違うんです! プロット段階でちょっとしたミスが出てしまい訂正してたら遅くなっちゃっただけなんです! これから頑張るから許してください!
まじめな話自分のよりよっぽどすぐれた小説が自分のよりぽんぽん投稿されていくのを見て投稿ペースだけいっちょまえおじさんだなあとか思うのは一度や二度ではないです。でも、それでも見てくださる方にはこれからもがんばっていい話を提供していけたらと思ってますのでよろしくお願いします。
話は変わりますがアニポケが最高にかっこいいです。次週カロスリーグ決勝戦なのですが是非サトシに優勝してもらいたいですね。アニポケのかっこよさは自分が小説を書くためのエネルギー源になります。
「う、薄気味わりぃ……」
紫苑の瘴気のような霧が立ち込めているのは萌えもんタワー、三階層。
もともと萌えもんたちが安らかに眠るための場所であるため、当然といえば当然なのだが、大量に立っているお墓でできた通路を進むのは決して気分のいいものではない。
本来なら毎日来ているであろう町の者たちがあんな状態だからだろう、供えられてから時間がたって茶色がかった花や食べ物の何とも言えない腐臭が立ち込め不気味さに一層拍車をかけている。
それでもこんな場所で一人になるわけにはいかないと、何の気なしにずんずんと進んでいくミズキの影を霧の中にとらえ必死に追う。
「ま、待ってよ兄さん! はぐれたらまずいんだからもっと一緒に行動してよ!」
叫ぶレッド。しかしレッドの声がまるで聞こえていないかのようにミズキは少しも歩く速度を変えずにどんどん前へと進んでいく。
ミズキだから、と言えばそれまでではあるものの、まるでロボットがプログラムで動くかのように一つも速度を変えずただただまっすぐに進むその影に、レッドは一層言い知れぬ不安感を覚える。
「まっ、ちょっと、待ってってば、兄さん!」
その不安に押しつぶされそうになったレッドは、一瞬だけ全力をだし、ミズキに追いつき腕をつかみ、
ぐしゃりとその手を握りつぶした。
「…………へっ?」
何が起きたのか判断する思考が停止してしまったレッドは、拒絶することもなく手元を見る。
そこには、おそらく、手の形をしていたであろう、薄緑色の固形物が自分の手からあふれ出ていた。
「…………痛いじゃないかよ…………れっどくぅん?」
爛れ、腐り、融けた顔が、振り返り、睨んだ。
頭が真っ白になり、今日、何度も聞いた単語が脳を支配する。
『ゾンビ』
「ひぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「そろそろ起きろ馬鹿野郎」
「いったぁ!」
頭に受ける鈍痛によって一気に脳が覚醒する。
指と足に力を入れ、自分のことを見下ろすミズキと会話するために起き上がろうとしたところで、自分が横たわっているということに気付く。
「……いったい何が……」
そういいながら体を起こそうとしたレッドは今度は腹部、背部、そして右脚部の激痛に悶絶し倒れ頭を打ちつける。打ち付けた時の感触でようやく気が付いたが、どうやらミズキは膝枕で快方してくれていたらしい……何とも言い難い感情が心を支配するが、今はそんなことを言ってられない。
「服、捲ってみろ」
「……へ、に、兄さん? や、やっぱりそっち系の……」
そこまで言ったところでレッドの腹に人形のように振り上げられた右の拳が落ち、刺さる。
「~~~~~~~~!!!!!!!!」
「何がやっぱりだ」
そういいながらミズキは再び悶絶するレッドの紺のアンダーシャツをめくり、腹部を両手でつかみ、親指を動かしながら難しそうな目をしている。
「……相当くらったな」
「な、何が……?」
痛む腹から搾りきるようにして問いをかけるレッドに、ミズキは天井の方を見据えながら答える。
「洗礼がもう始まってるってことだよ」
そういうとミズキはゆっくりレッドの上半身をおこし、脇の墓石に寄りかからせる。罰当たりなのは当然承知してのことだろう。
そして体を起こしたレッドは、うつむき、初めて自分の体を見て驚愕する。
「な、なんじゃこりゃあ!!」
思わず大声が出てしまい、再び痛んだ腹部を抑える。
しかしミズキは今のレッドを見て笑う余裕などなかった。むしろレッドの反応は至極真っ当なものであったとさえ思う。
レッドの体には、多人数で囲まれ、数分間殴り続けられたかのような青痣の跡があった。
「……三階に足を踏み込んだ瞬間、何が起きたか覚えてるか」
「……覚えてない」
レッドの記憶にある光景はミズキがぼろぼろになってしまっている例の状況だったのだが、当然それは真実ではないのだろう。
だとすればいったん自分に何が起きたのか、レッドには皆目見当もつかなかった。
「……見てみな」
ミズキは自分のみている天井方向を指さす。相も変わらず部屋全体に嫌な霧が立ち込めていて、ミズキが何を示そうとしているのかが分からない。
「……霧のせいで全然見えないけど」
「霧じゃねえよ。よく見てみろ」
クーックックックックック。
キャーッキャッキャッキャ。
濁った霧をよーく見ると、全身を紫色のロングスカートがつつんだかわいらしい姿の萌えもんが、現れたり消えたりを繰り返している。
一点を凝視し続けて、半透明な姿が三秒間くらい見えるだけだったから、今まで気づいていなかった。
「も、萌えもん!?」
「ゴースにゴーストだ」
ガスじょう萌えもん、ゴース。そしてその進化系のゴースト。
カントー地方におけるゴーストタイプの萌えもんの代名詞であり、ルール無用の野戦においてはそのいやらしい戦い方からその姿を見た時にはすでに負けているといったことも平然と起こり得る。まさに今のレッドの状態だ。
「お前はこのフロアに足を踏み入れた瞬間、奴らの“さいみんじゅつ”にかかってねむりの世界に落ちたんだよ。全く、不用心にもほどがある」
「さ、“さいみんじゅつ”なんて用心できるもんじゃないだろ!」
レッドの苦し紛れの抗議もミズキの冷めた目で一蹴され、少しレッドの腰が引ける。
「相手が“ゆめくい”を使うっていう情報があったんだ。“ゆめくい”が寝ている相手に作用するわざだっていうのはさっき説明しただろ。だったらねむりの対策をしてくるのは当然の用意だろうが」
そういいながらミズキは円錐に近い形状の青い物体をレッドに渡す。
「……これは?」
「“カゴのみ”って名前のきのみだ。少しかじって口に入れといて、やばいと思ったらかみつぶして飲みこめ。ねむり効果を無効化できる」
「に、兄さんの分は?」
「……俺はいいんだよ。もともと、そういうのに強いから」
そういい終わるとミズキはすっと立ち上がり、手元のポケナビとそれに接続したリアラーザーを掲げ、手元にゴーグルと双眼鏡を足して二で割ったかのような形状のごつごつとした機械を取り出す。
「……なに、それ?」
「これが俺の対策だ。今回の話を聞いた時に、マサキさんに頼んで転送できるようにしてもらっておいたんだ」
ミズキはその機械をレッドの頭に取り付ける。取り付け方はゴーグル、というよりは機器を付けたヘルメットのような感覚で、自分の正面にレンズが来て、そこから景色が見えるようになっている。
ちょっとだけ重くなった頭をグイッと上げ、再び頭上を確認する。
「……うへえ」
レッドがレンズを通して再度天井付近の霧を覗くと、そこにはお世辞にもいい印象を与えることの無い、おぞましい光景が広がっていた。
「そいつは“シルフスコープ”。ゴーストタイプや、そのほか姿を消す萌えもんに対応した、特殊偏光レンズを使ってるんだ。嫌なもんいっぱい見えただろ?」
レッドはミズキの調子づいた言葉にも反応せず、ただコイキングのようにぱくぱくと口を開いている。
「ゴースとゴーストが……めちゃくちゃいっぱい……」
「ざっと五十……いや、八十から百はいるかもな。こんな量のやつらから“さいみんじゅつ”を食らえばそりゃあ一歩部屋に入った瞬間夢の世界だ」
レッドは痛む体を無理やり起こし立ち上げ、思わず腰の萌えもんボールに手をかけ迎撃の一撃を加えようとするが、それをミズキが片手をレッドの前にだし、制止をかける。
「やめとけ。パワーの無駄遣いだ」
「なんで!? こいつらの中に目的のやつがいるかもしれないだろ!?」
「いねえよ。お前、博士から萌えもんずかんもらってるんだろ? それでこいつらのレベルを確認してみろ。俺の見立てじゃあせいぜいレベルはオーバー15のアンダー19……いや20ってところか?」
萌えもんずかん。
今回対して重要とならないため解説はさらっと済ませるが、簡単に言えば、萌えもんのデータ記録帳だ。萌えもんと会うたびにその萌えもんのデータが記録され、トレーナーが旅を終えるころにはそのずかんはまさに完璧な萌えもんずかんになるというオーキド博士の世界トップクラスの発明であると同時に、オーキドという人物を、世界的に有名なオーキド博士としている所以でもある。当然ミズキもプログラミングは手伝った経験があるのだが、ミズキがそれを博士から受け取ってない理由は単純明快。
「……本当だ。ゴース、レベル15、17、18。ゴースト、レベル20.わざ、“さいみんじゅつ”、“したでなめる”、“ナイトヘッド”、“うらみ”、“のろい”……」
ミズキの観察眼にひやりとする。そりゃあこれだけの目を持っていればずかんなんて必要ないだろうと納得する。さしずめ歩く萌えもんずかんだ。
「こいつらがそんな強力な“ゆめくい”を使えるわけがない。原因の本元はもっと上の階にいるはずだ。行くぞ」
そういって群がるゴースたちの真下を、シルフスコープもつけずに一直線に階段の方へ歩いていく。途中でミズキの頭の上でうろちょろしながら一生懸命“さいみんじゅつ”にかけようとしていたゴースたちが無視されすぎててかわいそうに見えたのはレッドの中だけでの秘密だ。
その後二人は四階、五階と何事もなく進んでいく。まあ、実際何事もなく進んでいたのはミズキだけでレッドは眠気に襲われる度に苦虫をかみつぶしたかのような顔でとてもしぶい味のカゴのみをかじっては眠気を覚まし、近くのゴースたちを追っ払うという行動を繰り返していたのだが。
「全く……いったいこいつらはなんで俺たちにこんなことをしてくるんだ?」
五回から六階へ進む階段を上りながらレッドが思わず愚痴をこぼす。ある程度体の調子が戻ってきていることに安心しつつ、ミズキはレッドの疑問に答える。
「ゴーストタイプは総じてむじゃきでイタズラがすきっていうのもあるかもしれないが、やっぱり例のお友達が原因だろうな」
「……? 例のマーちゃんがあいつらに命令してるってことかよ?」
そういうレッド自身も、自分の言っていることに違和感を覚えている。その姿を見て少しずつ考える力がついてきたことを喜ぶが、今は時間をかけてレッドを育てる時間はないため、ミズキは直ぐにそれを否定する。
「あの少女の言うことを鵜呑みにするなら、マーちゃんとやらは暴走状態になってしまっているはずだ。そんな状態のやつがゴースたちに明確な指示を出すとは考えづらい。だとすれば、あれは単なるゴースたちのイタズラなのかと言えば、それもNOだ。一人一人が単体で侵入者に“さいみんじゅつ”をかけているならいたずらで済むが、あれだけの量の萌えもんが一致団結して、一歩踏み入れれば即“ゆめくい”の餌食となる催眠空間を作り上げている。偶然の一致とは思えない」
「……じゃあどうして」
「服従してるのさ。マーちゃんとやらの力は、身近にいる同系列の萌えもんであるあいつらが一番よく分かってるんだろう。自分たちには勝てない力を持った奴が現れた、だから自分たちはそいつの下につく。そういう自然の摂理さ。その証拠に」
ミズキは振り向かずに親指で後ろ、つまり今通ってきた五階の部屋を指さす。レッドはその指先に目線を移し、シルフスコープのスイッチを入れる。
「…………あっ!?」
なぜ通った時に気が付かなかったのだろうかと少し自分の注意不足に落胆する。天井付近を見てみれば三回の時との違いは一目瞭然だった。
「ゴースが減って、ゴーストが増えてる!」
「そういうことだ」
そこまで言われればレッドもこれがどういう状態なのかわかった。上の階層に来れば来るほど、進化前のゴースは減り、進化後のゴーストが増える。つまり、階が高くなればなるほど、言い換えるならば、マーちゃんに近づいていけばいくほど、力の弱い萌えもんは姿をけし、実力のある萌えもんだけが上に残って、自分たちの主に近づけさせまいとする。いうなればこの萌えもんタワーは、階層の高さがそのままヒエラルキーになっているのだ。
「そしてそれは、この上に、ヒエラルキー最上位の主がいることの裏付けに他ならない」
ミズキはそこまで話すと階段の途中で急に足を止め、大きく大きく深呼吸をする。
「み、ミズキ兄さん?」
不安げなレッドの声が、しんとしたその空間で不自然なほどに響き渡る。
「準備しろ。さっきの階の様子から予想するに次の階に……そいつはいる」
そしてミズキは腰元のボールを三つ、真下の階段に置き、開く。
「……お前ら、準備しろ。本気の野試合だ。俺の指示に少しでも遅れたら負けると思え」
いきなり雰囲気を豹変させるミズキ。そしてミズキの表情を見て、出てきた三人の萌えもんも一気に険しい顔つきに変化する。
「……強いんですね」
確認するようなスーのつぶやきに、ミズキは無言でうなづく。
「……エレブー戦は不完全燃焼だったからな。思いっきり行くぞ」
軽く屈伸運動をしながら準備をするフレイドに、ミズキは、ああ、と答える。
(……)
少し目じりに浮かぶ涙を自分の指で払うシークに、ポンと手を乗せ軽くなでる。
「基本的には“CROSS”のシステムで指示を出す。精密な動きをするための作戦じゃなくて俺の指示速度を上げるための策だから目をつむる必要はないが、基本は一歩をカウント一とした座標軸上で動け。わかったな」
「「了解(ぽん)」」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
戦闘ムードの空気に水を差す、という言い方は悪いだろうが、いきなりやる気になったミズキの変化に置いてけぼりを食らったレッドが流れを止める。
「レッド、お前も準備しろ。ただし、生半可な育成しかできてない萌えもんは出すな。お前は自分のパーティの中で最強の萌えもん一匹だけに指示を出せ。そうでもしなきゃ普通は指示がおっつかないからな」
「いやだから待てって! そもそも俺たちはマーちゃんの暴走を止めに来たんだろ!? そりゃ場合によっては戦闘になっちまうかもしれないけれど、まずは話し合いから初めてさあ……」
そこまで言ったところでミズキは開いた掌を横にだし、レッドの眼前で制止させ、レッドを黙らせたところで、今度は人差し指で腹を刺す。
「お前のその腹の大量の青あざ、いったい誰にやられたものだと思ってる?」
「……誰ってそりゃ……俺を眠らせたゴースやゴーストが……」
そこまで言って、レッドは思い出す。
『ゴース、レベル15、17、18。ゴースト、レベル20.わざ、“さいみんじゅつ”、“したでなめる”、“ナイトヘッド”、“うらみ”、“のろい”……』
青あざ? いったいどのわざを受けてそんな傷が出来たんだ?
「……ま、まさか……」
思わず力が入っていた拳を開くと、じんわりと汗がにじんでいた。
「そう、お前はもうこうげきされてたんだよ、三階上の敵からな」
嘘だ。そんな、馬鹿な。
腹をさすりながら頭を振るが、傷が痛めば痛むほど、脳は覚醒し、恐怖は煽られる。
「そんな離れた場所から、こんな傷を……そんなこうげき……」
「……お前が眠りに落ち、その場で倒れ、俺が気付いてお前をはたき起こすまで、約十五秒。その間お前は、ひたすらこうげきされ続けていたってわけだ」
十五秒。
萌えもんバトルの試合をするのであれば、様子見の一撃が出るか、出ないか。それくらいの時間。
そんな短時間で、ここまでずたぼろにできるものだろうか?
いや、できていいのだろうか?
「そして……」
言いながらレッドの肩を軽くたたくと、
レッドは糸が切れた人形のように階段の下へ転がり落ちていく。
「うおっ! くぅ! がはっ!」
ある程度転がり落ちたところでミズキはシークに“ねんりき”の指示をだし、こちらへ呼び戻してやる。
いつもならただ不機嫌に怒りを表すだけだったかもしれないが、今のレッドは自分の異常に気が付けないほど馬鹿ではない。
そして、馬鹿ではないゆえに、圧倒的力に対する恐怖は加速する。
「か、体に、うまく力が入らない……」
「……たった十五秒。だが、お前は町のやつらよりも、もっと近くで夢をさらしちまったんだ。お前が悪夢に対応するために用意した体力は、すでに奪われていたんだよ」
先ほどカゴのみを出した時と同じように、肩に下げた小さなバックから今度は黄色く少し丸く、太いきのみを取り出す。
「気づいてなかったかもしれないが、お前、ここまで登ってくるだけで結構な回数ふらついてたんだぜ。体力回復の“オボンのみ”だ。何個かかじっとけ」
言われるや否やレッドはそのきのみを一心不乱に噛り付く。体が本能的にそのきのみを欲しているのがよく分かる状態だった。
「さてと、レッド。どうする?」
オボンのみを食べ終わった頃合いを見て、ミズキが言葉を発する。
「ど、どうするって……」
「死ぬぜ? お前」
聞いた瞬間、心の奥にずしんとくる、熱を感じない声音だった。
「俺はこの上にいるフジのじいさんと、不審者たちに用がある。だから行く。ただそれだけだ。お前みたいに人助けのために来たわけじゃない。もとはお前の手伝いっていう名目だしな。確かに科学者としての好奇心もあったがそんなものは後付理由だ。俺は自分に利がないことは絶対しないと決めてるからな」
少しスーとフレイドが笑いをこぼしたが無視して続ける。
「お前には危険を冒す理由はない、だろ? 恩返しは失敗したって言っとけばいい。義理を通してずたぼろになるのなんか馬鹿らしいだろ。別に今から引き返したって俺はお前を責めやしない。むしろ、これから本気の戦闘をするのであれば弱ってるお前は俺の足手まといにしかならない。それでも来るなら止めはしないが、俺はお前を守りやしない」
冷たく、こおりの刃を首先に突き立てるように、一つ一つ突き放す。
「選べ。人に任せず、自分の意志で。『来る』か、『止める』か……」
「あんな厳しいこと言っちゃってよかったんですか? マスター」
階段を上っていると、スーが不安げにつぶやく。
「あれくらいが妥当だと思うがな。主の言うとおり、中途半端な気持ちで来た者の尻拭いをわっちらが出来るような戦いじゃない」
珍しく本来の四足歩行の姿でシークを背中に乗せて階段を上っていくフレイドが厳しい意見を言う。が、この場にいるだれも、シークさえもそれを否定しない。
全員感じ取っているのだ。歩けば歩くほど、嫌な空間が近づいてくるような、息の詰まりそうな何かが近づいてくるような感覚を。
「下らねえこと言ってる場合じゃねえ。気抜いてたら死ぬのはレッドに限った話じゃねえんだからな」
そして最後の一段を登り終えたミズキが部屋の隅々までを見回し、ここまでに幾度もなく見てきた大量の墓でできた道を確認した後、少しだけ苦い表情をつくる。
「……中身自体はさっきまでの階と大差はない……が、お前ら、気づいてるな」
「……当たり前だ、やせいで生きていたわっちらをなめるな」
フレイドがいきり立った声で反応する。なるほど、四足歩行で構えているのは体をやせいの状態を思い出して戦闘するつもりだからなのだろう。それを察してかシークもフレイドの背中から降り、自分の力でその場に立ち、構える。
「……いますね」
そう、いる。この階に。
何故も、何もない。ここに来さえすれば、万人がわかる。
この途方もない、エネルギーの質量、圧力に。
階段までの歩き方とは打って変わり、まるで地雷原にいるかのように、たっぷり時間を使い、一歩一歩を吟味しながら歩みを進めるミズキたち。ふと気が付くと、あごから汗がしたたり落ちる。
……どこからくる? どこにいる?
その手の判断能力、すなわち相手の行動や気配といったものを読み取り先の先を取るのが得意なミズキでさえも、相手の居場所がわからず、フレイドの嗅覚をもってしても、相手を捕らえることすらできない。それは相手がゴーストタイプだからなのだろうが、この状況下ではそれはとてつもないディスアドバンテージになる。
なまじ敵がいることがわかってしまっている分、いつ来るのかという恐怖と、張り詰める緊張感で体力はゴリゴリと削られていく。
気を抜いたらやられる。
それが全員の共通意識であるため誰も何も言葉を出すことなく、少しずつ、少しずつ、形だけでも前進していく。
やがて進んでいくと、墓石の迷路は折り返しのようになっていた。それすなわち、墓石はこのフロアを完全に縦に真っ二つにしていたという事なので、フロアの南東から北へ進んできた四人は、ここまででこのフロアはあと半分であると判断する。
折り返しが見えたところで、全員の心の中に、ほんの少しの想いが出来た。
早く進みたい、この息の詰まる場所を出たい。
だからだろうか。
そこを折り返すその瞬間、生まれた、油断。
見えない景色に対する、警戒が弱まる。
折り返し再び進もうとしたミズキの姿が、
鈍い音とともに、三人の視界から、消える。
うまく声を出せない三人は、信じられないものを見たかのような顔で、固まった体を無理やり動かし、後ろを振り向く。
そこには、あるとわかっていても、信じがたい景色。
飛ばされた衝撃で数個の墓石を砕き、壁にたたきつけられたミズキの姿があった。
「かはっ! くっそ、やってくれるぜ……」
肺の中の空気が全てはじき出されてしまい、咳き込むと口から血が漏れる。
「ま、マスター!」
「うごくな!」
スーの悲鳴を皮切りに、三人がミズキに駆け寄ろうとするのを、ミズキが一括し、目で制する。
「……お出ましだ。俺にかまってる暇なんかねえだろ。丁重にもてなしてやりな」
ミズキを向いてる三人とは違い、ミズキはずっと正面を見ている。
だからいち早く、異変に気付いた。
「なんで……ここに……いや、そんなことはどうでもいいか」
ガラガラと崩れる墓石の破片を服から落としながら、何度も咳き込む体を抑え込み、立ち上がって相対する。
「なんで……泣いてんだよ……お前」
ミズキの言葉に三人も反応し、後ろを振り向く。
半透明な体はミズキの言葉にこたえるかのように徐々に実態を表し、その姿を露わにする。
紺のローブは小さなその身より少し大きく、長い髪と顔以外をすっぽりと覆い隠している。一つに束ねられている後ろから伸びる長い髪も十分に特徴的だが、正面から見るミズキたちにはローブの隙間から口元から上だけがほんの少し見える彼女の表情に注目が集まる。
うつろな瞳から漏れ落ちる涙。
それだけで遠目でもはっきりととらえられる、感情。
哀。
ミズキ、
スー、
シーク、
フレイド、
四人が歯がゆいほどに、痛いほどに伝わる想い。
悲哀、
悔恨、そして……
「……後悔、か」
それを理解したその瞬間四人の表情から、先ほどまでの彼女が発する重圧に耐える苦しさが消える。
理解、してしまった以上、彼女が放つ悲しみの波動を、苦しむ道理はない。
彼らもまた、苦しんできた者たちだから。
「……戦いやすくはなったかもな。感情を持たずにあばれているものを相手どるよりよっぽどやりがいがある」
「……素直に助けたいっていえばいいじゃないですか」
(ぽん)
フレイドは四肢を地につけ、足の具合を確認し、
スーは軽く手を前にだし、戦うための構えを取り、
シークはどこからかスプーンを取出し、右手に持ち、
ミズキに準備OKを伝える。
「……そうだな……あの手のやつは話し合うより、もっと分かり合える方法がある」
ゴキゴキと指を鳴らすミズキに、フレイドだけが少し体を震わせる。
「さあ、お互いのすべてをさらけ出して、
ムウマの叫び声を皮切りに、
ムウマ小っちゃくてかわいいと思います。