しかも、本編は全く進みません。その上かなり短い、ほぼリハビリ用の投稿となります。重ねてすみません。
本話はタイトルに書いてある通り、12話と13話の間の話になります。
番外編書いてたら入れるのをすっかり忘れていた話、とも言います。
これからも精進して頑張っていきます……
とある日の、人が寝静まる丑三つ時。
まだミズキが、あの一件以来目を覚ましていないころ。
他の者の目を盗み、スーは一人、外に居た。
周りには人も萌えもんもいない、大きな広場のど真ん中。そびえたつ巨大な木を前に、スーは空を見上げ、星空を見ながら思いを馳せる。
思い出すのは、ミラとのバトル。
ミラの“ちょうはつ”にまんまと乗ってしまったときから、自分の記憶は飛んでしまっている。
だから、目を覚ました後すぐに、会場に来て対戦を見ていたジョーイさんに聞いた。
あなたは、勝った。
見事な、逆転勝利だった。
その嬉しそうな表情に嘘などないことが分かったスーにできたことは、歪む表情を画し、全力で笑う事だけだった。
(違う……)
そんなはずはない。
勝てたはずはない。
だって私は……
『っ! スー! まてっ!!』
信じるマスターの、手を払いのけた。
払いのけ、そして、己の最も嫌う罪に溺れた。
マスターだって、失敗する。
マスターだって、完璧じゃない。
(違う、違うっ!)
マスターから失敗を引き出したのは……
マスターを、完璧じゃなくしたのは……
そして頭に響く、
己の声。
『私は、弱い』
「っ! うわああああああああああ!!!!!!!」
叫び声とともに放たれる“しおみず”は、大木にぶつかり弾けて辺りを濡らす。
重ねて放たれる“れいとうビーム”は、濡れた大木にぶつかり大きな氷柱を作り上げる。
そして、勢いよく走りだしたスーは、渾身の力で右拳を握り、作り上げた氷柱に向かって全力でたたきつけた。
しかし、
固く、重く、力強いそれは、スーの拳程度ではびくともしなかった。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ……くそっ!」
珍しく口から漏れた決してきれいでないその言葉は、誰もいないからという理由だけで出てきた言葉ではなかった。
悔しさ、歯がゆさ、口惜しさ。
表現できないすべての想いが、心から漏れだし、口から出てきた。
スーは力を緩め、氷柱にそっと触れる。
(私は、大木を水で攻める事が出来る。大木を凍らせる事が出来る)
そのままスーは、次のわざを発動する。
“あまごい”は数秒して、頭上に小さな雨雲を発生させ“あめじょうたい”を作りだし、深くはいた“しろいきり”は周りを飲み込み、広場の一角を自分の空間へと変えた。
(雨を降らすこともできる。霧を作ることもできる)
そこまで考えた後で、スーは顔を上げ、三度その柱を確認する。
濡れても、凍っても、雨に打たれても、霧に飲まれても、変わらぬ力強さを持った、巨木が大地にしっかりと根ざしていた。
(……それだけ力があったとしても、私には、この木を倒す力がない……)
力を籠め、再びその柱に一撃を加える。
しかし、帰ってくる痛みは己の惨めさを煽るだけだった。
自分は、矛。
自分は、盾。
マスターを支え、マスターを守り、マスターといて初めて強くなれる。
(……違うっ! 違うっ! 違う!!!!!!)
そうじゃない。もうとっくにわかっていたはずだ。
(私が強く在れたのはマスターのおかげ。でも……)
私は、弱い。
(マスターと戦えば、怖いものなんてなかった。一緒に戦いさえすれば、マスターの役に立てると思っていた。だからこそ、一人で戦うマスターに腹を立てたし、マスターと一緒に戦う事が出来ることが誇らしかった)
でも違う。
私は、正しく『ただの武器』だった。
活かしてもらっていただけだった。
自分自身の力に、罪に溺れ、何もできなかった。
何も、マスターに与える事が出来なかった。
(強いマスターに、大きな木を、倒してもらっているだけだったっ!)
「うわあああああああああ!!!!!」
さらに叫び、一撃を放つ。
スーの傍を、冷たい風が吹き抜けた。
「……強くなりたい」
力が欲しい。
どんな巨大な木でも、壁でも、打ちこわし進めるだけの力が。
マスターを支えるんじゃない。
マスターと、ともに戦い。
大好きなマスターを、助ける事が出来るだけの力が。
強く……もっと強く!
もっともっともっともっと!!!
「あ゛あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「……わかりやすい娘」
遠い空中からふらふらとその様子を眺めていたマリムが、そう呟く。
その後、癇癪を起こした子どものように暴れまわり、ほどなくして力尽きたかのように倒れこむ姿を見届けた後、“サイコキネシス”を使ってスーを回収し、ミズキの待つ家へと戻っていく。
その去り際に、マリムはふと後ろを振り返り、スーがいた広場全体を一瞥する。
そこには、荒れに荒れた地面の穴や、散らされた草木の残骸、そして。
凍ったままにへし折られた、巨木だったものが砕け散らばっていた。
(……これが、この娘の力……)
これでまだ『強くなりたい』、なんていうんだから、ばかげている。
(……いや、それだけこの娘が、あの男を想っているってことか……)
マリムはほんの少しため息をつき、呼吸を乱しながら眠るスーの顔を覗く。
「ま……す…………た……………………」
そんな寝言に苦笑しながらも、マリムは思う。
(危うい娘ね)
求めすぎている。
それは、全てを壊しかねないほどの欲求。
マリムは苦い顔で、その言葉を頭に思い浮かべた。
暴食。
何もかもを掴み、食らいつくさんとする心。
自分の、罪。
純粋にそれを為そうとしているスーに、
マリムは、昔の自分を重ね合わせる。
(純粋無垢な心であればあるほど、時に一番凄惨で残酷な結末を生む……)
何もかもを全力で掴み、
その結果、全力で握りつぶす。
後に残るのは、抱え過ぎた力と、胸の中の虚しさだけ。
そうならないために……
二階の窓から直接部屋に戻ったマリムはすぐに、ぼろぼろになったスーを布団に放り込む。かなり乱暴に運んだのだがまるで起きる様子の無いスーを見て、本当に力を使い切るまで暴れまわったのだと再度理解した。
そして、スーの寝顔を確認した後、部屋の逆側のベッドへと目線を移す。
そこには、安らかな寝息を立てるスーとは対照的に、まるで死人であるかのようにピクリとも動かず、眠るミズキの姿があった。
「……まったく。いつまで寝てるつもりなのよ、あんた」
話しかける。が、当然ながら、答えはかえってこない。
それでもお構いなしに、マリムは続ける。
「あんたがさっさと起きないと、この娘、ぶっ壊れちゃうわよ? 女の子にそんなことさせておいて、あんたは何とも思わないわけ? 血も涙もない男ね」
ちらりとスーを横目に、冗談交じりに言う。
「……そういうところ。初めて会った時と、全然変わってないわ」
ねえミズキ。あんたなんでしょ?
あの時の、子ども。
『気に入らないなら、壊せばいいんじゃない?』
私の背中を押した、始まりの少年。
「半信半疑だったけど、あんたのボスを見て、確信した。あんたとサカキは、あの時シロガネやまに来た。そして、私に遭っていた」
宙に浮かんでいたマリムは、ゆっくりと高度を下げ、眠るミズキに馬乗りになるように着地した。
「スーに聞いたわよ。あんた、記憶喪失なんだってね。それで、私のことも忘れてるって? それとも、端から覚える気もなかったのかしら? ふざけんじゃないわよ」
口調があれ、顔は厳しく変わる。
その後ゆっくりと、震える両手を、喉元へと伸ばした。
「……逆恨みかもしれない。お門違いな怒りなのかもしれない。でもね、あなたに会って、あなたの半端な希望の言葉を受けて、中途半端な夢を見て、不相応な力に溺れて、全てを失った。私の苦しみが、あんたにわかる?」
首を然りとつかんだ両手に、力を込める。
ねむるミズキの表情が、ほんの少し青く染まる。
「私がどれだけ悩む日々を送ってきたか、私がどれだけ辛い日々を送ってきたか、私がどれだけ、自分の犯した罪に苦しんできたか。分かるはずないわよね。私の罪は、私のもの。あんたなんかに、わかるはずがない」
そんなこと、あんたが一番わかってる。
そうでしょ、ミズキ。
「だから……私は……」
「……ますたあ……」
突然の声に、ゆっくりとマリムは頭を回す。
スーの、“ねごと”だ。
「……わたしが……もっと……」
「……スー……」
もう一度、声に反応し、今度は顔を前に戻す。
今度はミズキが、苦しみ、絞るように寝言を吐いた。
「シーク……フレイド…………マリム…………」
名前を呼び、体を攀じる。
どんな夢を見ているのだろう。
愉快な夢でない事だけは確かだった。
そんな夢の最中で、私たちの名前を呼んでいるミズキを見て、マリムはふわりと笑い、首元から手を離し、今度はミズキの右手を両手で包み込む。
ミズキは次第に落ち着いていき、再び怖いほどに静かな眠りにつく。
「……しょうがないから……見守っててあげるわよ」
憎い想いは、消えない。
恨みの心は、薄れやしない。
(それでも、あんたは、私を助けてくれた)
過去を忘れても、
責任がなくとも、
見知らぬ私を、救ってくれた。
(だから、これでチャラってことにしてあげる)
夢を食べる事が出来なくても、
何かを為す力を失ったとしても、
今は、あなたの傍にいて、あなたの手を握っていられることが、誇らしいから。
そんな時間をくれたのは、あなただから。
「……あなたを、仲間を、私が守る」
今度こそ、
大切なものを失わないために。
勝ったが負けたスー。
負けたが勝ったマリム。
この違い。
近況報告という名の雑談。
就活が始まり、いろんな場所に行く事が増えた影響で、PokemonGOをはじめました。
とても楽しいです。
5月末ごろに遭ったラプラスレイドバトルデイズにて、ラプラスの色違いを捕まえる事が出来ました。
とてもうれしいです。
先週、友人にゲーセンに呼び出されて、何事かとおもい言ってみたら、大きなラプラスのぬいぐるみがUFOキャッチャーに入っていました。店員さんとの巧みな交渉術で一移動をしてもらった僕は、2000円強の激安価格(笑)で取る事が出来ました。
とてもうれしかったです。
卒研が始まり、毎日忙しくてたまらないです。
とてもしんどいです。
しかし、こんなふうにラプラスのことを考えたり、小説のことを考えたりするのはやっぱり楽しいです。
まだまだかかるとは思いますが、完結目指してこれからも頑張っていきたいと思います!