでの力になるなんて思えない! 傷のないイワークにどうやってしおみずを」
と言い終わる前に、はっ、という声を上げる。
……傷?
「ようやく気づいたか。ま、そういうことだ」
まさか、そのために待っていたというのか。
そこで決めるために、
その一発で決めるために、
危険を顧みずイシツブテに突っ込んで、
効かないわけじゃないみずでっぽうに突っ込んで、
研ぎ澄まされたきりさくに突っ込んで、
ロックカットで相手が体を削りだすのを待っていたというのだろうか?
「研磨、っていうのは要するに、人間でいうあかすりみたいなものだ。古い表面をそぎおとすことで、より美しく新しい体を作り上げる。さらにいわ萌えもんにとっては体重を一時的に絞ることもできる」
そう、体を傷つけることによって。
「……」
「自傷だろうが研磨だろうが体にできた傷は傷。しおみずの弱点に例外などない。結果的にタケシのイワークは最後に、自分の予想だにしていない反撃を受けたことと、弱点わざを受けたこと、そして何より、自分がうったわざによってパワーアップしたわざを受けたことにより、通常の二倍三倍、いや、五倍ほどのダメージを与えられただろう。そんなもの耐えられるはずがない」
結果、タケシは溺れた。俺とスーの作り出した海に。
まあ、わざわざ一つ一つ説明していったらこんなもんかな、と最後に一言付け加えて、萌えもんバトル講座を終える。ここのところ偉そうに解説してばっかりのような気がする。全く、もう当分やりたくないものだ。
そして本講座唯一の生徒と言って差し支えないレッド君はというと、
肩をふるふると震わせていた。
何か納得のいかないことがあったのだろうかと顔を覗き込むが、
みたこともない形容しがたい笑顔を顔に浮かべている。
だが、やはりレッドはわかりやすくていい。
興奮しているのだ。
たぎっているのだ。
戦いたがっているのだ。
ぼろくそに言われて肩を落としていたペーペートレーナーはもうそこにはいない。
いるのは戦略という名の麻薬にのまれた、新生の戦闘狂だけだ。
ミズキもつられてにやりと笑う。
それでこそ俺がここまで発破をかけた意味があったってもんだ。
頑張れよ、レッド。
どうしたんだよ、
と肩を揺らしているカゲの姿が、あまりにも場違いで面白い夜のことだった。
ようやくニビシティ突破。
並びに幼馴染三人衆のだいたいの性格も見せる事が出来ました。
とはいえ正直今回はあまり自分の中では納得のいかない仕上がりに。
多分ジム戦でもっとやっておきたいことがあったからか、そもそもそろそろ投稿しておきたいと思って作品として先走ってしまったのか。
不安定なことこの上ないお粗末な小説ではございますが楽しんでいただければこれ幸いでございます。
では次回。ついにパーティに新展開!?