時は
羽衣狐と乙女が、はやての家に居候することが決まり、一ヶ月の月日が経とうとしていた。この世界が幻想であるのかどうか、いまだ決定的な確証は得られないが、この一ヶ月間、彼女達は特に不思議なこともなく、平穏に過ごせていた。そのため、おおよそこの世界は、乙女達のいた世界とは完全に異なった歴史を辿った世界であるのではないか、という意見が有力になって来ていた。
この一ヶ月間、妖の気配を感じることは無かった。つまりこの世界は、完全に妖の居ない世界なのである。
平穏に経過した毎日の中で──はやてとの心の距離も縮まり、山吹乙女は彼女の姉……ひいては、母親のような存在になりつつあった。
乙女はやはり、はやてのような幼少の者の相手をするのが上手であった。寺子屋の先生を務めていただけはある、と羽衣狐も感心するほどに。
己を克ちて礼を復すを仁とする。──これは論語の一節だが、山吹乙女という女性は、人に対してまず「壁」を作ることがなく、それを慈愛というべきか、博愛というべきか、非常に周囲の人間に溶け込むのが得意であった。人の懐に易々と飛び込んでゆける、妖怪ぬらりひょんのような性格をしている……誰に似たのであろう。乙女自身は、世渡りが至極上手いという自覚はないのであろうが、乙女が他者に対して忠節であるからこそ、他者からも忠節な態度が返って来るのであろう。そしてこれは、やはり、どの世界でも通用する理であるようだ。
だが、それとは対照的に、羽衣狐はいまだ、はやて口を利くことすら出来ずに居た。きっかけがない、と云えばそこまでにも聴こえるが、そもそも乙女の中に別の人格、魂が内在していることさえ、まだ、はやてには打ち明けていないのだ。ゆえにはやては、まだ羽衣狐の存在は知らない。山吹乙女のことを、世界を飛び越えて来たにしろ、単なる「女子高生」として理解しているようだ。
羽衣狐の────人間に対する偏見は、いまだ根強い。
それは、かつて彼女が被った
子どもは素直である。──羽衣狐が、側近のひとりに少女を置いていたように、子どもはとても純然な存在だ。八神はやても、とても心の優しい少女ゆえ、羽衣狐に害をもたらすような存在ではないだろう。きっと、羽衣狐の存在も、素直に認めてくれるような気がする。乙女もいつしか、はやてと羽衣狐とを引合せたいと考えてはいるのだが……。
──焦る必要は、きっとないのでしょう。
これから長い月日をかけて、しばらくは乙女がはやてと交流を行っていけば良い。それを意識の裏側から通して見る羽衣狐の誤解が、少しでも解けて行けばいいのだから。
ある日の朝だった。
乙女が目を覚まし、リビングへと降りて来る。
すると、電話が点灯していることに気付き、そちらへと向かった。
「留守電が入ってる……。ええと、流すには、どのぼたんでしたっけ」
山吹乙女は────筋金入りの「機械音痴」であった。
明治初期から時代を跳躍して来た彼女に、文明の利器は天敵だったようである。
(そこじゃ、左下、赤いの)
「あ、これですか?」
羽衣狐の的確な指示により、乙女の端正な指が、電話の赤いボタンを押す。
黒船来航以降──日本は異国の文化を取り入れ、現代は、和洋折衷の家屋が多く建設されている。平成時代の京都において、洋風の屋敷を拠点にしていた羽衣狐であっても、現代の利器の使い方には悩まされることもあった。利器に対して慣れている、と羽衣狐は自負こそをしないが、少なくとも、この
ボタンが押され、録音メッセージが流れ出した。
『──もしもし、海鳴大学病院の石田です』
「わあすごい、本当に機械が喋ってますよ!」
感動を現す乙女に、関心してる場合か、と羽衣狐が怒ったように指示を飛ばす。
乙女が慌てて、ペンと紙を持ってメモの準備をした。
留守電は続き、石田、と名乗る女性の声が紡がれた。
『明日は、はやてちゃんのお誕生日よね。明日の検査の後、お食事でもどうかなと思ってお電話しました。──病院に来る前にでも、お返事くれたら嬉しいな。よろしくね』
内容は、あっさりとした端的なものだった。
乙女はメモには書かず、内容を憶え、口内で反芻した。
「はやてちゃんの誕生日……どうやら、会食のお誘いのようですね」
(……石田とは?)
「はやてちゃんが通う大学病院で、いつも御世話になっている方ですよ。なんでも、主治医だそうで」
これが、すごい美人なんです。
云うと、居間の戸が開き、起きたばかりのはやてが居間に入って来た。
「おはよーっ、何か言ってたか?」
目をこするその仕草が、まだまだ眠気と闘っている様子である。
確認するが、肉体に憑依している方は、頭で言葉を考えるだけで、裏側の存在へ言葉が伝達される「仕組み」になっている。つまり今、乙女はわざわざ発言する必要などなかったのだ。
声に出さずとも、頭で考える、念じるだけで、裏側の羽衣狐にはそれが伝わるため、声を出すと、どうにも周囲には独り言のように聞こえてしまうのである。
はやてが今、怪訝な貌をしている理由はそこにある。どうやら、乙女が独り言をぼやいていたように聞こえたのだろう。
「ううん、何でもありません。──はやてちゃん宛てに、留守電が届いてましたよ」
そうして、この世界での一日が始まる。
第五話。
闇の書、開かれし『夜天の雲』
丑の刻。
山吹乙女は、海鳴市の繁華街の中に姿を現した。
なぜ、こんな場所に外出しているのかと云うと──
「セーラー服以外にも、お洋服は必要やで? 財布渡すから、その中のお金で、なんか良いお洋服買ってきたらええよ」
と、はやてに促されたからである。
車椅子に乗るはやては家の中に残ることを選び、それゆえ、彼女はひとりで街を訪れることになった。
──手持ちの衣類が黒尽くめのセーラー服一着では、趣味も悪いし、不便である。
ことつまり、そう指摘されたわけではあるが……しかし、あの服は、羽衣狐のお気に入りの一着でもあった。かつては「漆黒の楽園」を望んでいた、羽衣狐の趣向を凝らした一着。しかしまあ、今となっては、あの服にこだわる必要など、何処にもないのであろうが……。
街を歩き、肉体に憑依しているのは乙女の方であった。
そこで、羽衣狐が思わず欠伸をする。
(…………山吹、ちと変われ。最近は裏方ばかりで、退屈じゃ)
乙女が八神家にいる間、はやてとの会話を成立させるため、表に居るのはいつだって乙女である。そのため、ここ数日の羽衣狐は裏側に閉じこめられ、引き篭もったような生活を送っていたのだ。
意識の裏というのは、例えるならば「部屋」──そう表現できるよう空間が広がってはいるが、所詮、それだけの広さだ。
何日もの時間を引きこもっていれば、いずれは飽きが来る。
(ああ、ごめんなさい。いいですよっ──)
乙女の発する「よ」という語尾が聞こえるか、聞こえないかの刹那、羽衣狐は突如として、深い穽に引っ掛けられた感覚に陥った。一方で、乙女は背中を縄で引っ張り上げられるような感覚に陥る。
互いに強い〝感覚的衝撃〟に苛まれ──ふたりが、入れ替わりを成功させる。
ひとつ補足すると、裏側から肉体へ憑依する方の魂は、憑依する瞬間に気を抜いていると、身体を支えることができずに倒れて込んでしまう。
複雑な姿勢で交代を始めるなど、もっての外だ。
身体に憑依する側は、憑依した瞬間に、自分の身体に体重があることを思い出す。極端に体重が傾いた状態などで交代しようものなら、たとえ運動能力の高い羽衣狐であろうとも、その場所に転ぶことは免れなかった。
要するに、この「入れ替わり」には──色々な問題点が残っているのである。
(忌まわしい感覚じゃな、交代は。まったく気が抜けぬ)
(こればっかりは、仕方ありませんね……)
慣れぬ現象ゆえ、それも、いた仕方ないことであろう。
羽衣狐は呆れたように愚痴った後、一度、繁華街を見渡した。
「うむ。やはり外は良い」
服を買いに来たのなら、ひとまずは何処でもいい、建物の中に入って見れば良いのだろう。
羽衣狐が、大型のショッピングモールへと足を運んだ。衣類に関して、ブランドと云ったこだわりが特に存在しない彼女達にとって、同じ品を扱った店が立ち並ぶショッピングモールの方が、目的のものを探しやすいからだ。
(でも困りましたね。お洋服を選べ、だなんて)
羽衣狐と山吹乙女は、衣類に関して、非常に無頓着な部分があった。
羽衣狐は、お洒落というものに対して、決して無関心ではなかった。数多の妖の上に立つ者として、一定のこだわりや美意識を持ち合わせているようだ。しかし、だからといって華美な服装や、トレンドを追い求める性格ではなく、毎日衣服が──同じ物では抵抗を憶えるが──同じデザインであったとしても、特別、気にならない性格をしている。
山吹乙女に至っては、その感性はある意味壊滅的で、常識の範囲として、毎日衣服は変えているが、必要であれば、毎日同じ服であっても耐えられる。もともと貧乏だったゆえ、そこに妙なこだわりは無いようだ。当然、センスに関しても、江戸時代から飛躍して来た彼女に、洋服のコーディネートの知識はない。
どんな服でも容易に着こなす優れた容姿をしているのだが、いかんせん当人に微塵もの自覚がない。
自覚がないというだけで、彼女は、周囲からは非常に注目を浴びていた。その例に、ショッピングモールを歩く男子高校生達が、羽衣狐のことを遠くから見つめていた。
「見ろよ、あれ……すっげー美人」
「しかもひとりだぜ。ちょっとオマエ、話しかけて来いって」
「なんでだよ、オマエ行けよ」
「見つけた本人じゃんかよ」
「オーケー、じゃあひとまず、後付けてみようぜ」
男子高校生達が、彼女の容姿に見惚れていた。
男連れだった場合の危険性を考慮して、ひとまず彼らは、羽衣狐の様子を見ることにした。
衣類を選びながら、乙女が感心したように声を上げる。
(現代では、男性の方も衣類を着こなすのですねえ)
(開国を期に、明治政府が衣類の着用を規制したらしい。日本人が男女問わず裸体で出歩く姿に、異国の者は随分当惑させられたらしくてな)
現在でも全国数ヶ所に残る「裸祭り」が、当時の文化を証拠づける数少ない伝統である。
現世にいなかったはずの羽衣狐が、なぜ明治の世を知っているのか山吹乙女は知らない。ただ、本人に言わせれば「時代の移り変わりを見落とした事はない」そうだ。
(今回出費できる金額は……あの小娘から渡されたこの財布の範囲で、か)
(そういえば! はやてちゃんの生活資金って、送られてくるものなんですよね?)
差出人は、あくまで秘匿としてそれを送り付けてくる。
はやての父親と旧知の仲にある人物を名乗っているらしいが、それが真実かどうかも怪しい。
(親戚でもなく、弱き立場にある娘子の生活の援助をすると云うのなら、悪びれた人間でもないと思うが)
(それはそうですよ。きっと善い人だと思います)
世の中、善い人間も多くいるんですよ、とすかさず乙女がフォローを入れた。
それから、しばらくふたりは、衣類を見て回った。
「うーん……〝しょーぱん〟だの〝にーそ〟だの、よく分かりませんねえ。……こうなったら羽衣狐、適当に選んで下さいませんか?」
着ることができれば衣服なのです。──これは乙女の自論だが、鄙出身の彼女が、いかに倹約とした生活を送ってきたのかが伺える一言である。
現代衣類に興味も知識も関心も持ち合わせていなかった乙女は、珍しく羽衣狐に責任を丸投げした。
陳列された衣類を見ながら回っていると、その時、羽衣狐の脇から、ひょいと人影が現れた。
「む」
ニットのキャップを被り、豹柄のパーカーを羽織った男児が、羽衣狐の視界の七割を占領するように入り込んできた。
顔を見れば、へらへらと呵っていた。
「……邪魔じゃ、のけ」
呟きは、自然と口からこぼれていた。
誰であろうがお構いなく、歯に衣を着せぬ物言いができるのは、羽衣狐の個性でもあるだろう。
(誰ですか、この子?)
(知らぬ。急に現れたのだ、目障りな)
羽衣狐は、周囲に気を遣わせて辺りを見回すと、同じような風柄な男児が、二、三人と、後ろ側にも立っていた。
取り囲まれるような形を取った羽衣狐だが、これと云って怯える素振りも見せず、堂々と言葉を発する。
「なんじゃ貴様ら。一介の女児を取り囲むとは、ならず者の集まりか」
「いやいや、そんなんじゃないよォ。それよりサ、キミひとり? 俺達とこれから、どっか遊びに行かない?」
──阿呆共が。
羽衣狐がフッ、と微笑んだ。
「今日の妾は機嫌が良いからな。警告はしておく」
視線に畏を乗せ、
「失せろ」
短く、言い切った。乙女と違い、羽衣狐には、少年達が自分に「遊びに行こう」と誘って来る意図が分かっていた。紛れもなく、乙女の容姿が、美少女と形容できるまでに可憐だからだ。
しかし、彼らとは一向に視線が合わない。少年達はそもそも、乙女のルックスにはあまり興味がないように見て取れる。少年達が観察しているのは、乙女の短めのスカートから覗く、すらっと伸びた白い脚。そして、セーラーで控えめに抑えられたバストだ。
好色な視線で見られ、羽衣狐の機嫌が次第に傾いていく。それを感じ取った乙女が横槍を入れる。
(ちょ、ちょっと……絶対に駄目ですよ、羽衣狐)
(……わかっておる、わかっておるぞ)
血の気が増せば、無意識に羽衣狐が持つ〝九尾〟が滾る。
敵意や悪意を察知した〝尾〟は、それを放った対象に対して、自動的に反応する特性を持っている。尾が動けば、人っ子ひとり、いや、三人程度、肉片ひとつ残さず葬り去ることなど、造作もない。これでも羽衣狐は、今にも勝手に動いてしまいそうな尾を、懸命に抑圧しているのであった。
「ねえ、きみ歴女? せっかくだし、どっか行こうよォ」
(人間の男とは、まことに単純な生き物じゃな)
いつかの京都でも、同じことを聞いて来た男子がいた。かつて、あの時と同じように、この者たちを消し去ることが出来れば、そんなに楽なことはないだろう。
だが、人を殺せば────羽衣狐は、改心した意味を失う。
殺してはならない。
……ならば、舌を引っこ抜いてやろうか?
殺人にはなるまい?
(うむ、名案じゃ)
(駄・目・で・す・!)
全然見当違いじゃないですか、叱咤する乙女の声が響いた。
ただ考えた、思い付いただけなのに──乙女には「それ」が、声に出したように聞こえてしまう。これもまた、ふたりで身体を共有している現状の問題点のひとつだ。
(そなたも不遜じゃのう。多少は個人の壁というものを持たぬか……考えたことが筒抜けなら、プライベートもあったものではないわ)
(仕方ないでしょう、聞こえてしまうんですから!)
思考の十割が筒抜けなら、これもまた、及第点である。
(ひとまず、この子たちから逃げる方法を考えましょう。さっきから、妙な視線を感じるんです)
乙女もそれを感じ取ったか。まあ無理もない、妙に見られているのは、山吹乙女の身体なのだから。誰かの指令を素直に聞き入れるのは癪に触ったが、男児たちに悦に浸られる方が癪だ。
だがそこで、羽衣狐はなにとなく面白そうな余興を思いついた。
「……良かろう、ならば服を買いたい。手伝え。戯れるのは……それからじゃ」
「へへ、いいねえ~」
言い捨てると、羽衣狐は歩き出す。
三人の男児も、その後をつけるように歩き出した。
(羽衣狐?)
(任せるが良い)
その一言が、説得力のある重たい言葉に聞こえた。
乙女はそれ以上の口を噤み、やがて羽衣狐は、若者向けファッションショップのレディースコーナーに少年達を引き連れて来た。広大なフロアを翳しながら、彼らに言いつける。
「ちょうど迷っていた所だ。どれ、そなたらにナウい服でも選んで貰おうか」
「へ?」
「あいにく、この手のものには関心が薄いのじゃ。趣味で選べ、それを着てやろう」
認めるところは正直に認めて、羽衣狐は少年たちに「命令」した。
乙女はそこで、横手を打った。
なるほど。現代のことは、現代の人間に聞くのが一番である。感性に旧時代のそれが息づく乙女と羽衣狐では、服選びこそ、難解と言っても過言ではない。選ばせるだけ選ばれば、それはそれは、彼らを有効活用したことになる。
数分後、男児たちは言われる通りに、羽衣狐の私服を選び始めた。
(なるほど、あの子たちに衣服を選ばせるなんて……。利用し倒すようで悪いのですが、なんだか、助かっちゃいますね)
遊ぶくらいの謝礼であれば、払っても良い気がして来た。
少年達の邪な気持ちに鈍感な、乙女であった。
(わあ……本当に真剣に選んでくれてます。どうして?)
少年達は見事なことに、羽衣狐の命令に大人しく従っていた。
一斉に散り散りになり、趣味に合わせて、まるで雑誌に乗っているモデルのような女性たちの衣類を選んでいる。フォーマルな物から、清楚なもの。すこし崩れたハードなものまで……羽衣狐の代わりに、様々な衣服を選んでゆく。
乙女には、その理由がまったく分からなかった。彼らに何のメリットがあるのだろう。羽衣狐は不敵に笑った。
(いかがわしい動機ではあるが……この身体を〝着せ替え人形〟のように出来るのだと言っておけば、自分好みにコーディネートしようと、すこしは必死に、真面目になって服を選ぶであろう?)
(私の身体で、そんなに必死になってくれるのでしょうか?)
(……そなたは、すこしは自分の容姿に関心を持った方が良いな)
どこまでも無自覚な乙女に、羽衣狐はむしろ、不憫に思うほどに呆れた。
数分後、優雅に羽衣狐が足を組みつつベンチに座っていると、そこへ、それぞれが衣類を持ってきた。
上品なフリルを付けたホルターネック。ベールのような袖の付いたワンピースであったり、フォーマルなドレスもある。また、傍らには一転してパンキッシュな服装があったり、TPOに対応して、幅広い場面で着られそうな衣類が見事に並べられた。まるで、ファッションモデルの雑誌を参考にしたような衣類ばかりで、男児達は、トレンドを理解できる少年達のようであった。
面倒臭い手間が大幅に省けたことで、羽衣狐は上機嫌であった。
「御苦労」
とだけ云い、羽衣狐は会計に向かう。
「さァ、早く遊び行こうぜェ」
会計を済ませると、待ちわびたように、少年のひとりがぼやいた。
羽衣狐はうすら笑いを浮かべ、言葉を返す。
「まあ待て。遊びに行くというのなら、この服では羽目も外せまい? ここで着替える」
着替える。
その言葉に、男児が反応したように見えた。だが、羽衣狐の主張に同感したのだろう。セーラー服と私服、遊び回るのに、そのふたつを比べるのでは雰囲気が違う。
羽衣狐が試着室へ向かう。男児たちも、それについていく。
(羽衣狐?)
乙女が訝しんでいると、試着室に辿り着いた。
二部屋ある試着室の一つは、使用中になっていて、カーテンが閉められていた。
羽衣狐が流し目で、それをちらりと確認する。試着室前に並べられた靴の品を見るに、中では女性が着替えているのだろう。
「ホラホラ、早く着替えてくれよォ」
「ああ……」
へらへら笑う少年は、隙だらけだった。
次の瞬間、
「うははっ、こりゃあ、生着──っ」
ドンッ!
次の瞬間、ひとりの男子に向け、羽衣狐が腹部に肘打ちを喰らわせた。
一瞬にして刹那。──その動きは、たかが一般の人間に捉えられる速度ではなかった。腹部を襲う衝撃に、悲鳴にはならなかった「がえっ?!」と意味不明な割声を吐き出す。
男子は吹き飛び、カーテンの奥へと突っ込んで行く。ばふっ、と布を突き崩す音が聞こえた時、周りにいた男子たちは、ようやく羽衣狐を捉えた。
「て、てめ──っ!」
羽衣狐の態度にキレ、男子が罵声を放つが早いか、しかし次の瞬間、その罵声の声量を軽く遮る悲鳴が、男子たちの背後から響きわたった。
羽衣狐が突き飛ばした男子のひとりが、見ず知らずの女性が着替えている、もうひとつの試着室へ転げ込んでいたのだ。
「の、のぞきよぉーっ!!」
着替え中のおばさんの叫喚に、数名の係員がダダダ、と駆け寄って来る。
「のぞきだと!?」
「いや待て、堂々と試着室に入ってく奴はのぞきとは言わないぞ! この手の変態はなんと言えばいい!?」
「ただの変態だ!」
訳の分からぬ考察を起てている警備員をよそに、トラブルに巻き込まれまいと、羽衣狐は既に疾駆し、そのコーナーから走り去っていた。
「──逃がすなッ!」
「あの女、許さねぇ!」
少年軍団、約一名がリタイア。その後、店長に連れて行かれたらしい。
懺奎の念と共に、残った三人の少年たちは、逃走する羽衣狐の追跡を始めた。
(追ってきてます、羽衣狐!)
「なんじゃ、やつ等は。なぜキレておる」
遊ぼう、という最初の要求に答えているだけだ。
だから──鬼ごっこをしている。
残念だ。平安生まれの彼女には、大勢でも可能な児戯などそれくらいしか思いつかないのだから、今回に至っては仕方がない。
「待ちやがれ!」
「おい、そいつを捕まえろ!」
ショッピングモールを疾駆すれば、いやでも目立ってしまう。
少年たちはこのモールが溜まり場なのか、他にも仲間がいたようだ。前方に数名、似たような風貌の不良を視認する。
(羽衣狐!)
「これしき」
羽衣狐が──嗤った。
次の瞬間、人間ではあり得ない距離を跳躍し、一気に前方の少年たちを飛び越すと、エスカレーターの手すり部分に着地する。
人の技を超えた所業だ。追いかける少年達はめを向いたが、この追いかけっこが、いつになく楽しく思え始めていた。
「おいおいアレ、どこの制服だよ! あんなん、見たことねえぞ!」
「そっちはどうでもいいじゃねーか! あんな可愛い子自体、見たことねえよ!」
少年たちは仲間を集め、人数は十数名にも及んでいた。
ひとりのリーダーに集まる姿は、まるで人間の百鬼夜行だ。
「尻尾を巻いて逃げるとは、まさにこのことぞ」
(この状況下で何うまいこと言ってるんですか!)
ひとまずは最下層に降り、いち早くこのショッピングモールから脱出するべきであった。
不可抗力とは云え、これ以上騒ぎの渦中にいて、店員や警備員に顔を覚えられてしまっては、出禁を喰らい、二度と此処で買い物が出来なくなってしまう。この繁華街は近場で、なにかと便利ゆえ、そうなってしまうと彼女達としては困るのだ。
ショッピングモールを疾駆している内、少年たちの数は目に見えて減っていった。警備員に補導されたり、民間人と衝突したりして、最終的には最初の三人だけが追跡を続行しているようだ。
「おいおい、マジで漫画みてぇな展開だな」
追跡する少年の一人がぼやいた。
勢いで羽衣狐の急追を開始したものの、いまや抱いていた怒りはどこかへ消え去り、この追いかけっこが、むしろ快哉である。
感じているのは、こんなにも美味しい場面の当事者になっていいのだろうか、という少年的で悪戯な感性を刺激する高揚感だ。少年の理性を一時的に麻痺させている。悪意を失って尚「女の子を追い掛ける」という珍妙な状況に対して、強い興奮を与えている。
もはや、是非もない、と言ったような感覚だ。
羽衣狐はやがてショッピングモールを脱出し、路地裏の方に駆けていった。
「しめた、あのブロックは俺達の方が詳しい! 挟み込みだ!」
リーダーの合図に、二人の少年が道を違えて離別する。
リーダーは相変わらず、羽衣狐を真後ろから追跡している。
(追っ手はあと一人、他の子は上手く撒いたようですよ)
(よくやる)
この運動量を経て、いまだに自分の追いかけているといなら、人間の小僧にしては鍛えている方だろう。
呆れているのか、感銘を受けているのか。しかし、羽衣狐が前を向き直した瞬間、目の前に、二の腕を拡げた別の少年が現れた。突拍子もなく、羽衣狐の不意を衝く。
それがどうした。
たかが少年の手に羽衣狐が捉えられるはずもなく、軽快な跳躍で二の腕を回避すると、少年の顔面を踏みつけて、彼女は前方に屹立していた高い壁を越えた。
「逃がすかァァァッ!」
背後から羽衣狐を追っていたリーダーの少年が叫んだ。
顔面を踏みつけられ、ふらふらしている少年に向けて跳躍する。そんな少年の顔面を土台に、驚異的な身体能力で、その少年もまた壁を飛び越えた。
(まだ来るんですか!?)
(顔面を踏み台にしたか、正真正銘の阿呆じゃ)
(いえ、踏みつけたのはあなたも同じですよ……)
そして、再び前方に別の少年が現れる。
挟まれた羽衣狐は、しかし、わざと壁のある場所に逃げ込み、自らが追い詰められる状況を作り出した。
「へへ、やあっと追いつめたぜぇ」
「ちょ、マジ? マジでこんな可愛い子アリなの?」
「よくもやってくれたなァ……その真っ黒い服、違う色で染めてやろうかッ!」
紅蓮か、白濁か。
後者にまみれた姿を堪能するのもいい。妄想の中だけでも興奮する。
目の前に美少女、自分たちは完全に悪者。しかし、その背徳感こそが少年的には刺激的なのだ。
薄気味悪い笑い方をしている少年に向けて、羽衣狐が口を開いた。
「みずから窮地に立ったともわからぬ愚か者共が……貴様らが踏み込んだのは、決して快楽の園などではない」
その刹那、ドス黒い波が、周囲の景色を颯爽と包み込んだ。
一瞬にして困惑と驚愕に駆られる少年たちをよそに、羽衣狐は瞬間移動したかのように、その場から消えていた。
「……あ、あれ? いねぇ!?」
動揺と困惑、焦燥と衝撃に、少年の身体は動かなかった。
辺りは「夜」になり──黄昏は一瞬にして真宵へと移り変わっていた。暗い影以外何も見えないような、深い深い闇に呑まれた絶望的な景色が広がる。
その闇の中には似つかわない、綺麗過ぎるほどの声が囁かれた。
──逃げぬのか……?
「ど、どこだ!」
闇の中での人間は、全方位が死角となる。
ささやきがどこから聞こえたのかも判らないまま、少年の中では、恐れと焦りだけが肥大していく。
全身が恐れおののき、細胞の一つ一つが戦慄する。
恐怖に足が凍り付き、駆け出す事も出来やしない。
──たっぷりと可愛がってやろう……
「ギャアアーーーッ!!」
次の瞬間、ゴオオン! と、強烈な金属音が鳴り響いた。
コンクリートとそれが衝突し、弾け飛んだような轟音が暗闇を走り抜けていった後、それに続くように、仲間の少年の叫喚が響いた。
その悲鳴はどこかこもっていて、何かに閉じこめられているような、そんな声だ。しかし、この闇の中では視認すら出来ない。
「だ、大丈夫か? 何があった!」
「暗い、狭い……! こ、こええぇぇよぉっ!!」
今にも崩れそうな儚い声で、少年はひたすらに助けを求めていた。
「なんだよコレ……どうなってんだよぉっ!?」
暗闇になっただけなら、そろそろ視覚が適応出来てもいいはずだ。
しかし、どれだけ時間が経っても、視界には闇しか映らない。
そしてその時、漆黒の空間の中にぽぅっと、存大な存在感を表す羽衣狐が、少年の目の前に現れた。
「ヒッ」
白皙の肌が、暗闇を照らす唯一の光。
整えられた、きめ細やかなその雪膚は、まるでこの世のものとは思えないほどに壮麗で、少年にはそれが、宵を照らす月にも見えた。
黒服ゆえ、少年に見えるのは、肌の出ている部分だけだった。幽霊的な絵図なはずが、そこにはどこか、幽玄で幽艶な感動さえ覚えてしまう。
白皙の両手がすぅっと伸びてきて、少年の頬をゆっくりと包み込む。柔らかく温厚な両掌に対し、少年の体は慄然としたまま、背筋が凍り付いている。
羽衣狐の顔は少年の顔への距離を一気につめ、まじまじと少年を観察している。
だが、少年は興奮はしなかった。美女の顔が目の前にあるというのに、その冷ややかな視線が、全身の主導権を支配して、身動き一つとる事を許さない。
「顔は趣味ではないな。……ならば、貴様の肝を喰ろうてやろうか」
見目で愉しめぬのなら──中身の方はどうであろう。
下手物は旨いと相場が決まったモノだが、そんな噂は、まやかしだ。
「肝ッ──だと!?」
「何か悪口を言ったな!?」
閉じこめられている少年が叫んだ。
そして、次の瞬間、羽衣狐は微笑むと、自分の唇を少年の唇に近づけ始めた。
──えっ?
少年は驚いた。
この行為は、まさか……
(まさか、キス──?)
そんなわけ、なかった。
次の瞬間、彼女の口唇が、わずかに震える。
ゴスゥッ!! ──という何とも表現できない音が、何かが潰される音が、暗闇の中で響いた。
羽衣狐が、少年の金的へと、膝蹴りを打ち込んだのだ。
「ハッッッ、ハウ────ッ!?」
叫びたいけど、叫べない。
それほどの激痛が走る。
悶絶し、その場へと倒れ込んだ。
「光栄に思え、妾に触れられたのじゃ」
羽衣狐が少年から離れると、辺りの景色から闇が退き、今まで通りの昼間の景色に戻っていく。
何かに閉じこめられていた少年を覆っていたのは、近場にあった、大きめのドラム缶だった。
「そなた程の年頃なれば、美女に触れられれば本望な箇所であろう? 毛頭、妾に近寄うたのも……それが目的ではないのかえ?」
ほほほ、と高呵いが響く。
苦悶する少年を背後に、羽衣狐は屈託のない笑顔を浮かべながら、その場を立ち去った。
「一度は持ち上げ、高い所から突き落とす。なかなかどうして、気味の良い手法じゃな」
イタリアのマフィアは、殺す前に相手に対して、寸前に高価な贈り物をするという。今際に夢を味合わせ、それを一気に突き崩す。
物理的な話でも、物は高い所から落とした方が、派手に豪快に壊れるからだ。
(まさか、本当に肝を食べるのかと思ってひやひやしましたよ)
(妾は、あの者の肝は喰うつもりはなかったぞ。たとえそれが……昔の妾であっても、な)
意味深な言葉を吐き捨てた羽衣狐に、乙女は聞き返した。
(どういう意味です?)
(男の肝は臭くてな、口に合わなんだ)
鼻で笑って、買い物袋を片手に、羽衣狐は八神家へと向かった。
夜になり、時刻は午後の十時を回っていた。
小学生であるはやては、既に歯を磨いている。
乙女は台所にて、夕食の食器を洗いながら、はやてに話しかけた。
「お誕生日まで、あと、もう少しですね」
八神家にいる時は、やはり肉体に憑依しているのは、乙女の方である。
羽衣狐に家事をやれ、といっても無駄ではあるのだろうが……。
「むー!」
何を言ってるのかわからないはやては、口の中に歯磨き粉の混ざった水分を含ませている。
喋るとだばばぁ、と中身が零れてしまうので、親指を立てて、乙女に合図を返していた。
──誰かと一緒に誕生日を迎えるなんて、きっと久しぶりだ。
だからこそ、はやては嬉々としているのだろう。
そうして、はやてはいつものように、先に寝室へと向かった。乙女も手早く歯磨き済ませ、はやての寝室へと向かう。
山吹乙女が来て以来、はやてはいつも、こうして、彼女と共に同じベッドで眠っているのだ。
今宵もまた、乙女がはやてに本を読み聞かせ、先にはやてが寝付く。それを追うように、乙女が眠りに就くのだと思っていた。
だが、この日だけは、違った。
誕生日の来日を祝う前に、はやては眠りについてしまった。
時刻は、十一時二〇分────
乙女もまた、はやての後にに続いて眠りについた。
十一時五十七分。
山吹乙女は、怒声にも似た声にて、叩き起こされた。
(山吹! 起きよ、山吹!)
羽衣狐だ。
彼女が何やら血相を変え、眠っている乙女を叩き起こしたのだ。
(なんですか羽衣狐……。油揚げなら、台所にまだおかわりが……)
(阿呆か貴様! 寝惚けてないで、さっさと目を覚まさんか!)
寝ぼける山吹に、羽衣狐は説明する。
(代われ。何やら、胸騒ぎがする)
(え?)
羽衣狐が感じる胸騒ぎ――その一言が、寝ぼけていた山吹乙女の頭を睡眠から醒まさせた。
二人はすぐさま「行動権」を交換し、不愉快な感覚と共に入れ替わる。
(胸騒ぎって、いったい?)
(すぐ、そこまで迫っている)
あの羽衣狐も、今回ばかりは少しだけ緊張しているようだった。
(これは────深い〝闇〟じゃ)
今までの余興とは違う今回、なぜなら、もしも戦うような事態になった時、羽衣狐は天真爛漫ないつもの戦い方が出来ない。今はすやすやと寝息をたてて眠る人間の少女を、何よりも先に守らねばならないからだ。
〝荷物〟を抱えた状態での緊張感は、彼女にとっては初めて……いや、久しぶりだ。
「──来おった」
邪悪な気配。
遥か久遠の次元を越え、闇を越え──幾千もの時間を遡る、激流のような質量を感じ取る。激流は真っ直ぐとこちらへと伸び、この地点にて、噴火したように感じた。
次の瞬間、闇色の魔法陣が、はやての部屋に陣を引いた。暗黒色に輝き始めた。
咄嗟に反応した羽衣狐は、この世界に来てからは、今まで一度も出した事のない尾を広げる。部屋の広さというものがあるので、二本だけだが。
しかし、尾はそれに反応しようとはしなかった。
彼女の展開する美しいまでの九尾は、彼女に戦意や、敵意の類を示す者と対峙した時、反射的と言っても良い速度で、敵を屠りにかかる。
その尾が反応しなかったと云うことは、つまり──
これから現れる〝者〟達に──此方への敵意はない、ということになる。
「な、なんやっ!?」
魔法陣が敷かれ、はやてがその音で目を覚ます。
そのために羽衣狐はやむなく、尾をしまい、自分が乙女であることを装った。
(羽衣狐、大丈夫なのでしょうか?)
(仕掛けて来るようであれば応じるが、いかんせん、尾が反応せぬ。先方に、敵意がない証拠じゃ)
現れたのは、質素な黒衣に身を包む四人組であった。
それぞれが膝をついていた。
この姿勢作法は忠節を示すものであり、それゆえに、羽衣狐の中の闘志はだんだんと消え失せて行く。
「──闇の書の起動を確認しました」
状況が読めないはやては、羽衣狐を乙女だと思い込み、彼女の袖をぎゅっと握り続けている。
(こやつ)
人間とは、なんて非力な種族だろう。
羽衣狐は衣服の上から感じるその力強さが、なんとはかないものに感じ取れた。
怯える人間が、どれだけ無力な存在なのか。
だが、畏れるものなど何もない。
(……。妾が守ってやろう……。この新しい世で、妾の、新しい生き様を魅せてやる)
其れは──羽衣狐の中で、何かが生まれ変わった瞬間かもしれない。
現れた四人の者が、口を開いた。
「我ら、闇の書の蒐集を行い、主を護る守護騎士」
「夜天に集いし雲」
「〝ヴォルケンリッター〟」
「なんなりと命令を」
四人の者達は、目を瞑り膝を立てたまま、淡々と続けている。
羽衣狐も山吹乙女も、その言葉の意味が、正確に掴めずに居た。
(主を護る、と云ったのう……主とは、この小娘のことか?)
(守護キシって何でしょう、守護大名のことですかね?)
(…………)
どうやら、乙女に質問しても、核心をついた答えは返っては来ないだろう。──訊いた妾が莫迦だったと後悔する羽衣狐であった。
そんな時、おそらくリーダーであろう、凛とした風格を持つ桃色の髪をした女が、羽衣狐に対して問いかけた。
「状況を確認したい。主の隣にいる、貴様は誰だ?」
自身の後ろでは、八神はやてが怯えているはずだ。
羽衣狐は、はやてに対して、その存在を明かしたことがない。
ゆえに、羽衣狐は演技にて、山吹乙女を装った。
「妾の名は山吹。……山吹乙女じゃ」
とはいえ、名前以外の口調などはまったく装い切れていないが。
「山吹、だと? 貴様は主の〝何〟だ!」
──こやつら、いったい何様じゃ?
高圧的な態度が頭にキたので、痛快な文句を言い放ってやろうとも思ったが、山吹乙女を装っている以上は、腑に落ちないが、謙虚でいなければならない。
しかし、「何」と聞かれては…………何だ。
返答に詰まっている時、女の背後で、朱色の髪をした娘子が口を開いた。
「あのよォー、その主って……」
そして羽衣狐は、はやての存在を思い出す。気づけば、握りしめられていた手が離れている。
「気 失ってないか?」
振り返れば、目が渦巻いて錯乱しているはやての姿が映った。
羽衣狐がすこし落ち着いた印象を受けるかもしれませんが、第一話にて、彼女を覆って居た怨念のほとんどが、払拭された描写を通しています。彼女の中の邪悪の大半が抜け落ちた描写ですので、羽衣狐は全体を通してすこし、丸くなっているかもしれません。