いくつか謝ることがあります。
まず、投稿が遅いという事。
そして、これからもあんまり早くならないという事。
活動報告にも書いたが、今回の話は番外編であるという事。
そして、番外編が一話に収まっていないという事。
どうもずびばぜんでじだ。
それは、タマムシのホテルの一室。
激動のバトルを繰り広げるよりも、ほんの少し前の話。
ノブヒコの決意を、ミズキが聞いた日の夜のことだった。
「……ふう。いい夜だな」
部屋の片隅でコーヒーを一口すすりながら、思わずミズキは言葉を漏らした。
「……むな? マスター? まだ起きてたんですか?」
「ああ、悪いな、スー。起こしちまったか?」
「いえ……ふあぁ、眠れないんですか?」
スーは微睡み、瞳を軽くこすりながらもベッドを降り、腰掛け窓に体を預け空を見上げるミズキの下へと歩いていく。
「……いや、そういうわけでもねえ。なんとなく、星空を見上げていたくなっただけさ……俺の予定通りに事が進んだらしばらくは、こうやってゆっくりすることもできなくなるからな」
「マスター……」
不安げな眼差しを向けるスーに、ミズキは軽く微笑み、スーを抱え上げて胸に抱き寄せる。スーはそのまま、ミズキが向ける夜の空へと視線を移した。
「確かに、きれいなお空ですね」
「だろ? 最近は野営の頻度も減ってきたから、こうやってじっくり夜空を見上げることもなくなってきたからな。改めて見てみるのもいいもんだ」
「マスターは、空が好きなんですか?」
「ああ、特にマサラの星空は最高だ。荒れ乱れた心をきれいに洗い流し、文字通り
楽しそうに語るミズキの笑顔に、スーも思わずうれしい気持ちになる。ミズキと同じ場所で、同じ景色を共有し、同じ幸福な気持ちを味わえる。
それが、たまらなくうれしかった。
「……マスター。もっと、もっと教えてください。マスターの、好きなこと」
振り向き、ミズキの胸に顔をうずめながらそっと抱きつくスーを、ミズキはそっと抱きしめ帰す。とても優しくスーを抱える腕からは、不思議な温かみを感じた。
「……実はな、今日空を見ていたのは、ノブヒコを見ていて思い出したことがあったからなんだ」
「……思い出したこと?」
「ああ。危なっかしくて見てられなくて、危なっかしいから見守ってなきゃいけない。ちょうど今のノブヒコみたいな、俺の弟みたいなやつがな」
「弟……? レッド君ですか?」
「いいや、違う。そして、ブルーでもない」
そう言うとミズキはポケットから何かを取出し、空にかざす。
月明かりを薄い緑色に染め上げた石を中心にはめ込んだそれは、ブルーへの指輪、レッドへのブローチと共にサントアンヌ号で購入していた、ネックレスだった。
「もう一人いるんだよ。頭がよくて、冷静で、かと思えば一番熱血漢で、レッドを怒ったり、ブルーをたしなめたりするけど、結構子供っぽいところもあって、手間がかかる。そして……
とってもお人好しで、とっても優しい。
俺に似ても似つかない、可愛い弟分がな。
罪深き萌えもん世界 番外編
Episode of Green 永久不変の男の強さ
さらに時を遡り、ミズキがタマムシに入るよりもっと前の話。
「かなりこの萌えもんセンターに滞在していますけれど、そろそろ出発しなくて大丈夫なのですか? グリーン様」
「そう焦るな、フシギソウ。“イワヤマトンネル”は険しい洞窟だ。無計画に突っ込んで突破できるような甘い場所じゃない。万に一つの失敗もないように、万全をきたしてから挑戦するんだ」
場所は10ばんどうろの萌えもんセンター。ミズキ曰く天然のダンジョン、“イワヤマトンネル”を目の前にして数日特訓しながら待機というスタンスを続けるグリーンに、特訓の途中でフシギダネからしんかを遂げたたね萌えもん、フシギソウが疑問の声をぶつけるが、グリーンは涼しい顔をしながら答え、手元の萌えもんボールを磨いていた。
「……二日前に遭ったレッド様には、直ぐに挑戦することを促していたと記憶していますが?」
「ああ、あいつはどうせはなっから無計画で進むつもりだっただろうからな。引き止めて一緒にここで特訓するよりは、さっさと行かせて抜けた後に連絡を取った方が、いいデータになる」
「……悪い人」
「嫌いか?」
「いえ、合理的な考え方かと。だれかを思い出します」
「……それは光栄だな」
二人の会話が終わったのを見計らうかのように、グリーンのポケナビが鳴り響いた。
ちなみにグリーンはオーキド研究所で行っていたミズキの研究の多くに携わっていることから、ミズキが開発した製品の多くを先んじて持ち歩いている。手伝ってくれたお礼であるとともに新製品のモニター扱いであるという事でグリーンもそれを拒否することはしなかったため、グリーンの旅はほか二人に比べ少し快適な旅となっていた。
そんなこんなで鳴り響いたポケナビを手に取ると、一通のメールが届いていた。
「……レッドが“イワヤマトンネル”を抜けたようだな。二日かかったか」
「という事は、一日野宿する準備を整えていけば大丈夫でしょうか?」
「いや、あいつのことだ。危険を顧みずに突き進んでほぼ最短距離で進んでいったんだろう。二日分でも危険だ。三日分の準備はしておこう」
「了解しました」
くすりと笑うフシギソウと共に立ち上がり“あずかりシステム”の場所へ向かい、オーキドの下へと通信をつなげる。
「フシギソウはくさタイプだから問題はないが、他はいわ・じめんタイプには不向きな奴もいるからな。みずタイプの萌えもんを中心にしたパーティを組みなおそう」
「あとは“フラッシュ”が使える娘も必要ですね」
そう言ってパソコンを起動しようとしたグリーンは、萌えもんを数匹入れ替え、続いて自分の“どうぐあずかりシステム”を起動しようとした瞬間、
突然、めのまえがまっくらになった。
「っ! なんだ!?」
驚きの声を上げるグリーンだったが、それにこたえる者はいない。
むしろグリーン同様に状況を把握できず、困惑交じりの悲鳴を上げている者がほとんどだった。
「おい!? なんだよこれ!?」
「停電か!?」
「ピジョン! 離れちゃだめよ!」
三者三様の反応を見せているロビーの客たちだったが、最も焦った声を上げていたのはそこにいた者たちではなく、ジョーイさんを筆頭とした萌えもんセンターの局員だった。
「治療中の萌えもんが苦しんでいます! 至急鎮痛剤を用意してください!」
「落ち着いて! 焦らずに、手の空いている者はトレーナーの皆さんを別室へ誘導してください!」
「回復システムがダウンしています! 早く予備電源回してください!」
怒号にも近いその声は、本来聞こえてはいけないはずのロビーにも響き渡っていた。ジョーイさんたちの焦りの声は、さらにトレーナーたちの焦りを煽る。
「おい! 回復システムが落ちてるってどういうことだ!?」
「わたしの萌えもんは!? 無事なんでしょうね!?」
「あんたらプロだろ! さっさとこの状況何とかしろよ!」
「落ち着いてくださいみなさん! 大丈夫ですから!」
皆を宥める為に外に出てきたジョーイさんに、トレーナーたちが強引に詰め寄る。
「俺たちの萌えもんに何かあったら、責任取るんだろうな!?」
「うちの娘はバトルで怪我してるのよ!? 最初に治療しなさい! わかったわね!?」
「何っ!? ふざけるな! だったら俺の萌えもんを一番にしろ!」
「何よ!」
暗闇でお互いの顔すらも見えぬ状況下で、醜い言い争いが繰り広げられる。
見えはしないが、ジョーイさんの困り果てた表情がありありと想像できる。
「なあ、フシギソウ」
「何でしょう?」
「あの人なら、この状況でどうすると思う?」
「グリーン様が考える通りだと思いますよ」
「……そうだよな。あの人、
そう言って腰のボールに手をかけるグリーンの姿に、フシギソウは声を出さずに笑った。
「停電前に萌えもんの交換は間に合って助かったな。頼むぜ。ビリリダマ! “フラッシュ”!」
ビリリダマの“フラッシュ”が発動し、歩くのに支障が出ない程度の明度まで視界が復活する。
それまで声を荒らげていた数人のトレーナーを含め、萌えもんセンター中の視線がビリリダマ、ないしその持ち主であるグリーンに注がれる。
「くだらないことで暴れるな! そんなの、無駄な時間を食うだけだ! 緊急の萌えもんたちのために、今自分が出来る行動を! 早く!!」
「で、出来る事って……」
狼狽える者たちに、とにかく叫ぶ。
「『いいか、
「……とりあえず、みんなで一つに固まろう! 邪魔にならないよう、みんなでジョーイさんを信じて待とう!」
「おっ! おれ、でんきタイプの萌えもん持ってますよ! 少しなら設備を稼働できるかも!」
「わたし! 回復のきのみ持ってます!」
「……そうだ! みんな、頑張ろう!」
しばらくして、危険な状態の萌えもんの治療が大方完了し、センター内に落ち着きが戻り始めた。先ほどまでジョーイさんたちに大声で文句を言って邪魔していた者たちも、涙を浮かべながら手を取り、礼の言葉を並べている。
現金な人たちだ、と笑いながらも、何事もなく問題が収束したことに安堵したグリーンはそのままセンターの出口へと向かうが、その寸前でジョーイさんに呼び止められる。
「待って! さっきはありがとう。おかげで助かったわ」
「いえ、大したことは……それに、実際に僕にできることはありませんでしたから」
「そんなことはないわ! あなたのおかげで、みんなが一つにまとまってくれた。本当にありがとう!」
「……どういたしまして」
照れくさそうに笑うグリーンは先ほどの振る舞いとは打って変わって年相応にかわいらしく見えた。
「それより、なぜ電源が落ちたんですか? 萌えもんセンターの電気がなくなってしまうなんて、そうそうないことだと思いますけど?」
グリーンの言葉にジョーイさんは表情を一気に暗く落とし、黙り込む。言葉を発そうと口を開いては何とも言えぬ表情で再び口を紡ぐというその動作から、何かを言おうか、はたまた言うまいか迷っているのだとわかった。
「別に、言いたくなければ言わなくても大丈夫ですよ?」
「……いえ、待って……お願いがあるの」
気を使ったグリーンの発言を制し、ジョーイさんは重たい口を開く。
「本当は、お客さんに、それも君みたいなトレーナーに頼むことは、間違っているのかもしれないけど……でも、他に頼める人がいないの。お願い! 力を貸して!」
頭を下げるジョーイさんの姿に、グリーンはばつが悪そうにほほを掻いた。
「……この水路の先が、“むじんはつでんしょ”か……」
「本当に、停電前に萌えもんの交換が済んでいてよかったですね。グリーン様」
「全くだな。イワヤマトンネル用にみず萌えもんを用意する前だったら、たどり着くこともままならなかった」
目の前の長い水路を眺めながら、グリーンたちはつぶやいた。
話を一通り聞き、“あずかりシステム”の復旧のためにもジョーイさんの願いを聞き入れたグリーンたちは、センターから軽く北のくさむら、“10ばんどうろ”へと足を運んでいた。
『水路の先にある、“むじんはつでんしょ”からの、電気供給が突然途絶えた』
『いつもはでんき萌えもんに管理してもらっているはずなのに、その萌えもんへの連絡もつながらない』
『はつでんしょに住み着くやせい萌えもんたちのレベルは高く、自分達では手に負えない』
「だから、助けてほしい。ね」
「……そもそも、むじんのはつでんしょというシステムに問題があるような気がしますが?」
「しかしそれで成立していたってことは、それだけ信頼のおける、実力のある萌えもんがはつでんしょを守っていたという事でもあるよな?」
「……何か、予想外のトラブルがあったってことでしょうか?」
「ビリリ。そウ思うゼ」
突然の声に驚いたグリーンとフシギソウが下に目を落とすと、ボールから勝手に出てきたビリリダマが普段から険しい顔をさらに険しくして片言で同意していた。
「ビリリダマ? なんでそう思うんだ?」
「俺ハもとモとこのクサむラにイタでんき萌えモんダ。ココいらの変化二はお前ラより敏感ナンだよ。ぼーるの中からデモビンビン感じタぜ」
「……そんなにわかりやすくおかしくなっているってことですか?」
「でんき萌えモんなら誰デもワカる。ソレぐらイ気持ち悪クテ異常ナ電場だ。誰か強力ナでんき萌えモんが、ココいら一帯の電場を乱しテルんだ」
「……じゃあ、やっぱり行くしかないってことか」
「ビリリ。そのツモリだったンダろ?」
「そうだな。珍しいでんき萌えもんゲットに加えて、イワヤマトンネル前の最終チェックに使わせてもらおう」
そう言ってグリーンは腰のボールを一個外し、水辺に投げようとしたところで、後ろから声をかけられる。
「まっ、待って!」
「ん?」
声に反応し振り返るとそこには、さして大きくもない自分よりもさらに小さな男の子が少し息を切らしながらこちらを見ていた。
「ぼ、僕の、僕のコイルを取り戻してください!」
「君の、コイル?」
「は、はい」
怪訝な顔で復唱するグリーンにほんの少しおびえたような様子で、少年は返事をする。
「お兄ちゃん。今から、“むじんはつでんしょ”に行くんでしょ?」
萌えもんセンターでの話を立ち聞きしていたのだろうか? それで走って自分を追いかけた来たのだと推測し、面倒に思いながらも答える。
「……ああ、そうだ」
「ぼ、僕のコイルも、そこに行ったっきり、帰ってこなくなっちゃったんだ!」
少年の言い分にグリーンは思わずため息を吐き、頭をガシガシと掻きながら言う。
「……わかるように説明してくれ。君のコイルは、いつ、どこで、何が、どうして、どうなって帰ってこなくなったんだ?」
それを聞くと、少年は少しひるむようなリアクションを取った後、ゆっくりと事情を話しはじめた。
「……ちょうど一週間くらい前に、僕がここらへんにコイルと一緒に遊びに来た時に、突然コイルの様子がおかしくなったんだ。気分が悪そうというか、そんな感じがして、それで萌えもんセンターに連れて行こうとしたんだけど……ちょっと目を離したら、コイルが遠くまで飛んで行っちゃって……ちょうど向こうの方に」
そう言って少年は水路の先を指さす。
「……“むじんはつでんしょ”に、コイルがおびき寄せられたってことか……ビリリダマ、この子の言っていることはあり得ると思うか?」
「十分にアリ得るダロうナ。もとモとコイルはじしゃく萌えモんだ。俺タチただノでんき萌えモんヨリもコノ磁場の影響ガ大きく出テイても不思議ジャなイ」
「なるほど……という事は、今回の件は速く片づけないと、周りの萌えもんたちにも被害が出てしまうってことか」
「そ、そうなんだよ! だからお兄ちゃん、“むじんはつでんしょ”に行くついででいいんだ! 僕のコイルを連れてきて」
「断る」
「……えっ?」
目の前の男が発した言葉が、信じられないとばかりに少年は目を白黒させる。
「な……なんで……?」
「何でも何もない。君の言う事を聞いてやる義理が俺にはない」
「そ、そんな……」
泣きそうな顔で崩れ落ちる少年を尻目に、グリーンはボールをほうり投げる。
ちいさな水路に、大きく長い体躯の少女が自慢のひげを振り回しながら元気いっぱいに着水する。
「やっはー!! 水だー! 水辺だー! 数か月ぶりだー! 久々の登場ぅー、ギャラドスちゃんだー!!!!」
「……」
「……」
弾ける水しぶきをその身に浴びながら、フシギソウとビリリダマは涙目の少年と険しい顔のグリーンに目線を移し、最後に大はしゃぎのギャラドスに白い目を向ける。
「……あれ? 空気重いね。もしかしてハズしたかい?」
「安心しろ。期待してない」
「もーう! そんな冷たいグリリンがすきだー! うぶっ!?」
「黙って運べ」
はしゃぐギャラドスを押さえつけるかのように背中にまたがり、水に沈める。
「“なみのり”は覚えていないが……短い距離だ、行けるな?」
「
水に沈んだギャラドスの水に紛れた声を聴き、二つの空ボールをフシギソウとビリリダマに向ける。
「お前ら、行くぞ」
「……いや、行くのはいいんですけど」
「ビリリ……少し言イ過ぎじャなイノか?」
二人は呆然自失と言った状態の少年を見て、軽く抗議するような態度を取るが、グリーンの冷たい目は鋭く少年に向けられたままだった。
「嘘つきのいう事を聞く必要はないさ」
「っ!!!!」
うそつき呼ばわりされた少年はしかし、グリーンに抗議の声を上げる事さえもせずに、歯をがたがたと震わせながら断られたさっきよりも泣きそうな表情を浮かべていた。
「君はさっき、コイルが水路の方向へ飛んで行った、と言った。だったらコイルの場所は目に見えていたという事だ。なら、なんでボールでコイルを戻さなかったのか」
「そ……それは」
「答えは簡単。君はボールを持っていない。つまり、君は萌えもんトレーナーではないっていう事だ」
グリーンの指摘に声を失う少年の様が、その推測が正しいものであるという事を物語っていた。
「という事は、コイルは君の萌えもんではなかった。やせいの萌えもんだったってことだ。という事は、君の話のほとんどは嘘の情報だったということ。そんな嘘つきの君の願いを聞いてやるメリットは俺には全くない。君は俺に頼みごとをする立場として、最低限のことを何もしていない」
「…………」
「そしてここまでの話を踏まえれば、そもそもコイルが消えた原因と時期も疑わしくなる」
「……ビリリ?」
「……どういう事でしょう?」
「つまり、停電したことと同じ理由でコイルが消えてしまったのか。はたまた……
「そ、そんなことない!!!」
「ないとは言えない。君の話がどこまで本当かなんて、俺には分からないんだから」
「……コイルが……そんなことするはずが……」
冷たく放つグリーンの言葉に、少年は狼狽えていた。
同情してくれるだろう。とは思わないまでも、もしかしたら同情して、自分のお願いを聞いてくれるかもしれない。と楽観視していた。
よもやこんな形で、責め立てられることになるとは思っていなかった。
グリーンの言うとおり、コイルは自分の萌えもんではない。ここ最近、親に内緒でこのあたりに遊びに来るようになった少年が、一緒に遊ぶうちに仲良くなったやせいの萌えもんだった。
当然ボールを買えない少年が、そのコイルを捕獲することは叶わなかった。しかし、二人がそんなことを気にすることはなかった。二人は、“ともだち”だったのだ。
きっかけは、くだらない事。
取るに足らないような、些細な言い争い。
ケンカ別れとなり家に帰った日、
あんな言い方はしない方がよかったな、とか、
でもあいつがあんなこと言うから悪いんだ、とか。
怒りや心配の感情の向け先を探すような夜を経て、くさむらへと戻ってきた翌日。
コイルは、姿を現さなかった。
心がつまり、何かを振り切るようにその場所から逃げだした。
家に帰ってからのことは、ほとんど覚えていなかった。
後に親に聞いた話では、何を聞いても生返事で、虚ろな状態が続いていたらしい。
次の日も、その次の日も、ひたすらくさむらへ通い続けた。
しかし、コイルには会えなかった。
とある日に、少年は泣いた。
くさむらに蹲り、ごめんと叫びながら、泣き続けた。
それでも、コイルには会えなかった。
そんな状態を萌えもんセンターのジョーイさんに見つかり、少年は萌えもんセンターに保護された。何も言おうとしない少年に無理に聞こうとはせず、ジョーイさんはゆっくり休んでいきなさいと言ってくれた。
そんな優しさに感謝し、心が落ち着いてきたころに、
件の停電が起こった。
ジョーイさんとグリーンの話を聞いた。
少年の心がざわめいた。
そんなわけはない。
自分のともだちが、そんなことをするわけがない。
何かの間違いだ。コイルは、この事故とは関係ない。
そう思いながらも足は駆けだし、出て行ったグリーンを追いかけていた。
「僕のせいで……僕のせいで、萌えもんセンターの皆が……コイルが……」
「……」
目の前で崩れ落ちる少年を見て、グリーンはギャラドスから体をおろし、少年の目の前まで歩く。
それに気づいた少年はびくっと体を揺らし、恐る恐る顔を上げてグリーンの表情をうかがう。
しかし、グリーンが何を思っているのか、その冷たい表情からは読み取ることはできなかった。
「坊主。俺は君のお父さんでも、お母さんでも、ましてやともだちでもない。だから君のことをしかってやる義務も、助けてやる責任もない」
冷静にそう言い放つグリーンは、少年の反応を待たずに続ける。
「だから見ず知らずの俺に頼みを聞いて欲しければ、君は俺に自分の想いを、自分の心を見せなければいけないんだ」
「こ……こころ?」
「そうだ。少し難しい言葉でそれを、『誠意』という」
「……誠意」
「『いいか。
「『君は失敗をした。罪を犯した。』」
「『それは、やり直しのきかないものだ』」
「『だから、責任を取る必要がある』」
「『責任を取るっていうのはな、自分で、痛い思いをするってことだ』」
「『迷惑をかけたのなら、その分、自分で辛い思いをしてでも、迷惑をかけた人のために、出来ることをするってことだ』」
「『決して、誰かに始末を任せて、自分はそれをただ見ている。という事じゃない』」
「『自分の失敗を取り返したければ、自分の罪の責任を取りたいのなら』」
「『他人に任せちゃダメなんだ。自分で、頑張るしかないんだ』」
「……自分で……頑張る……」
「坊主。お前は、どうしたいんだ? 俺に頼むべきことはなんだ? 自分で考えて、自分で答えを出すんだ」
グリーンは屈み、少年の目をはっきりと捉える。
その鋭い瞳に、少年は強い瞳で返す。
「僕は……僕はっ! コイルを、助けたい! コイルは……僕のともだちだから! だから!」
力を……貸してください!
グリーンはふっと笑みを浮かべ、少年の頭に手を乗せ、軽くなでる。
「……俺はグリーン。お前は?」
「……ジュンジ。“ボーイスカウト”の、ジュンジ」
「行くぞ。ジュンジ」
「っ! はい!」
…………グリーン、10歳?
あの男の影響受けてるからね、仕方ないね。
今回の番外編は、ポケスぺのグリーンの番外編をかなり参考にしています。
……グリーンを活躍させる番外編の舞台が無人発電所しか浮かばなかったんですよね。原案当初ではキクコも出る予定だったのですがそれはさすがに没にしました。
……ていうか無人発電所ってなんやねん。ゲームみてる限りまだ設備は稼働しているみたいだったし、リメイクでは有人発電所として復活してたし……かといって平然とやせいポケモン出るし……設定考えるだけで疲れるわ!
でも、ハナダの時にも思ったけど、ゲームの世界観をリアルに想像して設定作るのも楽しいよね(ツンデレ
「ビリリ……俺のせリフダけ読み辛イゼ」
「……ごめん、もう他にカタコトでしゃべる萌えもんいっぱい出しちゃったから……」