罪深き萌えもん世界   作:haruko

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……成績悪化により一年余裕が出来ました(目そらし


第10話 1 沼に嵌らぬ為には

 

「マスター、朝ですよ」

 

相棒の声を目覚ましに体をベッドから起こす。心地いい目覚めだった。そのまま立ち上げ狼とすると腹部から大きな塊がごろんと布団を転がる。どうやらシークがミズキの体にしがみ付いて寝ていたらしい。

 

「……まったく。結局ビビりなのは治らないまんまか」

 

そう言いながら優しく頭をなでるとシークも眠そうに眼をこすりながら体を起こし、ミズキと目を合わせる。

 

「よう、おはよう。いい夢見れたか?」

 

「……」

 

じっと見つめたままほんの少し考えるようなそぶりを見せた後、ぺしっと太腿をたたく。

 

「……そうか」

 

そしてミズキはシークを抱えながら立ち上がり、軽く伸びをしたあと、ベッドを椅子代わりにして座り、起こしてくれたスーに向き直る。

 

 

 

「……いよいよですね」

 

「……いよいよもなにもねえよ。いつも通り、契約通り、野望のために尽力するだけだ」

 

 

 

ミズキはいつもの調子を崩さずにそういうが、あれだけ戦うことを嫌がっていたのに一日二日で気持ちの整理がつくはずがないことを、スーはわかっていた。

 

そう、強がりだ。

 

しかし、それを指摘することはない。

 

 

ミズキはきっと、本音ではエリカと戦いたくはないのだろう。

絶対に勝つことはできない、と思っているからなのか、過去が絡む私情になるのかはわからないが、少なくとも、『エリカと戦うか否か』という二択を迫られていた時のミズキは、いつものミズキとは違っているように感じた。

 

 

 

勝てるわけはない。

戦いたくない。

今回はあきらめよう。

 

 

 

そう言ってしまえば、彼はどれだけ楽だっただろうか。

 

 

 

しかし、ミズキはその道を選ばなかった。

なぜか。考えるまでもない。

 

 

 

スーたち(自分達)のためだ。

 

 

 

ならば、出来ることは一つだけ。

 

 

 

「さて。そんじゃ、作戦会議と行こうかね」

 

 

 

我らがマスターの想いに、全力で報いる事だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ミズキ」

 

「おう、来てたか」

 

大会会場まで足を運ぶと、参加者と観客が混ざった大勢の人がごった返している入り口で、一人異彩を放って他の人たちから距離を取られているノブヒコがいた。いつもの車椅子に身を預けた姿ではなく、松葉づえを駆使し、エビワラーとサワムラーの肩を借りながらも、しっかりと自分の足で立っていた。

 

「いいのか?」

 

「ああ。お前の言うとおり、もともと治ってる予定の怪我だしな。それに、真剣勝負をやるってのに、いつもの姿じゃ格好がつかねえ」

 

「ふっ。今のお前の姿も格好いいとは思えないけどな」

 

そう言ってミズキはノブヒコの全身を見回す。武道における強さの象徴である腰の“くろおび”とそれを目立たせるような真っ白な胴着が今のノブヒコとのアンバランスさを強調していて、さっきから振り返り此方を見ている者たちは隠す気もなしにくすくすと嘲笑っている。

 

 

「……いいのさ。すぐに、笑えなくしてやるからよ」

 

 

その一瞬、ノブヒコの真剣な表情を見た者たちだけが、彼を笑う声を潜める。

 

「……ミズキ。俺は確かに、少し前まで、情けないほどに弱かったかもしれない。でも……でもな……」

 

 

 

俺はケーシィを、あきらめられない。

 

 

 

「だから俺は、このトーナメントを勝ち残る。勝ち残って、お前にも、エリカさんにも勝って、そして……俺はいつか、昔の俺よりもっと強くなって、もう一度、ヤマブキのジムリーダーになる!」

 

強く言い放ったノブヒコの言葉に、ミズキは頬を緩め、言う。

 

 

 

「……やってみろ」

 

 

 

 

 

「つよいつよいつよーい!! なんという強さでしょう! 一回戦、二回戦と相手の萌えもんを一撃KO! かかった時間は二試合合わせてわずか八秒! 元ジムリーダーの肩書は伊達じゃない! からておうノブヒコ選手、その強さは本物だー!!!!」

 

がなるような実況の声と、弾けるような観客の叫び声が壁掛けのモニターから響き渡り、ノブヒコは思わず耳をふさぐ。大会運営者のやる気ある雇用選考と控室の整った設備をすこし恨めしくおもってしまう。

 

「でもまあ、確かに言いバトルだったよ。ありがとう、サワ、エビ」

 

「……この程度で褒めてくれなくてもいいさ」

 

「ああ、実況が無理に盛り上げてるだけで実際は相手が大したことないだけだった」

 

辛辣、とも思える二人の言葉だったが、実際は二人の言うとおりだった。一人目の出した萌えもんはコラッタ、二人目の出した萌えもんはディグダ。萌えもんの“あいしょう”や“ステータス”を碌に知らない新人のトレーナーが作戦も立てずに突っ込んできたから“マッハパンチ”や“けたぐり”一発で仕留める事が出来ただけだった。

 

「まあ、そんなんでも勝ちは勝ちだ。参加人数が全員で64人だったはずだから……」

 

「全部デ6戦。後3戦で決勝ダ」

 

ポリゴンが言いながらトーナメント表を渡す。それには勝ち上がった選手たちに赤い線が引かれており、対戦相手がすぐにわかるようになっていた。

 

「ありがとう、ポリゴン。次はお前に出てもらうからな。準備しておいてくれ」

 

「フンッ」

 

そう言ってポリゴンは少し離れたところで体を動かし始める。

 

「ははっ、あいつの“なまいき”なせいかくも慣れりゃあ可愛いじゃねえか」

 

「人も萌えもんもそれぞれ“せいかく”と“こせい”があるってことだ」

 

「……ああ、そうだな。いま、実感してるよ」

 

 

それは否定したり、矯正したりするものじゃない。

ノブヒコはしみじみとそう思い、気づかせてくれた男に感謝をする。

 

 

……あ、そういえば……

 

 

「ミズキはどこだ? 当然、勝ち進んでいるんだろ?」

 

そう言って一回戦、二回戦と出番がなく、同時に行われていた他のバトルを見に行っていたポリゴンに話題を振る。

 

 

するとポリゴンは動きを止め、ほんの少し苦い顔を作った。

聞かれたくないことを聞かれてしまった。

そんな表情に見て取れた。

 

 

 

「……おい、ポリゴン。まさか……」

 

 

 

ふらふらとポリゴンに詰め寄るノブヒコから、思わずポリゴンは目をそらす。

その振る舞いにノブヒコは勿論、エビとサワも驚愕する。

 

 

「まさか……本当に?」

 

「おいおい……」

 

「ミズキのやつ……もう負けて……」

 

 

 

 

 

「あーあ、疲れた。やっぱ最近はフレイドに頼りすぎてたのかもなあ。なあ、シーク」

 

「(ぺしっ)」

 

「戦略が疎かになってんのかねえ……久しぶりに気合をいれなおさなきゃ……どうした、お前ら? 間抜け面で」

 

 

 

 

 

唐突に控室のドアを開けて入ってきたミズキに、三人はきょとんとした表情を向ける。

信じられないものを見るかのような表情を無理やり戻した後、再度ポリゴンに詰め寄る。

 

「な、なんだよポリゴン。ちゃんと勝ち残ってるじゃねえか!?」

 

「び、びっくりさせやがって……」

 

「……あんなやり取りした手前、どっちかが決勝いけませんでしたなんて情けなさすぎるからな……」

 

三人はポリゴンが冗談をしたのかと安堵するが、ミズキを見つめるポリゴンの表情は険しさを緩めなかった。

 

「……何ダサッキノバトルハ?」

 

「……何のことだか」

 

すたすたと去っていくミズキ。そして傍にいたシークが、こちらにほんの少し頭を下げた後、ミズキの後ろにとことことついて行った。

 

「……おい、ポリゴン。どういうことだよ」

 

「……アアイウコトダ」

 

ポリゴンが角ばった手で指差した先にあるテレビでは、先刻までやかましいほどの声を張り上げていた実況、解説者が一回戦、二回戦の映像を見ながら討論していた。

 

 

『いやあ、解説の“萌えもん大好きクラブ”会長のスキゾーさん。ここまで二回戦、全48試合を6つの別のフィールドを使うことで怒涛の勢いで進めてきましたが、どれも手に汗握る素晴らしいバトルでした。スキゾーさんは特に注目した試合などはございましたでしょうか?』

 

『ノブヒコ君。いやあ、好きですねー』

 

『なるほど。一回戦、二回戦と一撃KOのからておう、ノブヒコ君が気になっているという事ですね。確かにあのエビワラーとサワムラーの動きは素晴らしいものでした。ここからの戦いにも、期待できそうです。それでは、ここからは現在残っている16人の一回戦、二回戦の試合の様子をVTRで振り返りながら解説していたただきましょう』

 

そう司会者が宣言したところで、控室にいた人間のほとんどが一つしか存在しない備え付けテレビの前へと集まってきた。

一瞬驚いたノブヒコだったが、考えてみればそれも当然だった。何せここにいる人たちは、二回戦を勝ち残った人間たちであり、裏を返せばノブヒコ同様、他の対戦を見る事が出来ていない面々に他ならない。萌えもんバトルは相手がどんな萌えもんを持っているのか、相手がどのような戦い方をするのかといった情報戦の側面もあるため、ここで対戦相手の対策を作ろうという魂胆なのだろう。

 

いまだ輪を外れてシークの手当てをしているミズキを覗いた15人が、周りに目線で敵意を表しながらメモを片手に画面を見る。

 

『まずはクチバシティよりお越しの、“ふなのり”のシゲロウさん。コダックの“みずでっぽう”を使うのがうまいですねー』

 

『いやあ、好きですねー』

 

 

…………

 

 

『ヤマブキシティよりお越しの“サイキッカー”のタクミさん。スリープの“さいみんじゅつ”がはまっています』

 

『いやあ、好きですねー』

 

 

…………

 

 

『セキチクシティよりお越しの“ぼうそうぞく”のゴウケンさん。マタドガスのコンビネーションわざが光ります』

 

『いやあ、好きですねー』

 

 

…………

 

 

『なんとジョウト地方からお越しの“ぼうず”のチンネンさん! 今回はエリカさんに求婚のチャンスを頂きたいとはるばるタマムシまでやってきたとの事です!』

 

『いやあ、好きなんですねー』

 

 

…………

 

 

その後、トレーナーの情報とバトルの様子が画面に流れるという繰り返しが10分近く続いたのちに、待ち望んだ16人目の名前が呼ばれた。

 

 

『最後になりますは、マサラタウンよりお越しの“かけだしトレーナー”のミズキさん。なんとトレーナーになってからまだ数ヶ月ほどで、旅をしながらはるばるタマムシまでやってきたとの事です』

 

『いやあ、好きですねー』

 

『では、そんなミズキさんの対戦の様子です。ミズキさんは一回戦、二回戦を同じ萌えもん、『ユンゲラー』で突破していますね。このユンゲラーは接近戦を得意としているようで、“ドレインパンチ”を駆使して戦い、勝利を手にしています』

 

 

 

「はあ? ユンゲラーに“ドレインパンチ”?」

 

サイキッカーのタクミがそうつぶやいたのを皮切りに、ミズキの二回戦の映像が始まる前に溜まっていた人垣が一気に散らばる。ミズキの一回戦の試合が終わり、二回戦に画面が切り替わるころには、画面の前にはノブヒコ達しか残っていなかった。

 

しかし、続けて二回戦を見ていたノブヒコ達も、1分、また1分と時間が経つごとにその表情をどんどん曇らせていく。

 

画面に映るのは必死に“ドレインパンチ”を繰り出すシークの姿と、それをあざ笑うかのごとく受け止め、反撃する相手のアーボック。ひかえめに言っても大苦戦、直球に言うなら泥仕合だった。

 

『おっとここで“しねんのずつき”がクリティカルヒット! アーボックがダウンし、大熱戦をミズキ選手とユンゲラーが制しました!いやー、手に汗握る接線でしたねえ、スキゾーさん!』

 

『いやあ……すきですねえ』

 

最後に盛り上げようとする司会の声と、少し気を使うような声色のスキゾーさんの言葉で、映像は締めくくられた。

振り向くとすでに何人かは係員に呼び出されており、それ以外のトレーナーたちは自分の萌えもんと一緒に情報を共有しながら対戦を立てていた。

 

 

そんな中、トーナメントの一番端に位置するミズキはシークを抱きかかえながらベンチで横になっていた。

 

 

 

 

 

「モルフォン、“サイコキネシス”!」

 

「ポリゴン、“テクスチャー”だ!」

 

『おーッとこれはうまい! ノブヒコ選手、“テクスチャー”をうまく利用し、エスパータイプになることによってモルフォンの“サイコキネシス”ダメージをいなしましたー!』

 

『いやあ、好きですねー』

 

「ちい、ポリゴンなんて萌えもんまでもってやがったのか……せっかくかくとう萌えもんの対策をしたってのに……退けっ、モルフォン!」

 

「逃がすな! “サイケこうせん”!」

 

「ああ!? モルフォン!」

 

『距離を取ろうとしたモルフォンの背中に“サイケこうせん”が炸裂! こうかはばつぐんだー!』

 

「モルフォン、戦闘不能。よって勝者、ヤマブキシティのノブヒコ!」

 

『決まったー! からておうノブヒコ選手、これで3回戦も突破だー!』

 

 

 

 

「ふー、なんとかなったな。ポリゴン、ごくろうさん」

 

「さすがに3回戦だ、全体のレベルが上がってきている」

 

「でもここまでは何とかなった。でも、問題なのは次からだ」

 

再び控室に戻ってきたノブヒコは、3人と向かい合い、ポリゴンが持っているトーナメント表を覗き込む。

 

「我々ハ3人ダ。トイウ事ハ、次カラハ二度目ノ出場二ナル」

 

「ああ、これまでより厳しい戦いになるだろうな」

 

サワの言葉に、全員が無言でうなずく。

 

先ほども言った通り、萌えもんバトルは情報戦の側面もある。相手がどのようなタイプの萌えもんで戦い、どのようなタイプのわざを使うのか。それを知ったうえで戦うのと知らない状況で戦うのとでは全く別のバトルになると言っても過言ではない。事実今戦った“ぼうそうぞく”のゴウケンもこちらの二回戦までの選出を踏まえたうえで、かくとうタイプが苦手な、むしタイプのモルフォンを選出していた。

 

エビ、サワ、ポリゴンという手持ち萌えもん、さらにわざを多少と言えど他の出場者たちに見せてしまった以上、次からのバトルはさらに対策が厚くなっていくに違いない。

 

気合を入れなおそうと顔を上げ、全員の顔を確認しようとすると、三人の目線は現行のバトルを移すモニターに向いていた。

 

 

『おーっと、ここで“しねんのずつき”がヤミカラスに炸裂っ! ヤミカラスがひるんでしまった隙を逃さず、ユンゲラー、“ドレインパンチ”で追撃を決めたぁ! ミズキ選手とユンゲラー、下馬評を覆しチンネン選手のヤミカラスを退け、4回戦に進出だー!』

 

 

「……けっ、運のいい男だ」

 

 

モニターの前にいた“サイキッカー”のタクミが、いらだった表情でミズキの戦いに苦言を呈す。同じエスパータイプの萌えもん使いとして、ミズキに思うところがあるのだろうか、ミズキをかなり下に見ているような印象を受ける。

しかし、同様に4回戦への進出を決めモニターを見ていた他の選手たちも、タクミの意見に大方同意していた。

 

あくタイプの萌えもん、ヤミカラスに、エスパータイプのわざ、“しねんのずつき”は基本的に“こうかがない”。

それは、なぜ、などという疑問を持つものでもなく、萌えもんバトルにおける常識、不変の真理である“タイプ相性”に基づくものだ。

 

ならば、なぜシークの“しねんのずつき”はあくタイプのヤミカラスに命中したのか?

 

試合を最初から見ているわけではないノブヒコにも、それぐらいのことは推定できた。

 

 

ユンゲラーのとくしゅへんかわざ、“ミラクルアイ”。

 

 

ユンゲラーが体から出している特殊なα波によって敵の萌えもんの波長を読み取り、本来当たらないはずのエスパーわざを当ててしまうというまさに横紙破りのエスパーわざ。

 

おそらくミズキは、試合開始の直後に“ミラクルアイ”を発動し、エスパーわざが当たるように仕込んでいたのだろう。

 

 

それはわかる。しかし、それをした理由がわからない。

 

 

萌えもん協会のわざ判定では、“ミラクルアイ”は判定Eとなっている。

基本的にC以上が実践級のわざであると扱われるため、“ミラクルアイ”は“コンテストバトル”などの魅せ勝負や、所謂遊びプレイ用のわざ。つまり戦力外判定を受けているわざだった。

その理由として一番大きいのは、わざわざ“ミラクルアイ”を使ってまで、エスパーわざをあくタイプに当てる利点がないという事だった。

 

そうまでしてエスパーわざを使わなくても、サブの別タイプわざを使えばいいし、戦えないならば別の萌えもんが戦えばいい。

 

わざわざ実践で使うレベルのわざではない、というのが、このわざに対しての評価だった。

 

 

ならばそんなわざを率先して使い、戦うミズキの評価はどうなるかは想像に難くない。

 

 

ただでさえミズキの肩書は“かけだしトレーナー”なのだ。

戦術性の低さを“きょううん”で補い、勝ちあがるド素人という評価をするのは至極あたりまえであると言えた。

 

 

 

 

 

しかし、そこで楽観視して気を抜くほど、気持ちを新たにスタートしたノブヒコ達は甘くない。

 

「……何ヲ企ンデイル?」

 

ポリゴンが呟いた。エビもサワも口には出さないがポリゴンに同意し、同時に思考を始める。

 

ミズキの戦闘を肌で感じていた三人は、あれが彼の実力でないことは直ぐにわかる。

しかしだからと言って、それは『違和感』と片付けてしまってもおかしくないものであり、それでミズキが勝ちあがっている以上、誰に問うこともできないようなものだった。

 

 

「……もしかして、実力の差を見せつけようとしているのか……?」

 

 

「「ッ!!」」

 

 

サワの言葉に、思わず二人は反応する。

 

そんなこと……と否定の声を上げようとしたエビだったが、『ケーシィを取り戻すため』というこの大会本来の目標を思い出し、思わず口をつぐんだ。

 

自分達は『ケーシィの“おや”としてふさわしい実力であることを見せつける』という野望(目的)の下、この大会に参加している。そしてそれは、いくらノブヒコの自立の“てだすけ”をしてくれていたミズキであっても、ケーシィの現在の“おや”であるという立場からすれば望ましくない結果に違いない。

 

ならばどうするのか。

 

ノブヒコを大会に引きずり出し、圧倒的な実力差を見せつける。

 

“からておう”ノブヒコの得意な、ユンゲラーの苦手な近接戦闘を用いて、圧倒する。

 

我々にも、ケーシィにも、自分が最も『ケーシィにふさわしいおや』であることを証明する。

 

 

そのための、意思表示であるとするならば……

 

 

 

 

 

 

「余計なことは考えなくていいよ」

 

「っ! ノブ?」

 

思考の海にはまりかけた三人の意識を引き上げたのは、ノブヒコの声だった。

 

「どうせ戦術の組み立てとか、罠の張り方とか、頭脳戦で俺があいつに劣っていることなんて、ハナから分かっていたことじゃないか」

 

そんなマイナスな言葉を発するノブヒコの表情からは、逆に自信のようなものが見て取れた。

 

「わかっているさ。彼には彼の計画がある。それこそ、俺には想像もつかないような、捲っても捲っても裏が続く様な、途方もない戦略の迷路があるんだろう。でも、そんなものは関係ない」

 

そう言いながらノブヒコは、自分の足に巻いてある包帯を外す。

 

「おいっ、ノブ! それは……」

 

止めようとしたサワを制止し、ノブヒコは歯を食いしばった。

 

 

 

まだ痛みはあるのだろう。感覚も戻っていないだろう。

 

 

しかし、おぼつかない足取りで、壁に寄り添いながらではあったものの、確かに、ノブヒコは自分の足で、一人で、立ち上がっていた。

 

 

 

「奴は必ず勝ちあがってくる……俺も必ず勝ちあがる! そして俺たちは決勝で戦い、俺が勝って、ケーシィを取り返す!」

 

 

 

 

「「……ノブヒコ……」」

 

 

 

 

彼は、変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 




皆さんはスキゾーさん、ご存知でしょうか?
アドバンスジェネレーション時代にアニポケに出ていたあの人です。
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