罪深き萌えもん世界   作:haruko

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どうでもいいことかもしれませんが、
自分は基本的に、町、ないし、町に向かうまでの道中、のどちらかで一話が切れるようにしていきたいと思ってます。





第5話 3 戦闘狂

 

 

 

 

 

 

「すみませんおじいさん。一晩泊めてもらった上に道案内までしてもらって」

 

「なあに。危ういところを助けてくれたお礼だからな。そもそもこの“ちかつうろ”の管理は私が任された仕事だ。これぐらいしても問題なかろう」

 

そういいながらそだてやじいさんはミズキを先導しながら暗がりをずんずん進んでいく。

 

そだてやの一室で朝を迎えたミズキたちが次はどこに進もうかと思考していたところ、部屋に入ってきたじいさんの提案で歩いているのがここ、“ちかつうろ”だった。

じいさん曰く、ヤマブキシティのお偉いさんが工事中の通行のための救済措置として先にクチバシティに向けて開通させておいた通路であり、そこの管理人として、実績を持って、信頼でき、通路の近くに仕事場を持つ自分が抜擢されていたとの事らしい。

 

「本来なら一般開放しておいても問題ないということで引き受けたんだがな。あんな奴らがいるとわかっては全員無許可で通すわけにもいかないんだ。まあ君なら安心だ」

 

前を歩きながらそう呟くそだてやの後ろでミズキが軽く顔をしかめる。

 

 

あんな奴ら、とは当然、R団を指しているのだろう。

 

 

昨日のスーとの会話を思い出し、少し腰のボールに触れる。

 

スーはああ言った。自分の相棒は自分の願い、想いをすべて理解し、言ってくれた。

いや、スーだけじゃない。フレイドも、口は利けずともシークだって同じことを思い、言ってくれるだろう。

 

 

R団は悪。ただひたすらに加害者だ。

 

 

でも、俺は、ただの被害者ではない。

 

 

そのことを再び思いだし、唇をかむ。

 

 

 

 

「時にミズキ君。君は何を思っている?」

 

 

「はい?」

 

 

そんなことを考え歩いていたからか、唐突に前から飛んできた質問に対しそんな声を上げてしまう。

 

「い、いきなりなんですか?」

 

冷静を無理やり装いながら聞く。

此方を見てもいない前方の老人に対して取り繕おうと髪をいじくってしまったことが少し悔しかった。

 

「私も職業柄困った人をごまんと見てきたのでな。君みたいな人の目も幾度となく見てきたよ。上手に育成してあげられなかった子供、引っ越しの際に連れて行けずに泣く泣く頼みに来た青年、事業のために他の時間が取れなくなった大人。その人たちは苦しみ、痛み、同じ目をして私のところに来たよ。君と同じ目をしてな」

 

 

ミズキはぎくりというような表情を作った後、少し顔を上げ前を見るが、強くなってきた光に思わず顔をしかめた。

 

 

「年の功からの助言を一つ」

 

相変わらず振り向かないままに右手人差し指を一本立てる。

 

 

「『迷った時は初心に帰る』。行き詰ったらやり直すという事は決して恥ずかしいことではない。むしろ成功とはいかに自分のマイナスを客観視できるかと言ってもいい。自分を見つめなおすことは後退ではない。覚えておきなさい」

 

 

ふう、と息を吐いた後、右手をそのまま前に突き出す。

 

 

「あそこが出口だよ。クチバまではほぼ一本道だから案内は必要ないだろう。私は今日も仕事があるから残念だがついていけるのはここまでだ。これからもがんばってな」

 

ようやく振り向いたかと思ったら自分の肩をぽんとたたき、暗い道へと引き返していく。

ミズキはハッとした後、ぽかんというような顔を無理やり戻し、またじいさんの後ろ姿を見据えて一言叫ぶ。

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

 

言った後思いっきり外への階段を駆け上がっていった。

 

 

 

 

 

 

「楽しそうですね、マスター」

 

「なんだなんだ? わっちらの知らぬ間に何かあったのか?」

 

「ふふっ。やっぱ先輩の意見は聞いとくもんだな。『目』ときたもんだ」

 

外の空気を吸わせたいといつものようにボールから出しておいたスーとフレイドが不思議そうな顔を見合わせ、その後ろからシークが続いて歩いていた。その様子を視界の隅にとらえながら、ミズキは数週間前のことを遥か昔のことのように思い出していた。

 

(オーキド博士も言ってたな。『目でわかる』って)

 

「? マスター?」

 

少し視線を落とし見上げてくるスーの顔を正面にとらえ、わしわしと頭をなでまわす。

 

「お前のおかげだ。ありがとな、スー」

 

「……えへへ。なんだかわからないけど、ほめられちゃいました」

 

頭を押さえながらスーが照れているのを見て、フレイドは軽くぶすくれ、シークがそれをポンポンとなだめる。いつもの調子が戻ってきたようだった。

 

 

 

「さてと、そんなことを言ってる間にもうすぐクチバだ」

 

「はいマスター! クチバシティとはどういった場所なんでしょうか?」

 

スーがピシッと右手を挙げて質問する。ミズキはそれを見てくすくすと笑いながら答える。

 

「クチバはカントー地方で最も海産業を発展させている町だ。規模としてはそこまで大きな街じゃないけど別地方からカントーに来るトレーナーたちが乗ってくる船があったり、美味しい食べ物があったりと、この地方の町としては重要度がかなり高い場所だよ。それになんといっても海に面したところだからな。みずタイプの萌えもんの過ごしやすい環境が整ってる場所だよ。お前はかなり居心地のいい街かもしれないな」

 

「ほう。港町か。わっちはいくのは初めてだな。興味深い」

 

パッと声の方を見ると質問に答えたはずのミズキの言葉に反応したのはフレイドの方で、スーの方に視線を移すと無言でうんうん頷いていた。

 

 

 

「海、海、食べ物……海産物……」

 

 

 

「……お前の興味はそっちなのね」

 

 

真面目に一個一個説明してやった自分がばかみたいじゃないか……

 

 

 

 

『イクゼ ピンチハチャンスダーゼー』

 

「……主、鳴ってるぞ?」

 

「ん? ああ。メールか。何事だ?」

 

さてまずは何をすべきかと考えようとしたミズキの思考を割ったのはポケナビから鳴る電子音だった。

 

「めーる? お手紙ってことですか?」

 

「ああ。そういう事……あらま、これまたタイムリーなメールだな」

 

「! もしかしてお食事券とかですか!? マスター、読んでください!」

 

ぴょんぴょんとはねながらスーが言う。その口からはまだ涎が垂れたままだった。

 

 

……こいつ、クチバを飯の町か何かと勘違いしているんじゃなかろうか。

 

 

そんなことを思いながらも自分の周りの三人を見て、何が書いてあるのかを知りたいのはスーだけではなさそうだと判断したミズキは起動した画面を見ながらそれを読む。

 

 

「拝啓 暑さ厳しき中、ミズキ様のご健康、及びそれに準ずる……えーい! 煩わしい!」

 

 

そういいながらミズキは結びのあいさつ文を思いっきり指でスライドして飛ばす。何をやっているのか把握していない三人は主の奇行に体を少しすくめていたが当然ミズキはそれに気づいていない。

 

「……つきましては一般公開に先立ちまして、ミズキ様、並びにそのお連れ一名様をクチバシティ発アサギシティ行のサントアンヌ号試乗会でご批評、ご批判を頂きたく思い筆を執らせていただきました……だとよ。送信元は……シルフカンパニーか」

 

「……フレイドさん。どういう意味だったんですか?」

 

苦い顔をしてスーがフレイドに助けを求める。

 

「わかりやすくいえば、豪華客船にただ乗りできる権利をもらったということだな」

 

「どうやら俺が以前開発を手助けした新作の商品が完成間近になったからそのお礼ってことらしい」

 

何事もないことのようにとんでもないことを言う自分たちの主にもはやだれも反応しなくなったのは慣れというやつだろう。

 

「さて、どうする? 正直俺はどっちでもいいんだが、だれか行きたい奴はいるか?」

 

「はい! 豪華な船で豪華なご飯が食べたいです!」

 

「わっちはどっちでもいい。旅の方針は主に任せる」

 

(ぽんぽんぽんぽん)

 

シークは四回たたく、つまり自分のことは気にするな、という事だろう。

 

 

賛成一票(飯)、無効票二票か。

スーには飯を食わせるだけで解決するから実質三票無効票である。

 

 

あまり行く意味はないかもな、と思う。せっかくこんなものをもらっておいてなんだが、特に豪華客船に興味があるものがいないのであればはっきり言って時間の無駄だ。特にクチバにとどまるような理由もないのでこのまま飯を食わせた後通過してしまってもいい。

 

「やめとくか。おとなしく宿を探して……」

 

「そういえば主。その招待券は一人まで同伴可能なのだろう?」

 

体を半回転させ町の方へ歩き出そうとするミズキに対し、フレイドが横につき会話を続ける。

 

「? ああそうだな。それがどうかしたのか?」

 

「……豪華客船、男に渡される二人までの招待券、これはもしや……」

 

そういうとにやにやしながらフレイドは、

 

 

 

 

 

「デートのための“ふねのチケット”なのではないか!?」

 

 

 

 

 

アホなことを言い出した。

 

 

 

「……何を言ってるんだこのマセわんこは……」

 

呆れたような声をフレイドに出すが、その時のミズキは無意識のうちに歩を止めていた。

 

 

数日前、マサキとの一件を思い出す。

 

 

 

 

 

『……いやーそれにしてもまさかミズキはんがこんな子供だったとはパソコンでやり取りして時には気づきもせーへんかったわ』

 

 

 

 

 

マサキはミズキという人間が、齢一四の子供であることなど知る由もなかった。

 

 

パソコン越しで関係を築いた人間の年齢など知ることはできない。

 

 

 

それは個人だろうが企業だろうが同じではないだろうか?

 

 

 

 

 

「まさかこれ、本当に俺が成人だと思ってプレゼントされたものなんじゃあ……」

 

 

 

 

 

ミズキは大きくため息をつく。真意はわからないが、確かにこれはペアで来ることを前提としたようなチケットのようだ。

 

 

ならば自分にはなおのこと必要のないものである。

 

 

自分は今一人旅をしている最中だ。誰かを誘って船に乗ろうなどと誘うのは、その辺の他人にするような行為ではない。野郎となんか行きたくないし女性にやったらもはやそれはただのナンパだ。

 

 

 

 

かといって今から自分が呼びつけて二つ返事で来るような人間は自分の知り合いには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

……一人いたな、そういえば。

 

 

 

 

 

この近くで再会して、

 

 

 

 

 

自分との仲も良好で、

 

 

 

 

 

豪華客船とかそういうの大好きで、

 

 

 

 

 

暇人な、かわいらしい女の子が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーあーあー。いぃ~~き~ぶ~ん~」

 

「……ブルー。おばさん臭いわよ」

 

「いいじゃないの~。戦い通しで疲れたのよ~。しばらくここでゆっくりするわ~」

 

ハナダ温泉のマッサージチェアに腰掛けながら気の抜けきった声を出す自分たちの“おや”に、悲しそうな憐れむような目を向けるゼニ、おにぽん、りゅうの三人は顔を見合わせ息をつく。

 

「……俺はこんな奴につかまるんじゃなくてミズキのだんな見てえにイカしたトレーナーに捕まえてほしかったぜ……」

 

「おー。わたしもししょーにまたあいたい」

 

「りゅう。おにぽんのはあなたとは違うのよ」

 

相変わらず話を理解していない独特のリズムを持ったりゅうに対してゼニはツッコミをいれながら温泉にいるにもかかわらず疲れた顔をして、荷物置きとなっている近くのソファーに腰を下ろす。

 

その時、小さな機器がふるえながらブルーのバックから零れ落ちてきたことで、一瞬体をすくませる。

 

「……なにこれ。電話? ブルー! なってるわよー!」

 

「う~ん。めんどくさいから適当なこと言って切っておいて~」

 

マッサージを中断することなく椅子越しから右手だけを上げてプラプラと振る。

 

「全くもう……だらしないんだから……」

 

ゼニはそれを見て今日何度目かのため息をつく。

 

「……女ってのはみんなあーなのかね……たまったもんじゃないぜ」

 

「……? りゅーちゃんもブルーみたいに強くなる?」

 

「なるななるな。ありゃ強いんじゃなくて横暴っていうんだ。どうせ強くなるんだったらミズキのだんなやフレイドの兄さんみてえに強くなりな」

 

「おー! ししょーやだいししょーみたいになるー!」

 

右手を突き上げぴょこぴょこと楽しそうに跳ねるりゅうの頭を優しくなでるおにぽんを尻目にゼニは爪を駆使してボタンを押して電話に出る。

 

 

 

 

「もしもし? 申し訳ありませんがブルーは只今立て込んでおりまして……あら、ミズキじゃない? どうし」

 

 

 

 

そこまで話したところでゼニの右手から手ごたえが消える。

 

 

 

 

「はーい。ミズキ? どうしたのよ、電話なんて珍しい。やっと私と勝負する気になったのかしら?」

 

 

 

 

後ろを振り向くとバスローブ姿のブルーが電話の応対をしながらうれしそうに鏡を見ながら髪を手櫛で整えていた。

 

その手前でりゅうをなでながら嘆息しているおにぽんと顔を見合わせ、出発の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……マチス様、例の少年がやってきました。同伴は萌えもんが数体と、少女が一人。部屋は102号室です」

 

二人が船内に乗り込む姿を斜め上からとらえるカメラの映像を見ながら男が楽しそうに喉を鳴らす上司に報告する。

 

「Gооd! 第一段階は成功だ!」

 

手に持ったスーパーボールを握りつぶさんとする上司の顔は、狂気に満ちた笑顔をしていた。

 

「……それにしても、こいつがタケシとカスミをねえ……」

 

部下の肩に体を預けるように身を乗り出し画面を見つめるマチスを見て、周りの者は「いつものあれか」とつぶやくだけだった。

 

 

 

 

 

 

「……いいねえいいねえ! 死んでるような無機質な目のくせにやる気に満ち溢れたあの表情、イってなけりゃあありえねえ! 久しぶりに楽しくなっちまいそうだぜえ! ああ、あの口からどんな言葉が出て来やがる!? あの体は何をするために鍛え上げられた!? ああぁ、奴と全力のバトルがしてぇんだよ俺はぁ!」

 

 

 

 

 

 

食い入るように、とはこのことだろう。食いしばる歯の隙間から涎はこぼれ、モニターの角を鷲掴みにしている手には血管が浮き出ている。

 

興奮状態であることは一目瞭然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいてめえら。わかってんな。作戦に変更はねえ。ねらいは……こいつだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

新たにまかれた火種は、しっかりと根を据えて芽吹いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






マチスさんのキャラはこんなのでいいのだろうか……?
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