罪深き萌えもん世界   作:haruko

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本編の前に少しだけ報告。

先日活動報告の方に、自分がこれまでに触れたポケモン作品をまとめておきました。
ほんの少しこの小説に関わることも書いたので、暇があれば見ていただけると嬉しいです。
でも見なくても問題ないものでもあるので、気になったら見てみよう、程度で。





それでは、答え合わせです。

4/1 スマホより追記
久しぶりにランキングに乗りました!
皆さん、本当にありがとうございます!


第11話 2 食虫植物

 

「……おい。なんだよ、あの萌えもん?」

 

「ばか、あんた忘れたの? 少し前に、新種の萌えもんとして発表されてたじゃないのよ」

 

「……あー! 何年か前に発表された……」

 

「そうよ。確かにくさタイプの萌えもんだったわ」

 

「カントーじゃ見ることの無い萌えもんだ……確か名前は……」

 

 

 

 

 

観客たちのざわめきをよそにミズキは冷え切った頭で、登場したそれと向き合う。

 

「……まさかこんなふうに相対することになろうとは、この世の中とは真、不可思議に満ち溢れておりますわね……ですが、昔の男だからと言って手心を加えるほど、わたくしは優しい女ではありませんことよ?」

 

「……全然期待してねえから安心しろ」

 

優しく、冗談交じりにそんなことを言った彼女の登場とともに、フィールド全体に“あまいかおり”が立ち込める。本来、やせい萌えもんをおびき寄せる効力があるその香りだが、思わず冷や汗をかいてしまったミズキは、そんな憎まれ口しか返す事が出来なかった。

両手に咲いた美しい紅と蒼の花を軽く振ってこちらにアピールをするその姿は、懐かしさや親しみよりも、恐怖やいら立ちを煽るものだった。

 

「……久しぶりだな。ロズレイド」

 

「いやですわ、ジョーカー様。昔のように、『ミラちゃん』とお呼びくださいませ」

 

体をくねらせるその女に、その名はやめろ、と吐き捨てるように言ったミズキは、そのままキッとエリカを睨むが、エリカはわざとらしくやれやれと言った素振りで挑発するだけだった。

 

「エリカお嬢様から聞きましたわよ? わたくしを進化させたあの石のサンプルデータを返してほしいって」

 

「ああ、そうだ。もともと俺が開発して、お前にくれてやったのものだ。俺が返してくれっていうのは、不思議なことじゃあないだろう」

 

「あら? 女性にプレゼントした物を、お別れしてから返せだなんて、無粋なお願いだとは思いませんの? 女心は紅葉のごとく、移り変わりが激しいものなんですのよ?」

 

「……男ってのは未練がましい生き物なんだよ」

 

「ふふっ。それが本当に未練なのであれば、わたくし個人としましては返してあげるというのも吝かではありませんけれど」

 

口元を右手の赤い花で隠し上品に笑いながらも、ぎろりと力強い目を作り、スーを睨む。

スーは体をびくりと震わせるも怯まず、強い視線を返す。

 

「ずいぶんとかわいらしい娘を連れてらっしゃいますのね。その娘が噂のあなたのパートナーかしら」

 

「始まる前からいかくしてんじゃねえよ」

 

「そうですわね。では、そろそろはじめましょうか?」

 

ミズキとミラの会話を遮るようにそう言ったエリカは左手を伸ばし、審判へと向ける。我々の話が理解できなかったのか、呆けていた審判は、開始を促されていることに気付き、背筋を伸ばした。

 

 

 

「さあ、もう後戻りはできませんわよ」

 

 

 

「……そんなもの、とっくにできなくなってるよ。あんたたちに、背を向け走り出した時からな!」

 

 

 

「……やれやれ。わたくしとしては、あまりモチベーションが上がらないのですけれども……仕方ありませんわね、昔の仲間(元カノ)から今の仲間(今カノ)への、“やつあたり”といきましょうか?」

 

 

 

「わたしは……勝ちます。勝たなきゃ、いけないんです!」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――絶対戦闘開始―――――――――――――――――

 

 

 

「スー! “あられ”!」

 

指示と同時にスーは自分の右手と左手、それぞれに力を集め、右手に氷の塊を、左手に水の塊を作る。まず、氷を天高く打ち上げ、フィールドの真ん中を表すセンターサークルまで飛ばし、それを水の塊で打ち抜き、フィールド上を影に変える簡易的な雲を生成する。

 

『さあ、ついに始まりました。エリカ様 VS ミズキ選手! まず動いたのはミズキ選手! “あられ”を利用してラプラスにとって有利な環境を整える算段かー!?』

 

「……なるほど」

 

そうつぶやいたエリカの目が、すっと細くなり、ミズキとじっと見つめている。

 

(……入ったな。スイッチが)

 

ミズキは、それがエリカの、『人や、萌えもんを観察するときの表情』であることを察し、気合を入れなおす。

 

「ミラ。“グラスフィールド”!」

 

言われたミラは片膝をつき、地面に両手を添え、力を込める。その瞬間に地面に植物が生い茂り、フィールド全体が草原化する。

数秒もしないうちに、激しいあられが生い茂る植物に打ち付ける凸凹なフィールドが完成した。

 

『ここでエリカ様! “グラスフィールド”を展開ー! 天候、“あられ状態”は、雪の環境に適応できないこおりタイプ以外の萌えもんにダメージを与え、“グラスフィールド”は、くさタイプのわざのダメージを追加するという効果を持っています。互いに得意であり、互いに相手が不利な状況を作り出しましたー!』

 

(……それだけじゃない。“グラスフィールド”には、じめんに触れている萌えもんの体力を、少しずつ回復する追加効果がある。“あられ”によるダメージを、軽減しに来た)

 

此方の勝ち目を的確につぶしにかかる、詰将棋の様な的確な選択に内心苛立ちつつも、気丈な態度を保ちながらスーに指示を出す。

 

「走れ! 相手に接近するんだ!」

 

それを聞いたスーは互いのわざにより混沌化したフィールドに向かって全力で駆けだす。普通のラプラスよりも素早く動けるその特徴を存分に生かし、フィールド全体を駆けまわることで相手を翻弄する。

 

「なるほど……さすがの速さ、と言ったところでしょうか」

 

しかし、エリカにあせる様子はなく、静かに右手を突き出し、指示を出す。

 

「ミラ、右前方。“ヘドロばくだん”」

 

「っ! “れいとうビーム”!」

 

エリカの指示を聞いたミズキは即座に迎撃の指示を出す。

すさまじい速度で両手から一発ずつ放たれたどくの弾丸は走るスーの移動先をしっかりと捉えていた。スーは自分が出来うる限りの速さで口から氷のエネルギーを吐きだし、寸前のところで二発とも当たる前に爆ぜさせる。どくが飛び散り地面にしみ込むさまを見ながら、改めて敵の実力を肌で実感し、背筋が凍る。

 

(完全に、狙い打たれてた)

 

闇雲に乱打されたこうげきでもなければ、命中に比重を置いたこうげきでもない。

一発一発にこちらを仕留める力があるこうげきであったことを、スーは確信した。

 

「あら、一応挑戦するだけの実力はあるのですね」

 

「はぁ、はぁ、どうも……」

 

疲れからではなく、緊張感から呼吸を乱すスーと、一歩も動かずに優雅にこちらを見下ろすミラ。

 

たった一度のやり取りで、思い知らされる格の違い。

 

 

そしてそれを感じていたのは、スーだけだはなかった。

 

静まり返る会場、観客は勿論、実況さえもあまりのレベルの違いに思わず息をのむ。

 

 

そして誰よりも今の交錯を重くとらえていたのは、ミズキだった。

 

 

(……“ヘドロばくだん”……さすがに“グラスフィールド”を使ったからと言って、くさわざだけで攻めてきてくれるほどあまかねーか)

 

 

くさタイプは、みずタイプに強い。

 

しかし、くさタイプは、こおりタイプに弱い。

 

 

だからこそ、スーのこおりわざでくさわざを捌ききる事が出来れば、勝てる可能性は飛躍的に上がった……のだが、そんなミズキの希望は希望ですらない、淡い期待であったことを思い知らされる。

 

 

(……くそっ。気落ちするな。後手に回れば負ける事なんざ百も承知だ。俺たちが勝つためには)

 

 

 

俺があの人に、勝つしかない。

 

俺の戦略で、あの人の策を超えるしかないんだ!

 

 

 

「スー、全力で“しろいきり”だ! フィールドを飲み込め!」

 

「はい!」

 

スーが思いっきり空気を吸い込み、体内で真白な氷の粒子に変えて大量に吐き出す。フィールドの大部分は霧に飲みこまれ、わざを受けたミラとエリカはお互いがぎりぎり見えるほどまで視界を失う。

 

『おーっと、ここでラプラス、“しろいきり”でロズレイドの視界を奪います。これではエリカ様はうかつに動く事が出来なーい!』

 

『いやあ、好きですねー』

 

「……ああ、マチスとの戦いで使っていたという、目くらましの戦法ですわね」

 

しかし、エリカは言いながら違和感を覚える。

 

マチス戦の時とは状況が違う。

マチス戦ではスーは外野として参加していた。

だからこそ、盤面を埋め尽くす目くらましは成立したのだ。

 

しかし、今回は一対一。しかも逃げることのできないバトル。

 

ならばなぜ、見えないほどの霧を捲いた?

 

その答えは、すぐに出た。

 

「行くぞスー、『CROSS』だ! 正面!」

 

「……これはタケシの時の戦略だったかしら?」

 

細かく聞いているわけではないが、彼ら独自の移動指示の方法だったはず。

ここで使うという事はつまり、視覚を必要としないような特殊な移動法なのだろう。

 

「来ますわよ」

 

「はいはい」

 

適当な返事とは裏腹に真剣な表情で霧中を見つめるミラは、先ほど同様片膝をついて待機する。

 

「(5.3)、(2.5)、そこだ! “れいとうビー」

 

「ミラ、今です」

 

「っ!」

 

表情は見えないが、射抜くような冷たい声の指示に、それがそのままスーの危険を示していると直感したミズキが、すぐに指示を切り替える。

 

「スー! そのまま俯け!」

 

わざを発射する寸前のスーは、口を開けたまま顎を引き、その状態で“れいとうビーム”を発射する。わざを当てるために接近したスーとミラのちょうど中間の地面にヒットしたことで小さな爆発が起こり、その爆風に煽られることによって少々のダメージと引き換えに、擬似的な自陣への“とんぼがえり”を可能にする。

強引な脱出方法ではあるが飛んできたスーと共にどくの塊が霧を突き破ってきたことから、自分の判断が間違いでなかったという事を確信すると同時に悪化する現状に思わず眉間にしわがよる。

 

「大丈夫か、スー!?」

 

「けほっこほっ、はい!」

 

勢いのいい声を返すスーだったが、多少ダメージを負ったことは隠せない。むこうも同様の状況であろうことは間違いないが、攻めているはずのこちらがいつの間にか後手に回ってしまっている、と感じているのは決して間違いではなかった。

 

「あーあ、埃が付きましたわ。それにお気に入りのマントもびしょびしょ」

 

今の一連のやり取りで、両手の花でパタパタと体をはらいながら不機嫌そうに言うミラとそれを見て優雅に笑うエリカの姿が確認できる状態まで、霧は晴らされてしまったことに心の中で舌打ちをしながら、そのまま思ったことを口にする。

 

「……なぜ、スーの居場所が正確にわかった? 完全に視界は奪っていたはずだ」

 

「……ふふっ。なら、久しぶりの授業と行きましょうか?」

 

そう言ってエリカは楽しげに、人さし指で二回、ノックするように地面を指さす。

 

「足音、察知する技術は教えたでしょう?」

 

「……あんたの“グラスフィールド”でそれがつぶれているから、わざわざこんな戦術を取ったんだ」

 

芝生の上では足音はなりづらく、いくらエリカと雖も察知はしづらいはず。そうおもっての行動だった。

 

「ふむ。考え方は80点ですわね。経験の差が惜しいところですわ」

 

「わたくしたちの様なくさタイプは、植物と一心同体なのです。中にはしぜんのちからそのものを使ってフィールド全体をコントロールして戦う萌えもんもいるくらい。植物のざわめきを感知したうえでその上を動く敵の行動を把握するなど、目でとらえるよりたやすいこと」

 

マントを翻し、ドヤ顔を浮かべるミラの話に、真剣な表情を返すミズキは不安と怒りで押しつぶされそうな心を冷静な頭で押さえつけながら平然とした態度で接する。

 

「……それで、新しい攻め手は思いつきましたか?」

 

「……さあね、俺はあんたほどやさしくないから、作戦をしゃべってやる気はないね」

 

「残念。では、待つのは怖いので、今度はこちらから攻めていきましょうか」

 

思っても無いくせに、と毒づく前に、エリカが動いた。

 

 

「ミラ。そろそろまじめに動きなさい」

 

 

「……はぁ、仕方ありませんわね。エリカ、終わったらいいポフレと玉露、用意してくださいな」

 

 

ふざけた調子でそういったミラは、スーに見せつけるかのように、一歩で爆発的に加速する。

 

 

『うぉーっと! 今度はエリカ様から仕掛けます! ロズレイド、草原と霰と毒だまりのフィールドに足を踏み入れ、一気にラプラスとの距離を縮めにかかりましたー!』

 

「冗談じゃねえ! 縮めてたまるか! スー、“れいとうビーム”!」

 

「躱しなさい」

 

スーが出来る限り最速で口にエネルギーをため込み数発乱射するが、造作もないと言わんばかりに舞うように避けるミラにとってはその攻撃は時間稼ぎ以上の何でもなかった。

強力なわざゆえに乱射に向かない“れいとうビーム”というわざの弱点を見事に疲れていた。

 

「ちっ! スー“しろいきり”だ!」

 

『ここでラプラス、再び“しろいきり”を展開! しかし、“しろいきり”はすでにエリカ様によって破られてしまっている現状で、ミズキ選手には立ち向かう術はあるのかー!?』

 

「お手並み拝見、と行きましょうか」

 

エリカはいっそ楽しむような態度で、霧が展開されていく様を見守る。そんなエリカを尻目に、駆けるミラは躊躇なく霧の中へ飛び込む。

 

「スー、動くなよ」

 

「……なるほど。足を動かさなければ悟られることはないと……でも動かなければ同じこと。ミラ、“ヘドロばくだん”!」

 

ミラは霧に紛れる前に視認していた方向を向き、“ヘドロばくだん”を発射する。霧を突き破るように進むそのわざはしかし、ミラに手ごたえを与える事無く地面にぶつかり爆発して霧を消し去るとともに消えた。

 

「……! ミラ、上です!」

 

「“れいとうビーム”!」

 

「っ! このお!」

 

降りかかるように襲い掛かる光線に、先ほど同様舞ながら躱すように努めるものの、流石にふいうちとしての効果も相まってよけきれなくなったミラは、“ヘドロばくだん”を放ち、“れいとうビーム”をつぶしながらバックステップで自陣へ戻る。

 

「逃がすな! 追え!」

 

「下がりながら“ヘドロばくだん”!」

 

「『CROSS』!」

 

その宣言にスーは即座に目を瞑り、全てをミズキに託す。

それまでの移動指示の簡略化のために使われていたものではない。ニビ戦以来の、純正の『CROSS』だった。

 

 

「(1.1)、(3.5)、(2.0)、ターン!」

 

意趣返しのごとく、スーが踊るように“ヘドロばくだん”をかわしていく様に、ミラは表情をピクリと動かす。

口からエネルギーを一発ずつ吐き出すスーのこうげきとは違い、ミラは両手を使ってこうげきを生成している。言い換えるのであれば、こうげきは単純にスーの倍の回数であるわけだ。それを走りながら乱射しているにもかかわらず一発も当てる事が出来ずに、それどころか距離を引き離すことすらできていない状況であった。

 

それを可能にしているのは、ミズキの指示、そしてその指示に対する、スーの信頼だった。

全てはスーがミズキにゆだね、ミズキが答えるからこそなせるわざ。

 

ミラとスーのレベル、けいけんちの差を、埋めうるものだった。

 

それを理解し、ミラは苛立つ。

 

「このっ……さっさと、離れなさい!」

 

 

 

 

その苛立ちが、あり得ないはずのミスを誘う。

 

 

 

 

「ミラ!」

 

 

 

 

「っ! しまっ!」

 

 

それはほんのわずか。

実況はおろか、観客席の最前列にいた目の肥えたトレーナーでも気づかないほどの差。

 

 

 

その“ヘドロばくだん”は、それまでよりも、わずかに大きかった。

 

 

強力になった。などと楽観視できる状況ではない。

 

 

エリカの脳裏にあるのは、先刻の決勝戦。

 

 

強いわざには、はんどう(リスク)が伴う。

 

 

 

この息の詰まるような、

ラプラスに張り付かれたような状態の攻防から、

早々に逃げ出そうと焦ったツケ。

 

 

 

“ヘドロばくだん”をかわしたスーは、ついにミラの懐に潜り込む。

 

 

 

 

「いけえ、スー! “れいとうビーム”!!」

 

 

 

 

とっさに弾き飛ばせない、苦手なクロスレンジに潜り込まれたミラは、

 

なすすべなくエリカの元まで、弧を描くように吹き飛ばされる。

 

 

 

 

『き、決まったー! 本バトル初の直撃(オープニングヒット)を決めたのは、ミズキ選手のラプラス! ロズレイドのこうげきをかいくぐり、見事“れいとうビーム”の直撃を決めたぁ! こうかはばつぐんだぁ!』

 

 

 

 

 

 

「ミラ……ダメージは?」

 

「……問題ないわ、ちょっとふいうちで食らっただけよ」

 

「……ならば反省なさい。今の一撃は、あなたの慢心が招いたものです」

 

「……ええ」

 

「……スー、いったん退け。こっちも次の攻めに備える」

 

 

 

いたって冷静にそうスーに告げるミズキであったが、内心は柄にもなく動揺するとともに、小躍りをはじめそうなほどに高揚していた。

 

 

 

(……俺が……当てた? こうげきを……エリカさんに? 何度挑んでも、一発たりともダメージを与える事さえかなわなかった、あのエリカさんに?)

 

 

 

バトル中。

絶対戦闘。

敵は憎きR団で、ジムリーダー。

 

 

様々な事実がミズキの中で、ほんの数秒ではあるものの、完全に吹き飛ぶ。

 

 

(俺が……エリカさんを……ハメた?)

 

 

一瞬気を抜き、笑みさえ漏らしかけたミズキだったが、一度深呼吸をした後で両手で自分の頬をはり高揚を追い出し、『通用している』という事実だけを残す。

 

 

 

 

 

「……勝つぞ! スー!」

 

 

「! はい!」

 

 

 

 

 

ミズキの想いを感じ取ったスーは、さらに力強い返事を返した。

 

 

 

 

 

 

「もうさっきみたいな失態はありえないわ。エリカ、指示を出しなさい!」

 

(はてさて、一体何を仕掛けたのやら……)

 

声を荒らげるミラを細い目で見ながら、エリカは冷静に思考する。

 

(わかっていることは、ミラが必要以上にあせってしまっていること。“れいせい”なせいかくであるはずのミラが、焦ってわざを失敗するような局面だとは思えなかった)

 

ジョーカーに思い入れがあったからこそ?

 

 

いや、違う。

自分の萌えもんがそこまで弱いはずはない。

 

 

そもそも、乱れ始めたのはバトルの途中からだ。その理屈ならばバトル前から多少なりとも変化が発生しなければおかしい。

 

(……一つ分かることは)

 

 

 

「スー! ガンガン行くぞ! “しろいきり”!」

 

 

 

 

(わたくしは、随分と面倒な子を育ててしまったのかもしれませんわねえ……)

 

 

 

 

まあ、いい。

 

どうせただ勝つだけじゃあ、私の任務は果たせない。

 

 

 

「ならばわたしも、あなたを見習って、もう少し楽しむことにしましょうか?」

 

人さし指と親指で輪を作り、それを通して霧に消えていく無表情のミズキを見ながら、呟く。

 

 

「“ヘドロばくだん”で吹き飛ばしなさい!」

 

 

視界を失った状態においては敵方に軍配が上がると判断したエリカは、早々に霧をはじきとばす。とすると、“ヘドロばくだん”を決めるより先に、“しろいきり”を突き抜けてスーがこちらに全力で向かってくる。

 

「なっ!?」

 

「ミラ、怯んではなりませんわ! 迎撃なさい!」

 

「スー! 『AUTO』!」

 

“しろいきり”をはさみ、この場で唯一何も見えぬ状態のミズキは、躊躇なくそれを宣言する。本来の用途とは違う作戦の宣言ではあったが、正しくその指示を理解したスーは、聞くや否や自分の判断で全力の“れいとうビーム”を放つ。

 

「ミラ! 落ち着いて躱しなさい!」

 

「追撃だ、スー! “れいとうビーム”!」

 

ミズキの指示からこれまでの連撃よりもテンポを上げてきたと感じたミラは、これまでの移動速度では間に合わないと自ら判断し、素早くその場から離れるために一度目のステップの着地の瞬間に、片足だけで方向転換をする。かなり無理やりな動きではあるが、“れいとうビーム”の直撃を受けるよりはましである、という考えのもとだった。

 

 

しかし、

移動しながら自分が元いた場所に目をやるが、

飛んでくるはずのこうげきは来ない。

 

 

「ミラ!」

 

 

そして気付く。

 

 

スーは、まだ攻撃を放っていないことを。

 

 

見えていないミズキから、的確な指示が来るはずはないと。

 

 

ミズキからの指示は、ブラフであるという事を。

 

 

 

そして気付かない。

 

 

 

無理やり動いた先の足元は、先ほど避けながら躱していた“れいとうビーム”で、こおりづけになってしまっていることを。

 

 

 

氷の地面に足を滑らせ、体勢を崩したミラの体に、

力を込めた、“れいとうビーム”が炸裂する。

 

 

 

 

『き、決まった! 決まってしまったー! 二度目の“れいとうビーム”直撃ー! これは効いているぞー!』

 

 

 

 

 

実況がそう叫び、ミズキ動揺状況が見えないミズキの後ろ以外に位置する観客たちが歓声を上げる。ミズキは、実況によってスーの作戦成功を知り、ほっと胸をなでおろす。

 

 

 

 

 

 

そう、

安心。

漫然。

 

 

 

 

 

 

気を抜かず、勝利を強欲に追い求めるミズキが格上と戦うとき、常に味方であったそれが

 

 

 

 

 

今、ミズキに牙を向け襲い掛かる、悪魔へと変わる。

 

 

 

 

 

 

「“ヘドロばくだん”」

 

 

 

 

 

 

その声を聴いた瞬間に、

ミズキは、息をのんでしまう。

 

 

 

 

そして指示を出そうと息を吸い込んだところで、

相棒が宙を舞い、霧を突き破り、とんでくる。

 

 

 

『おーっと、ロズレイド、すかさずラプラスに反撃の“ヘドロばくだん”がヒット! これは効いている! エリカ様、これでこの試合初のクリーンヒットを奪いましたー!』

 

 

 

「スー!?」

 

「けほっ、ごほっ」

 

 

腹部に直撃したのだろう。呼吸がままならないほどのダメージを受けてしまったスーは受け身も取れずに転がりながら草原に着地する。

 

ミズキはその様子を見て、自分を恥じた。

 

 

馬鹿か俺は。

まだ終わったわけじゃないのに、何をしている?

 

 

ほんの一瞬深呼吸をはさみ、気持ちを切り替えた後、『なぜ決まらなかったのか?』という方向へ疑問を移す。

 

 

(“れいとうビーム”の直撃が二発。耐久力はさして高くないロズレイドを倒すには、十分なダメージになったはず)

 

しかし、今確認すると、多少は息を乱しつつも、どう見積もってもせんとうふのうとは言い難い、それどころか、まだまだ戦えるミラの姿が見て取れた。

 

(考えるべきは、俺に見えていなかった数秒間)

 

直撃というのは飽くまで実況の声で判断したものだ。

誰にもばれずにきゅうしょを外してこうげきを受ける。そんなことは、エリカにとっては造作もない事。

 

(“こうごうせい”……いや、ないな。そのための“あられ”でもあったんだ)

 

ロズレイドが使用できる回復わざ“こうごうせい”というわざは、太陽光を使って体内エネルギーに変換し、体力を回復するというわざだ。スーの“あられ”によって天候が悪い今の状況では大した回復は見込めないし、何よりスーが“あられ”を使った状況下にそんなわざでわざスペースを消費してしまうなどという愚行をあの人がとるはずはない。

 

 

「はあっ、まったく。小賢しい事ばっかりしてくれるわね……」

 

 

思考を断ち切ったのは、ミラの恨み節の様な呟きだった。

 

 

「……気持ちわりぃしゃべり方が取れたじゃねえか。そっちの方がかわいいぜ。『ミラちゃん』?」

 

「……あら、あなたはこっちの方が好きなのね。じゃあ、無理しなくてもいいのかな」

 

笑う二人だが、どちらも心中はおだやかではない。

頭の中をフル回転させ、現在状況を確認する。

 

お互いに答えは出ない。

だが、先に割り切ったのは、ミズキの方だった。

 

(……ミラにダメージがないわけじゃない。それに、まだエリカは、わざを二つ残している)

 

 

せめてあと一つ、早急にわざを引き出さなければ、全ての流れを持って行かれる。

此方に優勢に動いている今こそ、自分たちは焦る必要がある。

 

 

「スー、いけるか?」

 

「はぁ、はぁ……まだまだぁ!」

 

 

少し呼吸は荒くなってきたものの、スーの勢いをつぶすわけにはいかないと、ミズキは指示を出す。

 

 

「よし、走れ、スー! “れいとうビーム”!」

 

 

 

 

それをきき、一気に駆け出すスーを見て、

 

 

 

 

 

 

笑うのは、エリカだった。

 

 

 

 

 

「『罠を仕掛ける罠師は無防備である』。わたしたち策略家にとって一番のカモは、『ちょっと賢いお馬鹿さん』。そう教えましたわよ」

 

 

 

 

 

エリカは説き伏せるようにそう言う。

 

 

 

肺を握りつぶされ、

酸素が頭に回らなくなる。

 

 

 

エリカのあれは、油断じゃない。

獲物を捕らえた、喜びの笑みだ。

 

 

 

 

「止まれ! 行くなぁ!」

 

 

 

 

ミズキの叫びに反応したスーは振り返るが、

無情にも、体は追いつかなかった。

 

 

 

 

スーは、その場で、倒れこんだ。

 

 

 

 

 

「ミラ、“ヘドロばくだん”」

 

 

 

 

 

再び、スーの体が、宙を舞う。

 

 

 

 

 

 

 

「スーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ミズキのポーカーフェイスは完全に崩れ去り、

その表情は、絶望の一色に飲まれた。

 

 

 

「がああ! ああっ!」

 

 

 

草むらをのた打ち回るスーを見て、今度はミズキが膝をつく。

 

れいせいに勝率を計算し、敵の感情すらも計算して勝利を目指す、強欲な姿は微塵もなく、戦意喪失ともとられかねないようなありさまだった。

 

 

 

「ま……す…………たぁ!」

 

 

 

足をふるえながらも立ち上がる、スーの決死の声に顔を上げ、エリカの楽しげな顔を見て、ミラの嗜虐的な笑みを見て、最後に、審判の、不安げにこちらを覗き込む姿を見る。

 

(っ! まずい!)

 

終了を宣告する機をうかがっていることに気付いたミズキは、すぐに立ち上がり、自分の胸を思いきりグーでたたく。軽くむせ返るほどな強さを持ったその拳は、自分のやるべきことを思い出すには十分だった。

 

 

「……すまなかったな、スー。情けない主人でよ」

 

「ぜぇ、はあ……ま、まったくですよ、マスター。わたしは、まだ負けてないんですからね」

 

 

強がる相棒の姿が心をつく。背中のシェルアーマー以外の体が、ほとんど流血の赤か、鬱血の青か、それらが混じった紫色に染まってしまっていることから、もうすでに肉体は臨界点を突破しているにもかかわらず、自分を鼓舞してくれるスーに、思わず目が滲む。

唇をかみしめ、目元をぬぐい、流れる涙を強引にとめ、ようやく思考できる程度に冷えた頭が戻ってきた。

 

(考えろ……一体……何が起きている?)

 

先ほどは情報が足りないと判断し、こうげきにうってでたが、今度はその逆。情報過多で頭がこんらんを起こしていた。

 

まず、スーの状態だ。

体の表面がずたぼろなのはしょうがない。自分のせいで、“ヘドロばくだん”の直撃を二度も受けてしまっているのだ。ダメージは免れないだろう。

 

問題はそれを受ける前。

スーは、転んだ。

 

しかも後ろから見ていたミズキは、それが躓いたことによるものでないこともわかっていた。

 

(下半身の脱力……膝から崩れ落ちていた)

 

要するに、スーは、二打目を食らうその前から、体力の限界(・・・・・)が来ていたという事だ。

 

……そんなはずはない。ありえない。

ラプラスの耐久力は、みず萌えもん全体の中でも群を抜いている。

 

たった一撃、“ヘドロばくだん”を受けただけで、そんな深刻なダメージを受けたとは考えにくい。

 

 

 

 

……そこまで考えたところで、ミズキの頭に電流が走る。

 

 

 

 

……“ヘドロばくだん”?

 

 

 

 

……なぜだ? なぜ、“ヘドロばくだん”だったんだ?

 

 

 

 

スーの“れいとうビーム”を迎撃するためのわざ選択としては適当だ。くさ・どくタイプのロズレイドが扱うメインウェポンとしては、間違った選択じゃない。

 

 

 

しかし、ダメージを与えるわざという側面からみれば話は変わる。

 

 

 

一打目、二打目。それはともに、スーに技が当たることが確定した場面。

 

その状態ならば、“ヘドロばくだん”よりも、くさタイプのわざを選択した方がもっといいダメージを与えられたはずだ。

 

わざと? 違う。意味がない。

くさタイプのわざを使えば今頃きめられていたんだ。

 

つまりエリカは、あの瞬間、すでに、

 

 

 

 

 

くさタイプのわざを、使えなかった(・・・・・・)

 

 

 

 

 

「……あら、ようやく“あられ”も止みましたわね。これで少し、ましなフィールドになるかしら?」

 

 

 

 

エリカがそうつぶやいた途端、“グラスフィールド”の効力も切れ、フィールドにはスーが作った氷の痕と、ミラが作った毒だまりが数か所残っている。

 

 

 

 

 

……………“グラスフィールド”? 毒だまり?

 

 

 

 

っ!

 

 

 

 

 

「ってめえ! まさか!!!!!!?」

 

 

 

「……ふふふふふふ」

 

 

 

 

ありえない……そんな馬鹿なこと……

 

 

 

 

「出来るかよ……そんなこと、てめえが、ジムリーダーが、ロズレイドが……」

 

 

 

「……作戦なんて、そんなもの。やる意味が0%じゃなければ、後の確率は大差ない。それは意味のある作戦ですわ」

 

 

 

 

「っ! スー!?」

 

 

 

 

我に返ったかのようにミズキは、スーの名を叫ぶ。

 

 

 

「……な、に……こ……れぇ?」

 

 

 

右手で胸を抑えながら膝をつくスーの呼吸は、ひゅー、ひゅー、と空気が抜けるような音を立て、リズムもぐちゃぐちゃに乱れていた。

 

明らかに先ほどまでよりも悪化している状態を見て、ミズキは自分の推測が確定したことを理解し、両拳を爪が食い込むほど握りしめる。

 

 

 

「“どくどく”……」

 

 

 

「ご明察」

 

 

 

“どくどく”。

萌えもんには、どく状態という状態がある。

 

以前、サントアンヌ号脱出の際に、フレイドが苦しめられていた状態異常だ。

 

時間が経つごとに、自分の体力を、ジワリ、ジワリと蝕んでいく、まさに、毒。

 

 

しかし、“どくどく”がもたらす状態異常は、そんな生易しいものではない。

 

 

“どく”ではなく、“もうどく”。

 

 

本来のどくとは違い、最初のうちはダメージ力が少なく、影響力は微々たるものではあるが、時間がたてばたつほど体全体に広がっていき、どんどん奪う体力が増えていくという最悪のわざ。

 

「最初にスーが近づいた時点で、スーが逃げる前に仕掛けていたのか……“グラスフィールド”もスーのどくダメージを隠すため……」

 

“もうどく”状態の達の悪さは、最初のうちはダメージが小さいことにある。ダメージに気付くようになったころには、今のスーのように、手遅れになってしまっているという事は、少なくない。しかもエリカは、そのカモフラージュとして、わざと“グラスフィールド”で、スーを回復させていたのだ。“グラスフィールド”がなくなり、フィールドからの援助がなくなった瞬間に、スーの体内のどくが、爆発するように。

 

「そういう事。ならばその毒だまりも、ただの“ヘドロばくだん”の残骸でないことはお判りでしょう?」

 

エリカの言葉が、一つ一つ、ミズキの崩れかけた心をさらに切り刻んでいく。声を震わせないようにすることが、今のミズキが出来るせめてもの抵抗だった。

 

「…………“ベノムトラップ”」

 

ミズキが俯き呟いた声は、小さいながらも、しっかりとエリカの耳に届いた。

 

“ベノムトラップ”。

 

それは、くさタイプで使える者はほとんどいない、ロズレイドが使うわざ。

“どく”を体内にため込んでしまった愚か者に、さらにダメ押しを与える罠。

 

足を踏み入れたが最後、毒は相乗効果で体に広がり、スピードも、パワーも、本来の力を半減させられてしまうわざ。

 

「この手の戦法が得意なわけでなかったのですが、仲間の助言はちゃんと聞いておくものですわね。さて、では問題です。スーちゃんは、何回そのわざに足を踏み入れてしまったでしょうか?」

 

分かるはずがない。そんなものを数えている余裕は、ミズキには存在しなかった……が、いまだ深刻なダメージが見えないロズレイドを見れば、少なくとも初撃の時点で一回は踏み入れてしまっていたのだろう。

スーの当てた“れいとうビーム”は、すでに力の入らない状態のものだったという事だ。

 

「ちなみに正解は、一撃目の前に一回、二撃目の前に二回、計三回ですわ。“しろいきり”を乱用しなければ、スーちゃんの速度が変化したことに気付けたかもしれないですけど……まあ、あなたの作戦の都合上、それも難しかったのでしょうね」

 

目を細めたエリカの視線に、ミズキは頭を射抜かれたような錯覚に陥る。

 

「……ばれてたってわけだ」

 

「『温度を下げて、思考力の低下を狙う』。なかなか面白いプランだったと思いますわ」

 

絵に描いたようにミズキは肩を落とし、うなだれる。

 

 

そう、それがミズキの作戦。ミズキがエリカに仕掛けた、ひっさつの罠。

 

 

“あられ”で天候を変更し、“しろいきり”を充満させ、外れようと躱されようと“れいとうビーム”を連打する。

愚直に、ロズレイドの弱点である、こおりタイプのわざを使い続ける。

それは、全てこのため。

全ては、フィールド全体の温度を低下させ、ロズレイドの苦手な環境を作り出すため。

苦手な温度下で戦う事を強いられたロズレイドは、いつの間にか苛立ち、注意力は散漫になり、ミスを産み、そのミスがまた苛立ちを産む。

 

 

その悪循環に引きずり込む。それがミズキの作戦だった。

 

 

「……それを成功に見せかけるために、わざとわたしに伝えなかったってわけ?」

 

「敵を欺くにはまず味方からですわ」

 

ミラは何よそれ、と悪態をつきつつも、作戦としては理解していたため、ミズキの方へと向き直る。

ミズキは真っ青に変化した顔を今更ながら隠すべく、右手で口元を覆う。

 

 

ミズキは思う。どこでミスをした? と。

 

 

そしてすぐに思う。わかるはずがない、と。

 

 

 

 

ミズキは奇しくも、今までのミズキの対戦相手と、同じ感情に支配される。

完全にはまった屈辱、悔しさ、そして、怒り。

 

 

 

 

(くさタイプのジムリーダーが、みずタイプの相手に、くさわざを使わないなんて、わかるわけがないだろうが……)

 

 

 

 

そう、エリカの作戦は、あり得ない。

 

 

 

開幕に、“グラスフィールド”、

こうげきに、“ヘドロばくだん”、

仕込みに、“どくどく”、

駄目押しに、“ベノムトラップ”

 

 

 

これで、わざは四つ。

 

つまり、エリカは、今対戦で、

 

 

 

早々にわざ枠を四つ、使い切っていたのだ。

 

 

 

くさのこうげきわざを、選択せずに。

 

 

 

作戦が失敗したら、どうするんだ。

そのわざじゃあ、巻き返すことは不可能じゃないか。

 

 

 

口元まで出てきた、その言葉を飲込んだ。

 

 

その言葉は、何の意味もない。

失敗して、いないんだから。

 

 

 

「……で、これだけあなたの時間稼ぎに乗ってあげてるんですから、何か思いついたんでしょうね?」

 

「……よく言う。スーの体に完全にどくが回りきるための、あんたの時間稼ぎだろうが」

 

「よくできました」

 

エリカにはもう攻め手はない。

だからこそ、もうエリカが、攻めてくることはない。

 

エリカにとって重要なことは、素早く終わらせることではない。

安全に、終わらせることだ。

 

手の内をすべて晒したエリカが、満身創痍とはいえ、まだあきらめていないスーの下へ飛び込むことは、万が一の負け筋を産む。

 

0.1%の可能性さえも許さない。

 

 

来るべき勝利の時が来るまで、決してあわてることはない。

 

 

 

 

 

 

甘く香り、

敵が愚かにも近づいたときのみ、ゆっくりと動き、捕食する。

 

 

 

 

 

 

『食虫植物』。

 

 

 

 

 

 

大分前から静まり返ったままの実況と観客の頭に、そんな異名が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、エリカの萌えもんはロズレイドでした。


そこそこヒントを出したと自分では思っていますが、最大のヒントとしては

「ミズキが進化に関するデータをエリカに渡した」
ことと
「そのデータを使ってマリムを進化させる」
予定だったということです。

原作ゲームでロゼリア、ムウマが進化するためのものは、対になっているというのがヒントですね。
あとはエリカ様のボール出した時の口上とか。


それともう一つ、
「”しろいきり”使ってるんだから”ベノムトラップ”で能力下がらないんじゃね?」
という意見があるかもしれないので、先出の補足。

自分の”ベノムトラップ”のイメージとしては、トラップというくらいなので、先打ちして仕掛けるもの、という印象でした。というわけで本作の”しろいきり”で”ベノムトラップ”をすべて防げてしまうのは、逆に不自然かなと思いました。
というわけで、本作の”しろいきり”の効果としては

”しろいきり”の中にいる間、”なきごえ”、”すなかけ”のような能力降下わざを防ぐことはできるが、”しろいきり”より先に展開された今回の”べノムトラップ”のようなパターンは防ぐことができない

という事にします。
納得いかないかもしれないけれども、そもそも本小説の”しろいきり”は目くらましとして大活躍なのでそれ以外の性能は抑え目、という事で一つよろしくお願いします。



……てか、エリカ戦終わってねえじゃねえか!
タマムシ編なっげえ……テンポ悪くて申しわけないです……
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