罪深き萌えもん世界   作:haruko

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全然連投できてねーじゃねえか!!!!

……すみませんでした。

あっ、タイトルはエビさんとは無関係です。



アニポケはすごいことになってますね。先週何も知らずにポケモンを見てた兄が「今日のポケモンは映画やってるの?」と真剣に聞いてきましたw 確かに、ジガルデのあの暴走っぷりとXY&Zの作画を考えれば納得でもありますけど。
ああいう盛り上がってるアニメをみるとテンションあがって筆まめになるので助かります。


10/24 追記 サボってはいないのに全くシーンが進みません。消して書いての繰り返しでもうちょっとかかりそうです。できれば十月中に投稿します。すみません。

11/6 追記 できない約束はするものじゃないという母の言葉を思い出します。
もう下手なこと言わずにひたすら書くので待っていただける人はもう少しお待ちください。


第7話 4 パンチの鬼

「(3.5)、“れいとうビーム”、(2.2)、“サイケこうせん”、(-3.6)、“かえんほうしゃ”!」

 

軽くステップを踏み、首をくにっとのけぞらせ、流れ弾をかわしながら三人同時に指示を出す。指定の位置まで移動した三人は、息を吸い込み、掌をかざし、手抜きなしの全力のエネルギーを自分のわざに注ぎ込む。撃ち込まれた三つの遠距離射撃はまっすぐに、風を切りながら勢いを殺さず目標に向かって直進した。もちろん、当たれば“ゆめくい”で奪った体力ごと吹き飛ばしてしまうことは間違いないだろう。

しかし、すでに数分戦い続け数十発と打ち込んだミズキは勝利を確信したりすることもなく、まっすぐ相手の瞳を見つめる。

 

 

その瞳は、淀み、歪み、潤んでいる。

 

 

その目と会話することもできず、こちらの力は、相手の叫びとともにねじ曲がる。

 

 

「……リセットだ。戻ってこい」

 

すっと汗を拭い去りながら戻ってくる三人を待ち、素早く荷物からボトルを取出し自分で飲んだ後に、三人にも飲ませる。一応間接視野でその間も視界の隅にムウマを捕らえ続けるがその甲斐もなく、まるでこちらを見ようともせずに宙で蹲り……というのも変だが、宙で丸くなっていた。

 

「……どう見る主、あの挙動」

 

呼吸を整えながらフレイドが尋ねる。まあ、一番不可解で不快な思いをしていたのは戦っていた本人たちだろうから、そういう質問も来るであろうことはミズキも予想していた。

予想していたが、悔しいことに答えが出ない。

 

「……わからないな。突っ込むお前らに反撃を仕掛けていることから、戦意がないわけじゃないのはわかるが……」

 

なんだろう……この違和感。

 

お互いが本気で戦闘しているのに、相手から勝気を感じない。

必死に戦っているにもかかわらず、それでいて無気力も感じる。

 

 

例えるならば、ゲームで何度も復活するCOMを練習相手にわざを決めようとしているような感覚。

 

 

……どう切り崩すのかを考えさせている……?

 

 

「……まあ、いま敵さんの思考を読みとるのは厳しそうか」

 

暴走状態って話だし、論理で動いてない可能性も大いにある。それよりも今すべきことを考えるべきだ。

 

「マスター。あの壁、どう突破すればいいんでしょう……」

 

「正確に言えば壁とは言い難いな、あれは。むしろ来たものを跳ね返すだけの壁だったら、力で押し切れたんだけどな」

 

ミズキの言葉に三人も唸る。わざをうっている張本人たちとしては、ムウマの周囲のあの念波の真の異質さは触れている者にしかわからないのだろう。

 

 

 

「“サイコウェーブ”をあんな使い方するだなんてな。正直言って目から鱗だった」

 

 

 

エスパーわざ、“サイコウェーブ”。

 

体内の念(エスパー)の力を外に押し出し、コントロールすることでこうげきするわざ。

一般的なトレーナーの評価、並びに萌えもん協会の考察としては、実戦レベルA~Eの判定の中のD-だったか……とにかくろくな評価を受けていなかったことを覚えている。

その要因の一つは、エスパータイプのわざが他タイプのわざに対し、かなり応用性が高く選択の幅が広いというものがある。

直球に言えば、“サイコキネシス”や“サイケこうせん”をメインのわざに据えればいいため、『わざを四つ選択する』というルールが存在する公式戦でわざわざ一枠分わざ候補を圧迫するほど“サイコウェーブ”に価値はない、という判定が下ったのだ。

 

しかし、ムウマの周りにいまだ巻き起こる、薄紫色半透明無臭無風の“たつまき”のような何かを見ながらその判定は大間違いであったのだなということに思い、少しだけ協会の人間たちにざまあみろと心でつぶやく。

 

まあ、そんなミズキ本人も現在その技に苦しめられているわけだが……

 

 

 

ムウマが戦闘が始まるや否や巻き起こした件の竜巻は、場を完全に膠着させた。

いや、正確に言えばミズキはわざを打ち込む角度や種類、タイミングをずらしながらこうげきを打ち込み続けたのだが、まったく成果がなかったため膠着状態と言って遜色ない状況に陥ってしまった。

 

 

 

 

わざを受け止める、ではなく、

相手の力のベクトルに合わせ、念の波をわざに沿わせ、いなす。

 

 

 

それが、念波の壁(サイコウェーブ)の効力だった。

 

 

 

 

「……言うは易く行うは難し、だな。シーク、あれ、できるか?」

 

(ぽんぽん)

 

即座にふくらはぎ辺りを強く二回たたく。まあ、そうだろうな。

 

思いっきり思考する体制をとるため脇の砕け横倒しになった墓石に腰を据え、周りに三人を集める。

 

「……受け止めず、受け流すからダメージを受けない無敵の壁か……」

 

そんなもの、自在にコントロールすることもさることながらその場に持続させるなんて芸当、化け物じみているとしか言いようがない。

 

 

 

「……で? もう様子見は十分だろう」

 

「マスター、指示をください。絶対に、破って見せます」

 

(……こくっ)

 

 

 

軽く下に視線を落とすと、三つの熱い視線がまっすぐに突き刺さる。

 

 

 

「……信頼されてるねえ」

 

 

 

苦笑しながら立ち上がり、顔に手を当て指の隙間からムウマ、ひいては“サイコウェーブ”の壁を見る。

 

 

 

「…………さっきまでのこうげきで、だいたいあれのシステムは分かった……仕掛けるぞ、フレイド」

 

「ふっ、やっぱりわっちの力が必要だという事か……」

 

そういって嬉しそうに前に進み出るフレイドの後ろ姿を少し悔しそうにスーが睨む。

 

「……嫉妬すんなよ、見苦しい」

 

「し、してないですよ!」

 

軽く頭をなでる手をそっと外して振り向いたスーの顔は赤みがかっていた。少し楽しく笑ってしまうが今はあくまで戦闘中だ。

 

「まあ、適材適所ってやつだよ。肉弾戦はフレイドの仕事。お前たちには別の仕事があるってだけだ。なっ? シーク」

 

いきなり振られてきょとんとするが、シークは直ぐに頷いた。

 

 

 

「俺は俺の、シークはシークの、フレイドはフレイドの、お前はお前の仕事をし、互いのすべてを利用する。それが俺たちの契約であり、俺たちの切れないつながりだ。だろ?」

 

 

 

「……はい!」

 

顔に両手でぱんっと一発いれ、両頬をほんのり赤く染めたスーを見ていたミズキは、それをじっと見つめるムウマの瞳に気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

「(0.12)。走れフレイド、“こうそくいどう”!」

 

CROSSの指示方法でフレイドを一気に正面に、すなわち、“サイコウェーブ”の中核に引きこもっているムウマに向かって直進させる。

 

フレイドが加速し近づいていくのに比例するように“サイコウェーブ”の念力が強く、大きく高まっていくのがミズキの位置まで十分伝わってくる。ムウマを中心に、力は波紋のように広がっていき、立ち込めるエネルギーがミズキたちの呼吸を詰まらせる。

 

「っ! とまるな、“ニトロチャージ”!」

 

心の焦りを払拭するかのように、大声で追加の指示を出す。トレーナーの不信感が萌えもんに伝わってはいけない。『トレーナーは萌えもんの前で堂々とあれ』。トレーナーズスクールで子供たちが真っ先に習う萌えもんバトルの心得が、頭の中をふと過った。

 

そんな意識を知ってか知らずか、フレイドも四肢に渾身の力を籠め、全身を燃え上がらせ突進する。ぱちぱちと音を立て風を切る体は、温度によりさらに細胞が活性化し一回り体を大きく見せる。

クチバでの実戦でミズキが多用したもあってか、もともとパーティの中で最も優れていたフレイドの技のキレがさらに増しているのが、遠目に見てもはっきりとわかる。

 

 

しかし、そんなフレイドを相手に見てもムウマは表情一つ崩さず、一心にフレイドを見つめている。

 

 

いや、依然として苦しげな表情は変化していないから、表情を崩していないというのも間違いなのだが、少なくともフレイドのわざを見ても驚愕や恐怖といった心を持っていないことは見てとれた。

 

見て取れたからこそ、ミズキの不信感は募っていく。

 

 

 

(今のフレイドを見て、顔色一つ変えない……)

 

 

 

人間や萌えもん、いや、それに限らず、生者は『死の恐怖』というものから逃れられないようにできている。

 

それは不変の真理であり、この世で曲げてはいけないものでもあり、曲げようのないものでもある。

 

 

『死』。

 

 

時間の感覚に差異はあれど、それはすべての生物にいつか必ず訪れる。

 

だからこそ、生命は尊ばれ、粗末に扱う者は罰せられる。

 

それはどんなに強い萌えもんでも、ゴーストタイプとして生を受けても例外ではない。

 

 

 

だからこそ、あのムウマの対応は不自然であり、無気味だった。

 

 

 

それほどまでに自分の“サイコウェーブ”に絶対的な自信があるのだろうか?

だとしたらなぜ“サイコウェーブ”をこうげきのために展開しないのか。

 

 

 

 

おそらく、答えは、あの壁を崩した先にある。

 

 

 

 

 

「いまだ! シーク、“かなしばり”!」

 

フレイドの“ニトロチャージ”が竜巻に直撃するまで三メートルといったタイミングで、ミズキの隣にいるシークが、スプーンを握る腕に渾身の力を込めると同時に、ムウマの表情が一瞬だけこわばる。

 

 

 

 

そう、一瞬だけ。

 

 

 

 

一秒経つか経たないか。

 

 

ミズキも測定できないほどの反応速度で、シークのエスパーによる拘束を弾き飛ばした。

 

 

……レベルが違いすぎる、と、ミズキはそう思った。

 

 

 

よく育っている、という意味でもそうなのだが、実戦による経験値が高すぎる。あの反射神経は先天性のものではなく、自然の中で生きる術として培われた能力だろう。

 

 

 

 

だが、シークもフレイドも焦らない。

 

 

 

 

当然、“かなしばり”が成功することに越したことはなかっただろう。

 

しかし、失敗したからと言って、悲観的に思うことはない。

 

 

 

 

狡猾で、聡明で、強欲な自分たちの主人が、

 

相手のレベルを見誤るはずはない。

 

 

 

 

 

 

 

“かなしばり”がはじかれることを、想定してないはずがない。

 

 

 

 

 

 

「スー! “あやしいひかり”!」

 

 

 

 

シークがいたはずのその場所で、

スーが手元に黄色い閃光を作り出す。

 

 

 

 

それを見てしまった……いや、見せられてしまったムウマは、ついに少しだけ表情を変える。

 

 

 

 

 

 

旅が始まって間もないころ、

まだスーしかいなかった時のころ、

初めてブルーと萌えもんバトルを行ったとき。

 

ゼニに放った“あやしいひかり”は“からにこもる”によって回避されたことがある。

 

 

“あやしいひかり”は使えば相手を必ず“こんらん”状態にする、なんていう便利なわざではない。むしろ同種のこんらんわざに比べれば少し扱いづらいわざだ、位にミズキは思っている。

 

それはなぜか?

 

 

 

知っている者には対処される。これだけだ。

 

 

 

“あやしいひかり”は相手の視覚を通じて脳に訴え、誤情報を送り込む……といった性能のわざだ。

イメージとしては、トリックアートが壁一面に張ってある部屋を眺め続けると気分が悪くなる、みたいなことだと思ってくれればいい。

まあ、萌えもんによってわざの性質は多少違うが大方ほとんどの萌えもんがこうやって相手を“こんらん”状態にしているのだ。

 

 

では、これの対処法は何か。

 

 

 

見ない。

 

 

 

単純にして明快。惑わす景色を見なければいい。

 

そしてこれは、ちょっと戦闘法をかじった萌えもんトレーナー、ないし萌えもんならばそう難しい事ではない。

 

ましてやムウマはゴーストタイプ。

“あやしいひかり”のことはもっと感覚的に理解できているはずだ。

 

それこそ、わざが発動すると感じた際に、スーから視線をそらす、位のことはやってのけるだろう。

 

 

 

事実、この戦闘が始まってからすでに三度、ムウマは“こんらん”を回避し続けている。

 

 

 

 

 

ならばなぜ、ここにきてわざが決まったのか。

 

 

 

 

 

当然、ミズキの仕業である。

 

 

 

 

 

“あやしいひかり”とは違い、ミズキはここまで、“かなしばり”を一回も使わなかった。

 

すなわち、ムウマは“かなしばり”というわざの存在をまだ認識できていなかったということだ。

 

いくらフレイドのこうげきに恐怖しなかったといっても、それは目の前で起こり、目の前で完結していた出来事の話。

いきなり原因不明の緊縛にあえば、恐怖はなくても、驚愕し、原因を探ろうとする。

 

 

 

そう、原因を探ろうとして、顔を上げ、敵を見る。

 

 

 

 

 

そうすれば、シークやミズキのそばにいるスーの、光は必ず視界に入る。

 

 

 

 

 

 

「っ!!!」

 

 

 

 

 

 

スーがかかった、と確信した瞬間、スーとシークを囲み捕らえるように青白い火の玉が身の回りを回りだした。

その火の玉が二人の体がずしりと重くなり、崩れるスーの手元から、光の力が小さく消えていく。

 

スーがもう一度掌をかざし、光球を作り出そうとしても、形になる前に力は霧散し、やがて体を起こすこともままならなくなる。

 

 

 

ムウマがつかったわざは、多様なエスパータイプのへんかわざの一つ。

 

 

 

 

“ふういん”

 

 

 

 

その力でスーとシークの体の自由、そして数個のわざのエネルギーを奪う。

 

そして我に帰ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

ムウマは気づかない。

 

 

 

 

“ふういん”というわざを放ったその一瞬、“サイコウェーブ”の竜巻から意識を手放したことを。

 

 

 

 

ムウマは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

その一瞬を待ちわびている、強欲な男がいることを。

 

 

 

 

 

「突っ込め! “フレアドライブ”!」

 

 

 

 

 

 

数度、わざにより加速したその体を全身からにじみ出る熱が包み込み、炎の弾丸と化したフレイドが竜巻にその身を当てた。

 

 

 

 

 

 

念の流れはその勢い、熱量を抑えきれず、まるでゴムを指で押しこんでいるかのように、竜巻の表面がぐにゃりと凹み、薄紫だったその表面の色は次第に暖色に飲まれていき……

 

 

 

 

 

 

弾け、消える。

 

 

 

 

 

 

突っ込んだ勢いのまま床に体を打ち付けたフレイドは、痛みをかみしめ一度バウンドした体で受け身を取り、顔を上げて驚いた顔のムウマを視界に入れる。

 

 

 

 

「っ! “オーバーヒート”!」

 

 

 

 

あえて、この距離、この場面での最大わざの指示。

 

 

 

決めわざ。それを指示で認識したフレイドは、わざのはんどうで痛む体をきあいで抑え、仁王立ちの状態から大きく息をすいこみ、

 

 

 

 

 

ムウマめがけて、全力で、放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

……つもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレイドの全身を使った苦しそうな呼吸音のみがその場に響き、それ以外は時が止まったかのように固まっている。

 

 

 

そう、

“オーバーヒート”は、でなかった。

 

 

 

 

「があっ!」

 

 

 

 

「フレイド!?」

 

 

 

 

何秒止まったかわからない。もしかしたら三秒とたっていなかったかもしれない。そんな時間を動かしたのはムウマからの無慈悲な一撃。

爆音とともにフレイドの体が宙に浮きあがったと同時、ミズキは駆け出し推測した落下地点に滑り込み、フレイドを直接キャッチする。

 

背中を地面に打ち付けるも、必死に平常を装い、フレイドを抱えて後ろに下がる。振り向く前にちらりとムウマを見直すが、一切こちらを見ずに蹲っていたため、警戒を解いてスーたちがいる場所まで戻り、数個きのみを食べさせる。

 

「……あんなタイミングで“うらみ”を使われるのは想定外だった。“かえんほうしゃ”で順当に攻めるべきたった。悪いな、フレイド。今のは俺の失態だ」

 

「……謝るな。短期決戦に持ち込もうとしただけだろう。手の内を見れたのなら上等だ」

 

「……次はわたしが前に出ます。マスター、策を下さい」

 

腕まくりの動作をしながら一歩進み出るスーの後ろには、その行為自体をうれしく思いつつも現状を厳しく思うミズキの姿があった。

 

正直言って、フレイドのさっきの交錯は千載一遇のチャンスだった。

もう同じ手を使う事が出来ない以上、スーが出るのは順当ではある。しかし、スーには先のフレイドほどのスピードがなければ接近戦の爆発力もない。

 

 

ふと、ハナダの一件を思い出すが、すぐに却下する。

 

 

あんなもの無闇に使えないし、たとえ使えたとしても、こちらに耳を貸す事が出来なければこうげきのタイミングを指示することはできない。スーがただただ怒り狂うだけでは、あの“サイコウェーブ”は破れない。

 

 

ならシークは?

 

 

……論外。シークに破らせようとするならば、あのサイコウェーブを超える念の力が必要になる。

それにたとえ破れたとしても、シークにはその後の引導火力がない。安易に近づけばフレイドの二の舞になる。

 

 

 

 

 

 

さて、どうしたものか……?

 

 

 

 

 

 

思考の海に意識をおとそうとしたその瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何を楽しそうにしてんのよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

透き通るような震え声が、フロア全体に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

再び一瞬時が止まり、ゆっくりと四人が声の方向に顔を向けると、ローブの隙間から歪みに歪んだ表情を見せるムウマの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早く、早く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く私を、殺しなさいよぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スー、シーク、フレイドの三人が、何とも言えない表情を作っていたその時、

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだと?」

 

 

 

 

 

 

 

背後から、背筋の震える声を聴く。

 

 

 

 

 

 

はっきり言って、

見たくなかった。今のミズキの表情を。

知りたくなかった。今のミズキの感情を。

 

 

 

 

 

 

しかし、反射的に顔を向けてしまう三人。

 

 

 

 

 

 

そして、三人が表現しようのない感情を持った表情が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

「お前ら、下がれ」

 

 

指を鳴らし、首を鳴らし、体を整え終えたミズキは、

 

 

 

 

「こっから先は……俺が行く」

 

 

 

 

ある意味、予想通りのことを言い放つ。

 

 

 

 

言いながら先ほどからわざが掠っていたせいで擦れてぼろぼろになったシャツを脱ぎ捨て、一四歳の子どものものとしてはあまりに引き締まったその肉体を露わにしながらミズキはそれを歯で抑え、両側に引き裂き、二枚の布にする。

 

その二枚をさらに数回破き切れ目を入れ、長い二本の包帯上の布を作り、それをスーとフレイドに一枚ずつ投げる。

 

訳もわからないままの二人はひらひらと宙を舞うそれをキャッチし、指示されるままに拳を握りこむミズキの両手に巻きつけていく。なるほど、拳に巻きつけて欲しいから自分たちにそれを任せたのだなと、こんらんが一周回ってれいせいになってしまったスーが思う。

 

やがて捲き終えて立ち上がるミズキの後ろ姿を見ると、両手の先の丸く膨れ上がったグローブのような布塊がどうにも不恰好に見えて仕方がなかった。

何の意味が、と問おうとしたスーにかぶせるように、ミズキが次の指示を出す。

 

 

 

 

 

「スー、“左手にれいとうビーム”。フレイド、“右手にかえんほうしゃ”」

 

 

 

 

 

「はあ!?」

 

焦り素っ頓狂な声を上げるスーと、ただただ後ろでおどおどするシーク。

そして、理解してしまい、ため息をするフレイドの姿がそこにあった。

 

「……貴様ぐらいのものだな。そんな方法でゴーストタイプを……」

 

「さすがに霊は殴れないからな。俺が触れるにはこうするしかない」

 

何を、と言おうとしたところで、スーもあっと口から漏らし、理解する。

 

「……“れいとうパンチ”と、“ほのおのパンチ”を……無理やり作ろうと……」

 

「大正解」

 

顔は笑顔を作るミズキ。しかし、もう旅の付き合いの長いスーは、その冷たい声を察してしまう。

この人は、また、無茶をするんだ。

 

「そんな……わたしがやります! わたしはまだ動けますから! マスター、わたしを使ってください!」

 

 

 

「駄目だ」

 

 

無情にも切り捨てられた懇願。何時も、いつもそうなのだ。

自分を責めるスーに、数歩前に出たミズキは一言、振り向かずに言う。

 

 

「勘違いするな。お前らがダメだから俺が行くわけじゃない」

 

 

うつむくスーは顔を上げる。ミズキの後ろ姿越しに、先ほどまでと違いこっちに明確な敵意を向けるムウマの瞳がちらりと見えた。

 

 

「あれは俺が殴る必要がある……いや、それもちょっと違うかな……」

 

 

先のムウマの叫びひとつで、一体どこまで理解したのだろうか? それはスーにはわからないが、一つだけわかったことがある。

 

 

 

 

 

 

「俺が、ぶん殴ってやりたくなったのさ。死にたがりの甘ったれの……クソ餓鬼をな!」

 

 

 

 

 

 

 

ミズキは、いらだっていた。

 

 

 

 

 

 

スーも、シークも、フレイドも、

もはや止める術はない。と静かに悟り、

 

 

 

萌えもんバトルは終戦し、

 

 

 

二人っきりの殴りあい(語り合い)が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のムウマの“サイコウェーブ”はポケモンSPECIALのミュウツーの技を参考にさせていただきました。
初代最弱わざと名高いサイコウェーブをあれだけ強技に変えることができる日下先生は天才だと思います。


そういえばどうでもいいことですがもうすぐこの小説書きだして一年になりますね。
もっとも実際にちゃんと投稿できている期間は半年ぐらいですが……
一年を迎えたらまた言うつもりですけど一年を迎えた日に投稿できるかという問題もありますので先に書かせていただきます。

読んでくださっている皆さん、ありがとうございます! これからもよろしく!
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