罪深き萌えもん世界   作:haruko

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あけましておめでとうございます(旧暦並み感

遅れて本当に申し訳ないです。
やっと再びリアルに余裕ができてきたのでここから数話は投稿ペースを早くできると思います。
待っていて下さった少数派の皆様、是非こんな自分ですがこれからもよろしくお願いいたします。


第3話 4 拳の先に

 

 

 

「洞窟、って言っても中は明るいんですね」

 

「おつきみやまは最上段の天井が筒抜けになっていて、その名の通りそこから月が望めるそうになってるんだ。そしてこの山最大の特徴はこの壁でな」

 

こんこん、と脇の壁をたたく。

 

「実はこの壁には、特定の萌えもんを進化させるために必要なエネルギーを蓄えた石、“つきのいし”の成分がかなり多分に含まれているんだ。それによって天井から受けるつきのひかりを自身に吸収することによって洞窟全体をぼんやりと照らせるくらいにははっこうしてるってわけさ」

 

そしてその光の力にいざなわれてくる萌えもん、固有名詞を出すのであればニドランやピッピといった将来的につきのいしの恩恵を授かって進化するような萌えもんがこの洞窟に集まるということだ。

 

「しかし、その中のどの萌えもんも人間をあそこまでぼろぼろにするようなほのおこうげきをうつような者はいない。そもそもおつきみやまにはさっき言った例外の萌えもん以外はほとんどがいわ、じめんタイプでほかはズバットぐらいだ」

 

もっと言えばマサラで研究者として働いてきたときでも、ほのお萌えもんはおろか、おつきみやまで事件が起きたなんて言う話すら聞いたことがない。ここの萌えもんはほとんどがおだやかなせいかくで敵が近づいてきたとしてもよっぽどのことがなければ逃げることを優先するような萌えもんばかりだ。だからこそおつきみやまはつい最近まで何の整備もなしに一般人に開放されるような洞窟だったのだ。

 

「なるほど……じゃあなんで今になってそんな事故が起こるようになっちゃったんでしょう?」

 

 

 

 

「そうだな……あるいは事故じゃないとか」

 

 

 

 

「……やっぱりそうなるんでしょうか」

 

「さすがに無関係とするには無理があるだろうな。時期が合いすぎてる」

 

「……?」

 

あいも変わらず話の筋を理解しきれていないシークが腕の中からこちらを見上げている。ああ……、小動物をめででいるかのような気分だ……

 

「ま・す・た・ぁ!」

 

そしてそこよりもさらに低い位置から抗議の声を上げるスー。

こいつらの一挙手一投足に骨抜きにされそうだ。

自分でもわかるほど呆けてしまっている顔を無理やり戻してから応対するために向き直る。

 

「おお、悪い悪い。んで? どこまで話したっけ」

 

 

 

「だから! R団が何かしてるんじゃないかって話です!」

 

 

 

「ああ、その通りだな」

 

歩を止めないまま世間話をするかのように奥へ奥へと進んでいく。普段月明かりがあまり届かず壁のはっこうが弱い階層まで下りてきたので、シークを左腕に映しながら背中のバックを下ろしてカンテラを取り出す。“フラッシュ”が使える萌えもんがいれば話は別だがそのために萌えもんを仲間にすることなど当然したくないので洞窟に入るための荷物はセンターで入念に選別してある。

 

「よしっと、ついた。どうだシーク、怖くないか?」

 

うなづく。よし。

 

「しかしかなり静かだな。最悪洞窟に入った瞬間に襲撃されることも想定してお前らを出しておいたんだが、ほのお萌えもんはおろかほかのやせい萌えもんもほとんど見当たらないぞ?」

 

「だからマスター! なんで私の話を無視するんですか!」

 

「ちゃんと聞いてるって。あ、クッキー食べる?」

 

「いただきます!」

 

……自分でやっておいてなんだがこいつの性格とか感性はこれから先もうちょっと洗練させるべきのような気がしてきた。下手すれば将来的にご飯を持ったトレーナーについて行って離れ離れにならないとも限らない。

 

「……一応言っておくけど、別に無視してるわけじゃねえよ。ただそこまで神経質になることではないっていう話だ。最初に言っただろ? 今回の最優先事項は『この山の突破』だ。少し残念ではあるがほのお萌えもんに会えないのならそれはそれで受け入れるし、R団に接触できなかったとしたら次の機会を目指せばいい。旅はまだまだ始まったばかりなんだ、急がないとは言わないが目標に焦ることもない。歩いている途中で見かけたらいいな、っておもっときゃあいいのさ」

 

軽く頭をなでてやるが、スーは解せないといった顔を変えない。クッキーを咥えながら。

 

 

 

「まあ……そうも言ってられないみたいだけどな」

 

 

 

「へっ?」

 

シークをいったんボールの中へと戻し、カンテラをしまう。両手を開けた状態で足を肩幅に開き軽く曲げる。自分なりの戦闘態勢。野戦でのポーズだ。

 

「な、なんですかマスター。いきなり警戒しだして」

 

「いきなりじゃねえさ。さっき言ったろ。洞窟に入った時からこうげきを受けることくらいは覚悟してたのさ」

 

「で、でも、いきなりなんだか雰囲気が変わっちゃって……」

 

 

「ああ変わったよ。雰囲気がな」

 

 

はっ、とスーは周りを見回す。

 

 

 

 

萌えもんが全くいない。

 

 

 

 

入り口の時からそうだった。

洞窟なのに萌えもんがほとんど見当たらなかった。

 

 

しかし今は少し違う。

 

 

全くいない。

 

 

 

 

 

「お前と初めて会った時を思い出すよ。まあ今度は意図的に息を殺してるだろうけどな」

 

 

 

中を歩いてから十五分ほど経過しただろうか。

道中でおびえながらこちらを見ていたイシツブテやズバットを懐かしく思う。

それほど怪しく嫌な静寂だった。

 

「気を張れ。くるぞ!」

 

 

 

 

 

叫び声を聞いたスーの警戒の体制をとるタイミングは最悪だった。

 

 

 

 

 

爆音。

 

閃光。

 

灼熱。

 

 

 

 

 

音が聴覚を奪い、光が視覚を奪い、温度が触角を奪う。

いざ敵を探そうと集中力を高めた瞬間の爆破襲撃。

 

 

 

スーは衝撃で浮き上がりそうになる体を何とか地に押さえつけ、自分なりに情報を整理する。

 

目も、耳も、肌もうまく機能していない。

そんな状況だが、焦りは禁物。

これはミズキから教わったことだった。

 

 

 

 

間違いなく、例のほのお萌えもんが襲ってきた。

 

 

 

 

ならばいったいどうするか?

 

 

闇雲にみずでっぽうをうつか。

違う。ミズキに被害が及ぶ可能性が高い。

 

“しろいきり”で攪乱。

……無理だ。暗闇の中で正確にこちらを狙うことのできる相手が目くらましにかかるとは思えない。

 

逃げるか。

論外。相手の狙いは間違いなく人間の方。ほおっておけばミズキがやられてしまう。

 

 

 

 

 

どうすればいい? 早く決断しなければ……

どうする、どうする、どうする………

 

 

 

 

 

すると、数秒悩んだ後、わずかに回復した目がかろうじて見たものは、赤い光に包まれていく自分の体だった。

 

相手のこうげきかと思い、振り払おうと抵抗した後、それが萌えもんボールの放つレーザーであることに気が付いた。

 

「な、なにを!」

 

 

どちらが上かもわからない状態で顔を動かし見た景色は、

体から火花を散らす萌えもんの姿と、

開いた左手でボールを扱うミズキの姿だった。

 

 

 

 

 

「……さあ、これで一対一だ。お話ししようぜ。ワンちゃんよお」

 

しっかりと牙の食い込んだ腕を顔の前まで移動し、暗闇に光る縦長の瞳を歪んだ視界でしっかりととらえる。そいつはこちらの問いに答えることもなく、顎の力を強めながら文字に起こしようのない低いうなり声を上げる。その声はまさに猛獣。厳しい自然の中で研ぎ澄まされたやせいの強さが計り知れる。

 

「……話すことなど何もない。人間は殺す。そのためにわっちはここにいる」

 

腕を加えたままこちらの質問に回答してくる。橙色の体毛に入った黒線の模様が少し赤く光っているのが見える。それがこの萌えもんのこうげきの合図であるということをミズキは知識で知っている。

 

「っこの!」

 

首根っこをつかみ、腕から無理やり引っぺがして遠くへ思いっきりほおり投げる。空中で体を回転させ、着地と同時に四肢を踏んじばり瞬く間に体制を整えるとそいつは赤いせん光を発しながらわざを発動させる。

 

 

 

 

 

このわざは……まずいかもなぁ……

 

 

 

 

「正気の沙汰じゃないな」

 

「ほめ言葉として受け取っておいてやるよ」

 

強い口調を崩してはいないミズキではあるものの、ところどころ服や髪が焦げ付き右腕は力がなくなりだらんと下に垂らしたままである。

 

 

 

そしてそんな姿を下から見上げる萌えもん、ガーディは熱い視線を送る。

 

 

 

「わっちのこうげきを止められないと悟るや否や、ほのおが一番弱まるタイミングを見切り、こちらに飛び込んでくるとは」

 

「わざがわざだったもんでね」

 

 

 

“オーバーヒート”

 

 

 

まさかこんなところでお目にかかるわざだとは思わなかった。

威力としても効果範囲としてもほかのわざよりも群を抜いた、ほのおタイプ最大級クラスのわざである。

ガーディを中心に円形に壁が広がるように迫りくるほのおを見た時、ミズキのとった対策は一つ。

 

突っ込む。

 

「あんなもの、よけられなければ受けるしかない。受けるしかなけりゃあ受けるダメージを減らすしかない。簡単なことだ」

 

「それが狂気だと言っている。わっちのわざの威力を理解しておきながら、それに恐れず走り出すことのできるその精神がな」

 

しかも最初の衝撃でまだ目も耳もうまく機能していないはずだというのに、その男はぶれる事無くこちらを見据え、聞き逃すことなくこちらと会話している。

とんでもない回復力、そして判断力。

 

「恐ろしい人間もいたものだ」

 

「言いたい放題だな。ところで、話すことなど何もないんじゃなかったのか?」

 

「安心しろ。評価が変わろうと殺すという決意に変化はない!」

 

「そりゃ何より……っだ!」

 

ミズキは右足をその場で振り上げこうげきしながら距離をとる。完全にあてる気で放った蹴り上げだった。

ガーディは身をかわしながら驚愕する。攻撃してきたことではなく、萌えもんを出さずにこうげきしてきたことに対してだ。

 

 

 

「あえてもう一度言わせてもらうが……貴様正気か?」

 

「殴った方が分かり合えることもあるだろうさ」

 

 

 

話しながらお互いに十分に距離をとったと認識すると、ガーディはほのおでけん制を入れるが、ミズキは踊るかのようにそれをかわす。まるでこうげきの出所を完璧に把握しているかのような動きに違和感を覚えた。

動き回りながら周りを確認すると、先ほどまで薄暗かったこの階層にぼんやりとした明度が加わる。

なるほど、これならばたとえ人間でもこちらの動きをとらえることぐらいは可能だろう。壁の“つきのいし”の成分が自分のほのおわざから発せられる光エネルギーを吸収したらしい。

 

だが、それでも、

 

「足技だけで勝てるほど、わっちは甘い相手じゃない」

 

相手の右腕はいまだぷらぷらと垂れ下がったまま。

あれでは相手からこちらにこうげきすることはおろか、全力で走って向かってくることも至難のわざだろう。

そして血はいまだ流れ続けているまま。多量出血と腕の痛みで拳を握ることもままならないはず。

拳を握れないようなものに負けるほど自分は弱くない。

 

 

 

 

 

 

わっちは弱くない。

 

 

 

『もっと強くなれ! 何のために貴様はここいるんだ!』

 

 

 

弱くちゃあいけないんだ。

 

 

 

『代用品は代用品らしく壊れるまで働いていりゃあいいんだ』

 

 

 

わっちは代用品なんかじゃない。

 

 

 

 

 

 

「……きめた」

 

「……なに?」

 

 

“オーバーヒート”の反動のせいでほのおの勢いが著しく低下してしまっているせいか、結局すべてのこうげきを見切られてしまい歯噛みする。一撃で仕留める予定だったとはいえ、完全にわざの選択ミスだったと心の中で反省する。

そのよけた本人であるミズキは軽く服の状態と呼吸を整えながらにやにやした顔をこちらに向ける。

 

「何を決めたって? 降参の決意か?」

 

「降参したら見逃してくれんの?」

 

「愚問だ」

 

「だろうな。残念ながら俺は無駄なことはしない主義だ。それにそれじゃあ俺の目的は達成できない」

 

「……目的?」

 

 

 

 

 

 

 

「お前のニックネームは"フレイド"だ」

 

 

 

 

 

 

 

『貴様の役割は壁役(ポーン兵)だ』

 

 

「……なんだって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前を俺の仲間にしたい」

 

『ポーンはさっさと進みやがれ!』

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちと一緒に旅に出ないか?」

 

『けっ、また後衛から代わりを拾ってこなきゃあならねえじゃねえか』

 

 

 

 

 

 

 

仲間。

 

 

 

 

『ポーン』

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

「……気に入らないか?」

 

 

 

ふっ。

はは。

 

 

 

 

 

「ははははははははははははははは!」

 

 

 

 

仲間。旅。愛称(ニックネーム)

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

 

 

 

 

本当に楽しそうな声を上げ、

 

 

 

 

 

「だったら、わっちに一撃いれてみせろ!」

 

 

 

 

 

 

はしりだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黙想。

 

ガーディがこちらへ向かって全速力で向かってくる。

いま、ガーディは“オーバーヒート”のデメリット効果により遠距離戦を不得手としている。それは向こうも重々承知していることだろう。

だからこそのここにきての接近戦。

 

 

 

 

 

近接強打(インファイト)

 

 

 

 

 

うけてたつ。

 

 

 

 

 

かわすなんてありえない。

このまま逃げていたって限界は来るんだ。

だったら相手が自分の間合いに入ってくれるこの一瞬は逃せない。

そして何より、

 

 

 

 

 

『わっちに一撃いれてみせろ!』

 

 

 

 

 

ここで引いたら男が下がる。

 

 

 

 

 

 

さてと……

 

 

 

 

 

「こいやあああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやって殴った? その右腕で」

 

「“こんじょう”で」

 

「三度言おう、貴様正気か?」

 

「冗談だよ。種はこいつだ」

 

壁に寄りかかりながら服をまくった右腕を上に掲げてひらひらとこれ見よがしに動かず。

いつの間にか垂れ流していた流血は止まり、今まで焦げた跡だと思っていたそれは凝固した血液であることが分かった。

 

「すべての動物の血液っつーのは健康体であればあるほど鮮やかな赤色をしているもんだ。まあそれは血液中に存在するヘモグロビンが赤い成分を持っているからなんだが、こいつは酸化することにより凝固し、色が黒くなる。経験あるだろ。かさぶたってやつだ」

 

「まさか貴様、止血していたのか……わっちのほのおで」

 

「正解」

 

仰向きに寝そべりながら息をのむ。

 

狙っていたのだ。この男は、

自分が近接強打(インファイト)することを、

そうして近づき、ぼうぎょがおろそかになった瞬間を、

自分のけがという弱さを強さにかえて、

虎視眈々と狙っていたのだ。

 

「最初に俺が言ったじゃねえか。殴り合って分かり合うってな」

 

「正気かもしれないが人間じゃないな」

 

「手厳しい」

 

くっくっく、と声が二つ漏れて合わさる。

横に並んで上を見た。どれだけの時間、よけあい、殴り合いを続けていたのだろうか。いつの間にか月が見える。ここはおつきみやまの最上段のど真ん中、天井の抜けた月見スポットだった。

 

「貴様と鬼ごっこをしている間に、とんでもないところまで登ってきてしまったようだな」

 

「だな。だれかさんのほのおのせいでだいたいの荷物が全滅しちまったところだからもうすぐ出口なのはかなり助かる」

 

「自業自得だ」

 

「反論なし。よっと、じゃあ俺はそろそろ行くぜ。今日中にこの山を越えちまいたいんでな」

 

そういうともはや防寒の意味を成しているのかも怪しい穴だらけのジャケットを羽織りながら立ち上がる。ぼろぼろの服の穴から、いくつもの青あざが顔をのぞかせている。

 

全く倒れなかった。

全く弱くならなかった。

 

 

 

自分は、負けた。

彼に、男として。

 

 

 

 

『負けたものに価値などない』

 

 

 

 

「ほれ」

 

 

 

ハッと我に返ると、

ドロドロの汚い右手が差し伸べられていた。

 

 

 

 

 

 

わっちは、この手をつかんでいいのだろうか?

 

 

 

 

わっちに、そんな資格はあるのだろうか?

 

 

 

 

わっちに……

 

 

 

 

 

「…………おい、お前は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな会話を引き裂いたのは

 

 

 

 

本日二度目、そして一度目とは比べ物にならない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だいばくはつだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!! いまのは!!」

 

まさか、奴らが、

 

 

 

 

「……R(ロケット)団」

 

「! お前、知って」

 

 

 

いきなり襲われたとき、

“オーバーヒート”を受けた時、

思いっきりなぐり合ったとき、

 

 

 

一度たりとも物怖じすることのなかったミズキが、

この日、初めて恐怖する。

 

 

 

 

「うがああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

 

“いかく”

 

 

 

 

それは敵の戦意を削ぐためにガーディが自然界で身に着けた“とくせい”

強い敵倒すべき敵に出会ったとき、出会った瞬間に優位に立つため、自分の力を誇示することで敵をすくませ、その者のこうげきりょくを削ぎ落すという効力を持った萌えもん界でもトップクラスの汎用性を持ったとくせいである。

 

 

 

しかし、ガーディのそれはミズキの頭にある知識のそれとは一線を画すものだった。

 

 

 

体は震え、力は抜け、膝は本来の仕事を全うすることもなく崩れ落ち、差し出した腕は持ち上げる事が出来なくなって、何もかもがダメになる。

 

 

 

 

これがやせいの強さ。

 

研究所にいたミズキが持ちえなかった、内にではない、表に出す感情。

 

 

 

 

 

そして音の方角へ走り去っていったガーディに、

かける声が一つも浮かばなかった。

 

 

 

 

 

 

「シーク、スー。出てきてくれ」

 

 

腰の抜けた状態のまま、ボールのスイッチに何とか触れる。

 

「ちょっとマスター! 一体なんてことをして……って、きゃーーーーーー!!!!!!」

 

「!!!!!!!!!」

 

 

スーとシークがまあ予想通りの反応をしながら登場した。

当り前だろう。ボールの中にひっこめられてもう一回呼び出されたと思えばぼろぼろの主人が地面に突っ伏している。スーもそうだが、シークにとっては軽いホラー体験となってしまっただろう。あとでしっかり謝っておかなければ。

 

「まま、マスター! いったい何がどうなったんですか!」

 

(こくこくこくこく!)

 

心配してくれている二人の体を無理やり杖にするような形で体を起こす。

 

「まあ心配すんな、けがは大したもんじゃない」

 

「大したもんじゃって……そんなわけ!」

 

 

 

 

「すまん。言うことを聞いてくれ」

 

 

 

 

口を開けた状態でスーが固まる。

そのスーを胡坐をかいた状態で膝に抱き、シークに向き直る。

 

 

 

 

「シーク。“テレポート”で俺を運んでくれ。R団がいる場所へ」

 

 

「!!!!!」

 

膝の関節あたりを二回たたく。NOの合図。

“そんなぼろぼろじゃ戦えない”という事なのだろう。

今の自分の姿に対する恐怖もあるのかもしれない。まだ戦闘のできないシークにミズキをこんな姿にした者のいるおつきみやまは一刻も早く離れてしまいたいことだろう。

 

 

だが、

 

 

 

 

「頼む」

 

それは許されない。

 

「俺がやらなきゃあいけないんだ!」

 

 

 

 

力は抜けても

腰は抜けても、

表の怒りで負けても、

 

 

 

「あいつに任せてちゃダメなんだ! 俺がやるんだ! やりきるんだ!」

 

 

 

奥底の怒りは負けられない。

 

 

 

 

「そのために俺は旅に出たんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膝を一回たたいたのちに

 

 

 

右腕をつかんできたシークの体の、震えはすでに止まっていた。

 

 

 

 

待ってろガーディ。

 

 

 

 

 




めっちゃ長くなるといったな、あれは嘘だ。


いや、ごめんなさい。
ほんとにあほほど長くなりそうだったんで結局分割しました。
次回、たぶんおつきみやまを超えられると思います。
第三話ラスト! ガーディは仲間になるのか! 続く!
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